室屋義秀が初代王者 新設「エアレースX」、チーム福島の力結集
2023年10月16日 08時00分
エアレースXで優勝が決まり、両手を突き上げて喜ぶ室屋(右)=15日午後、東京・渋谷
飛行機レースの国際大会「エアレースX」は15日、事前に計測した飛行データを基にリモートで争う決勝トーナメントを行い、日本の室屋義秀(50)=福島市=が初代王者に輝いた。
初開催の今大会には世界トップクラスのエアレースパイロット8選手が出場。一つの都市には集まらず、8~13日にそれぞれの活動拠点でフライトした。
予選を突破した4選手が1対1の準決勝と決勝、3位決定戦に臨んだ。拡張現実(AR)の技術を駆使した「デジタルラウンド」として、機体が東京・渋谷の上空でレースを繰り広げているような映像を制作し、渋谷のパブリックビューイング会場などで公開した。
室屋会心、描いた夢飛行
福島の空から世界の頂に立った。「何とかここまでたどり着くことができた。『チーム福島』の力を結集した結果だ」。新たな試みとして初開催された飛行機レースの国際大会「エアレースX」で、初代王者の称号を手にした日本の室屋義秀(50)=福島市=は喜びをかみしめながら、優勝トロフィーを掲げた。
決勝トーナメントは事前に計測した飛行データを基にリモートで争い、15日に結果が発表された。勝負は1対1。単純なタイムだけでなく、操縦ミスなどによる「ペナルティー」や気象状況を考慮した「ハンディキャップ」を加え、ほぼ同じ条件下で競った。
コンマ1秒のわずかな差が明暗を分ける接戦もあり、室屋は準決勝でファン・ベラルデ(スペイン)に0.145秒差で競り勝つと、決勝ではマルティン・ソンカ(チェコ)に快勝した。
大会では新たな試み「デジタルラウンド」を採用。拡張現実(AR)の技術を駆使し、飛行データを活用して機体が東京・渋谷を舞台にレースを繰り広げているような映像を公開した。渋谷のパブリックビューイング会場では専用ゴーグルを着用したり、アプリをダウンロードしたスマートフォンをかざしてAR映像を楽しんだりする人の姿が見られた。
ただ、室屋が実際にフライトした場所は福島市のEBM航空公園(ふくしまスカイパーク)。目の前にライバルがいない対戦も「変わらない緊張感があった」と振り返り、「福島でみんなの空を使わせてもらってレースができた」と地元への感謝も口にした。
「空のF1」と呼ばれたレッドブル・エアレースが2019年に終了してから4年。選手は活躍の場を失った。室屋は21年に自身が代表を務める航空マーケティング会社「パスファインダー」とトヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」による新チームを発足。22年に開幕予定だった世界選手権に向けて機体の改良を進めたが、新型コロナウイルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻、世界経済の情勢などを理由に中止になり、「精神的ショックが大きく、モチベーション維持が難しかった」とどん底を味わった。
それでも、各地の上空に飛行機のスモークで笑顔のマークを描く活動や次世代のパイロット育成などに前を向いて取り組み、発起人の一人となってエアレースXを創設した。スポーツの新たな可能性を見いだし、来年は4回以上のデジタルラウンドを開催する考えだ。
25年には従来のようにパイロットが一つの都市に集まって競う「リアルラウンド」の再開を目指す。「『来たる日』に備え、また勝てる準備をする」。熱気に包まれた渋谷の会場で、次の挑戦を見据えた。
Posted at 2023/10/16 12:59:04 | |
トラックバック(0) | 日記