
イギリス チャールズ国王 きょう戴冠式 多様性重視した式典に
2023年5月6日 5時15分
イギリスのチャールズ国王の戴冠式が6日、首都ロンドンで行われます。新しい君主の即位を祝福する1000年以上続く歴史的な儀式で、若い世代を中心に君主制を疑問視する声も上がるなか、70年前のエリザベス女王の時より簡素で多様性を重視した式典となります。
母親のエリザベス女王の死去に伴って去年9月に即位したチャールズ国王は6日、日本時間の夜7時から、カミラ王妃とともにロンドンのウェストミンスター寺院で戴冠式に臨みます。
式ではチャールズ国王が、イギリスと、元首となっているイギリス連邦の14か国を法に基づき統治することを誓ったあと、イギリス国教会の最高位の聖職者であるカンタベリー大主教の祝福などを受け、王冠が授けられます。
イギリスでは、記録的なインフレによる生活費の高騰や国王の次男・ハリー王子夫妻が王室内で人種差別的な発言をされたと述べたことなどを背景に若い世代を中心に君主制を疑問視する声も上がっていて、先月の世論調査で「君主制を支持する」と回答した人は18歳から24歳では32%と、共和制支持の38%を下回りました。
こうした中、式典の参列者はおよそ2200人とエリザベス女王の時の4分の1近くに絞られたほか、国王夫妻がバッキンガム宮殿とウェストミンスター寺院の間を馬車で行き来するルートも大幅に短縮されていて、経費を抑えるねらいがあるとみられます。
さらに式典にはさまざまな人種やキリスト教以外の宗教の代表も参加し、主要な役割を果たします。
君主制の存在意義が問われる中、簡素で多様性を重視した戴冠式は新たに「イギリスの顔」となったチャールズ国王の変革への決意を内外に示すものとなります。
国王主催レセプション 秋篠宮ご夫妻など出席
イギリスのチャールズ国王の戴冠式を前に、5日、各国の王族や国家元首などを招いた国王主催のレセプションが開かれました。
レセプションは5日午後、ロンドン中心部のバッキンガム宮殿で開かれ、秋篠宮ご夫妻が出席されたほか、アメリカのバイデン大統領の妻、ジル氏、ウクライナのゼレンスキー大統領の妻、オレーナ氏とシュミハリ首相、それに中国の韓正国家副主席らが姿を見せました。
イギリスメディアによりますと、レセプションには、およそ1000人が出席したとみられるということです。
一方、6日の戴冠式には、あわせて2200人以上が参列しますが、公共放送BBCなどイギリスの複数のメディアは、ロシアやベラルーシ、イラン、ミャンマーなどの首脳は招待されていないと伝えています。
ウェストミンスター寺院とは
戴冠式が行われるウェストミンスター寺院は、ロンドン中心部にあるバッキンガム宮殿から1キロほどのところにあるイギリス王室ゆかりの教会です。
これまで伝統的に歴代の国王や女王の戴冠が行われていて、1953年には、エリザベス女王の戴冠式の会場にもなりました。
王室にとって重要な儀式が行われてきた場所で、▼ダイアナ元皇太子妃の葬儀や、▼ウィリアム皇太子の結婚式なども行われました。
去年9月、エリザベス女王の国葬が行われたのもウェストミンスター寺院でした。
寺院には、万有引力の法則を発見した科学者のニュートンや、作家のチャールズ・ディケンズなど、イギリスの国や社会を動かした重要人物が埋葬されていて、イギリスの歴史を語る上で欠かすことのできない建造物です。
ウェストミンスター寺院は高さ30メートルあまりの美しい天井のアーチで知られています。
寺院のホームページによりますと、塔の高さはおよそ70メートル、全体の床面積はおよそ3000平方メートルです。
およそ2000人を収容することができるということです。
寺院は、上空から見ると十字架の形をしていて、戴冠式は十字が交わる寺院の中心部で行われるということです。
招待者・参列者は
チャールズ国王の戴冠式について、イギリス王室は国内外からあわせて2200人以上を招待したと発表しています。
イギリス王室からは、国王の長男のウィリアム皇太子夫妻や、国王の妹のアン王女、弟のエドワード王子などが参列します。
また3年前に王室の公務から退き、現在はアメリカで生活している次男のハリー王子も出席する予定だとイギリス王室が明らかにしています。
一方、妻のメーガン妃は欠席する予定だということです。
ウィリアム皇太子夫妻の長男ジョージ王子(9)は「ページ・オブ・オナー」として少年7人とともに国王夫妻の長いローブのすそを持つ役目を務めます。
スナク首相をはじめ、イギリスの閣僚や国会議員も参列するほか、イギリス王室はおよそ100人の国家元首を含む203か国の代表が参列するとしています。
各国の発表や報道によりますと、▼オランダのウィレム・アレキサンダー国王、▼スウェーデンのグスタフ国王、▼スペイン国王のフェリペ6世などイギリス王室の親類を含む王族の参列が予定されています。
イギリスのメディアは、戴冠式に他国の王を招くことは異例だとして「900年の伝統から離れることになる」などと伝えています。
日本の皇室からは秋篠宮ご夫妻が参列されます。
また、「コモンウエルス」と呼ばれるイギリス連邦の加盟国からは、▼オーストラリアのアルバニージー首相、▼ニュージーランドのヒプキンス首相などが参列する見込みです。
このほか主な外国の首脳としては▼EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長とミシェル大統領、▼フランスのマクロン大統領、▼ポーランドのドゥダ大統領、▼ブラジルのルーラ大統領などが参列する見込みです。
またアメリカからはバイデン大統領の代わりにファースト・レディーのジル・バイデン氏が、中国からはことし就任した韓正国家副主席など、幅広い国から代表が送られる見込みです。
一方、ロイター通信はロシアやベラルーシ、イラン、ミャンマーなどの首脳には招待状を送っていないと伝えています。
さらに戴冠式には、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うロックダウン中、地元の人たちの支援に尽力するなど、慈善事業などで功績があった450人が招かれています。
公共放送BBCによりますと▼ロンドンの家庭に食品を届ける事業を行った70代の夫婦や、▼自宅の庭で3年間、テント暮らしを行ってホスピスへの寄付を呼びかけ、日本円にして1億2000万円あまりを集めた少年が含まれるということです。
戴冠式で授けられる王冠は
チャールズ国王が戴冠式で授けられる王冠は「聖エドワードの王冠」で、イギリス王室の王位を象徴する「レガリア」と呼ばれる宝物のひとつです。
「聖エドワードの王冠」は1661年に作られたもので、伝統的に戴冠式のときのみ着用されてきました。
イギリス王室によりますと、王冠のフレームは純金製で、ルビーやアメジスト、サファイア、ガーネットなどの大きな宝石で飾られ、上部にある十字架と宝珠はキリスト教の世界を象徴しているということです。
高さはおよそ30センチ、重さは2キロほどにもなるということです。
王室の宝物が保管されているロンドン塔に収蔵されていますが、チャールズ国王の戴冠式に向けて、去年12月からサイズの調整などが進められていました。
戴冠式の終わりに、チャールズ国王は伝統にのっとって「聖エドワードの王冠」に換えて「大英帝国王冠」を着用することになっています。
「大英帝国王冠」もイギリス王室の王位を象徴する「レガリア」のひとつで、現在の王冠は1937年に作られたものです。
王室によりますと、王冠はおよそ3000個の宝石で飾られているということで、中央に施された317カラットのダイヤモンドは世界最大の原石「カリナン」から切り出された貴重なものです。
エリザベス女王は、戴冠式のほか、イギリス議会の開会の際などに着用し、女王が亡くなった際には安置されたひつぎにもこの王冠が添えられました。
また、戴冠式でカミラ王妃が着用する冠は、1911年にチャールズ国王の曽祖母にあたるメアリー王妃が着用したものが使われることになっています。
王室によりますと、王妃が既存の冠を使うのは18世紀以降では初めてのことで「持続可能性と効率性の観点から選ばれた」ということです。
また、この冠には「コイヌール」と呼ばれる世界最大級のダイヤモンドが埋め込まれていましたが、19世紀にインドから持ち出されたものだとされ、所有権をめぐって論争にもなっていました。
そのため、今回の戴冠式ではこのダイヤモンドに代わり、生前エリザベス女王が愛用していたダイヤモンドがあしらわれるということです。
戴冠宝器「レガリア」とは
戴冠式では、イギリス王室に伝わる「戴冠宝器」と呼ばれる数々の伝統の宝物が使用されます。
イギリス王室によりますと、「戴冠宝器」は王冠やしゃく、宝珠、剣などあわせて100点以上あり、その中でも王位などを象徴する上で特に重要な意味を持つものは「レガリア」と呼ばれています。
レガリアには、戴冠式でだけ使用される「聖エドワードの王冠」や式の終わりに君主に授けられる「大英帝国王冠」などがあります。
また、70年前にエリザベス女王が戴冠式の終わりに右手に持っていたしゃくや左手に乗せていた宝珠もレガリアです。
このうちしゃくについているひときわ大きなダイヤモンドは、世界最大の原石「カリナン」から切り出された貴重なものです。
このほかにも戴冠式では数多くの「戴冠宝器」が披露されてきましたが、その中には歴史的な背景から所有権などを巡って論争の的になっているものがあります。
王冠に埋め込まれた「コイヌール」と呼ばれる105.6カラットのダイヤモンドは、イギリスが19世紀に現在のインドやパキスタンなどにまたがる地域を併合した際に持ち帰ったものだとされています。
イギリスの複数のメディアによりますと、このダイヤモンドについてインド政府の関係者が「植民地時代のつらい記憶を思い起こさせる」として、戴冠式での使用に懸念を表したということです。
「コイヌール」が埋め込まれた王冠は、今回の戴冠式ではインドなどとの摩擦を避けるため使われない見通しだと伝えられています。