前回都道府県別の事故件数の分母を色々変えてみて、次回は上位・下位に顔を出す事が多いところの特徴を分析してみようという締めにしましたが、ちょっと気になる事が出てきました。
10万人率での事故件数について、静岡県がワーストの常連である事は事実らしい。
また、コメントで頂いた情報では、群馬県も事故が多いと言われている。
もし、都道府県別の差異理由として『県民性』といったものが大きく介在するのであれば、事故が多い都道府県は過去からずっと多い傾向に有るのではないか?
という事で、推移を調べてみる事にしました。
今回は、日本の統計が閲覧できる政府統計ポータルサイトである
e-Statから情報を取りました。
このサイト内にある
統計ダッシュボードに条件を入力すると、国や民間企業等が提供している主要な統計データを得る事が出来ます。
私も初めて使いましたが、ものすごく便利。
ですが、あまりにも沢山の統計データが有るので、興味を持って見始めたらキリが無いです。
今回取得できた統計データは1975~2018年迄。
5年毎の統計が一部ありますが、それ以外は年毎になります。
まずは事故件数の推移から。
全都道府県ではどれがどれだか判りにくいので、2018年の上位6県 下位6県も作りました。
それぞれ、左軸は都道府県毎で、右軸が全国。
下位6件の左軸は、その他に対して10倍に拡大しています。
1998~2001年に増加の角度が一気に高まり、2006年以降は急降下しています。
この傾向は下位6県でも見られるので、全国的な様です。
この時期は、私も含めた団塊ジュニアと呼ばれる1970~1975年生まれが、事故率が多いとされる25~35歳頃だった時期と重なりますが、関連が有るのでしょうか?
残念ながら、統計資料には事故件数と年齢の相関は有りませんでしたが、人口分布を見る限りでは、そこまでの関連は無さそうに思えます。
単純な件数で評価するのはやはり公平性に欠ける(?)ので、色々な数字で割ってみます。
実数と、全国平均との比率の2種 X 全都道府県, 上位6県, 下位6県の3種 合計6種のグラフを作成しています。
まずは毎度の10万人率で。
上位の推移を見ると、群馬と福岡はずっと上位に、静岡, 香川, 佐賀, 宮崎は2000年頃にかけて徐々に全国平均以下にしていったものの、その後一気に上昇して上位の常連となっています。
一方で下位の推移を見ると、鳥取県は1985年頃までは全国平均を超えていましたが最近は下位の常連に。その他は概ね全国平均以下を維持してきた様です。
次は1万世帯率で。
人口率とは顔ぶれや推移は大差無い様です。
次は自動車1000台率。
全国的に概ね下がり傾向にあるのは良い事ですね。
車の性能や機能の向上、道路環境の改善等によるものかと思われます。
大阪や福岡が鉄壁の上位となっているのは、自動車保有率が低い都市圏を持つからなんでしょう。(2018年では愛知が7位で東京は10位に隠れています)
そこに割って入っているのが、人口率でも同様傾向が見られた静岡, 香川, 宮崎 等。
2000年頃からの急上昇、何か理由が有る筈なんだがなぁ・・・
下位も、人口率とあまり差が無いです。
次は道路1,000km率。
世帯別では44位の東京がここでは2位になる等、大都市圏を持つ都道府県が上位に並ぶようになっています。
というより、東京, 大阪, 神奈川が飛びぬけていて福岡が猛追している感じ。
また、1975年時点で4位だった京都は、2000年頃から徐々に順位を下げて直近では全国平均に近い状況になっています。
最後は12時間走行台キロ率。
『12時間走行台キロ』というのは昼間の交通量を示す指標の様です。
夜間も含めた『24時間走行台キロ』という指標も有るのですが、統計ダッシュボードで拾えなかったので断念。
尚、直近値では24時間値≒12時間値 X 1.3程度の様で、前回のブログで作成した『1憶走行台キロ率』の分母は、24時間値 X 365日になります。
まぁ、概ね似た様な指標と思っていただければ良いかと。
1994年に1位だった神奈川は直近で7位、2000年以降に事故件数が増えた香川, 宮崎, 佐賀も、8, 9, 10位に付けていますので、上位のグラフには顔を出していませんが、顔ぶれは概ね変わりません。
この指標を見ると、2005年以前はあまり変化が無いのに、2015年には急降下しています。
(2010年はデータ無し)
分母となる12時間走行台キロを見ると、ちょっと面白い事に気づきました。
2000年までは右肩上がりだった値が2005年以降は概ね維持となっています。
つまり、走った距離は変わらないのに事故が減ったという事。
あくまでも予測に過ぎませんが、車のアクティブセィフティ向上の影響かと。
シートベルトやエアバック、高剛性ボディ等のパッシブセィフティは、死亡事故は減らせても事故自体を減らす事は出来ません。
対してABS, TCS等のアクティブセィフティは、事故自体を減らすことが可能です。
流行の衝突被害軽減ブレーキ(いわゆる自動ブレーキ)も、同様でしょう。
乗用車のABSが一般化してきたのは2000年前後だった記憶ですし、2013年以降は大型車に対する義務化もされていますから、なんとなく時期が一致する様な。
機能の過信は禁物ですが、一定程度の効果が有る事だけは事実とみて良いかと思います。
都道府県毎の推移もあまり差が無く、順位変動も非常に少ない。
ある意味、その都道府県の恒常的特徴をよく示している指標と言えるかと思います。
北海道が長らくトップだったのは土地が広いが故でしょうし、2015年についにトップに立ったのが愛知というのも流石はトヨタ様の御膝元といったところかと。
※全国値のみ、右軸になります
前回ブログでは『1憶走行台キロ率』が都道府県別の交通事故件数を比較するのに適切な指標としましたが、今回の結果でも類似指標である『12h走行台キロ率』が過去推移含めて適切な様に思います。
これを踏まえたうえで都道府県毎の分類をすると、こんな感じでしょうか。
①ずっと多い
群馬, 埼玉, 千葉, 東京, 神奈川, 静岡, 愛知, 大阪, 福岡
②2000年頃から急上昇
岡山, 香川, 佐賀, 宮崎
③過去から減少傾向
青森, 京都, 兵庫, 奈良, 和歌山, 鳥取, 広島, 徳島, 愛媛, 高知
④ずっと少ない
北海道, 岩手, 秋田, 新潟, 福井, 岐阜, 三重, 滋賀, 島根, 山口
⑤その他(④と大差無いがなんとなく)
宮城, 山形, 福島, 茨城, 栃木, 富山, 石川, 山梨, 長野, 熊本, 大分, 鹿児島, 沖縄
あれっ、なんとなく地域別になっている様な・・・・
②や③の理由が判ると、事故件数の多少にどういった内容が関連しているのかが明らかになるかもしれませんね。
という事で、続く(のか?)