元日本兵・横井庄一さん記念館が閉館 館長の妻美保子さん死去で
毎日新聞 2022/09/03 17:17
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閉館する「横井庄一記念館」=名古屋市中川区で2022年9月3日午後0時52分、兵藤公治撮影
© 毎日新聞 提供
閉館する「横井庄一記念館」=名古屋市中川区で2022年9月3日午後0時52分、兵藤公治撮影
終戦を知らぬままグアム島の山中で28年間生活し、帰国後の第一声「恥ずかしながら帰ってまいりました」が当時の流行語になった元日本兵の故・横井庄一さん(1997年9月、82歳で死去)の名古屋市中川区の自宅にある記念館が3日、閉館した。館長を務めてきた妻美保子さんが5月に94歳で死去したため。この日、2人と親交のあった関係者らが最後の見学に訪れ、故人をしのんだ。
愛知県佐織村(現愛西市)生まれの横井さんは41年、満州(現中国東北部)に出征。44年3月にグアム島に派遣され、終戦を知らずジャングルでの生活を続け、72年2月に帰国した。知人の紹介でお見合いした美保子さんと同年11月に結婚し、「耐乏生活評論家」として全国で講演するなどした。晩年はパーキンソン病を患っていた。
横井さんは病床で美保子さんに記念館建設の夢を託し、美保子さんは2006年6月に記念館を開館。木造2階建ての自宅の1階展示スペースでは、竹や和紙で再現したジャングル洞穴の実物大模型や横井さん手作りの機織り機、横井さんが60歳から始めた陶芸の作品など約70点を展示してきた。
美保子さんは記念館で横井さんの暮らしぶりや平和の大切さを伝えてきたが、新型コロナウイルス禍で京都市の実家に戻った20年4月から休館になっていた。毎日新聞の取材に同年7月「元気になれたらもう一度(名古屋に)帰り、皆様に来ていただきたい」と語っていたが、思いを果たせず亡くなった。
最後の開館日となったこの日、生前の2人と親交のあった語り継ぎ手や親族ら約20人が見学に訪れ、館内の展示品を懐かしそうに鑑賞した。その一人、美保子さんのおいで大阪女学院大教授の幡新大実さん(55)によると、美保子さんが亡くなった後、記念館を残したまま他に譲渡する道も探ったが難航。名古屋市に頼れる人はおらず、閉館を決めたという。幡新さんは「おばは、多くの方が生きて帰ることができなかった戦争を、二度と繰り返さないようにとの思いで、語り続けてきた」と語る。
館内に残る横井さんの陶芸作品など遺品は、グアム島を含め各地の公的機関などに可能な限り寄贈予定。記念館は将来的には更地にし、売却する方針という。館内には横井さんが帰国後に話した肉声テープなども残されており、幡新さんは「今後、研究者仲間と共同研究し、一般の方にも公開したい」と話している。
Posted at 2022/09/03 18:30:16 | |
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