メロスの全力検証
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1402/06/news071.html
ちょっと古いが面白いので考えてみた。
私が中学校の教科書で読んだときは、あまりの短さに短縮版だろうと思ってましたが、元々短編だったのですね。
記憶に残っていたのは「川の増水で橋が流されて難儀したところと、山賊と戦ったことで時間をロスして諦めかけたところとラストのマントをくれた少女とその後どうなったのか?付き合いが始まるに違いない!」でした。
改めて全文読んでみようと思ったら、今は買わなくても図書館に行かなくてもネットで
青空文庫のを無料で読めるんですね。http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/1567_14913.html
便利な世の中になったものです。(TPPで著作権が延長されたら青空文庫も影響を受けるわけですが、ミッキーマウス保護法め!)
さて、本当はメロスは最後のスパートでも歩くような速さだったのか?
風のように走ったと書いてあるけど??
中学生の「メロスの全力を検証」を見てみた。
最後のスパートの行程でも時速5.3kmでそんなに速くないとの結論だった。
感想の「『走れメロス』じゃなくて『走れよメロス』のほうが合ってるなと思いました」というオチに繋げるには遅い方が都合が良いし「風のように走った」、「沈む太陽の10倍早く走った」などとにかく速い印象が、実は速くなかったという方がインパクトもある。
中学生の「算数・数学の自由研究」の作品だから素直に評価したいと思います。
少なくとも「血を吐くくらい懸命に命がけで友のために死力を尽くして走ったメロスのイメージは果たして本当なのか?」
と世間一般のイメージに対して疑問を持ち算数で計算してみたというその一点については、将来が楽しみだと。(潰されなければ)
算数・数学だから良いのですが、これが国語の教師からしたら「作者の言いたかったことは、そこじゃない!」とか怒られそうですし^^;
私が国語の教師なら最後のオチの一言「走れよメロス」に対しては、「最後まで諦めないで」+「走れメロス」なんだよ、と言いそうだわ。
「行間を読め!」とか「心情を読め」とかそんなイメージで。
ある程度、経験を積んだ大人でしたら、図の行程表をみてもいくつか指摘が出来そうですな。
ためしに思いつくまま、書いてみますと
出発時は、雨の中を出発し森や野を通り、激流の川を越えて、峠を上っています。
「対岸の樹木の幹にすがりつく事が出来た」とあるので、草木は生えているわけで、当然、足元には濡れた草や落ち葉などで足元は滑りやすくなっています。
道には草や落ち葉がないと考えても土なら雨でぬかるんでいたり、滑りやすくなっている坂道、山道なわけですから、これまた足元は良くないのでこれも体力を奪います。
山登りをする友人に聞いたことがありますが、「山の移動で1kmは、1時間掛かる」のだそうです。
足場の良くないところで、横移動だけでなく上下方向にも移動するわけですから当然ですね。
森をくぐり抜けるときは、当然走れませんから隣村までの平均時速2.7kmは、羊飼いのメロスが余裕をかましてのんびり歩いた結果でも現代人なら付いていけるかどうかも怪しいかもしれない。
この3、4日間の移動と買い物と結婚式で普段よりも心身とも疲れているのも確かです。
激流の川を越えて、峠を上り、山賊と戦い、峠を駆け下り、熱中症になりかけて、倒れこんだ時は疲労困憊だったのですから、寝てしまった時間は1時間で妥当なのか?
眠りのサイクルは90分(レム、ノンレム)なので、60分でなく90分か、180分が妥当ではないか?
水の音で目覚めたとき既に「斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。」とあるので、日没まで3時間(16時~19時)もあるとは読めないでしょう?
赤い夕日が差してから日没までが3時間は長すぎないか?
日没まで1時間前後が妥当ではないのか?
最大限、斜陽の赤い光~日没までを長めに見ても、昔の暮六つという感覚を当てはめて17時~19時の2時間くらいではないだろうか?
最後の16kmを3時間で走るなら確かに平均時速5.3kmですが、倒れてから180分(3時間)後に復活したのなら、残り時間は1時間ですから平均時速16kmで走破しなければなりません。
これはもう、現代のマラソン選手並みの速さです。(リンク先の記事には現代のフルマラソンの一般男子の平均は9km/hと書いてますね)
さすがに時速16kmは難しいと考えるなら、平均時速8kmで2時間走るのはどうか?
これなら、現代のマラソンと比べても遜色なさそうです。
道の状況を考慮しても平均時速8kmなら何とか走れそうです。
前日の大雨で道のところどころに水溜りがあるかも知れません。
そんな道を最後のスパートについては、人を押しのけ、野原を横切り小川を飛び越え、犬を蹴飛ばして走っているのですから、障害物競走みたいなものです。
犬の落し物(UNK)を踏んだら足が滑って転ぶかもしれません。
こんなところを平均時速8kmで駆け抜けるのだって、たいしたものだと思います。
ということで、私が国語の教師なら「『少年よ、メロスをなめるなよ!なんなら一緒に走ってみるか?』とメロスが夢枕に立つかもよ?(笑)」と言いそうです。
ネットで調べて平地4km/h、上り2km/h、下り4km/hと書いてますが、それは現代の話でメロスの通った峠道では当てはまらないかもしれません。
雨で濡れている、ぬかるんだ坂道、落ち葉や前日の大雨で木の枝が落ちていて歩きにくいかもしれないのですから。
私の経験ですが、ビルの避難訓練でエレベーターを使わずに非常階段で24階、36階を上り下りした時のタイムは、ほとんど同じでした。
また、荷物を持っていても持っていなくても同じでした。
荷物を持って非常階段を使ったのは、出張で出かけるときに昼休みに掛かるとエレベーターが昼食にいく人で満員通過したためです。
その時間は、上りも下りも24階分で5分間、36階分で7分半でした。(12階分/2分半ペース)
上りよりも下りる方が速いはずだと思われるでしょうが、安全に昇降するためには安定した足運びでないと足を滑らせて階段を踏み外すなど危険なのです。
また、下りは、上りよりも膝に負担も掛かりますから、長い距離を下りるときには、自然と一定のペースになるのです。
でも避難訓練なので、のんびりではなく、できるだけ急いでる。
上りも早く仕事に復帰したいので、手も足も気合も抜きませんが、始めの4~5階までは速くてもそれより先は一定の速度に落ち着くのです。
なので、「足場の悪い長距離の上り、下りは速度がほとんど変わらないのだよ!少年!疑うなら自分でも経験してみなさい!」と言いたい。
あとは、昔の10里が現代の約40km相当かどうかも怪しい。
国や時代で1里の距離も違ってくるでしょう。
どちらかといえば、時間的な感覚で大人の足で1日に移動できる距離を十里と決めて、一里はその1/10、半分が五里という目安で決めたというのが、しっくり来ます。
実際に一里塚の距離も長いところや短いところもあることからもその方が納得できます。
また、「走れメロス」の作中の「ぶらぶら歩いて二里行き三里行き」も距離というよりは、時間的感覚の「2、3時間ぶらぶら歩いていった」の方がイメージしやすいです。
メロスが現代のような時計を持って移動したわけも無く、主観的な感覚や星空、日時計的なものさしで描写されているのですから余計にそう思います。
なんにせよ、この少年が自分の頭で考えることを表現したということは、すばらしいことだと思います。
ただ、その結果を検証せず、疑いもしないで丸呑みする大人達(記事にした人)はちょっと情けないんじゃないの?と思いますけどね。
「そんなんだから 政治家や地球温暖化サギに簡単に騙されるんだわ。」と思う今日この頃^^;