
先日、何気なくレンタル店で借りてきた一枚のアニメDVD。ずっと前に
「ほしのこえ」というアニメを製作した監督が初めて製作した劇場用長編アニメで、2004年に公開されていたらしいんですけども、私は全然そのことを知らなくて、たまたまレンタル店の棚で「旧作」として7泊8日通常料金でレンタルされているのを見かけたんですが・・・。
ひさしぶりになんともいえない高揚感というか、
「いい作品を見たな~」って思えたので、みなさんにちょいとご紹介いたしますm(_ _)m
「
雲のむこう、約束の場所」という作品なのですが、この作品を作ったのは
新海誠という監督さん。この監督さん、2002年に「ほしのこえ」っていう短編アニメを発表しています。
この「ほしのこえ」という作品、なんとも切ないストーリーのSFアニメだったんですけども、一番のトピックはというと、このアニメ作品が
たったひとりで制作された
ってことなんですよ(汗) 脚本から背景、演出、原画にいたるまでをたった一人で作ってしまったというんです。でもよくあるアマチュアテイストのアニメとは完全に一線を画していて、「このアニメをたった一人で作れるものなのか??」と素直に感嘆せずにはいられない、それほどの映像クオリティと秀逸な演出、ストーリーでして、当時このアニメを見た私はマジに感動したものです。。
そんな新海監督が劇場用に制作した長編アニメがあったなんていうのは今年になるまで全然知りませんでした(滝汗)なんて甘かったんだぁぁ(>_<)
先日、仕事が休みになる前日の夜にようやく時間を作り、この作品を見たんですけども・・・。
甘酸っぱいなぁ~(>_<)
青春やなぁ~(>_<)
切ないなぁ~(>_<)
というかね、見終わったあとになんともいえない感覚に陥る作品でしたね(^^) ストーリー的にはおそらくハッピーエンドなんだと思いますが、そういう高揚感ではなく、なにかこうもの寂しい雰囲気で終わるこの物語。。。これは完全に
オトナのアニメ
ですね。というか、青春時代を経験した、ある程度の年齢に達した世代・・・端的に言うなれば「ガンダム世代」である我々ぐらいのヒトが見て、特別な感傷に浸ることができる映画、っていう感じでしょうか?(^_^;)
私はこの作品の概要とかはまったく知らないままでこのDVDを借りてきて見たんですけども・・・まず時代背景もよく分かりませんし、物語の設定もよく分かりませんでした(^_^;)
あとからwikiで調べてみると、どうやら舞台は
「20世紀後半、実際の史実とは別の歴史を歩んだ日本」ということのようです。
この世界では、北海道は「ユニオン」というロシアがモチーフになっていると思われる国によって占領され、「蝦夷」と名前が変わっています。
ちょうど北朝鮮と韓国のように、日本人は日本と蝦夷というふたつの地域に分断され、国内では「南北統一」に向けた動きがあり、そんな日本はアメリカに後押しをされてユニオンに対してまさに宣戦布告をするかどうか、というような状況にあります。
ユニオンによって北海道が占領されてからすでに25年、この物語の主人公である中学生の少年2人と、彼らが密かに思いを寄せる同級生の少女1人は青森県に住んでいます。
ユニオンは蝦夷の大地に「ユニオンの塔」と呼ばれるとてつもなく高い、何のために建造されたのかが不明の建造物を造っています。
どこまでも天空に向けてそびえているその異様な構造物はやがて風景のなかの「あたりまえのもの」として定着していきます。
いつも、気がつけば・・・いや、気がつかなくてもそこにあたりまえに存在する、「見慣れた風景」となったユニオンの塔・・。あたりまえに存在し、見慣れた存在でありながらも決して近づくことを許されない、遙か孤高の存在でもあるそれ。
その塔を眺めながら、いつの日にか、自分たちが作った飛行機「ヴェラシーラ(白い翼という意味)」で、塔の間近にまで行ってみたい、という夢を持っている少年2人は、アルバイトをしながらお金を貯め、コツコツとその夢を翼を製作していたんです。
そんなとき、憧れの存在である少女との交流が始まり、彼女を自分たちの作った飛行機に乗せ、「あの塔まで連れて行ってあげる」と約束するのです・・。
言うなればSFアニメであり、独特の世界観と考証のしっかりとしたメカデザインやアクションシーンなど、たしかに「いかにもSF」なポイントにも抜かりはなく、見応えは十分なこの作品なのですが、私が感動したのはそういうところではないんです。
このアニメに描かれているのは「過ぎ去りし、遠き青春の日の輝いていた思い出」なんですよ。決して都会ではない、地方の豊かな情景、小さな駅、ディーゼルの列車、駅の待合室、そして通学途中の学生たちの他愛のない会話・・・これらの「日常描写のディテールと空気感」が実に見事なんです。自分にもたしかにあった、かつて経験してきたこと、決して特別なことではなく、あの頃にはそれがあたりまえであった、毎日毎日、ごく普通に繰り返されてきた「日常の風景」がここにはさりげなく描かれています。あの頃、毎日普通に感じていたあの感覚、あの頃の「空気のニオイ」がここには実にリアルに描かれているんです。私が見入ってしまったのはまさしくこの「空気感」に自分の感覚がタイムスリップしたかのように感じたからなんです。
そして、あの「かなえられない約束をした」3年後にその頃のことを夢の中の出来事のように都会で思い出している主人公・・・。
彼らにとって、3人でいっしょに過ごしたあの夏休みは、かけがえのない貴重な体験だったのです。毎日が楽しくて楽しくて、このままずっとこの時間が流れていくのではないかと思えていたあの頃・・・でもそれはやはり終わるときが来てしまう。
そして、それは唐突にやってきたんです、この3人にとって。
二人の少年の前から、ある日忽然と少女は消え、二人の少年はそれぞれ、輝いていた夏の日の思い出への喪失感を胸に刻んだままでそれぞれ別の道を歩み出します。
・・・決して忘れることができない「遠い日の約束」を抱いたままで。。
そして、日本がユニオンに対して宣戦布告をするというその日、3人は再び出会います。遠い日に約束した、「雲のむこう、約束の場所」を目指すために。。。
正直言って、彼ら主人公たちを取り巻く世界のストーリーはかなり唐突な感じがします(^_^;) 北海道が別の国に占領されてたりとか、領空侵犯をして他国の超機密となっている施設に向けて飛行機で飛んでいこうっていうことに対して、主人公はおろか、その周囲の計画を知っている人たちが誰一人として「そんなバカなことはするな」と止めようとしないだけでなく、「壮大な夢」と捉えてその実現を後押しするかのような言動・・。少女も彼らの計画を知ったとき、純粋無垢に「私も行きたい!」と言うんですよね(汗) おいおい、普通そうは言わんやろ、そういう反応はしないでしょ? って思うんですけどね(^_^;) さらには「平行宇宙」っていう、我々のいる世界とは別の世界はいくつも存在していて、その一部がニンゲンの意識にも影響を与えている、とか(^_^;) このへんの設定なんかは「いかにもSF!」なんですけどね(苦笑)
まぁそういう細かいことはこの際、どうでもいいんですわ、私には(笑)
とにかくもこの作品全体に漂う「空気感」に惹かれてしまったわけでして(^^)
SFなのに、妙に物静かでノスタルジックな光景と、それを後押しする見事な演出と音楽。萌えの要素はほとんどありませんが、必見に値する素晴らしいアニメだと思います。
工業製品として次々に生み出される、量産製品としてのアニメーション。スタジオで多くのヒト達の手を経て、完全な分業体制で作り上げられるイマドキのアニメーションとはひと味違う、全体に「個性」というブレない一本の軸がしっかりと通った、新世代のアニメだと思いますよ(^^)
酸いも甘いも通り過ぎてきたオヤジ世代にこそ、見てもらいたい
「静かで感傷的なSFアニメ」です(*^_^*)
p.s.
wikiによるとこの作品、第59回毎日映画コンクールアニメーション映画賞っていうのを受賞しているそうですが、この年、このコンクールにノミネートされていた作品には、あの「ハウルの動く城」もあったんだそうです(^^)
つまり、ハウル以上の評価を得た作品だったともいえるワケなんですよ(^^)
新海誠カントク・・・押井守カントクともまた違ったテイストを持った、これからの時代の新しい感性として、要注目ですね(*^_^*)