
トヨタポルテ&スペイド、先月末に発売されたトヨタのコンパクトカーです。
今回の座っただけの試乗記は、8年振りにモデルチェンジした2代目ポルテ、兄弟車として新登場したスペイドと行きましょう。
子育て世代のママさんドライバーをターゲットとして、トヨタ店とトヨペット店で販売されてきたポルテと、昨年生産中止された2代目ラウムの穴を埋めるためにネッツ店と、新規にカローラ店に配属されたスペイド。ノア、アルファードに相当するポルテ、ヴォクシー、ヴェルファイアに相当するスペイドといえば、デザインを違えた双子車とした目的を語るに十分でしょう。
ポルテと言えば左側に巨大なスライドドアを持つ3ドアハッチバックでしたが、

2代目は左側のスライドドアはそのままに、右側にリヤドアが設けられて2+1の4ドアハッチバックになりました。
かつて1+2ドアのCT21SワゴンRで右側リヤドアがなくて、上着を置くのに苦労したり、家族はみな左側から乗るのにひとりだけ右側から乗ることに何となく寂しい気持ちがしていたお父さん(私だ)には朗報です。

左側スライドドアは5通りのスイッチで開閉出来るとあります。その中の後席コントロールスイッチはいわゆる「ウチガー」ですね。しかしそこまでやるならなぜ「ポチガー」を付けないのでしょうか?安全面で問題があるとしても、アウトサイドハンドルを引くにはある程度の力が必要なので、ポチガーのメリットは大きいと思うのですが。

初代ポルテは後ろから見るとかなりボリュームがあって背が高く見えましたが、今回は高さのみ30mmダウンしました。しかしそれでもフロアが300mmと低く、リヤシートがチップアップ可能になったため子供ならば立ったまま着替えることが(N BOXのカタログと似たような構図の写真が有り)可能です。

インパネは助手席前側を深くえぐってあるのが特徴的。グローブボックスはその上側部分、てっぺんが開閉して底の部分に細いスリットがありティッシュボックスを逆さに入れるとスリットを通して下側にティッシュを引き出すことが出来て、しかも中敷が付属していてティッシュボックスの上に車検証等を入れて置けるという芸の細かさ。
内装色はプラム(ブラウン)とフロマージュ(ベージュ)が選べて、フロマージュの場合中間グレードではオレンジ色のアクセントラインが入ります。これは質感の高いプラスチック製でトヨタらしい演出です。
気に入らないのはステアリングホイール。下側が平らになっている36cmX37cmの楕円形。ステアリングホイールとシートの間が窮屈ではないのになぜこんなデザインにするのでしょうか?ステアリングホイールは楕円形だと持つ位置が変化するので私は大嫌い、真円に限ります。
ヴィッツでは止めたのにもかかわらず、こちらはセンターメーターを踏襲。情報は最小限。このクルマにタコメーターはいらないから、これでよろしい。

また、オートエアコンのコントロールパネルは一見合理的に見えて、これは使いにくいレイアウトです。マニュアルエアコンの方が使い易い。
空いた運転席前のスペースには前側にはポストカードホルダー。ここには愛犬や家族の写真でも飾って下さいと。上側にはアッパートレー。こちらには、ディーラーオプションで、

ミラー付アッパートレーリッドが用意されます。朝のラッシュ時にはお化粧の続きをクルマの中でやっている女性をかなり多く見掛けるので、これは受けるアイテムでしょう。

他にもママさんが喜びそうな、各所にフックやポケットが多数。このアンブレラホルダーも便利そうです。車内で傘の置き場は結構困るものですね。

極めつけはこの目盛付左センターピラー。
つまり「はしらーのきーずはおととーしのー」が、クルマの中で出来るという訳です。これまたママさんにも受けそう。

ポルテ&スペイドは、フロントシート形状材質の違いによってG、F、Y、X、Vの5グレード有り、今回ベンチシートのYが設定されました。ただベンチシートにはフロントアームレストが装備されません。クッション中間部には凝った設計のトレーが置かれて一見便利そうですが、アームレストの無いベンチシートではちょっとね、ウオークスルーも出来ないでは魅力半減で私は売れないと思います。
シートはシートバックが高く、肩までシートが支える設計とされているのはとても良い事ですが。

このクルマもアクアのように、ナノイーパッケージ、スーパーUVカットパッケージ、スマートエントリーパッケージ、ドレスアップパッケージ、HIDパッケージ、ナビレディパッケージ6つのセレクトパッケージが選べます。
ドレスアップパッケージはアルミホイール、各部にメッキ加飾に、メータにシルバーの加飾が加わってスピードメーターのデザインもプラムとフロマージュの内装色ごとに変化を付けるという徹底ぶり。

ボディカラーは、ホワイトパールクリスタルシャイン、シルバーメタリック、ブラックマイカ、スパーレッドV、ダークブラウンマイカメタリック、ライトブルーマイカメタリックの6色が共通カラー。
ポルテには、クリームベージュ(最近珍しいソリッドのベージュ)、エアグリーンパールクリスタルシャイン(イメージカラーの薄緑色)が専用色。
スペイドには、シトラスマイカメタリック(イメージカラーのきつめの黄緑色)、ダークバイオレットマイカメタリック(ヴォクシーやヴェルファイアを思わせる濃い紫色)が専用色。
最下位グレードのVにも、イメージカラーのエアグリーンパールクリスタルシャインとシトラスマイカメタリックがが選択可能です。Vはホイールカバー無しのスチールホイールというビジネス用途グレード。普通ホワイトかシルバーくらいしか選べないのに、なぜイメージカラーが選べるのか?商品企画の謎です。
ここまでエンジンやサスペンションに全く触れてませんが、このクルマにはその必要はないような気がします(笑)
さて総論ですが、子育て世代のママさんの意見を徹底的にリサーチして作られたクルマだけに実にいたれりつくせり。ここまで使い勝手を追求したクルマはそうはないでしょう。
しかしクルマ先進国のヨーロッパとアメリカのメーカーには、このようなコンセプトのクルマはなぜか登場しません。
そう考えるといかにも日本的なクルマと言えるでしょう。これを最高のもてなしと見るか、大きなお世話と見るかによって評価は180°変わることになります。
例えば、目盛り付左センターピラーで身長を側っていた子供が大きくなっても、
「ああ、そんなこともあったかね?」おしまいでしょう。
便利なのは悪い事ではありませんが、これではただの白物家電と同じでクルマとしての印象は余りに稀薄。子供たちのクルマ離れに拍車をかける危険な存在になりかねません。
私としては、いくらスペイドを多少精悍っぽくデザインしたからと言って、ここまでやられるとあざとい感じがします。基本的に天邪鬼なので、素直にはい、そうですかと納得出来ません。
うちは子育てが終わりつつあることもありますが、こんな「エンジン付き乳母車」を自ら好んで買おうなんて気には到底なりません。
子育て世代でも、もう少しましなクルマを選択する余地はあるはず。従ってベストチョイスは無し。買うのは自由ですが、知らないうちにトヨタの術中にはまってしまっていることもお忘れなく。