2020年08月23日
おうちでCFD 第五弾はエビウィング付きのバニング系車両です。
8ナンバーの取得基準が緩かった1990年代には随分と街中で見かけましたが、2001年に8ナンバーの取得基準が厳しくなった事から一気に台数が激減しました。
とはいえ構造変更申請をして車検を通す事自体は不可能でない為、、絶滅危惧種となりつつも僅かに存在はしている様です。
まぁ、元々8ナンバーで気軽に乗っていた層は、最近流行のオラオラ顔ミニバンに移ったんでしょうけどね。
この手の車の特徴の一つが、背後にそびえ立つ巨大なウィング。
エビの尻尾の様な形状なので、通称エビウィングと呼ばれていました。
1960年代のレーシングカー的ですね。(目的は違いますが)
さて、今回も側面写真を基にモデルを作ろうとしたのですが、魅せる様なアングルばかりで側面写真なかなかが見つかりません。
ようやく見つけた写真を基にモデルを作ります。
※この車体は
こちらで販売中でしたが、今はsold outとなっています。
これまでの様に解析を回してみると、途中で気流が上方に飛んでしまいました。
車両後方の矢印が前方に向いていて、この気流に因り前方からの流れが上に飛ばされている様に見えます。
どうやら解析エリアが狭すぎで、後方の壁に当たって跳ね返っている様です。
仕方が無いので解析エリアを後方に2倍、高さ方向も1.3倍に拡大。
解析エリアが2.6倍になった事で計算はさらに遅くなり、これまで5h程度で行っていた事と同レベルの結果を得ようとすると16h程度かかる様になりました。
解析結果がこちら。
エビウィングの先端を通過した気流はかなり後方まで飛ばされ、車体後方には渦というより車体前方側に流れる気流が常に存在している様です。
このエリアで追走すればスリップストリーム効果が得られるのでしょうが、効果を得る為には車間距離を車両1台分+α程度にせねばならないので、実現は難しいですね。
比較としてエビウィングを除去したモデルも解析してみました。
全体傾向は変わりませんが、ウィングが無いので気流の高さが低くなっており、スリップが効く領域は狭くなっています。
解析エリアを広げた事でこんなに結果が変わるなんて事が判ってしまうと、これまでの解析結果も怪しくなってきます。
特に
WiLL Vi編で確認された渦の乱れは、この影響を受けている可能性がありますので、追って確認してみたいと思います。
Posted at 2020/08/23 13:19:00 | |
トラックバック(0) |
おうちでCFD | 日記
2020年07月25日
おうちでCFD 第四弾はWiLL Viです
トヨタがアサヒビールや花王などの異業種企業とコラボレーションした「WiLL」ブランド。
そこから生まれた第一弾モデルとして2000年1月に登場したのがWiLL Vi。
かぼちゃの馬車をモチーフにしたボディ形状が特徴です。
もう20年前の車ですので見かける機会もだいぶ減りましたが、近所にキャンバストップ仕様が1台います。
私にとってはWiLLブランドの商品ってトヨタが出したVi, VS, CYPHAの3車両しか思い浮かびませんが、皆さんはどうでしょうか?
調べてみると、文具メーカのKOKUYOは現在も
WiILLブランドの商品販売を継続している様です。
前回、50型プリウスの解析で判ったファストバックスタイルの空力的優位性。
WiLL Viはその真逆となるクリフカットのリヤウィンドウ形状ですので、差を見るにはうってつけの素材になります。
毎度の事ですが、側面写真を基にモデルを作成します。

デザイン最優先で空力的配慮は皆無と思われがちな車ですが、よく見るとルーフ後端に指でつまんだ様な突起状の造形があります。
余談ですが、こんなメーカオプションもあった様です。
解析結果がこちら。
車両後部に発生する渦がどんどん大きくなっていきます。
空力的には相当に悪そうですし、この車の真後ろを走るのも、ちょっと嫌ですね。
渦の動きを見ると、リヤウインドウが汚れやすそうな感じがします。
オプションのリヤデフレクタはルーフを超えた気流を遠くに飛ばすのではなく、リヤウインドウに沿って流す様になっています。
これがエアカーテンの様になる事で、渦がもたらす汚れの付着を抑える様になっているのだと思われます。
この渦が増大していく原因がクリフカットにあるのか否かを確認する為、前半分は50型プリウスで後ろ半分がWiLL Viというモデルを作ってみましたが、渦の増大は確認できず。
逆バージョンも作ってみましたが、同じく渦の増大は確認できずでした。
単にクリフカットだから という事では無く、車両トータル形状で という事なんでしょうかね?
空力って奥が深いですね・・・・
Posted at 2020/07/25 20:33:54 | |
トラックバック(0) |
おうちでCFD | 日記
2020年07月10日
おうちでCFD 第三弾は50型プリウスです。
1997年12月に「21世紀に間に合いました。」のキャッチコピーを掲げ、世界初「量産ハイブリッド自動車」として誕生したプリウス。
初代は若干ニッチ的な存在でしたが、二代目以降は2009~2012年に販売台数一位となる等、『ハイブリッド車が特別な物ではない』という事をこの世に根付かせる事に成功した立役者です。
ただ、私は同乗も含めて歴代プリウスに一度も乗ったことが無いんですよね。
別に嫌っている訳では無くて単に縁が無いだけですが。
カタログ燃費世界一を達成すべく、ボディ形状も徹底した低抵抗化。
初代はトランクリッドが短い4drでしたが、二代目以降はDピラーを寝かせた5dr。
トヨタは1966年にトヨペットコロナ5ドアセダンを発売以降、歴代モデルで5drを販売していましたが、いずれも販売面は芳しくなし。
車格や販売数が昔のコロナ的存在となったプリウスが5drを纏っているのは、何か縁めいたものを感じてしまいます。
50型は2015年12月に発売された四代目。
もう、発売開始から4年半も経つんですね。
毎度の事ですが、側面写真を基にモデルを作ります。
ルーフアンテナとリヤワイパーは削除しています。
CFD解析結果がこちら
一目で、空気の流れが非常に綺麗であることが判ります。
ボンネット先端で跳ね上げられた気流は、そのままボンネットとフロントウィンドウを駆け上がってルーフ上に到達。
周辺の気流も矢印の向きがほぼ一定で、非常に安定しています。
ルーフを超えた気流はまっすぐに後方に流れてボディ後端で渦を巻きますが、渦の高さは低く、ボディから比較的離れたところに形成されている様に見えます。
リヤウィンドウを寝かせるスタイルは、渦をリヤウインドウから離す効果が有る様です。
まぁ、実際には側面から巻き込む渦もある筈ですが。
以前に解析した
マイクラや
パルサーと比べると、その差は一目瞭然。
車両後方の渦は、マイクラが一番酷いですね
先記の様に、リヤウィンドウを寝かせるのは空力的メリットが有るので、ファストバックスタイルが最近の流行りです。
側面から見ると、4drなのか5drなのか区別出来ません。
トヨタ クラウン (4dr)
メルセデス・ベンツ CLS (4dr)
フォード モンデオ (5dr)
テスラ モデルS (5dr)
という事は、50年近く前にこんなファストバックスタイルのセダンを発売していた日産は、先見の明ありって事???
当時、後方視界の悪さ故にタクシーユーザ等から嫌われ、マイナーチェンジでノッチバックスタイルに変更されましたが、バックモニタの普及や、自動駐車機能なんてものがある現代では、後方視界の悪さは大した問題でなくなってしまいましたね。
あれっ、完全に脱線してる・・・・
Posted at 2020/07/10 20:06:24 | |
トラックバック(0) |
おうちでCFD | 日記
2020年06月19日
おうちでCFD 第二弾はパルサー GTI-Rです。
日産の海外ラリー参戦は1958年ダットサン210でのオーストラリア一周ラリーに始まり、 1970年のサファリラリーでは510ブルーバードでクラス優勝&チーム優勝&総合優勝の三冠を達成。
翌1971年のサファリラリーではダットサン240Z(フェアレディZ)で総合優勝し、連覇を達成。
更に1979~1982年のサファリラリーはA10バイオレットでの四連覇と、特にサファリラリーで好成績を収め、『ラリーの日産』と言われていました。


その後10年程の低迷期を経て 『ラリーの日産』 復権を託されたのが、1900年に発売されたN14パルサー。
当時のWRCはGr.A規定の2Lターボ&4WDというレギュレーションで、これに合致する車両の多くは全長4,500mm前後。
対してパルサーは、最強を誇ったデルタと共に4,000mm以下のコンパクトボディという事で、前評判は非常に高いものでした。
余談ではありますが、私の最初の愛車もN14パルサーでした。
モデル末期のお買い得仕様であるM1-SVの5MTで、型落ち在庫車を格安で購入。
プッシュオープンボックスの代わりにCDプレーヤが装着されていました。
パルサーGTI-Rは1991年に日産がかつて好成績を収めたサファリラリーでWRCの舞台に上がったものの、期待通りの成績を収める事は叶わずに参戦期間わずか2年で撤退。
期待通りの成績とならなかった理由は色々語られていますが、その中の一つが冷却不足問題。
エンジンの真上に鎮座するインタークーラの風抜けが悪く、SS後半でのパワーダウン現象に悩まされました。
苦肉の策としてJRCではドライアイスや氷をインタークーラ上に置いた事も有った様で、インターウォーマだの焼き肉グリルだのと揶揄された程でした。
実は、おうちでCFDをやる時に最初に頭に浮かんだのがこの車でした。
インタークーラが冷却不足となった詳細が、解析で見えてこないか と。
冒頭の雑誌にあった1991年アクロポリス仕様の写真を基にモデルを作成します。
ボンネット上のエアスクープに相当する穴を空け、床下まで通しました。
実車でこれだけの空間が有ったかは怪しいですが、まぁイメージという事で。
CFD解析結果がこちら。
エアスクープから床下までの経路が青色になっており、流体速度が非常に低い事が判ります。
フロントノーズで跳ね上げられた気流はエアスクープ入り口付近でも上向きな流れとなっており、動圧で押し込まれる様な状態にはなっていません。
フロア下も単純に穴を開けただけでは、吸出し効果は見られません。
WRCでは、昼間でもライトポッドを付けていたこの車。
ライトポッドを付ける事で、エアスクープへ風が入りやすくなったとされていますので、先程のモデルからライトポッドを外してみました。
ライトポッド有りと比べてエアスクープ前の気流が少し上向きになっています。
確かにライトポッドが有る方が良さそうですが、大した改善にはなっていない様です。
ライトポッド無しを基にフロア下に段差を付けて吸出し性を改善してみましたが、こちらも大差無しといった感じです。
エアスクープの位置を後方に移し、スバル車の様な形状にしてみました。
が、あろう事か床下からボンネット方向の流れが出来てしまいました。
流体というのは、圧力が高いところから低いところに流れるもの。
何故、これ程までにエアスクープに風が流れないのかというと、エアスクープのあるボンネット上の圧力が、床下の圧力よりも高くないから という事。
こちらの画像は
GT-R NISMO開発の動画よりキャプチャしたもので、車体周りの圧力分布をシミュレートしたものと思われます。
走行風が直接当たるフロントバンパやフロントタイヤ前側、リヤウイングの上側等は赤色で、圧力が高い事を示しています。
一方でボンネットやルーフの上、リヤウイングの下側等は青色で、圧力が低い事を示しています。
やはりボンネット上にエアスクープを設けても空気が入りにくいというのは事実の様で、成立させる為には床下の圧力を如何に下げるかがポイントになりそうです。
市販車であれば様々な策を取る事も出来ると思いますが、ラリーカーの場合はフロア下にアンダーガードがガッチリ有って隙間が狭く、特にサファリの様な泥濘路では僅かな隙間も泥で詰まってしまうでしょうから、床下への排出はかなり難しいであろう事が考えられます。
では、当時WRCに参戦していた他の車はどうなっていたのかというと、前置きインタークーラが多かった様です。
車両最先端にインタークーラを置けば、気流はまっすぐ当たりますし、排出口をボンネット上に設ければ、開口部も大きく取れて泥詰まりの懸念も殆どありません。
セリカは通常のGT-FOURが空冷の上置きだったのを、ホモロゲ車のGT-FOUR RCで水冷の上置きに変更。
クーラを前置きする事で、冷却性とレスポンスの両立を狙っていました。
同じく市販車では空冷の上置きなインプレッサも、後にレギュレーションがGr.AからWRカーになってインタークーラの搭載位置が自由化された際に前置き化していますので、やはりラリーカーとしての最適解は前置きという事なのでしょう。
ということで、パルサーも前置き化してみました。
本当にボンネット内に収まるのか という声は無視。
あくまでもお遊びですから。
これまでの解析結果とは異なり、相応の流速が生じている事が判ります。
取り入れ口となる車両先端部は圧力が高くて排出先となるボンネット上は圧力が低い訳ですから、当然の結果ですね。
パルサーGTI-Rにもセリカの様なホモロゲ車が発売されていたら・・・・
歴史にIFは禁句ですが、そんな事をふと思ってしまいます。
Posted at 2020/06/19 22:17:11 | |
トラックバック(0) |
おうちでCFD | 日記