国沢光宏という自動車評論家がいます。
比較的名の知れた自動車評論家であり、日本を代表する自動車評論家であると表現してもいいかもしれません。
そんな彼が
Yahoo!ニュースに著した無保険車の存在を憂う記事中にこんな一節がありました。
このあたりで自賠責保険の制度を大幅に見直し、任意保険と同じような賠償範囲まで広げるべきだろう。こう書くと「出費が大きくなってしまう」といった意見が出てくるかもしれない。
その場合、車両の大きさや動力性能で保険の価格を決めればいい。加害性の低い軽自動車は安価に。今回事故を起こしたような大きくて重い車両なら高価に。
今回の事故、というのは記事を読んでもらってもわかると思いますが、先日北海道で起きた事故です。この事故の加害車両はBMW X5。
さて、ここで問題。
加害性の高い車ってなんだ。
私は日産・フーガに乗っています。全長4,930mm、全幅1,805mm、車重はドライバーである私の体重を含めれば1,800kgを超えます。
では、私の車は、そこら辺を走っている軽自動車より危険なのでしょうか。
かつて、一度だけ軽トラックを運転したことがあります。軽トラは直進安定性能、旋回性能いずれも乗用車の比ではなく、軽トラを降りてフーガに乗ると車ってこんなに運転するのが楽だったんだと感じました。
運転をするのが楽だ、ということは、常に運転中に操作自体だけでなく前方、側方、後方に注意を払うことができることを意味します。
実際、軽トラに乗っている時は普段車を運転している時に比べると注意力は散漫になっていました。
結局、加害性の高い車というのは、運転時の侵襲性が高く(つまり安定性に欠けており)、緊急回避能力が低く、そして重い車だと思います。
では、国沢氏曰くの安全な車、例えばワゴンRとしましょう。
その車と私のフーガ、さてどちらが危険でしょうか。
一般道を走っていると、ろくに車線もキープできずにフラフラ走っているハイト軽を時折見かけます。軽自動車のほとんどは車の縦横比が1:1よりも縦長寄りになっているのですから、安定感が欠けているのは当然です。フラフラする車に乗って運転操作に気を取られていれば、急に飛び出してきた歩行者に気付くのも遅れます。
それに、制動性能。いくら車が重いと言っても、高級車に付いているブレーキやタイヤと、軽自動車に付いているブレーキやタイヤの性能差は歴然であり、子供が飛び出してきた時に早く止まれるのは当然ながら高級車です。
あるいは、旋回性能。いざというとき、ステアリング操作で緊急回避できるかどうかは、車の旋回性能によります。それに、緊急回避できるかどうかの判断を正確にするためには、運転中に余裕がある=安定性の高い車であることが重要です。
今回の事故は、飲酒運転をした上で暴走し、さらに赤信号まで無視した大馬鹿が起こした事故です。
当然、重くて速い車ならば暴走すれば加害性は高くなります。人殺しの道具として見るならば加害性は高いでしょう。
しかし、一般的な人間は人を殺すために運転をしているわけではありません。むやみやたらにアクセルを踏んで、むやみやたらに信号無視をする人間なんて、普通は存在しません。
にもかかわらず、国沢氏は重さだけで車の危険性を判断しています。
ドライバーだけでなくBMWにも責を求めています。
しかし、それは理屈として異常ではないでしょうか。
BMWの走行性能は高いです。一般道を60km/hで走っていれば、ワゴンRよりもBMWの方がよっぽど安全です。もし突然歩行者が飛び出してきた時、ワゴンRよりもBMWの方がその歩行者を轢き殺してしまう可能性は低いです。
(別にワゴンRに恨みがあるわけではありません。気分を害されたら謝ります。)
スポーツタイプの車は危険だと言って、偏見で思考停止をした爺さんが世の中には存在します。そういう人間に限って、自分の乗っている軽乗用車ではろくに安全確認もできなかったりします。
そんな人間と同列な位置にいる自動車評論家が、果たして許されるのでしょうか。
Posted at 2015/06/18 17:25:36 | |
トラックバック(0) |
雑感 | 日記