ウチの987ケイマンSには、機械式LSD(OS技研Super Lock LSD)が付いています。

コーナーで外側のタイヤに荷重が乗ると内側のタイヤの荷重が抜けるので、デファレンシャル(差動装置)の機能で内側のタイヤにトルクが配分されて空回りしてしまいます。
それを防ぐために、差動制限装置(LSD:Limited Slip Differential)が必要です。
LSDにはいくつか種類がありますが、大別するとメカニカルLSDと電子制御式LSDが有ります。
①メカニカルLSD
メカニカルLSDには、大きく分けて回転数感応式(機械式)とトルク感応型(トルセン)が有ります。
回転数感応式(機械式)
ウチの987ケイマンSに付いている、OS技研Super Lock LSDもこのタイプです。

(
OS技研のHPより引用)
左右の回転差が大きくなるとクロスピンがプレッシャーリングを押し広げてフリクションプレートとの間に摩擦が発生して差動制限を行います。
4輪接地状態でLSD効果が出てしまうと曲がり難くなる(タイトコーナーブレーキ現象)なるので、用途に応じてイニシャルトルクを調整する必要が有る場合も有ります。
トルク感応型(トルセン)
ウォームギアの歯面摩擦とスラストワッシャーの板間摩擦で作動制限するタイプのメカニカルLSD。
(
Lesicsチャンネルより)
昔乗っていたトヨタのALTEZZAには純正でこのタイプが付いていました。
効きが弱かったので、TRDの機械式1.5Way LSDに変えてしまいましたが、効きがマイルドでFF車との相性が良いとされています。
しかしトルセンLSDの場合、完全にインリフトしてしまうと、LSD効果は失われてしまいます。
②電子制御式LSD
各種センサーからの情報をもとに、コンピュータが差動制限を制御する「アクティブLSD」。
アクティブLSD

(日産R33 GT-RのアクティブLSD)
LSDに電子制御多板クラッチが内蔵されており、各センサーからの情報を元にコンピューターが差動を制限します。
Ferrariのe-diff

これも電子制御式LSDの一種です。
F430以降のV8ミッドシップ系に搭載されています。
BMWのActive M Differential

これも電子制御式LSDの一種です。
BMW M3/M4などに搭載されています。
電子制御で左右のトルク配分を制御すると共に、前後のトルク配分も制御していますが、DSCオフで2WDモードを使用する事も可能です。
Audiのトルクスプリッター

AUDI RS3に搭載された「RS Torque Splitter」。
この新型のデバイスは通常の電子制御LSDと違い、ディファレンシャル機構が存在しません。
ディファレンシャル機構の代わりに出力軸に2つの電子制御多板クラッチを持ち、単なる差動制限だけで無く、左右の出力トルクを自在に制御出来ます。
フォード・フォーカスRSに搭載されているGKN社のツインスターも同様のシステムですが、ツインスターがリアのファイナルドライブレシオをフロントより僅かに高くしてドリフトを実現しているのに対し、「RS Torque Splitter」はフロントのトルクを下げる事によってドリフトを実現しています。
左右のトルク配分だけで無く、前後のトルク配分も統合制御しており、ランエボに搭載されていたAYC(Active Yaw Control)+ACD(Active Center Differential)が進化したS-AWCの様に、前後左右のトルク配分を制御して車両の運動性能を向上させています。
メカニカルLSDが電子制御化され、更に進化して差動そのものまで電子制御多板クラッチで緻密に制御し、前後左右のトルク配分を自在に制御する「RS Torque Splitter」の様に進化して来ました。
2WD用のLSDも左右のトルク配分や差動まで電子制御化されたとしたら、FF用なら外側のタイヤを多く回す事で曲がり易くしたりする事が可能になります。
こういった技術も日進月歩で進んでいる様です。
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Cayman S | 日記
Posted at
2021/08/01 20:32:53