再びJ・S・バッハネタです。
ケーテンの宮廷楽長時代(1717~1723)バッハは作曲家としての名声も高まり充実
した日々であったが、1720年妻マリア・バルバラを突然失い4人の子供をかかえて途方
に暮れていたに違いない。翌年宮廷ソプラノ歌手のアンナ・マグダレーナと再婚すると
その後29年間アンナ・マグダレーナは良き伴侶として13人の子をもうけるもその多くは
早世したが、先妻の子フリーデマンや息子J・C・バッハを音楽家として世に送りだした。
バッハの才能を尊敬し、家事の傍ら作曲の写譜など夫を手伝い、楽譜の筆致もバッハ
本人と見まごうほどだったそうです。

エリー・アメリンク(ソプラノ), グスタフ・レオンハルト(チェンバロ)
そんな献身的な妻にバッハが送ったのは2巻の音楽帳です。バッハが書き記した曲は
「フランス組曲」など僅かですが、クープランや息子エマヌエルの曲以外は大部分作曲
家がわかっていないアリアや鍵盤曲がアンナ・マグダレーナによって書き残されています。
それはアンナが楽しむため、子どもたちの教育のための言わば、バッハ一家の心温まる
家族の音楽帳です。
バッハのメヌエット(ソ ドレミファドソソ♪)としてお馴染みのト長調とト短調のピアノ曲も
バッハの作ではありません。アンナ・マグダレーナの音楽帳に書き記されていたからです。
作曲はペツォールトですが、BWV anh(アンハング)114と115としてBWV作品番号の追加・
補遺として、バッハの作品目録番号として整理されています。
スペインの古楽系ソプラノ、Nuria Rial の”J・S・バッハ アリア集”は、

ヌリア・リアル(ソプラノ),ブノワ・ローラン(オーボエ),
ユリア・シュレーダー(Vn)/バーゼル室内管弦楽団
アンナ・マグダレーナ・バッハへのオマージュでしょうか。バッハのアリアやコラールと同時代
の作曲家ヨハン・フィリップ・クリーガーのアリア、バッハのヴァイオリン協奏曲ト短調BWV
1056と、ヴァイオリンとオーボエの協奏曲ハ短調BWV1060などが収録されています。
BWV 1056の第2楽章ラルゴは「バッハのアリオーソ」としてもお馴染みの曲です。
ヨハン・フィリップ・クリーガーという作曲家はリコーダーのメヌエットくらいしか知らなかった
が、こんなに物悲しくも美しい曲もあったのか。ヌリア・リアルの歌唱が心に響いてくる。
アンナ・マグダレーナも歌ったのだろうか。
クリーガー:Einsamkeit, du Qual der Hertzen (孤独に寄せて)
そのアンナ・マグダレーナに関連する本が手元にあります。
40年以上前バッハの伝記などの関連書籍を探していた時、買い求めたのがこのアンナ・
マグダレーナの『バッハの思い出』です。バッハ創作の苦悩と喜びとか人間バッハを最愛の
伴侶の目線から書き記された感動本だったが、後年この書は英国のバッハを信奉する
女性作家のストーリーだと知った。ちょっと残念だったが、バッハを知る上で良い本でした。
Posted at 2021/12/29 23:16:57 | |
トラックバック(0) | 日記