JAIA

毎年2月の上旬は大磯のJAIA(日本自動車輸入組合)の試乗会と決まっている。完全なる年中行事で、ここに足を運ばないと職業を疑われかねないところすらある。今年も個人枠をもらってエントリー。海外出張でうっかり希望車種を申告するのを忘れ、リクエストが万全とはならなかったのは残念。

それでも、たまにはBMWの基本的なモデルでも……軽い気持ちで頼んでおいた320iクーペは思いの外良好な仕上がり。使い切り感を味わえる2ℓ直4NAエンジンに始まり、右ハンドルに6速マニュアルギアボックスという組み合わせ、ほどよい締め上げのサスペンション……と、気分は完全にライトFRスポーツ。実際にはそんなに小さなクルマではないけれど、乗り味という点では1.6ℓクラスもかくやといった軽快なタッチに終始する。

500の大台を超える価格帯はちっとも安いとは言えないけれど、余裕があってしかも若い頃の気分に戻って時にフルスロットルであのコーナーを攻めてみたい……そういう人には強く薦めたい一台。久しぶりに『FR絶対主義』の気分が盛り上がった。クローズドクーペのS2Kといった感じ? 気になる人は一度試してみてください。

もう一台はニューモデルのアウディA8。日本だけでなく、今世界的に伸びているといわれるプレミアムブランドの成長株のフラッグシップ。さすがにフルサイズのボディは迫力で、このところエグさを極めているスタイリングとともにけっこう無骨な威圧感が備わっているが、乗るとこれが予想に反してジェントル。静かでフラットで力強い。内装の仕立ての良さはメルセデスやBMWにもない現代的なセンスを感じさせるもので、走らせている実感と満足度の高さは余裕があるなら買いかも……と強く思わせる。

ちょっと冷静になって振り返ると、ややもてあまし感があるな……。そもそも価格帯が1000万円超なので、生活実感とかみ合わないところもあるが、無形の走りの質感に関しては非常に優れていると評価しておきたい。

もう一台、これはおまけみたいなものだがポルシェ911カレラを味わった。右ハンドルのPDKは、コンフィグでも絶対に選ばないパターンだが、あらためて手にすると3.6ℓフラット6は、SやGTSやGT3やターボを「本当に要る?」と問い直す力強さと洗練を秘めている。これの右の6MTか、やっぱ。あとは色や装備にお金を使った方がいいね。なんとかしよう。