過日CATVで題記の番組を観ました。
ナチスが政権奪取後プロパガンダの一環としてメルセデスベンツとアウトウニオンに競わせた国威発揚のためのレーシングカー/レコードブレーカーの物語です。
こちらにその概略がまとめられています。
俄然興味が湧き、過去蒐集した関連書籍を紐解くと、これが実に面白い!
![](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/userstorage/000/067/543/126/4c8d7730ae.jpg?ct=98243e22b4ad)
こちらはCG誌 2009.09
![](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/userstorage/000/067/543/146/2ed5fb04fc.jpg?ct=98d8534e407c)
あまりに興味深かったので独英レコードブレーカーのミニカーを揃えてみました。
前列が番組に登場する車両群、後列が同時期英国のレコードブレーカーです。
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同一スケール(1/43)だと各車のサイズ感を掴めます。
閑話休題
さらに検索していたらこんなものも入手できました。1947年(昭和22年)に印刷された粗末な装丁のレポートです。
題して「1934年から1939年にかけてのドイツ・グランプリ・レーシングカーの開発に関する調査(メルセデスの世界陸上速度記録保持車に関する記述を含む)」
![](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/userstorage/000/067/543/148/343e5c5fae.jpg?ct=0d7ade9504f7)
これはナチス降伏後、連合国占領軍が接収したドイツの最新技術レポートで、米国ではPBレポートとして名高いものです。英国印刷局で印刷されたものが本書BIOSレポートです。
当時PBレポートが我が国の産業界に与えた強烈な衝撃が
生々しく書き記され、その価値は戦後の他のすべての物的賠償を上回る価値があったと述べられています。
PBレポートに関する詳細は
この論文をご一読下さい。
一方こちらは後年
カール・ルドヴィクセンがファクシミリエディションとして再販したものです。もしこれから購入をお考えであればこちらが前掲のオリジナル版よりもはるかに鮮明に写っていますのでお勧めです。
ルドヴィクセンもこのレポートがいかに衝撃的内容であったかを巻頭で述べています。
ところで、このレポートにはかなりの枚数の仕様と図面が掲載されています。中でも興味深かったのはこちら
メルセデスベンツM165の仕様
![](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/userstorage/000/067/543/162/cb01af1bed.jpg?ct=9d661f07ad3b)
なかでもマーキングした箇所に注目
![](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/userstorage/000/067/543/163/51ee2b18fe.jpg?ct=07dc78591a0f)
何と排気バルブステムに水銀が封入されているとのこと! ナトリウム封入バルブは知っていますが水銀は初耳です。
またドラムブレーキに興味を持つ私にとって衝撃的だったのが、ファンブレーキドラムです。
![](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/userstorage/000/067/543/166/cb01838e39.jpg?ct=0c99ca64c542)
ドラムのファンとハブ部がリベット止めされており画像の色からして異種の金属と思われます。仕様を見ると
![](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/userstorage/000/067/543/167/ab16ac78a8.jpg?ct=958305c4c17b)
リング(ドラム)が鋼材でフィンがアルミとあります。粗加工したドラム周りにアルミを鋳造すれば楽なのにと思うのですが、熱膨張率の問題か、あるいはフィンの構造上できなかったのかもしれません。
巻末には各種図面類が折り込みで綴じられています。詳しい方がご覧になれば多くの情報を引き出せるかと思います。識者のコメントいただければ幸甚です。
何とタイヤ断面までも!
もちろんコンチネンタルがグランプリレース/レコードブレーカー用に開発した内容の記事もあります。
最後に、その能力を発揮することなく終わったT80の姿が納められています。とてもクルマには見えない….
![](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/userstorage/000/067/543/177/ba003568be.jpg?ct=aad28b7c5017)
冒頭のTV番組の最後にこのT80はダウンフォースの中心が車両後軸に位置しノーズが浮いてしまうシミュレーション結果が示されていました。もし実走していたら恐ろしい結末を迎えたかもしれません。ローゼマイヤーの様に….
そしてナチスによるポーランド侵攻で陸上最高速度記録達成の夢は儚く終わってしまったのです。
Posted at 2024/01/11 21:58:27 | |
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