
京都機械工具株式会社、通称KTC、日本の自動車整備工具に於ける大手メーカーです。
1950年創業のKTCは、トヨタ車の車載工具OEM製造から発展して、今では一般自動車整備工場で広く使用され、F1レーシングチームにも採用されるようになりました。
名前のように京都発祥で、主力工場は京都市南隣の久御山町にあります。
ブログに何度も書いているように、私の趣味は工具集めで、メインのツールセットはKTCです。先週工場見学の機会を得たので紹介しましょう。

工場入口に隣接して「KTCものづくり技術館」があります。
こちらは1Fに現行商品や一般ユーザー向けファンクラブで扱っているグッズの展示するショールームがあります。車一台が入れるガレージサービスピットも併設されていて、実際に自動車工具を使用しての実演や講習を受けることが出来ます。
吹き抜けになった2Fには、創業当時からの資料や当時物の工具が展示されるミュージアムとなっており、研修を受けるレセプションルームがあります。

ありとあらゆる工具がこれでもかと飾ってあり、工具マニアには垂涎の場所と言えるでしょう。

こんな資料を渡されました。大手メーカーだけあって、見学者に対する受け入れ態勢は完備しています。

残念ながら工場内は撮影禁止のため写真はありません。
こちらは「スパナができるまで」というカタログの転載ですが、メガネレンチを製作する現場を見ました。
スパナもメガネレンチも手順はほとんど同じで、丸い棒状の鋼材を約1000℃に熱してから上下分割された製品の型の間に置いて、上から約1000トンの圧力でプレスすると完成品に近い状態で成形されます。
金属製品の作成法は、機械加工で製品を切り出す「切削」や、溶かした金属を型に流して成型する鋳造、刀鍛冶の製法である金属を鍛えて作る鍛造があります。
アルミホイールで、
鋳造品は安価、強度は普通で、やや重い
鍛造品は高価、強度に優れて、やや軽量
という違いがあるのは、ご存知の方も多いでしょう。

中央に立っているタワー状のものが「エアスタンプハンマー」というプレスする機械です。
つまりスパナやメガネレンチは熱して鍛える「熱間鍛造」で作られる訳です。
このエアスタンプハンマ―ですが、1000トンという力はものすごくて、プレスした瞬間の大音響と震度2位の地響きはかなりの迫力です。
また常温のまま行う冷間鍛造もあって、ボックスソケットなどはこの方法で作られます。
熱間鍛造は、大物や複雑形状が作りやすいが、地肌が荒いので仕上げに手間が必要。
冷間鍛造は、熱する工程が不要で地肌仕上がりも良いが、大物には不向きで小物に限る。
という違いがあり、特性を生かした製品加工をしているそうです。
工場には加工後の研磨工程や、表面処理のメッキ工程も見せてもらいましたが、メッキ工程はニッケルメッキとクロムメッキを自動ラインで行っており、クルマのパーツをこんな完備したラインでメッキしてもらえたら、どんなにいいだろうと思いました。
製品を作る際に締付けが必要な工程には、

同社のデジラチェメモルクで作業をしていました。これは締め付けたトルク値をワイヤレスで作業スペース近くのホストコンピューターに転送、コンピューターでデータを管理というシステムです。
これなら締め忘れての商品クレームは、まず起きない訳ですね。
ショールームにはなぜかガチャポンがあって、

KTCオリジナルのピンバッジと、チャームが販売されていました。

最近、「観賞用美術工具」として
漆ラチェットハンドルが受注生産品としてカタログに載っています。
ラチェットハンドルのグリップ部分に漆による京都の伝統工芸を施したものですが、価格もすごくて1本22万円-47万円もします。
実物はガラスケースの中でさすがに触らせてもらえませんでしたが、特に源氏車の白蝶貝を使った螺鈿細工は本当に美しい。(ギターの装飾にもよく使われるけど)
確かに実用にはもったいなくてとても使えません。しかし驚いたことに、漆ラチェットハンドル7種類全てを200万円以上現金でポンと支払って注文した御大尽がいるそうです。世の中にはすごい人がいるものですね。

ものづくり技術館隣には、「匠工房」が最近作られました。こちらではアフターサービスを専門で、工具の修理や校正等の作業を熟練技術者が行っていました。
建物の外見が赤いツールケースと同じデザインというのがいいですね。

最後にお土産をもらいました。

KTCの総合カタログは通常右のA4サイズですが、こちらでは左のB5サイズのカタログをもらいました。また、ソフトスタッビドライバ+-2個セットもありました。これらは既に持っているので、先日のNシリーズミーティング抽選会の景品として提供しました。
KTCは自社生産に極力こだわった製品作りをしています。ちょっと価格が高いが、品質の高さは価格に見合った範囲であることが工場見学をして分かりました。
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ツール | クルマ
Posted at
2015/06/06 23:59:16