
ワゴンR、本日5世代目が発表、発売になりました。
今回の座っただけの試乗記は、そのワゴンRとスティングレー(こちらは9月19日発売)と行きましょう。
さて、誰しも思うことでしょうが、
「これがフルモデルチェンジ?マイナーチェンジじゃないの?しかも4代目は2008年9月発売で4年しか経っていないし。」
初代は5年1ヶ月、2代目は4年11ヶ月、3代目は5年と、ほぼ5年サイクルのモデルライフだったワゴンRがわずか4年でモデルチェンジをしたのはなぜでしょうか。N BOXが予想を越える売れ行きで、焦ったスズキが主力のワゴンRの登場を速めたという見方が雑誌では多いですが、ニューモデルの開発はそう簡単に早まったりすることはありません。
おそらくミライースが登場して、直接のライバルたるムーヴにイーステクノロジーのエコアイドル搭載車が増え始めると、アイドリングストップで後れを取ったので開発ピッチが上がったのではないでしょうか。
それにしても4代目とほとんど変わらない外見です。細部のデザイン処理は多少異なっているのですが、全体のパーツ配置が変わっていないので余計にそっくりに見えます。見分け方はリヤドア三角窓後端のデザインしか無いと言っても過言ではありません。
スティングレーには、フロントグリルに横2本のLEDイルミネーションとヘッドランプ外端にもLEDイルミネーションが付きました。最近の流行ではありますが、3代目にスティングレーが設定されてからずっとフロントグリルが光るとかっこいいなとと思っていたので、個人的には歓迎です。
室内では室内長が更に伸びて、リヤシートバックはリヤゲートにくっつかんばかりに後退しています。足元が広いのは悪い事ではないですが、軽自動車の度に同じことを言いますが、後方追突に対して大丈夫なのかと。
室内スペースは、4代目とさして変わりません。カタログには自転車を載せている写真がありますが、立てて積めるのは20インチくらいまででそれ以上はちょっと無理そう。タウンサイクルを積むのはパレットの出番です。
インストルメントパネルでは、

今回はワゴンR全車タコメーター付きになりました。スティングレーとも同じデザインで、メーター照明がブルーからエコドライブ時にグリーンに変化するという、フィットハイブリッドと同じ機能も付いています。

プラスチックの質感も、初代、2代目オーナーとしてはとても同じ名前のクルマとは思えないくらいの進化振り。もはやムーブとイーブンな出来ではないかと。
中身はどうかというと、MRワゴンから登場したR06Aエンジンが搭載されてホイールベースも25mm延長。ということはワゴンRはMRワゴンと同じシャーシーになったということで、これはマイナーチェンジではなくフルモデルチェンジであるといえます。マニュアルミッションと4ATは廃されて全車CVTに。
今回の売りは、

エンジンルームのバッテリーとは別に「リチウムイオンバッテリーを搭載し、減速時にオルタネーターを回して発電した電気を充電して、ガソリン使用して発電することを避けることによって燃費向上というメカニズムです。これは先日登場したセレナハイブリッドと似たアイデアといえるでしょう。このリチウムイオンバッテリーは、初代ワゴンRからの専売特許である、助手席シートバックを前に倒すと出現する助手席シートアンダーボックス下のフロアに設置されています。
今回ターボも含め全車アイドリングストップ付きになりましたが、減速時にストップする速度がアルトエコの7km/hから13km/hになってスットプ領域が長くなりました。
また、エアコン使用時にアイドリングストップすると、コンプレッサーは停止で送風のみになります。そして室温の上昇を感知して自動で再始動することはN BOXでも経験することです。ワゴンRはエアコンユニット内に使用時に冷気で凍る蓄冷剤を内蔵して、エアコンが送風になっても蓄冷剤に風を当てることによって冷たい風を出すことが可能なエコクールという機能を搭載しています。これはなかなかのアイデアかと。
また全体に同一グレードで30kg-50kg軽量化されています。現行デミオが100kg近く軽くしてから軽量化というのはエコのトレンドとなってきましたが、軽自動車で50kgもダイエットするのは並大抵のことではありません。これはミライースの影響が大でしょう。ひとつ気になるのはフューエルタンク容量のが30L→27Lの現象です。たかが3Lでも軽量化には間違いなく寄与しますが、航続距離は短くなる訳でどうかなと思います。アルトエコのように詰め物で20Lに減少と、極端なことをしなかったのはマシですが。
今回ワゴンRはFX、FXリミテッド、スティングレーはX、T(ターボ)の4グレードです。少ないですがじきに特別仕様車が乱発されることは間違いありません。
ワゴンRのボディカラーは、

フィズブルーパールメタリック、イノセントピンクメタリック、スぺリアホワイト、パールホワイト、シルキーシルバーメタリック、ブルーイッシュブラックパール3、ルナグレーパール、ミステリアスバイオレットパール。
相変わらず白銀黒の無彩色が多く、ブルーとピンクも新色の割に従来の色と変わり映えしません。
スティングレーのボディカラーは、

パールホワイト、シルキーシルバーメタリック、ブルーイッシュブラックパール3、ルナグレーパール、ミステリアスバイオレットパールに加えて、新色のフェニックスレッドパールが選べます。
ワゴンRの歴史の中でも非常に鮮やかなレッドでスティングレーのイメージカラーのようです。しかし過去にワゴンRでは鮮やかなカラーが長続きした例はありません。
多分このレッドも売れ行きが悪くて1回目か2回目のマイナーチェンジで廃止になり、また白銀黒のみのラインナップに戻ってしまうことを予言しておきましょう。
あと気になるのは、

ワゴンRのイメージキャラクターは、既にTVCMで登場している渡辺謙。これはいいとしても、

スティングレーは道端ジェシカ、富永 愛、山田 優。一流モデルを3人も投入という超豪華キャスティング。
きれいなお姉ちゃんはいいけれど、全部で4人も有名人を連れて来て一体いくらギャラを払ったのだろう?これがクルマの価格に反映されなければよいが、なんて余計な心配をしてしまいます。
総論として、かつての軽自動車ベストセラーだけあって外見が変化に乏しくても内容は大幅に進化ということは分かります。しかしパレットを出したことによって、ワゴンRの性格がセダンに近くなったのはちょっと納得しかねるところがあります。セダン(正確に言えばハッチバックだけど)寄りになっては身内のMRワゴンとの棲み分けが困難になります。
初代ワゴンRが19年前に登場した時には、
「ホンダステップバンの再来だ、売れるかも」
「不細工な恰好、こんなクルマが売れるはずがない」
という見方が半々でした。
私はすぐ実車を見て、
「これは軽自動車に新たなジャンルを築き得るクルマだ、絶対に売れる。ドレスアップにも最適だ、ほしい!何としても買うぞ!」
と2年後ターボ追加と同時に購入して2世代17年間愛用して来ました。
当時の軽自動車はハッチバックか、1BOXが主流で、FWDのミニバンタイプはありませんでした。父のエブリィの経験でスペースは十分でも1BOX系は走行性能が落ちるので、ミニバンタイプであれば子供が小さかった我が家の用途には最適と思っていたのですよ。
4年前に4代目が登場した際は、少し後で試乗もして出来栄えを結構褒めたのですが、5代目になったワゴンRを見ると、スタイルはよくなったし機能も安全装備も隔世の感があるけれど、どうしてもほしいかというとそうは思えなくなりました。初代が持っていた不器用だけどマニア魂をくすぐる未完成感がよかったのですが。
それとリヤドアの後ろにもう1枚クオーターガラスが無いクルマは、個人的にはワゴンとは呼びたくありません。クオーターガラスの存在が広い(実際にそうでなくても)ラゲッジスペース、つまりセダンやハッチバックとは一味違うサムシングエルスがあるんだぞということを表していると思っています。
ワゴンRがワゴンRだったのは3代目まで、4、5代目は背の高いハッチバックと考えた方が正解です。メーカーの都合とはいえ、ちょっと寂しい気はしますがこれも時代の流れでしょう。更にスペーシーなクルマが必要ならばパレットをお求め下さいと、スズキは勧めて来るでしょうけれど。