2008年11月06日
海。
波のある風景が広がる。
波。
どれだけ眺めていても飽きない。
波音。
優しく響く。
のどかな空気。
のんびりとした村。
人々の目が優しい。
それがいちばん嬉しい。
果物が美味しい。
風が気持ちいい。
少しだけ自分が空っぽになる。
ぐっすり眠る。
朝。
波が光ってる。
海辺の木陰で波のある風景を眺める。
少しずつ頭が空っぽになっていく。
風に吹かれながら、飽きずに海を眺める。
笑い声。
視線をあげる。
子供たち。
離れたところから僕を指差して笑ってる。
身をよじらせて笑ってる。
ジェスチャーで、「なぁーに?」
爆笑。
ずっと笑ってる。
やがて近づいてくる。
「なぁーに?」
まだ笑ってる。
やがて僕の手をとる。
子供たちに手をひかれて僕は歩き出す。
のどかな村道を僕たちは歩く。
延々と歩く。
かまわない。
時間だけはたっぷりある。
手を引かれながらデタラメな歌を口ずさむ。
子供たちはまだ笑ってる。
Posted at 2008/11/06 21:15:28 | |
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僕 | 日記
2008年11月06日
次の日も歩く。
胃はますます硬くなる。
気がつくと息をとめて歯を噛みしめている。
意識して呼吸する。
頭が動かない。
頭が痛む。
めまいを感じる。
何も喉を通らなくなる。
眠れない。
足を動かしたくない。
お笑いだ。
カッコつけてるだけで何もできない。
日本の茶の間でテレビのモニターに映し出される世界とまったく違う。
モニターに映し出される世界は、やはりどこか他人事だ。
時間になればバラエティ番組がまた始まる。
胸を痛めたことなど忘れてしまう。
きつい。
熱気、ホコリ、ニオイ。
そして何より人々の目。
どうすればいいのか分からない。
言葉はでない。
世界はとてつもなく広く、僕はちっぽけである。
逃げ出す。
僕は逃げ出す。
ハタチの僕は逃げ出す。
電話をちゃっちゃっとかけて、僕は逃げ出す。
その国の最高級ホテルのスイートルームに逃げ出す。
糊の効いた制服を着るスタッフ。
光り輝くエントランス。
端から端まで綺麗。
真っ白な洗面台のカウンターは3メートルを超える。
染み一つない。
アメニティグッズが並ぶ。
柔らかなタオル。
病的に清潔なベッドのシーツ。
湿度が保たれ、空調が働く部屋の空気。
熱気もニオイもざわめきもない。
眼下に広がる都会の風景。
無意味に広い部屋。
ザトウクジラだって一緒に住める。
泳げそうなバスタブを泡泡にして飛び込む。
金色の蛇口が憎らしくなる。
素手で殴る。
何度も殴る。
今、思い出した。
僕は蛇口を壊したんだ。
さっぱりした身体とがんじがらめの気持ちでティーラウンジへ向かう。
珈琲を飲む。
ウェイターに頼んで地図をもらう。
ぼーっと眺める。
…海、
海へ向かおうと思う。
ハタチの僕は逃げ足だけは速いのだ。
Posted at 2008/11/06 10:33:56 | |
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僕 | 日記
2008年11月05日
ドキドキしていても、不安でも、朝はちゃんと来る。
頼んでおいたスタッフガイドと一緒にルアの国を歩く。
今回、ルアには会えない。
でも自分の足でこの国を歩いて、しっかり見ておきたい。
粗末な家。
ちゃんとした扉もない。
電気もない。
水道もない。
もちろんガスもない。
トイレさえないのだ。
誰の目も笑っていない。
ゴミの山で人々がモノを拾う。
子供の姿が多い。
まだ小さな子供たち。
すさまじいニオイ。
ホコリ。
泣き声。
大型ダンプがまき散らす騒音。
怒鳴り声。
3、4歳くらいの子もいる。
誰の目も笑っていない。
人々は一瞬で僕を値踏みする。
めまいを感じる。
うまく呼吸ができない。
奥歯に痛みを感じる。
いつのまにか噛みしめていた。
意識して息を吸い、意識して息を吐く。
日本にいるなら小学校に通っているはずの女の子と話をさせてもらう。
ちいさな手。
荒れている。
「朝はなにを食べたのかな?」と僕。
ガイドさんは一瞬考える。
そして、顔が哀しみに陰る。
でもガイドさんはそのままを少女に訊く。
「何も食べていない、、」少女がそう答える。
「…昨日も食べていない、、、でもその前の日は少し食べた」恥ずかしそうに少女が続ける。
僕は次の言葉が出てこない。
自分の馬鹿さ加減を呪う。
僕は何も分かっていない。
ハタチの世間知らず。
次の言葉が出てこない。
ガイドさんと少女が短い会話を繰り返す。
そして少女は僕に何も言わずに歩き出す。
さよならも言わない。
僕の目も見ない。
きっと見抜いたのだ。
僕は役に立たない。
会話の内容をガイドさんに訊く。
生活が破綻している家庭にいる少女に、遠くの施設に移る話がでているそうだ。
そこに移れば三度の食事が食べられるよと少女に言ったガイドさん。
彼女の答えは?と僕。
食べるものが何もなくても両親や弟と一緒にいるそうです。
世界は広い。
そして僕はひどくちっぽけである。
魔法使いになんてなれない。
僕は何ひとつ変えられない。
僕は何も分かっていない。
Posted at 2008/11/05 00:50:35 | |
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僕 | 日記
2008年11月04日
空港に着いた僕。
熱気。ホコリっぽい空気。
見たことのない虫。
聞き慣れない言葉。
雑音騒音。
到着ゲートを出た瞬間、一人の少女が僕に近づいてくる。
まだ中学生くらいに見える。
身体を触らせてあげるからお金をくれ、と僕に言う。
断った瞬間、少女の表情が変わる。
現地の言葉で何か言われる。
不思議なことにニュアンスだけはしっかり伝わってくる。
外に出る。
満面笑みの男が僕の肩を抱く。
迎えに来た、と僕に言う。
ソンナモノハタノンデナイ。
その男を断ると次の男がやってくる。
どこかのホテルの看板を持っている。
断る。
何か言われる。
タクシーに乗る。
信号待ち。
たくさんの子供が取り囲む。
手に何かを持っている。
ガム?新聞?
小学生くらい。
みんな大きな声でなにか言ってる。
ホテルに着く。
一人の日本人。
タクシーの料金を僕に訊く。
答えると、「やられたな」と笑う。
思いっきりボラれたのだ。
部屋に入る。
どっと疲れが出る。
ベッドに腰をおろす。
僕のモノサシが通じない予感に襲われる。
誰も笑っていない。
目が笑っていない。
空港の職員も、タクシーの運転手も、ホテルのスタッフも、大人も子供も。
怒っている目とも違う。
ハタチの僕はドキドキしていた。
Posted at 2008/11/04 18:49:25 | |
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僕 | 日記
2008年11月04日
ホントはあまり好きではないのですが、みかん号のリヤガラスをフィルム加工します。
なるべく紫外線をカットしないと、首のうなじの辺りが耐えられないのです。
幌に貼るわけにはいかないので、MGBに乗るときは首にマフラーを巻いています。
というか、いつの写真を見ても僕は首に何かを巻いています(まるで中尾彬みたいだ)。
あれからたくさんの時間が流れましたが、僕のうなじは今でも赤茶色に色が変わっています。
静まりかえった真夜中、薬を塗るために手鏡でうなじを見るたび、あの夏の日を思い出します。
ここに書く内容ではないのですがホントの話です。
10代の頃、僕は自分を魔法使いのように思っていました。
心から願い、そして頑張れば何でもできると思っていました。
その自信は病気と闘う一人の少女との出会いによってあっさりと崩れました。
いくら心から願っても叶わないことが世の中にはたくさんあることを思い知らされました。
それからの僕は、自分の心の中のポケットをもっと増やしたくて仕方ありませんでした。
まだ自分が知らない何かをすべて知りたくて、出会っていない何かに出会いたくて、自分の目で何でも見たくて、そして未知の世界を体験したくて仕方なかったのです。
単純であきれますが、まずは地球の反対側まで行ってしまいたいと思いました。
南米の奥地で働き、そこで暮らしてみたいと願っていました。
僕には資金もツテもなく、手っ取り早くそれを叶える方法は“海外青年協力隊”に参加することが最短なように思えました。
どんな方法でもいいから日本から離れよう、、そう思って隊員になるべく面接を受けたのですが、「日本での経験が2、3年ほしい」と言われてしまいました。
日本で働くその2、3年の間も海外に目を向けたかったので、発展途上国の子供たちを助けるボランティアに参加することに決めました。
そして僕はルアという女の子を援助することになりました。
ルアが学校に通えるように金銭面で援助し、彼女が暮らす地域環境の改善の手伝い(井戸を掘ったり、危ない橋を修繕したり、、)をすることを始めました。
そして、、、フットワークの軽い僕は、まずは彼女が暮らす国を歩いてみようと思いつき、思いついた15秒後には “自分の足で歩き、自分の目で見てくるべきだ”と強く決心し、翌日には分割払いで飛行機のチケットを手に入れました。
デカいスポーツバッグに着替えをホイホイと詰め込み、僕は成田へと向かいました。
わくわくしながら日本を出発したのですが、僕を待っていたのは想像を絶する過酷な旅でした。
(すみません、続きをまた書かせてください。気が向いた人が読んでくれるだけで充分です)
Posted at 2008/11/04 00:11:04 | |
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僕 | 日記