
さて、前回のブログで過去に日産自動車に吸収合併されたプリンス自動車工業の例を取り上げて、その開始から終焉、合併後50年間に起きた事を検証してみました。
日産自動車の傘下になりつつある三菱自動車の今後は、いかなる方向になるのか。資本提携を視野に入れたとありますが、三菱は開発能力以上のラインナップを抱えたことが、今回の不正の一因になったと車種削減も発表しました。
日産が三菱に対してどのような行動に出るかは今後の推移を見ないと分かりませんが、あのゴーンさんがドライに大ナタを振るうことは予想できます。
それでOEMを除く三菱の車種は今後どうなるのかを考えてみましょう。

軽乗用車は日産にとっても重要な市場であるので、一旦引込めたekワゴン/デイズとekスペース/デイズルークスは、日産の主導で後継車を開発し割合早い時期に再登場する可能性が大。しかしi-MiEVは技術だけ取って生産打ち切りでしょう。

軽商用車はミニキャブはキャリィ/エブリィのOEMになっており、そのまま継続するでしょう。過去のミニキャブトラックは何度か乗ったことがあるのですが、最低限ハイゼットトラックよりはクルマの出来自体はいいと思いました。
現在軽トラックは、ハイゼット/ピクシス/サンバー3兄弟とキャリィ/スクラム/クリッパー/ミニキャブ4兄弟とアクティの3車種になってしまいました。三菱の軽トラックの復活を期待したいところですが。

ミラージュは設計が新しいこともあってしばらくは存続。しかしおそらくはマーチのOEMに。

2015年に国内販売終了しているギャランフォルテス/ランサーの復活は多分無理。せいぜいシルフィのOEMで名を残すくらい。

RVRは既に次期型が完成していることが発表されていましたが、直後に不正発覚で宙に浮いた状態に。国内投入はあるのでしょうか。

アウトランダーはPHEVのみしばらく存続するのでは。でもエクストレイルに統合でしょう。

トライトン。以前国内でも販売されていたピックアップです。結構スタイリッシュですが、営業用途ならともかくパーソナルカーにトラックを好まない人が多い日本では、再発売するのは難しい。

デリカD5は微妙な位置だが、日産がディーゼルエンジンをどう見るか。2代目エクストレイルであれだけクリーンディーゼルを前面に出したのに3代目であっさり引込めてしまう日産では、ディーゼルエンジンは重視されないでしょう。PHEVをもっと以前にデリカD5に移植していれば、状況は違ったかも知れません。

パジェロ。現在日産のラインナップに欠けているのがラグジュアリーSUV。以前はサファリがあったのですが、2007年に国内販売を止めてしまっています(輸出向けは存続)。ランドクルーザーに対して分が悪過ぎたのか、パトロール(消防車両に多い)から56年の歴史を捨ててしまいました。
しかしランドクルーザーがレクサスLXも加えて市場を独占しているのを、日産が見過ごすことはないでしょう。
既にインフィニティQX85、FX50、EX37というSUVモデルは輸出向けにはあるのですが、EX37(日本ではスカイラインクロスオーバー)では何となくアピール不足です。
そこでパジェロならば、ブランドとしては申し分ないネームバリューを持っているので、日産としてもないがしろにはしないでしょう。
とまあ悲観的要素ばかり。しかし今の日産車のラインナップでは東南アジア重視で国内市場は二の次としか考えていない車種構成です。これがゴーン流ひいてはルノー流の経営戦略なのでしょう。
かつて三菱は、フルラインターボ、フルライン4WD、フルラインGDIと、目新しいトレンドが登場する度に自社の主要車種に装備してフルラインと謳うのが好きでした。
私が以前東京モーターショーで三菱車に触れるたびに「このまま行くと三菱はフルラインOEMになるぞ」と書いていたのが現実になりつつあります。
マツダは5チャンネルディーラー展開に失敗して危機に陥り、1996年にフォードからの支援を受けて、フォードより社長派遣された時点で、マツダはフォードジャパンとなって自社開発はもう不可能という見方が多かったです。それから販売を建て直し車種展開を見直して20年後の今日、そこそこのヒット作に恵まれて、完全といえないまでも自動車メーカーとして復活して来ました。
三菱が業務提携で留めて自主再生の道を切り開いて、昔日の輝きを取り戻すことが出来る可能性がゼロではありません。しかし危機に陥った原因がマツダより重篤なのは確かなので、よりゼロに近いでしょう。
三菱が生き残るには、
ただ1車でも新規開発能力が残っているならば、

私ならパジェロミニの復活に最後の賭けをします。
ジムニーという定番車が君臨していますが、かつて初代パジェロミニは1994年の発売後結構売れて、ジムニーを急遽マイナーチェンジさせるほどでした。その後テリオスキッドも加わったのですがダイハツは意外にも1世代でモデル廃止してしまい、今でも軽クロカンはジムニーの独壇場です。
ジムニーは独占に安堵したのか18年も世代交代していません。仮に4代目ジムニーが登場しても、エネチャージ搭載で多少燃費改善する程度のレベルではないかと思われます。
パジェロミニは2世代既にクルマが存在したのだから、ゼロから開発するよりも費用は安くなるし、更にi-MiEVを応用した電気自動車バージョンも用意すれば、既存のクルマに無い特徴を得られる訳で需要はあるはずです。少し前に次期モデルを開発中というニュースを見たことがあるので、場合によってはかなりの段階まで出来ているのかも知れません。
何だ、救世主が軽自動車?笑わせるなという意見もあるでしょう。しかし、
ホンダが乗用車でヒット作が出ずに四輪車生産から撤退の危機を救ったのが、

初代シビックでした。シビックは軽自動車の初代ライフの技術を拡大応用して、日本初のFWD2ボックス3ドアハッチバック(2ドアもあるが)という新ジャンルを開拓。
前述のマツダの危機を救ったのは、

初代デミオでした。デミオは先に販売されてもさっぱり売れなかった、オートザムレビューのコンポーネンツを利用して作られたミニワゴン車。当時の1.3L-1.5Lクラスにはなかったジャンルです。シビックもデミオも、ニッチ(隙間)マーケット狙いでしたが大いに受けたことは確かです。
私がパジェロミニを推すのはそのような事実に基づく理由があるのです。ワンポイントリリーフであっても多少の財産は残せるはずで、それを元手に他のクルマの立て直しに着手すればよい。特に三菱が得意とするパジェロブラザーズを再構築する。これ、グッドアイデアだと思うのですがね。
そして三菱自動車は防衛省向け車両を長く生産しています。かつてはジープを1953年から、ジープをベースにした73式小型トラックを1973年から納入していましたが、

現在は2代目パジェロをベースにした新73式小型トラック(正式には1/2tトラック)を、1997年から自衛隊に納入しています。
ジープから現在のパジェロベースに切り替わった時には、ATミッションにエアコン装備と一気に近代化しましたが、20年も経過すれば時代遅れになる要素もあるので、数年後には更新時期が来るはずです。
油断していると、トヨタに調達先が変更になるかも知れません。何せトヨタは高機動車(民生用はメガクルーザー)を納入しています。
その時に再度調達先として選ばれるには、しっかりと企業を立て直して、パジェロを継続してSUVのリーダーたるブランドとして維持することが必要です。
もし事態が悪い方向に進んで日産に吸収合併になれば、プリンスの例から、せいぜい生き残れるのはパジェロだけでしょう。
パジェロと73式小型トラックを生産しているのは三菱の生産工場ではなく、

「パジェロ製造」という会社で、私の地元岐阜県坂祝町にあるのです。
坂祝町は人口一万人以下の小さな町で税収の1/3がパジェロ製造からもたらされており、町のHPではトマトと並んでパジェロが町の特産物として紹介されている程です。
以前三菱のリコール隠しの際にパジェロ製造も廃止の危機になりましたが、県や町を挙げての存続運動で回避されました。今回はより状況が厳しいですが、工場廃止では多くの従業員が職を失う訳で何としても回避とならないものでしょうか。
同じ県にあるから肩入れするのではありませんが、パジェロだけは生き残ってほしいというのが私の希望です。
長く書きましたが、不正はいけません。それには保障なりの代償を払うのは当然です。
しかし過去の三菱の実績から、日産の下での再生は最後のチャンスとして与えてもいいでしょう。
個人的にはゼロに近くても三菱の自主更生を期待したいのですが、何かの「神風」(かみかぜ)でも吹かないと無理かなあと思います。