
H3ロケット みちびき5号機搭載 打ち上げ失敗 今後の計画に影響
2025年12月22日午前6時07分
(2025年12月22日午後7時14分更新)
宇宙
日本版GPS衛星「みちびき5号機」を搭載したH3ロケット8号機は、22日午前、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられましたが、衛星を予定の軌道に投入できず打ち上げは失敗しました。JAXA=宇宙航空研究開発機構は失敗の原因究明と対策が終わるまで、次の打ち上げは難しいとして今後の計画に影響が出るのは避けられない見通しです。
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【動画】H3ロケット8号機 打ち上げの様子
【JAXA会見 動画(36分1秒)】
【動画】H3ロケット8号機 打ち上げの様子
日本版GPS衛星「みちびき5号機」を載せたH3ロケット8号機は、メインエンジンなどに点火され、22日午前10時51分すぎ、ごう音とともに種子島宇宙センターの発射台を離れました。
しかし、2段目のロケットのエンジンが早期に燃焼を停止するトラブルがあり、衛星を予定の軌道に投入できず打ち上げは失敗しました。
H3ロケットの打ち上げ失敗は、おととし3月の初号機以来、2回目です。
【JAXA会見 動画(36分1秒)】
JAXAは午後2時半から記者会見を開き、山川宏理事長が「期待に応えられず心よりおわび申し上げます」などと述べ、対策本部を設置し、原因究明を進めるとしました。
JAXAによりますと、詳しい原因はわかっておらず、現在、データを解析していて、2段目のエンジンに燃料を供給する水素タンクの圧力が飛行途中で低下し始めていたことが確認されているということです。
ロケットに搭載されていた「みちびき5号機」の状況についてはわかっていないということです。
記者会見したJAXAの有田誠プロジェクトマネージャは「原因を特定して対策を打たない状態、つまり同じ不具合が起こるかもしれない状態で次の打ち上げを行うことはありえないと考えている」と述べました。
政府は来年2月にも「みちびき」の7号機をH3ロケットで打ち上げる計画ですが、失敗の原因究明と対策がいつごろ終わるのか現時点で見通しはたっておらず、今後の打ち上げ計画に影響が出るのは避けられない見通しです。
専門家“失敗のダメージが大きい 原因を究明し次の打ち上げへ”
H3ロケット8号機の打ち上げ失敗について、宇宙工学に詳しい大同大学の澤岡昭名誉学長は「日本の宇宙開発がH3を柱にこれから世界の競争の中に打って出るという時にこうした失敗が起きたのは、非常にダメージが大きい」と述べました。
そして、おととし3月に2段目のエンジンが着火せず、打ち上げが失敗したH3初号機を振り返り「初号機のトラブルの主な原因は電気系だったので、電気系の問題ではないかという気がしたが、決定的な根拠は何もない。これから調査を徹底的にやると思うが、絞り込みには相当時間がかかるのではないか」と述べました。
その上で、今後の打ち上げに影響が出る可能性があると指摘し「原因が分からない限り、次のH3は打ち上げられないと思う。原因を早くつかまえて、そして絶対大丈夫だという体制で次の打ち上げに臨んで欲しい」などと話していました。
「LE-5B-3」2段目のエンジンとは
H3ロケットは2段式のロケットで、燃焼を終えた1段目を切り離したあと、2段目のエンジンに点火して燃焼させます。2段目のエンジンは、「LE-5B-3」と呼ばれ、全長およそ2.8メートル、重さおよそ300キロで、液体水素と液体酸素を燃料に使います。
エンジンは点火と停止を複数回行うことが可能で、今回の打ち上げでは、2回行う計画でした。
JAXA=宇宙航空研究開発機構によりますと、1回目の燃焼ではエンジンの点火と停止が計画通りに行われましたが、2回目の点火を行った際に燃焼が早期に停止したということです。
H3ロケットの2段目のエンジンをめぐっては、2023年3月の初号機の打ち上げの際、エンジンが点火せず、地上からの指令でロケットを爆破する「指令破壊」の信号が送られて打ち上げは失敗しました。
「みちびき」位置を特定する機能を持つ人工衛星
ロケットに搭載されていた「みちびき」は、GPSのような位置を特定する機能を持つ人工衛星で、現在、日本付近の上空で5機運用されていて、スマートフォンなどの位置情報の精度の向上や、電波が通じない場所での緊急地震速報の配信にも役立てられています。
政府は今回、「みちびき5号機」を打ち上げたあと、来年2月にも「みちびき7号機」を打ち上げることで、海外の衛星に依存せずに位置情報を提供できる7機体制を整備する計画で、5号機から7号機の3つの衛星の開発費は、あわせておよそ1000億円だということです。
日本の主力ロケット 最近の打ち上げ失敗
日本の主力ロケットは、ここ数年、打ち上げの失敗などが相次ぎ、JAXA=宇宙航空研究開発機構は対応に追われてきました。
【H3ロケット】
おととし3月の初号機の打ち上げの際、第2段のエンジンが着火せず、地上からの指令でロケットを爆破する「指令破壊」の信号が送られ、打ち上げは失敗しました。およそ280億円をかけて開発され、ロケットに搭載されていた地球観測衛星「だいち3号」などが失われました。
【イプシロン】
固体燃料式の小型ロケット「イプシロン」では、3年前の6号機の打ち上げの際、ロケットの姿勢を制御する装置が正常に作動せず、「指令破壊」が行われて打ち上げは失敗しました。
【イプシロンS】
改良型として開発中の「イプシロンS」では、おととし7月と去年11月の燃焼試験で相次いで爆発が発生し、今後の具体的な打ち上げ時期は示されていません。
Posted at 2025/12/22 20:13:31 | |
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