ソロモンよ、私は帰ってきた!(核爆)
思わずそう心の中で叫びそうになっておりました。今回の「ラーメン探訪」はそれぐらい、私には意味のあるお店だったのです。
今回訪れたのは、小松島にある「松本」という小さな・・ホントに小さな町のラーメン屋さんなのですが・・・このお店、まぁグルメ系の雑誌などにはまず紹介されることもないであろう、ほんとに地元の人しか知らないようなお店がなぜ私にとってそれほどまでに重要なのかといいますと、このお店のラーメンこそが
私のラーメン道のルーツ
だからなのです(笑)思い起こせば30年ほど前。私の実家は徳島県の小松島市の中でも、新興住宅地というべきエリアにあったために、周囲にはほとんど商店というべきところがなく、自動販売機でジュースを買うためにすら自転車で10分以上は走らないとダメというような状況でした。そんな立地でしたから、近くにラーメン屋さんなどあるわけもなく、自宅にラーメンを出前してくれるお店なんて、たったの一軒しかなかったのです。
はい、その一軒というのが今回ご紹介する「松本」なのです。ほんとに小さい頃にはよく食べたよなぁ~ 夏休みや春休み、そして冬休み。学校がお休みのシーズンや日曜日、たまにラーメンが食べたい! ってことになると、決まって出前で「松本のラーメン」を頼むのです。
待つことしばし、どんぶりにビニールがかけられ、おかもちにはいってやってくる
「ちょっとだけぬるくなって麺がのび気味」なラーメンがなによりのごちそうだったものです(^^)
そんな松本のラーメンを食べて私は育ったのです(笑)そしてさらにそれよりも前、幼稚園に通うよりも前の頃には、母親の実家である南小松島のおばあちゃんの家に遊びに逝ったときに決まって出前を取ったり食べに行ったりしていたラーメン屋さんもありました。
その店は過去に何度か名前はこのBlogの中でも出ていますが
「洞月」といいます。一番正確にいうならば、私のラーメンのルーツはこの洞月のラーメンということになりますが、残念なことにこの洞月はご主人が他界された後、いっときだけは奥様たちが跡を継いで復活していたのですが、やはりそれも長続きせず、今はもうお店を閉めてしまわれました・・。小松島ラーメンを代表する名店「洞月」の味が永遠に失われてしまったことは筆舌に尽くしがたいほどの無念であります(T_T)
さてその洞月なきあと、私の中では両巨頭の片方である松本のラーメンは今も健在なのです。ときおり長期に店を閉めていることもあり「松本よお前もか!」と焦ることはあるのですが、先日前を通りかかったときに、色の抜けまくり使い込まれたのれんが掛かっているのが確認できたので、思い切って立ち寄ってみることにしたのです。
洞月と松本、どちらも小松島にあるラーメン屋さんでして、テイストの傾向はとてもよく似ています。いわゆる「小松島ラーメン」の典型的なスタイルとでもいいましょうか。徳島ラーメンよりもやや白い色をした濁ったスープにストレートでやや太めのたまご麺。これが小松島ラーメンの基本形。
洞月も松本もこの小松島ラーメンの基本形そのままでして、洞月の特徴はトッピングに小松島名産の「いたつけ」が入っていること、そして松本はいたつけの代わりに海苔が入っているのが違いでしたね。スープは洞月のほうがやや濃くて、まろみが強かったように記憶しています。でも基本的なラーメンの味の系統は同じで、よく似た味だったと思います。
(いたつけ、というのは徳島独特の言い方なのかも知れませんが、いわゆる「かまぼこ」のことです)
実は・・・この松本のラーメンを最後に食べたのはおよそ30年ほど前。ルーツであるこのラーメンを離れ、私はあちこちでいろんなラーメンを食べてきたわけですけども、やはり起源、私の中にある
「ラーメンにおけるメートル原器」はこの松本のラーメンであり、洞月のラーメンなのですが・・・なんともう30年以上もそのラーメンを味わっていないんですよ(汗)
なぜ松本のラーメンを今まで食べていないのかというと・・・いろいろな要因はあります。まずひとつ。
存在を忘れてしまっている(ちゅど~んっ!)
これはありますね~(汗)なんせこれだけ徳島ラーメンのお店が増えてしまっていますから、ついつい「松本に久しぶりに逝ってみよう」を思いつかないこと。そして
自分の行動エリアから微妙に外れている
ということ。このお店は私の実家に配達をしてくれていたわけですけども、決して実家の近所にあるというわけではなく、けっこう離れた場所にあるんです。そして今私が住んでいるエリアからも離れており、職場とも反対方向。唯一、実家に用事があって帰るときに選択するルートによっては途中にあるという位置関係なのですが、そういうときっていうのは得てして用事があるから途中でラーメン食べてる時間がない、ということが多いんですね(苦笑) まるっきり離れたところにあるなら「よし!食べに行こう!」と、ドライブ気分でそこに行くことだけを目的とした行動もできるのですが、そんなに離れた場所でもない、というなんとも中途半端な場所にあるというわけなんですね(苦笑)
そして、何より重要な理由は・・・
お店に行って食べたことがない(どっか~んっ!)
ということ。私は小さい頃にほんとに幾度となくこのお店のラーメンを食べているんですけども、それは全て「
出前」というスタイルで自宅で食べていたわけでして、実はこの松本というラーメン屋がどこにあるのか、その正確なロケーションを把握したのは私が大学生になってから(ちゅど~んっ!)それまではどこにあるお店なのかをまったく知らなかったのですよ(核爆)
さらにこのお店、ほんとに地元に人たちだけに知られているのみで、別に有名店でも何でもなく、そして大勢のお客さんでごった返すということもおそらくないのでしょう、イマドキとしては珍しく
「駐車場がゼロ」という小さな店なのです。
なので、かつて何度か前を通ったときに思いつきで立ち寄ろうと思ったこともあったのですが、車を駐める場所がないために断念していたのです(^_^;)
そして気がつけば、私が最後に松本のラーメンを(実家で)食べてからもう30年の歳月が流れてしまった、というわけなのです。。。
今回はいつもよりもさらに前置きが長いですけども(滝汗) こうして今回、意を決して食べに行った懐かしい味をレポートできることになったのです。
ちなみに今回はもちろんですが、GRBろくむし号で逝ったわけでして・・・GRBろくむし号はこのラーメン屋さんの並びにある、店じまいをしたとおぼしき商店のシャッターの真ん前に路駐をさせていただきました(滝汗)ちょっと怖かったですけどね(^_^;)
30年ぶりの邂逅であると同時に、初めてくぐるのれん。懐かしくもあり、と同時に新鮮でもあるという、複雑な心境で店内に入りました。
入ってビックリ! すんごーく狭い店内だったのです。なんと客席は9~10しかありません。4人掛けの質素なテーブルが3つのみ。そしてそのテーブルも店内が狭すぎて4つの椅子が置けず、3脚のみなのです。たしかひとつだけ、4人掛けになっていたテーブルがあったようにも思えるのですが・・・なので、収容人員は「9~10人」という感じでした(^_^;)
店内の客席スペースはおよそ6畳ぐらいでしょうか。お世辞にもキレイとはいいがたい店内には、なんと! あのラーメン屋さんでは定番の
「小さなテレビ」すらありませんっ!(爆)
そしてもちろん、優雅なBGMなど流れているはずもなく、ただ雑然と置かれたテーブルがあるのみ。
狭い店内のひとつのテーブルに、おじさんがただ一人座り、黙々とラーメンを食べておりました。店内のBGMは、そのおじさんのすするラーメンの音のみ、という状況です。
静かだ。。。ほんとに静かだ。。こんな静かなラーメン屋さんをかつて経験したことがありません。そして香ってくるのは、あの懐かしいニオイです。
ワクワクとしながらも、完全にこのお店では「ストレンジャー」として浮いてしまっている私は、そそくさとオーダーをしようと店内のメニュー表をチェック。
ラーメン小 480円
ラーメン大 600円
ラーメン肉入り小 580円
ラーメン肉入り大 700円
ギョーザ 250円
めし 150円
メニューはコレが全て。実に潔いラインアップです。ギョーザがあるだけまだバラエティがあるというべきか(爆)
そして私は、ラーメン大を注文すべく、大将に声をかけようとしたところ・・・
店主がいない
はい、お店の人が誰もいないんですよ(ちゅど~んっ!) 客席に隣接した狭い厨房には洗いかけの食器もそのままに、まるっきり不在なのです(滝汗)
しかたなく、厨房の脇から、その奥にあると思われている居住スペースのほうへと「すいませーん」と声をかけると「はいはい、すんませんっ!」と男性の声がしました(^_^;) やはり奥で休憩していたようです(苦笑)
ラーメン大をオーダーして、さて新聞でも読みながら待ちましょうか、と思ったら・・・
新聞がない(滝汗)あるのは「聖教新聞」と「公明新聞」のみ(ちゅど~んっ!)そしてなぜか「週刊少年サンデー」のバックナンバー(^_^;)
どちらも私のシュミではないので、タバコを吸いながら待つことにしました。
なんせテレビもありません。おじさんはひたすら私の斜め後方の席でラーメンをすすっています。そして時折、表の旧国道を通る車の音が聞こえるのみ。
耳を澄ますと、お店の奥にあると思われる居住スペースとおぼしき方向からは、AMラジオのかすかな音声が流れてきます。
ほんとに静かな午後のひととき。タバコをくゆらせながら待つことしばし。私のはき出すタバコの煙は、換気扇に向かって流れることもなく、私の周囲にまるで朝霧のように漂います。。
なんて静かなひとときなんだろう。
妙に落ち着いた気持ちに包まれていると、おカミさんでしょうか、レインコートを着た女性がお店の勝手口から厨房へと入ってきました。なるほど。おそらくこのお店は現在、このご夫婦が切り盛りをしていて、やはり出前の注文が多いと思われます。狭い店内はおそらく、出前が多いからお店で食べるお客さんはそんなにいないからなのでしょうね。。。もちろんこれはたんなる私の推測ですけども。。
お待たせしました~
と、奥さんが運んできてくれたラーメンは、スープがなみなみとつがれ、徳島弁でいうところの
「まけまけいっぱい」という状態(笑)そうそう、こんなだったよ・・出前でいつも食べていたラーメンも、ビニールでフタをしたラーメンにはスープがほんとにギリギリまで入っていたっけ・・。で、あのビニールを取るときに輪ゴムがはじけて「ぴちっ!!」ってその辺じゅうにスープが飛び散ったもんでした(笑)
コショウをちょびちょびと振って、さっそくいただきます。まずはしっとりとスープを含んだ海苔から。これもたしかに入っていたよな~ なんて思いながら。。。
麺は太めのストレートなタマゴ麺。絶妙な茹で具合です。硬すぎず、柔らかすぎず。しかしスープとの絡み具合はやや心許ない感じ。ややあっさりとした風味は昔食べ慣れた味とはやや違っているような気がします。そこではたと気がついたのですが・・・これもおそらくは出前で持って行ったときにちょうどいい具合に麺にスープが染みこむことを前提にしているのではないかと。少しのび気味になった麺にちょうどいい具合にスープが染みこむように仕組まれているのではないか。。。
それが証拠に、スープをすすってみると・・・嗚呼、そうだ。この味なんだよ(^o^)と、思わず納得してしまう絶妙な味わいがそこにありました。
こってりとしているわけではなく、あっさりとした風味でありながら、しっかりとダシの効いたしっかりとした味わい。決してスープ自体が濃いわけではなく、口当たりはあくまであっさりまろやかでありながらも、奥の部分では見事なまでに調和した芯のある味が主張をする。。。毎日食べても飽きのこないような、素晴らしい風味なのです。
ひとことで言うならば
「完全に角の取れた調和した味」とでも言いましょうか。決して主張しすぎることはなく、麺とスープが互いに互いを補完しながら全体としてひとつの味を作り出している、という趣です。
チャーシューもそうです。最近の有名店にありがちな「トロッと溶けるような食感」ではなく、筋ばった部分を残しつつ、ややぱさつき気味ではありながらも、噛みしめると味がしみ出てくるような、決して硬すぎず、そして柔らかすぎない。そしてメンマは派手さはないものの、噛みしめるとほのかに香る甘み。。。こんなおいしいメンマ、ラーメンに調和したメンマはおいそれとお目にかかれるものではありません。
それぞれのアイテムにはその存在感を主張するモノは何もなく、やや控えめながらも、ラーメン全体として見ると、見事に調和しているのです。長年の営業の果てに必然的に完成されることになった、ひとつの「完成形」としてのラーメンがここにはあります。贅沢な材料を使うわけでもなく、ただ当たり前の食材を当たり前に調理する。そのかたくななまでの「当たり前」さが、その帰結としてひとつの調和の取れたラーメンを生み出している、そうとしか思えません。
どれもがやや控えめでありつつ、最初のひとくち目ではちょっと物足りないぐらいにあっさり目かな? と思うのですが、二口、三口と食べていくウチに徐々に満たされていく感覚。
「少し足りないぐらいがちょうどいいんですよ」と静かに諭されているかのように感じる何かがこのラーメンの中には確かにあります。
「足るを知る」というコトバがありますが、まさしくそれを静かに語りかけてくるかのような素朴な味わいがそこにはありました。
そして、驚くべきコトに食卓にはレンゲもありません。スープを飲むならば、どんぶりを持ち上げてすするべし!という店主からのメッセージだというのは考えすぎでしょうか(^_^;) 店内を見渡してみれば、たしかに厨房の脇にはレンゲはあるのです。でもそれは食卓に出されることはなく、リクエストしたお客さんにだけ渡される「補助的なツール」としてこの店では位置づけられているようです。あくまでスープはどんぶりを持ち上げてすすってくれ、という店主からの無言のメッセージ。それに応えるかのように私も潔くどんぶりを両手でしっかと持ち上げてスープを飲みました(^^)
そう。。この味なんですよ。。懐かしさがこみ上げてきます。出前で食べたスープと違って、十分に熱いスープは一気飲みをするには熱すぎます。少しずつ喉にスープを流し込みながら、私は心の中で呟きました。
何もかもみな懐かしい。。。
と。29万6000光年の旅を終え、眼前に広がる地球の光景を見ながらそう呟いた沖田艦長のように(ちゅど~んっ!) 私の背後に涙をこらえながら敬礼する佐渡先生がいるんじゃないかと思ったぐらいですよ(どっか~んっ!)
日曜日の雨の午後のひととき。BGMもテレビもなく、ひたすらにラーメンと対話する満ち足りたひととき。30年の長き年月を経て再び巡り会った味に感動を覚えつつ、スープを飲み干した私は600円を支払ってお店を後にしました。
初めて訪れた私のルーツの本拠地。何度となくその味を体験しつつ、今までついぞ叶うことのなかった、懐かしい味を生み出すその場所でのラーメン体験に対しての対価としては、600円は安すぎましたよ(爆)
また食べにきたいな、と思ったのですが・・・。
故郷は遠きにありて想ふもの
というコトバの通り、私が次にこの店を訪れるのは、また幾星霜の月日が流れてからなのかも知れません。このラーメンを味わうのは私にとってはやはり特別な体験のような気がします。いつでも立ち寄れるのかも知れませんが、そんな頻繁に食べるのは勿体ない、、そんな気持ちにさせてくれる、私にとってはまさしくオリジン、ルーツであるこのお店「松本」のラーメン。
きっとまたふらっと立ち寄るその日まで、のれんを上げておいて欲しいものです。。