
「H3」ロケット2号機 打ち上げ成功 前回の失敗乗り越える
2024年2月17日 18時41分
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日本の新たな主力ロケット「H3」の2号機が17日午前、打ち上げに初めて成功しました。激しさを増す宇宙ビジネスをめぐる国際競争で今後の日本の宇宙開発を担う“切り札”として対抗していくことが期待されます。
目次
JAXA会見 山川宏理事長 “こんなにうれしい日はない”
開発責任者「打ち上げは成功」
目次
JAXA会見 山川宏理事長 “こんなにうれしい日はない”
開発責任者「打ち上げは成功」
専門家「ようやく国際競争の場に立つことができた」
岸田首相「長年にわたる努力に敬意」
SNSでは飛行機から撮影した動画が話題に
17日 9:40ごろ
開発責任者ら 抱き合って喜ぶ
17日 9:40ごろ
プレスセンターでもJAXA職員ら涙流す
17日 9:40ごろ
JAXA「機体が計画どおり目標の軌道に到達した」
17日 9:22
種子島宇宙センターから打ち上げ
初号機打ち上げ失敗 原因は
国際的に激化する宇宙開発競争
今後の打ち上げ計画は
海外の商業衛星の受注も
「アルテミス計画」にも
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「H3」の2号機は17日午前9時22分すぎ、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。
JAXA=宇宙航空研究開発機構によりますと、2号機は補助ロケットや1段目のエンジンを切り離しながら上昇を続け、午前9時40分ごろ、ロケットの2段目のエンジンの燃焼が停止し目標の軌道に到達したということです。
その後、搭載した2つの超小型衛星を切り離して軌道に投入したほか、アルミ製の模擬衛星の分離動作も確認するなど計画どおりに飛行し、打ち上げに初めて成功しました。
「H3」は去年3月に打ち上げた初号機では2段目のエンジンが着火せず打ち上げに失敗していて、JAXAなどはおよそ1年かけて対策を講じ、17日の打ち上げに臨んでいました。
「H3」は、現在運用されているH2Aに代わる新たな主力ロケットで、激しさを増す宇宙ビジネスをめぐる国際競争で今後の日本の宇宙開発を担う“切り札”として対抗していくことが期待されます。
JAXA会見 山川宏理事長 “こんなにうれしい日はない”
JAXAは午後0時半すぎから記者会見を開きました。
会見の冒頭でJAXAの山川宏理事長は「ロケットは計画どおりに飛行し機体を所定の軌道に投入し衛星を分離できたことを確認した」と発表したうえで「H3ロケット試験機1号機の打ち上げ失敗を受け原因究明に真摯(しんし)に向き合い、再発防止に向けて全力を挙げて取り組んできた。本日、打ち上げの結果を報告できたことに安どしている」と述べました。
また「宇宙業界に長らくいるがこんなにうれしい日はなく、こんなにほっとした日はない」としたうえで「H3プロジェクトのスタートから10年にわたって継続的に努力されてきた皆様に本当に感謝している」と述べました。
開発責任者「打ち上げは成功」
開発責任者のJAXA 岡田匡史プロジェクトマネージャは「お待たせしました。H3が産声をあげることができ、ものすごく重い肩の荷が下りた気がします」と笑みを浮かべながら述べました。
記者から今回の打ち上げについて採点すると何点になるかと問われると「満点です」と答えたうえで「H3はまだ打ち上げを2回経験しただけ。これからが勝負なのでしっかりと育てていきたい」と今後の抱負を述べました。
そして「いままで35年ぐらいロケットの仕事をしてきて、大きな節目になるタイミングで成功できてよかった」と話したうえで、次の世代に伝えたいこととして「ロケットの失敗はやってはいけないことです。ただ、失敗があるとエンジニアはものすごく強くなる。この1年で強くなったエンジニアにあとはよろしく頼むぞという思いです」と期待を込めていました。
また、今回の打ち上げが成功したのか問われ「成功しました。成功と失敗の境目は難しいですが、今回の結果からすると成功と報告できると思っています」と述べました。
岡田プロジェクトマネージャは17日夕方、NHKの取材に応じ「まずは『H3』を1人前の大人にしないといけない。いろんなバリエーションの衛星に対応させることなど、世の中がロケットに求めている姿に『H3』をあわせていく素地ができた段階だ」と述べました。
その上で「コストダウンもまだ道半ばだ。部品の調達などで効率化を図るとともに、作り続けることで習熟度を上げ、製造中の不具合を減らすなど全面的にコストダウンを図りたい。一方で、日本のロケットだからという信頼性や価値を売りにして打って出るのが攻め口だと思っている」と述べました。
専門家「ようやく国際競争の場に立つことができた」
宇宙政策に詳しい笹川平和財団の角南篤理事長は「欧米の民間企業に加えて中国、それに、インドの台頭で打ち上げをめぐる国際環境が厳しくなる中で、去年、初号機が失敗し、さらに1年遅れたという状況を考えると、本当に『待ったなし』の状態だったと思う。そういう意味ではようやく日本が国際競争の場に立つことができたという状況だ」と指摘しています。
その上で「去年の各国の打ち上げ実績を見ると、ほぼ半分がアメリカで、打ち上げのコスト面や柔軟性、より顧客のニーズに合ったサービスなど課題がたくさんあると思う。日本の宇宙開発はここ数年、失敗が相次ぎ、世界から大きく遅れてしまったという雰囲気があったが、今回の成功はわれわれが再び自信を持つ機会になった。日本が宇宙開発で世界をどうリードできるかもういちど見つめ直し、官民を挙げて宇宙産業を育てていくことが必要だ」と述べました。
岸田首相「長年にわたる努力に敬意」
岸田総理大臣は旧ツイッターの「X」に「本日、『H3』の2号機の打ち上げが成功した。無人探査機『SLIM』の月面着陸成功に続いて宇宙分野ですばらしい成果が得られたことは大変喜ばしい。関係者の長年にわたる努力に敬意を表し、今後もわが国の基幹ロケットが着実に実績を積み重ねることを期待する」と投稿しました。
宇宙政策を担当する高市科学技術担当大臣は談話を発表し「本日、『H3』の2号機の打ち上げが成功した。わが国の宇宙政策の最重要課題であるロケット打ち上げ能力の抜本的強化に向けた新たな一歩であり、大きな飛躍だ。今後は海外の打ち上げ需要も取り込んだ『H3』の活用がわが国の経済成長につながることも期待している」としています。
盛山文部科学大臣は、文部科学省のホームページで談話を発表し「すべての関係者が諦めることなく、難易度の高い技術にひたすら向き合い、本日の打ち上げまで着実かつ確実に10年にわたる日々を進めてこられたことに、心から敬意を表したいと思う。今後、H3ロケットが、技術を蓄積・成熟させ、わが国の宇宙基本計画の着実な実施に貢献するだけでなく、国内外の多様な打ち上げ需要を担う素晴らしいロケットとなることを期待している」としています。
SNSでは飛行機から撮影した動画が話題に
SNSでは、「H3」の2号機の打ち上げを飛行機の機内から撮影した動画が話題を集めています。
動画には、ロケットが雲を突き抜けて上昇し、青空に向かって飛んでいく様子が映っています。
撮影した20代の女性は、17日朝8時すぎに伊丹空港を出発し、那覇空港へ向かう飛行機に搭乗しました。
飛行中の午前9時20分すぎに機内で「H3ロケットが打ち上げられる」というアナウンスがあったあと、左側の窓からロケットが見えたということです。
ほかの乗客からも歓声があがっていたということで「初めてロケットの打ち上げを見ることができました。すごかったです」と話していました。
Posted at 2024/02/17 18:59:52 | |
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