これまでの分析結果から、香川県の交通事故件数の人口10万人率等で上位に位置する事や、2000年頃から急激に増えている事等が確認できています。
この為か、平成25年に公益財団法人国際交通安全学会(IATSS)の研究調査プロジェクト『香川研究-事故発生要因の分析と対策への提言-』が立ち上げられ、幾つかの研究論文が出されていました。
なかなか興味深い内容なので、紹介してみようと思います。
一件目は、交通科学 Vol. 48 No. 1 (2017)に掲載された
『ドライバーの安全意識と地域性-香川県を中心とした比較検討および詳細分析-』からの抜粋。
免許更新者に対するリスクテイキング尺度のアンケートを基に、地域性と講習種別の優位性を数値化した内容になります。
アンケートは全26項目で、『まったくあてはまらない』から『非常にあてはまる』の5件法となっています。
尚、東讃の定義については
こちらを参照下さい。(私も知りませんが、多分合っているんだと思ってます・・)
結果としては、
・高松・中讃・西讃では講習種別との優位性が見られたが、
東讃では優位性があまり見られない
・人口10万人率での事故件数が高め傾向の他県とを比較すると、
香川県は優位性が高い項目が多い
との事から、論文では『高松・中讃・西讃地域ではドライバー間(講習種別間)で安全意識のずれがとくに大きいといえ、これが香川県の特徴であり地域性である』と結んでいます。
・東讃のサンプル数が非常に少ない
・講習種別で"違反"の回答者は心情的に辛めの回答をしてしまって無いか
・"優良"や"一般"にも、たまたま検挙されなかっただけの人が混じっていないか
・自分では慎重な運転だと思っていても、他人から見ればそうでない等、
評価自体をどこまで信用できるのか
等々、突っ込みたい所も多々あるのですが、事故リスクが高くなる様な行動を取るドライバーが多ければ事故が起こる率も高くなるだろう というのはある程度納得できる内容です。
が、香川以外の件では有意差はあまり見られず、これが事故が多いか否かの決め手になっているとも言えません。
下図は人口と歩行者歩行者事故の10万人率をプロットした物ですが、そもそも人口及び事故率がともに高い(右上部)に属する都府県が異常なんじゃないか とも思えます。
上図6都県のデータを基に分析すると、コンビニ数、商業地域面積、建物用地面積との間に相関性が有る となっています。
コンビニとの相関については、コンビニが点在する傾向が高い地方程に影響度が大きいという事なのでしょう。
都市部以外では、コンビニに車で行く事も当たり前ですからね。
商業地域及び建物用地との相関についても、これらの地域≒人がいる場所となりますから、歩行者事故との相関が有るのもある意味当然の事となります。
山岳路等では、人よりも鹿に当たる率の方が高かったりしますし・・・・
このイタルダインフォメーションを参考文献の一つとして作成されたのがこちらの論文です。
2009 年から 2017 年の事故データを基に、人口変化や建物用地との関係を分析しています。
パラメータ値が3以上となっている(相関性が高い)項目を赤枠にしてますが、ざっとまとめるとこんな感じ。
・60歳以上人口数は事故件数との相関があり、特に死亡事故件数との相関性が高い
・建物用地率との相関は、開発時期に因って異なる
60歳人口との相関については、なんとなくイメージと一致します。
事故の当事者側だけでなく被害者側としてもリスクは高いでしょうから。
不思議なのは、60歳人口の絶対数とは相関があるのに、人口の変化率にはマイナス相関となっている事。
割合よりも絶対数という事なんでしょうかね。
面白いのは建物用地の開発時期に因る差。
新しく開発された地域で事故が起こりやすいが、10年程経つと落ち着き、その後再上昇する という事になります。
これを更に分析した結果が以下。
香川県内で事故リスクが高い場所(赤)と低い場所(青)を抽出して比較したもの。
赤は丸亀市や善通寺市等で開発時期が新しい地域が多く、青は高松市周辺で開発時期が古い地域が多いとの事です。
・どちらの地域も事故件数自体は減少しているものの、減少率には差が有る
・増加地域は幹線道路の交差点での事故率が高く、非幹線道路の単路は低い
・現象地域は自転車や二輪車の事故率が高い⇒車の使用率が下がっている
・増加地域は事故発生直前の速度が高めの傾向
この論文では以下の様に纏めています。
リスク減少地域は区画整理が行われているため,交通基盤の整備状況は良好であり,見通しが良く,歩道整備率も高い.一方,リスク増加地域は農地が蚕食的に宅地化しており,交通インフラは宅地化に十分対応しておらず,歩道整備率も低い.このことは生活道路への車両の進入を抑制していると考えられ,非幹線道路での事故の割合の低さとして現れている可能性がある.その一方,幹線道路及びその交差点が周辺の宅地化に十分対応できていないことが,幹線道路交差点の事故割合の高さとなっている可能性が考えられる.
開発初期にはそういった事が事前に想定されずに事故が起き、その対策として後に信号や歩道の整備等が進んで事故が減り・・・なんて事が、開発時期と事故率の関係に影響を及ぼしているのかもしれません。
ただ、昨今はナビの普及もあって幹線道路沿いの生活道路って結構抜け道に利用されたりしてますから、『車両進入の抑制・・・』ってのは少し懐疑的な感もあります。
こちらは以前にメキシコへ出張した際に撮影したtopeと呼ばれる道路上の突起ですが、個人的には生活道路は速度を落とす為にこういった物を設置する事で走りづらくする事も一つの策かと。
メキシコでは非幹線道路や駐車場内等、車の速度を落としたいと思しき至る所にtopeがあり、知らずに突っ込むと車が飛びます。^^;;;
ダラダラとした内容になってしまい、私も上手に纏める事が出来ていませんが、交通事故発生率が都道府県間で異なるのは、以下の様な様々な要素が絡んでの事と言えそうです。
・人の意識の違い(俗に言われる県民性に近いもの)
・交通環境の違い(開発時期や都市計画等)
・人口分布や交通インフラ(都市圏では車の依存度が低い等) 等々・・・
結局のところ、自分自身で出来る事ってのは『交通ルールを守って慎重に運転しましょう』しか無いんですかね。
いくら自分が慎重に運転しても、もらい事故は避けようも有りませんが。