自転車「ながら運転」の罰則強化 改正道交法が11月1日に施行
2024年10月30日 18時57分
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11月1日から自転車に関する法律が変わります。携帯電話を使用しながら自転車を運転するいわゆる「ながら運転」や、自転車での酒気帯び運転が罰則の対象となり、警察は周知を図るとともに悪質な違反を取り締まることにしています。
目次
「ながら運転」事故 ドライブレコーダーの映像
「ながら運転」の自転車が衝突 夫を亡くした女性
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「ながら運転」事故 ドライブレコーダーの映像
「ながら運転」の自転車が衝突 夫を亡くした女性
専門家「被害者にも加害者にもなるおそれ」
「ながら運転」は危険 実験映像で見る
【QA解説】改正道路交通法 何がどう変わる
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11月1日に施行される改正道路交通法では自転車での「ながら運転」が禁止され、新たに罰則が設けられました。
具体的には、携帯電話を使用しながら自転車を運転して事故を起こすなどの危険を生じさせた場合、1年以下の懲役または30万円以下の罰金、危険を生じさせなくても携帯電話を手に持ちながら通話や画面を注視した場合、6か月以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。
また、アルコールの影響で正常な運転ができないおそれがある「酒酔い運転」には罰則がありましたが、罰則の対象外だった「酒気帯び運転」についても、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになります。
さらに、自転車と勘違いされやすい「モペット」などと呼ばれる電動モーターやエンジンで走行できる二輪車についても、ペダルをこいで運転するモードにしても自転車と同じ扱いではなく、原付きバイクやオートバイに該当すると明確化されます。
警察庁によりますと、自転車が関係する人身事故は9月末までに全国で4万9044件起きていて、このうち自転車の「ながら運転」による事故は126件発生しているということです。
全国の警察は法改正や交通ルールについて周知を図るとともに、悪質な違反を取り締まることにしています。
「ながら運転」事故 ドライブレコーダーの映像
映像が再生されます
都内で撮影されたタクシーのドライブレコーダーの映像です。
画面左側に見える自転車の男性は左手にスマートフォンを持って運転しています。
タクシーが車線変更した際に自転車の男性もタクシー側に近づき、接触してしまいました。
また、福岡市で撮影された映像では、片側1車線の道路をタクシーが進んでいると、反対車線にとまっていた車の後ろから自転車が出てきてぶつかりそうになりました。
携帯電話で通話しながら片手で運転していたとみられます。
「ながら運転」の自転車が衝突 夫を亡くした女性
自転車の「ながら運転」による事故で、62歳の夫を亡くした女性がNHKの取材に応じました。
事故は6年前の2018年、茨城県内で起きました。
女性の夫は最寄りのバス停から自宅に向かって歩いているときに前から走ってきた自転車と衝突し頭を強く打って亡くなりました。
自転車を運転していたのは当時19歳だった大学生で、ライトが点灯しない状態でイヤホンで音楽を聴き、スマートフォンを見ながら運転していたため、女性の夫に気づかずにぶつかったということです。
女性は当時の心境について、「自転車との事故だったと聞いて当初は、『車じゃなくてよかった』と思いました。自転車事故で亡くなる人がいるのは聞いたことがありましたが、まさかそうなってしまうとは思ってもいませんでした」と振り返りました。
また、「ながら運転」だったことについては、「ほとんど街灯もない道で、なんでスマホなんて見ていたんだろうと思いました。本人は、『急いでいて、時間を見るためにちょっとだけスマホを見てしまった。とにかく全部こっちが悪いです』と言っていましたが空虚な気持ちになりました」と言葉を絞り出していました。
事故以来、交通ルールを守らない自転車が目に付くといい、「なんでスマホを見ながら運転しているのだろうと思うのですが、注意したくても怖くて注意できない自分が情けないです。自転車は幼児からお年寄りまで免許なしで乗れる、身近な交通手段ですが、ルールを守らなかったり、ちょっと油断したりすると、凶器になってしまうことをわかってほしいです」と訴えていました。
夫については、「温厚で達観している人でした。36年連れ添いましたが、愚痴を聞いたことは1回もなく、いつも私の愚痴を聞いてくれました。料理も作ってくれたし、散歩も映画も一緒に行って、夜遅くまでよくおしゃべりしていたので、いなくなって今でもとても寂しいです」と話しました。
専門家「被害者にも加害者にもなるおそれ」
自転車での「ながら運転」について、専門家は「歩行者や車に衝突する危険性が非常に高まり、自身が被害者にも加害者にもなるおそれがある」と指摘します。
交通工学が専門で「ながら運転」の危険性に詳しい愛知工科大学の小塚一宏名誉教授は、改正道路交通法が施行されるのを前に、自転車での「ながら運転」の危険性を検証する実験を行いました。
自転車を運転する学生の頭に視線がどこに向いているのか測定できる機器を取り付け、周囲に歩行者がいる状況で大学内に設置したおよそ40メートルの直線のコースを走ります。
実験で撮影された映像を小塚名誉教授たちが分析したところ、通常の運転では、歩行者に視線が向いていた「目視時間」の合計が、12.8秒から14.8秒だったのに対し、「ながら運転」では最も長かったケースでも、6.4秒と半分ほどでした。
最も短いケースでは、1.4秒しか歩行者に視線を向けていなかったということです。
小塚名誉教授は、「人は、歩行者や車に視線が移動して、その視覚情報が脳に届き、脳で認識されて初めて、歩行者や車の動きがわかるので、視線が動くことが重要だ。『ながら運転』をすると、視線はスマートフォンの画面付近にとどまり、視線はほとんど移動せず、歩行者や車の動きを認識できない。当然、歩行者や車に衝突する危険性が非常に高まり、自身が被害者にも加害者にもなるおそれがあるので、十分に気をつけてほしい」と話していました。
実験に参加した学生は、「画面を見るために下を向いているので、歩行者が密集している場所ではすごく危なかった。スマートフォンで地図を見るときは、いったん自転車を止めて確認してから運転するようにしたい」と話していました。
「ながら運転」は危険 実験映像で見る
映像が再生されます
実験で撮影された映像です。
映っているのは、自転車を運転する学生から見えている視界で、オレンジ色の丸印が、視線が向いている場所を表しています。
スマートフォンを持たない通常の運転の場合は、歩行者の方向にオレンジ色の丸印が動き、広い範囲に視線を向けていることがわかります。
一方で、スマートフォンを操作しながら自転車を運転する「ながら運転」の場合には、スマートフォンの画面にオレンジ色の丸印がとどまっていて、画面に視線が集中しています。
そのため、目線が下向きになっていて、歩行者が通過してもオレンジ色の丸印が歩行者の方向に動かない場面も見られました。
Posted at 2024/10/30 20:34:46 | |
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