
全国少数派の歴史ファンの皆さまへお届けする、試験とかには”屁”の
役にも立たない「歴史の話」(笑)
前回好評を得たのに気を良くし、今回はその番外編として、江戸時代
の娯楽についてのお話です。
これを読みかけたそこのアナタ。 そうアナタです !
寄ってらっしゃい見てらっしゃい ! いつもと違ってかなり砕けた内容
ですので、歴史アレルギーの人でも充分に楽しめる内容だと思います。
ではさっそく。
江戸時代の後期になりますが、世に
「黄表紙」 なるものが流行りました。
黄表紙とは何かと申しますと、当時大流行した文芸の一種で、絵と文章から成る大人の絵本、
まあ現代に直しますとマンガのようなものといっていいと思います。
ナンセンスギャグとかパロディ、ゆるキャラやダジャレといった遊びの要素がふんだんに盛り込
まれた読み物が、既に200年以上前に存在したことに驚きです。
当時の黄表紙界を代表する江戸の人気作家・
山東京伝の作品からご紹介いたしましょう。
今回は特別にこの方に登場してもらいます。
☟
覚えてますかね~ ?
ヒゲの講談師、田辺一鶴 師匠 ! (笑)
ハリセンのような扇子で机を叩く姿や、その手に汗握る語り口が一世を風靡しましたね。
それではいきます。
山東京伝 1790年の作品で、
「心学早染草(しんがくはやぞめぐさ)」 です。
~あらすじ~
天上界には天帝という偉~い神様がいて、シャボン玉のようなものを吹いているという。
これが生まれたての赤ちゃんの体に入ると「魂」となるのですが、最初はきれいな形の魂 「善玉」
も、飛んでいるうちにゆがんで悪い魂 「悪玉」になることもあるのだそうだ。
さて、日本橋の裕福な商人のところに生まれた赤ちゃんにはどんな魂が入ることやら .....
下の画は、生まれたばかりの赤ちゃん(理太郎)の体に入り込もうとする悪玉。
天帝がその手を捻りあげ、
「ここはワシが押さえる。今のうちに行け !」 とばかりに善玉を赤ちゃん
のもとに向かわせます。 ババンッ(扇子を叩く音)
その後は善玉に守られ順調に成長し、絵に書いたようなマジメな好青年となった理太郎18歳。
仕事に疲れてウトウトとお昼寝中。
体の中の善玉も「たまには」と息抜きに出かけようとした ...
と、その時 !
かつて理太郎の体に入り損ねた悪玉が仲間を連れて善玉を捕まえ、まんまと理太郎の体に
入り込む !
善玉
「む、無念 ...! 」 ババンッ(再び扇子を叩く音)
お昼寝から目覚めた理太郎。
なぜか、「
そうだ、吉原へ行こう」 と思いつき、ふらふら~~っと出掛けてしまう。
あそるべし悪玉パワー。
そして妓楼に上がった理太郎は遊女にメ~ロメロ。
「ボク、こんな楽しいの初めて♪」。
よ~く見ると奥の方で、
すっかり理性を失った理太郎を見て、悪玉たちが喜びのダ~ンス !
アリャアリャ♪ よいよい♪ アリャアリャ♪ よいよい♪
いろいろあったが再び体の中に善玉が帰ってきたので、もとのマジメな好青年に戻った理太郎。
仕事にも励んでいたが、あの時の遊女から送られた手紙に心が揺れる~
と、油断したその隙にまたしても悪玉が !
そして、なんと善玉を斬りつけた~ !!
悪玉
「覚悟しろー」
善玉
「ぐわーっ、む、無念なり~」
血しぶきをあげる善玉~ ! ババン、バンッ(またまた扇子を叩く音)
な、なんという展開だ~
でも、なぜだか善玉を斬ったあとの悪玉のポーズが誇らしげでやたらにかっこいい ! (笑)
その後も理太郎の心を完全に支配した悪玉は増殖を続け、それとともに理太郎も堕落してしまう。
飲む、打つ、買うはもちろん詐欺はするは何はと親不孝の限りを尽くし、ついに勘当されてしまう。
かつての好青年は今いずこ。
とうとう実家の蔵に泥棒に入るまでに落ちぶれる~ バン、ババンッ ! (くどいが扇子叩く音)
それにしても、見よ、このノリノリの悪玉軍団を。(笑)
☟
最終的には盗賊にまで身を落とした理太郎だったが、その後、道理先生という立派な師に出会い、
説教され改心。
勘当も解かれて、それからは親孝行に励んだということです。
めでたし、めでたし。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
とまぁ、こんな話です(笑)
最後が微妙にあっけない気がしますが、まあそれは置いといて(笑)
しかしいいですね~この善玉と悪玉。
このキャラクターは当時も大ウケで、特に喜びのダンスを踊る悪玉は大人気だったそうで、あの
浮世絵の葛飾北斎もこの「悪玉踊り」をこの頃に流行していた踊りの一つとして描いているのだ
そうです。
これが悪玉踊りの解説図。
チリチツ、チリチツ ...♪
う~ん、いまいちよくわかりませんがチョー楽しそう (笑)
この悪玉踊りは歌舞伎にも取り入れられたといいますから、当時の人気ぶりがわかりますね。
因みに現在健康診断等で、善玉コレステロールとか、悪玉コレステロールとか言いますが、実は
これが語源なのだそうです。
最後にこの話を現代風にアレンジしたコントがありますので、ヒマな方はご覧あれ。
200年以上前のギャグが現代に通用するわけですから本当に凄いことだと思います。
演じるのはもちろんドリフです。
以上、歴史の話 番外編でした。
では今回はこれで。 ✌