
大相撲秋場所 大の里が5回目の優勝 横綱昇進後は初めて
2025年9月28日 19時17分
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大相撲秋場所の千秋楽で、大の里が13勝2敗で並んだ豊昇龍との横綱どうしの優勝決定戦を制し、2場所ぶり5回目の優勝を果たしました。ことし夏場所後に横綱に昇進してからは初めてです。
秋場所は14日目を終えて横綱 大の里が1敗で単独トップに立ち、横綱 豊昇龍が2敗で追う展開となり、優勝争いは両横綱に絞られていました。
千秋楽の28日、大の里は結びの一番で豊昇龍と対戦し「押し出し」で敗れて2人が13勝2敗で並びました。
16年ぶりに横綱どうしの対戦となった優勝決定戦は、土俵際でもつれて物言いがついたものの大の里が行司軍配どおりに「寄り倒し」で勝ち、2場所ぶり5回目の優勝を果たしました。ことし夏場所後に横綱に昇進してからは初めての優勝です。
大の里は今場所、4日目に平幕の伯桜鵬に金星を許したものの、身長1メートル92センチ、体重187キロの体格から馬力を生かして前に出る相撲が抜群でした。
11日目まで単独トップだった豊昇龍が終盤に連敗する中、大の里は5日目以降、不戦勝を含めて10連勝と集中力を切らしませんでした。
千秋楽の結びの一番ではこれまで2勝6敗と負け越している豊昇龍に敗れましたが、25歳の東の横綱が最後に横綱どうしの決定戦を制しました。
大の里「しっかり勝ちきれた」
5回目の優勝を果たした横綱 大の里は「親方に淡々といきなさいとアドバイスをいただいて、本割は淡々とではなかったですけど、優勝決定戦は淡々とやることを意識して、しっかり勝ちきれた」と振り返りました。
横綱として初めての優勝については「先場所は苦しい経験をして、もう、あの経験はしたくないという思いで稽古に励んで、きょう昇進2場所目で優勝できてうれしい」と喜びを語りました。
八角理事長「よく精神的に立て直した」
日本相撲協会の八角理事長は、大の里について「結びの一番で負けてからよく精神的に立て直した。上手投げをくったと思ったがよく体を預けた」と優勝決定戦を振り返りました。
また、優勝決定戦の両横綱の攻防については「短い時間だったが横綱の技術、気力があった。毎場所こういう場所にして続けていってほしい。両横綱ともに十分、横綱の責任を果たした」と評価していました。
高田川審判部長「優勝決定戦は集中できていた」
日本相撲協会の高田川審判部長は、大の里について「本割では面を食らって思わず体がふわっと浮いてしまったが、優勝決定戦ではドシッとした気持ちで集中できていた。豊昇龍の強い投げがきたがひっついていって挟みつけて一気に出た。あの運動神経のよさと馬力が大の里の魅力なので、すごくいい相撲が見られた」とたたえていました。そのうえで「横綱どうしの久々の決定戦で両横綱ともにすばらしかった」と話していました。
また、今場所11勝を挙げた新小結の安青錦については「昇進に向けて扉を握った。いい相撲を取っているので来場所以降も期待できる」と今場所が大関昇進の起点になったという認識を示しました。
“悪癖”出さず前に出続ける相撲貫く
昇進2場所目で横綱としては初めての優勝を果たした大の里。今場所はみずから引いてはたきにいく“悪癖”を出さず、持ち味の馬力で前に出続ける相撲を貫いて目標としていた横綱での賜杯をつかみました。
初土俵からわずか2年。大相撲の歴史で類を見ないほどの速さで横綱の地位まで上り詰めた第75代横綱 大の里は、ことし5月の伝達式の口上で「唯一無二の横綱を目指す」と決意を述べ、横綱として歩み始めました。
しかし、「新横綱で優勝」という目標を掲げた先場所は11勝4敗。千秋楽では平幕どうしの優勝をかけた一番を土俵の外で見届け、横綱としての責任を果たすことができませんでした。連日の横綱土俵入りを含め「経験したことがない15日間だった。前半はいけると思ったが、後半に疲れが出た」と、新横綱場所は不慣れという課題を口にした大の里。
加えて、目についたのがみずから引いて相手を懐に呼び込みはたきにいってしまうことです。先場所許した4つの金星のうち、引いてはたきにいく流れから2敗を喫していて「よくないところが出てしまった」と“悪い癖”を自覚していました。
「横綱としてやるべきことをやって先頭に立てるように頑張りたい」
強い覚悟で臨んだ秋場所、初日は成長著しい新小結 安青錦に対してもろ手から前に突き進んで何もさせないまま寄り倒し「しっかりと前に出ていくことが大事だと思った」と手応えを感じていました。
3連勝で迎えた4日目には平幕の伯桜鵬に土俵際まで攻めながら逆転で敗れましたが、その後も右差しなど形にこだわることなく前に出る相撲を貫き相手を土俵下まで吹っ飛ばすなど持ち前の馬力で白星を重ねました。
11日目は大関経験のある実力者、小結 高安との一番。立ち合いで互いに胸をぶつけ合って大の里がやや押された形になると、今場所初めてみずから引きましたが、この日ははたきにはいかず下がっていなしながら反転攻勢、左のおっつけで「突き出し」で勝ちました。支度部屋では「内容は課題が多い」としながらも「一方的に下がるのではなく、攻めに展開できてよかった」と収穫も口にしました。
師匠で元横綱 稀勢の里の二所ノ関親方もこの取組について「高安の当たりもある。悪くない」と話し、引き技に頼って敗れた先場所とは違う相撲内容を評価しました。
13日目は1敗で並んでいた豊昇龍が目の前で敗れた直後の取組でしたが「本来なら動揺してしまう自分がいたが、目の前の一番に集中した」と前日までと変わらない相撲で勝利しました。
千秋楽ではこれまで2勝6敗と負け越していた豊昇龍相手に結びの一番で、敗れました。それでも前日に師匠から「淡々といきなさい」とかけられたことばを思い出し、優勝決定戦では前に出る相撲を取り戻すなど精神面での成長も見せました。
日本相撲協会の八角理事長は、大の里について「レベルアップしている。若いし伸びしろがある。つけいる隙を与えないというか、いちばん安定した勝ち方をしている」と25歳の才能を高く評価しています。
「早く横綱として優勝したい」という目標を横綱2場所目でかなえた大の里。“唯一無二”の横綱を目指す大器が新たな一歩を踏み出し、これから大相撲の世界でどこまで突き進むのか期待は高まるばかりです。
中入り後の勝敗
中入り後の勝敗です。
▽翔猿に朝紅龍は翔猿が「押し出し」。
▽明生に日翔志は新入幕の日翔志が「はたき込み」。
▽錦木に御嶽海は御嶽海が「寄り切り」。
▽竜電に狼雅は狼雅が「寄り切り」で勝ちました。
▽正代に獅司は正代が「小手投げ」。
▽友風に美ノ海は物言いがつきましたが、行司軍配通り美ノ海が「押し出し」。
▽時疾風に藤ノ川は時疾風が「下手投げ」。
▽翠富士に佐田の海は翠富士が「寄り切り」。
▽湘南乃海に草野は草野が「寄り切り」で勝ち越しました。湘南乃海は負け越しです。
▽平戸海に金峰山は平戸海が「送り出し」で勝ち越しです。金峰山は負け越しました。
▽大栄翔に豪ノ山は大栄翔が「はたき込み」で7勝目です。
▽熱海富士に一山本は熱海富士が「寄り切り」。
▽欧勝馬に王鵬は王鵬が「突き落とし」で10勝5敗です。
▽伯桜鵬に宇良は伯桜鵬が「押し倒し」で勝ち越しを決めました。
▽阿武剋に阿炎は阿武剋が「寄り切り」。
▽玉鷲に琴勝峰は玉鷲が「押し出し」で6勝9敗です。
▽若元春に安青錦は若元春が「寄り切り」で9勝6敗です。
▽高安に霧島は高安が「突き落とし」で7勝8敗です。霧島は6勝9敗で終えました。
▽若隆景に隆の勝は隆の勝が「押し出し」で12勝3敗としました。大関昇進に挑戦した若隆景は6勝9敗です。
▽横綱 大の里に横綱 豊昇龍は豊昇龍が「押し出し」で勝って、ともに13勝2敗で優勝決定戦となりました。優勝決定戦では物言いがついたものの、大の里が軍配通り「寄り倒し」で豊昇龍に勝って2場所ぶり5回目の優勝を果たしました。