
C-HR、一昨年東京モーターショーでプロトタイプが公開され、昨年12月市販されたトヨタのSUVです。
ちょっと時間が経過しましたが、久しぶりの座っただけのインプレッションはこのC-HRと行きましょう。
トヨタとしては全くの新規車種と言っているようですが、実質的には11年間も作られた3代目RAV4(輸出仕様には4代目が存在するが国内には未投入)と、9年も作られた(後半はほぼ放置状態だった)イストの代わりとなるクルマでしょう。
RAV4、CR-V/HR-Vが作って来たコンパクトSUV市場が、各車の大型化やニューモデル投入の遅れでじり貧になっていたのを近年活性化したのは、大胆なデザインのジューク、フィット譲りのハイブリッドも用意したヴェゼル、ターボディーゼルのみで推してきたCX-3でした。
そこに満を持して投入するのが、プリウス譲りの1.8Lハイブリッドの2WDとオーリス譲りの1.2Lダウンサイジングターボの4WDという、エンジン毎に駆動方式を分けてそれぞれに廉価版のS、豪華版のGというわずか4グレードのC-HRです。
まずスタイルですが、ジュークほどアバンギャルドではなく、CX-3ほど保守的でなく、ヴェゼルより思い切りのよいデザインと、ライバルでは一番大きいボディサイズが特徴です。もちろんトヨタが後出しジャンケンをするのだから凌駕して当然ではあります。

ちょっと気になるのが、とても高い位置にあるリヤドアアウトサイドハンドルです。ハンドルを目立たなくすることで、リヤドアの存在を消して2ドアのように見せるテクニックです。
確かにスタイリッシュだし、ジュークやヴェゼルのように(N-BOX/もそうだ)縦向きではなくて、横向きにして子供がぶら下がるような開け方をしても大丈夫な強度を持たせてあるそうですが、1320mmと高い位置にあっては小さい子供は手が届いても引いて開けるのは難しいです。

インテリアでは適度にモダンなインストルメントパネルはいいと思います。ただセンターコンソールのピアノブラック加飾(展示車はハイブリッドG)は面積が広いだけに手垢やほこりが目立ちそうです。プラスチックの質感は平均的トヨタレベルで感動するほど高くありません。すぐ上にいるハリアーとの差別化のためわざとやっているのかも知れませんが
全高が1550mmとジューク、ヴェゼルより低く(CX-3とは同じ)、FWDベースの割にセンタートンネルが高いのでフロントシートに座ると圧迫感は感じないが広々でもない程度で、視界も前左右は問題ありません。
しかしリヤシートは頭上はギリギリ、足元もあまり余裕がありません。外から予想できるように視界は最悪で、更に傾斜角度の強いリヤゲートと、ブラックのルーフライニングが追い打ちをかけて穴倉に閉じ込められた感は最高です。リヤシートの乗員のことを考えて作られたクルマではないことが、よく分かります。
インテリアにはあちこちに菱形の模様があって、よく見ればステアリングスイッチ類も菱形。開発時のコンセプトの「セクシー・ダイヤモンド」からダイヤモンドのモチーフとして菱形があちこちに取り入れられているそうです。機能的意味があるのでもないですが、スペシャルティを演出するお遊びです。こんな余裕が許されるのはトヨタならではでしょうね。
ラゲッジスペースはリヤシートを倒せばそこそこです。でもヴェゼルはセンタータンクレイアウト、ホンダ得意の低床設計の強みがあるので荷物を積むならヴェゼルに軍配が上がります。
試乗していないので走りについてはどうこう言えませんが、最近50プリウスにチョイ乗りしたところ、30プリウスよりも走りの質感が上がっているのが短時間でも何となく感じました。リヤサスペンションを固定軸のトーションビームから、独立懸架のダブルウイッシュボーンに改めた、新型フロアパネル(TNGA、トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を採用した結果がこれなら、同系のC-HRもサスペンションには期待できるかもと思います。

ボディカラーは、ホワイトパールクリスタルシャイン(070)、メタルストリームメタリック(1K0)、ブラックマイカ(209)、センシャルレッドマイカ(3T3)、ダークブラウンマイカメタリック(4U3)、イエロー(5A3)、ラディアントグリーンメタリック(6W9)、ブルーメタリック(8T7)の8色。
プリウスに使われているレッドマイカメタリック(3R3)は光が当たるとオレンジっぽい輝きですが、センシャルレッドマイカは光が当たると紫っぽい輝きです。
イエローやラディアントグリーンメタリックもいいけれど、個人的にはオリーブ色のカーキ(180系カリーナEDのイメージカラーだった、ライトカーキグラファイトマイカメタリック(6K7))などがこのクルマに似合うのではないかと思います。
ワイドバリエーションが得意なトヨタにしてはえらくシンプルな車種構成ですが、今後ハイブリッド4WDやお買い得装備の特別仕様車が追加されるのではないでしょうか。
総論としてはこれは現代に甦ったセリカであると思います。もちろんクーペとSUVを同列にするのではないですが、セリカはカリーナ/コロナ、C-HRはプリウスという量産車のコンポーネンツを生かしたスペシャルティカーという面とか、リヤシートは+2的でフロントシート優先や狭いグラスエリアでパーソナル感を強めたりとか、狭過ぎず広過ぎない程ほどのラゲッジスペース(セリカは同種のクルマではいち早くリヤゲートを持つリフトバックを追加したり、FWD化されてからはクラス随一のラゲッジスペースを持っていた)とか、共通点が多く見られます。
上述のように、このクルマは小さい子供がいるファミリーカーとして使うに適しているとは思えません。独身の若者と言いたいが、コンパクトSUVにしては高めの価格からして若者がこぞって買うこともなさそうです。となると子供に手が掛からなくなったシニア層ということになるのでしょうか。
シニア層というと私はその範疇に入ります。しかし個人的には、ヴェゼルでも書きましたが、パーソナルカーとはいえどもこんな斜め後方視界の悪いクルマは好きになれません。最近のクルマはコストダウンのためか、重量増を嫌ってか、ガラス面積が狭くなりつつあります。しかしN-BOXのような視界の良さは、ドライブ時の精神的余裕に繋がると私は昔から思っています。
それにしても発売後すぐに、評論家等が口を揃えて「これは売れる」というのは極めて珍しい話です。私も値付けが高いことを除けばそこそこ売れるだろうと思います。でももう少し小さいサイズで、初代RAV4クラスのライトクロカンがあってもいいと思います。ダイハツと共同開発でラッシュ/ビーゴの後継車は出さないのでしょうかね。
Posted at 2017/01/08 22:20:37 | |
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