2008年11月28日
子供たちと過ごした、あの夏の日々。
日本に帰ってきてからも、事あるごとに子供たちの笑顔と海を思い出します。
自分の行動を、あの夏の日々につなげて考えるようになりました。
感じる大きな責任。
海も空もルアの国とつながっています。
僕が援助をしているルア。
彼女の様子が手紙で送られてきます。
とても喜んで学校に通っているとのこと。
友達とも仲良くしている様子。
ひと安心。
ある日、ルアの写真が送られてきました。
初めまして、ルア。
可愛い女の子です。
一枚の写真。
夕方の光だと思います。
彼女の後ろには一部壁のない一間の家が写っています。
きりっとした大きな目。
瞳に強い意志を感じます。
頭に張りついたように見える濡れた髪。
体の横でピシっと伸びた腕。
花柄のシャツ。
折り目のついた白いハーフパンツ。
素足にサンダル。
ふだん写真を撮る機会はないのだと思います。
ちょっと、、こわばった表情。
ムリに少し笑おうとしているように見えます。
「笑って」と声をかけているスタッフの声が聞こえてきそう、、
彼女の隣には弟がいます。
こちらは、、子供らしくクシャッと笑っています。
きっと、イタズラ小僧です。
こんにちは、ルア、、、
見ているうちに気がつきました。
スタッフに連絡をとってみます。
やはり、そう、、、
「日本のお兄さんに送る写真を撮るよ」と言ったら、なかなか出てこなかったそうです。
白いハーフパンツは普段ははかないで保管してあったのだと思います。
折り目のついたハーフパンツ。
持っている数少ないシャツの中からあれこれと悩み、髪を濡らして整えて、、、
日が暮れてきているのに時間をかけて精一杯のおしゃれ。
女の子だもんね。。
夕方の光、、
きりっとした大きな目。
濡らして整えられた髪。
体の横でピシっと伸びた腕。
花柄のシャツ。
折り目のついた白いハーフパンツ。
緊張しながらも笑おうとしているルア、、、
…見ているうちにウルウル、、
ルアの心の中にある精一杯の気持ち。
もしも、、
あの夏、ルアの国を自分の足で歩かなかったら、、、
写真を見ても僕は何も分からなかったと思います。
ルアの心のなかの気持ちに気づいてあげられる大人にしてくれたのは、あの夏の日々を一緒に過ごしてくれた子供たちだと思っています。
子供たちのおかげ。
ありがとう。
助けて助けられて、、僕は今日もてくてく歩きます。
Posted at 2008/11/28 01:50:44 | |
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僕 | 日記
2008年11月27日
「あのときの自分の逮捕状が欲しい」と警視庁に電話をしたのはホントの話です。
そしてそのときに話を聞いてくれたのは、ある事件を指揮したことで有名な方でした。
僕の話を聞いて、その方は「身内ながらヒドいな」と感想を言いました。
そして事件の経緯をちょっと調べてみたいと言いだし、僕を驚かせました。
後日、ちゃんと電話をくれ、「申し訳なかった」と謝罪の言葉をかけてくれました。
あまりにもずさんな捜査があったと認めてくれたのです。
「申し訳なかった」、、
それだけで自分の気持ちが楽になったのを憶えています。
間違ったことをしたら、まずはきちんと謝ろう、、そのとき僕はそう思いました。
謝れる大人になろう。。
Posted at 2008/11/27 23:46:11 | |
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僕 | 日記
2008年11月26日
記者会見を一度だけした後は、マスコミとはいっさい接触しなかった。
すべての依頼を断った。
でも、、あたかも僕がしゃべったように記事は出来あがっていく。
今でも写真週刊誌や芸能週刊誌を僕は手に取らない。
誤認逮捕、、、国を相手に裁判を始めた。
僕に謝罪をしていた警察関係者が手のひらを返したように態度を変えた。
「それ相当の理由があった」と言う。
それでも恨む気持ちになれなかった。
市民のために懸命に職務を果たす警察関係者もたくさんいることを知っている。
手首に感じた手錠の冷たさを一日に何度も思い出した。
手錠がロックする瞬間のカシャという音が聞こえる。
鉄格子のある部屋から出て移動するたび、取調中、現場検証、、一日に何度も手首にかけられたり外されたりした手錠の感触。
今でも時々、、、記念に貰っておけば良かったと思う。
事実、貰おうとした。
警視庁に電話をした。
僕「あの時の逮捕状が欲しいのですが、、」
担当官「それは無理ですが目的は何でしょうか?」
僕「いや、なかなか貰えるもんじゃないから、額に入れて部屋に飾ろうかなと思って、、」
担当官「…」
僕「できれば手錠とセットで、、」
担当官「…」
僕「売って♪」
望み、、叶わず。
NHKに電話した。
僕「自分の事件の報道部分をダビングして送ってほしいのですが、、」
担当者「そういったサービスはできません」
受信料を払ったことがなかったので、、、あまり強く頼めなかった。
これも望み叶わず。
実家に帰り、父親の仕事を手伝い始めた。
裁判も裁判所も好きになれなかった。
生きていく上で“もしも”を言っても仕方ないが、もしも誤認逮捕をされなかったら、今、まったく違う風景を見ていたと思う。
南米からスタートして世界中を見てこようとあの頃の僕は決めていた。
巨大な組織を相手に裁判をするなんて、、思ってもみなかった。
友だちは喜んだ。
“そら、、なんちゃって前科一犯”
Posted at 2008/11/26 23:40:47 | |
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僕 | 日記
2008年11月25日
あの夏の日々は、今でも消えぬソバカスを僕の肩に作った。
そして襟足は今でも赤茶色に変色し、思い出したように時々痛む。
真夜中に鏡の前で塗り薬を使いながら、僕は毎夜のようにあの夏を思い出すことになる。
襟足は紫外線の影響をもろに受けるので、カプチーノのリヤガラスにフィルム加工をした。
あの夏は今でもずっと続いている。
あの夏から1年が過ぎて、あと半年ほど経験を積んだら南米に渡るための面接を受けるというときになって、、、僕は警察に逮捕された。
借りていた部屋の玄関口で「そら、逮捕状だ」と言われ、屈強な刑事たちにあっという間に拘束されて手錠をかけられた。
その時点では、僕だけが知る誤認逮捕。
逮捕される人は毎日のようにいるし、取り調べを受ける人もたくさんいる。
でも、何もやっていないのに正式に逮捕される人はなかなかいない。
過酷な取り調べの日々。
都合の良いように仕立て上げられていく。
お見事。
でもたった一人僕を信じた刑事が本当の犯人を捕まえてきたことで、事件はセンセーショナルになっていく。
新聞に載り、ニュースで報道され、写真週刊誌に追いかけられ、一般週刊誌が話してもいないことを書き連ね、TV番組への出演依頼まできた。
ホッとした親父が倒れ、一人で記者会見をした。
住んでいた部屋も職場も失う。
…南米が遠くなる。
Posted at 2008/11/25 23:46:27 | |
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僕 | 日記
2008年11月23日
明日、日本に帰る僕のために開いてくれたお別れパーティー。
ホテルのスタッフたちの優しい気持ち。
レストランでのお食事会。
真っ白なテーブルクロスの上に並ぶ良く日に焼けた小さな顔。
ちょっと落ち着きのない表情。
地元の人も来てくれた。
とても親密な空気感。
あれやこれやと話が弾む。
アイスクリームに子供たちの顔が輝く。
村の大人が静かに歌いだす。
誰かが歌を引き継ぐ。
僕も『赤とんぼ』を歌う。
下手くそな『赤とんぼ』。
時間がゆっくり過ぎていく。
さよならの時間。
誰かが泣く。
つられて他の子も泣く。
僕も泣く。
成田に着く。
ずいぶんと長い旅をしてきたように感じる。
足が地に着かない。
そのまま渋谷に向かう。
2年前からバイトをしてきた慣れた街のはずなのに、、
まるで見知らぬ街のように感じる。
何なんだ、この街は。
10時を過ぎても街はまったく眠らない。
交差点で僕の足はとまる。
雑踏、ノイズ、汚れた空気。
行き交うたくさんの人。
派手な電飾。
割り込み合うタクシー。
クラクション。
酔っぱらい。
怒鳴り声。
体を露出した派手な服、派手な化粧。
蛍の光のように宙を舞うたくさんのブランド物のバッグ。
食べかけのハンバーガーを投げ捨てる子供。
何なんだ、この街は。
見慣れた街だったのに、まったく異質に思えた。
当たり前の風景だったのに、すべてが間違っているように思えた。
足はとまったまま動かない。
日焼けした肩にかかる大きなバッグが重い。
自分がどこにいるのか分からない感覚に陥る。
そのとき、僕の心は青い海のあるあの村にまだあったのだと思う。
どこに行ったらいいのか分からない。
足が地に着かない日々を送る。
首から肩の皮が熟した桃のようにずるりとむける。
重度の日焼け。
火傷。
医者通いになる。
痛くて眠れない。
あのときの僕は子供たちと空の下で遊ぶことをやめられなかったのだ。
分かっていたけれど、一日中空の下にいた。
子供たちに僕は助けられていたから。
相変わらず、落ち着かない日々。
繰り返される毎日。
でも少しずつ日常に慣れる。
目に映る風景に慣れる。
首から肩の痛みが和らぐ頃、僕はすっかり日本に慣れる。
青い海が遠くなる。
あれからたくさんの時間が流れた。
子供たちはもう父親になっているかもしれない。
あの子たちは、今、どうしてる?
Posted at 2008/11/23 11:08:49 | |
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