変えなければ駄目だということは皆分かっていたはずなんです。
ちょっと書き出しがアコードのキャプション風になっていたので、訂正です。
CHANGEはアコードのことをいっているのではありません。
下は、少し古いけれど2006年のアメリカにおけるベストセラー10傑です。
1、2、4位が、フォード、GM、クライスラーのピックアップトラック。
1位のフォードFシリーズとシボレーシルバーラードが突出して多い。日産がタイタンで、トヨタがタンドラで挑みたくなったのも理解できるマーケットで、ビッグスリーの牙城であり聖域でもあるわけです。
1. Ford F-Series 796,039
2. Chevrolet Silverado 636,069
3. Toyota Camry 448,445
4. Dodge Ram 364,177
5. Honda Accord 354,441
6. Honda Civic 316,638
7. Chevrolet Impala 289,868
8. Toyota Corolla 272,327
9. Nissan Altima 232,457
10. Chevrolet Cobalt 211,449
Automotive News Data Center より引用。
(ライト)トラックは、日本では働くクルマとして常に乗用車の下に置かれますが、アメリカではまったくネガティブな存在ではありません。むしろタフで使えるクルマの象徴といった趣さえあります。
本来世界一の農業国であり、カントリーライフの伝統が息づく彼の国ではベッド(荷台)を備えながら、きちんと複数の乗員を乗せるピックアップトラックは、完全に市民権を得ているわけです。
カントリーサイドのみならず、大都市周辺に暮らす人々にとっても、ピックアップトラックは非常に親しみやすくポピュラーな乗り物であるようです。メーカーにとっては、文字通り屋台骨を支えるドル箱であるわけです。
どっちがファーストカーだか分らないくらい、セダンなどとの複数保有が一般化している(路上の印象だけで述べてます。本当のところはよく分からない)。
毎年年初のアニュアルイベントであるNAIAS(北米国際自動車ショー=デトロイトショー)では、毎回北米カーオブザイヤーと同時に、トラックオブザイヤーも発表される。
そこにはミニバンやSUVも含むことができて、日欧の各社も望んでそこにノミネートされたりしているわけです。
わたしが通い出した今世紀初頭のNAIASは、まだトラックとミニバンのドメスティックなショーといった趣が色濃く残っていました。
そこにポストバブルから立ち直り、グローバル化を急ぐ日本メーカーが主戦場としての北米に力を入れるようになり、結果としてNAIASは国際的な彩りを増して行きました。
しかし、結論から言うとアメリカメーカーは基本的に変わらなかった。
ランキング上位の、F-150に代表されるFシリーズ、シボレー・シルバーラード、ダッヂ・ラムなどはライトトラックという名称に違和感を覚えるほどデカい。
これがベストセラーということになると、自ずとクルマのサイズのメルクマール(指標)になる。路上におけるクルマのサイズの基準になります。
ミニバンがミニという「ウッソー」的言葉を使う遠因もこのあたりにあるのかもしれません。わたしは全米50州を隈なく歩いたわけではありませんが、日本では最大級のランクルがレギュラーサイズ。
感覚が麻痺したように感じられるほど路上の景色は、そこに暮らす人々にとっては何の疑念も感じない当然のこととして存在しています。
問題は、あの豊かさがどこからもたらされたのか…という点です。強いドルの力を背景に、世界中から資金をかき集め、その運用で経済を回していた。
実態は、ここ数カ月の惨状にあったのに、お金がお金を生むファイナンスが長い間アメリカの豊かさを演出してきた。そこに世界中が乗っかった。
この20年で日本車はどんどん大きくなりました。世界一の自動車市場であり、トレンドセッターでもあるアメリカに合わせて……というのが合理的な評価でしょう。
欧州勢も同じです。ドイツメーカーがおしなべて大型化していったのは、ヨーロッパがそれを望んだからではない、とわたしは思います。
そこには安全基準FMVSSという、アメリカの特殊性から成立した価値観も影響しています。そして、日本独自といわれる軽自動車も、上級モデルの大型化に引きずられるように大型化しました。
持続可能性を唱えるなら、大急ぎでダウンサイジンクに取り掛かる必要があったし、そのための合理的な道筋を語るべきでした。
わたしがコンパクトFRにこだわる理由は、ダウンサイジング(とダウンパフォーマンス)を実現すると同時に、それによって失われるだろうFUN TO DRIVEをSPEEDからDYNAMIC BEHAVIORへと移行させるのが最善、と考えているからです。
もちろんFR以外の駆動方式の利点を理解した上です。寒冷地での4WDの価値と有用性は当然理解しています。
しかし、本来が合理性ベースで登場した横置きFFをビジネスを目的に高出力化させ、それをさらにタイヤが吸収されないからと4WD化する。この行き方では、アメリカのピックアップトラックを笑えません。
人は本来ambivalentな生き物なので、矛盾を責めることはできませんが、口では持続可能性を問いながら、すでに通用しなくなった20世紀型のクルマの価値観から一歩も離れられていない。そのことに無自覚な語り部がいかに多いことか。
人は何を言っているかではなく、何をしている(きた)か…でしょう? いまになって、いやこんなことは知っていましたはずるい。
CHANGE まず変わらなければならないのは、目先のお金に靡いて迎合しがちなメディアに属する人それぞれ。商業マスコミに、ほんの少し前のアメリカの好況とそれで潤う日本メーカーに苦言を呈するのを見たことがありましたか。
自分なりに考えて、これはおかしい……なんて言うと、何も考えない同業から総反発をくらう。それ自体は仕方のないことだと思っていますが、重要なのはこれから。思考停止に陥ることなく、未来を考えることがわたしらの仕事だと心得ております。
上記の話とはまったく関係なしに、新型ACCORDは、日本車の過去・現在・未来を語る材料として非常に興味深いものがあります。driver(2009年)2-5号をご覧ください。
嗚呼、また長くなっちゃった。すまんです。