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2021年08月28日 イイね!

987ケイマンSの事:その25

987ケイマンSの事:その25













ウチの987ケイマンSは、サーキット走行を考えてAragosta Type-Sを装着しています。

加えてH&Rの強化スタビライザーも装着しています。




本来Aragosta Type-Sのショップ推奨のスペックはF:10kg/R:12kg位のバネレートでしたが、ウチの987ケイマンSはF:6kg/R:8kg(メーカー推奨値)です。

自分の使い方だと一般道95%/サーキットが5%位で、流石にF:10kg/R:12kgだと一般道が辛いので、バネレートはメーカー推奨値にして、その代わりスタビライザーを強化してロールスピードを抑える方向でセッティングしています。







元々987ケイマンSにはPASM(PORSCHE ACTIVE SUSPENSION MANAGMENT )が付いていました。

BILSTEINの電子制御可変ダンパー「ダンプトロニック」を使用した電子制御可変サスペンションです。
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各種のセンサーからの情報からリアルタイムに減衰力を調整すると言うのがウリのシステムで、スポーツモードにしていても路面のμが低くなると自動的に減衰力を柔らか目にしてトラクションを稼ぐ機能なども有り、乗り心地と運動性能を両立させようとするものです。

PASM装着車は車高が10mm下り、それにも関わらず良好な乗り心地を維持しています。

実際の所、PASMを「SPORT」に切り替えるとかなりダンピングレートが上がった感じになり、ロールが抑えられます。
但し、"あくまでも公道レベルの速度域なら"と言う前提でのハナシです。

サーキットレベルになると、そもそもバネレートが3kg/m台と決して高く無いので、いくらダンパーが硬くなっても思いっきりロールします。

またバネが柔らかいままダンパーが硬くなるので、サーキットで縁石を踏む様な状況下では飛び跳ねてしまい、却ってトラクションに悪影響を与えます。

公道レベルのスポーツとコンフォートを両立出来ているのがPASMです。



と言う訳で、今回はサスペンションについて書いてみようと思います。








①直巻バネと荒巻バネ

一般的にノーマルサスペンションのバネは、樽型の荒巻バネが多いです。

ノーマル形状(樽型)のバネは径の大きな所で乗り心地を確保し、径の小さな所で高速時のダンピングレートを確保している事が多いです。




ノーマル形状のバネのメリットは、

①.車種別に作られているので、そのクルマに特化した仕様に出来る。
②.比較的自由長が長いので、接地性は比較的高い。
③.直巻タイプに比べ、乗り心地に優れる。




ノーマル形状のバネのデメリットは、

①.バネに汎用性が無いので、仕様変更にはコストが掛かる。
②.レートが一定でないので、荷重移動に対する動きがリニアでない。
③.構造上、あまり高いバネレートに出来ない。







逆に、直巻バネのメリットは、

①.汎用的に作れるので、使い回しが効き、仕様変更のコストが安い。
②.バネレートが比較的一定に近く、荷重移動に対する動きがリニア。
③.高いバネレートのスプリングにする事が可能。




直巻バネのデメリットは、

①.バネレートが比較的一定なので、当たりが強く乗り心地が悪い。
②.荒巻バネに比べ、自由長が短くなるので接地性は劣る。
③.汎用のバネの場合、車種別に作ったバネほど特化した仕様に出来ない。







メーカーが乗り心地や運動性能や様々な要素を考えて、車種別に作るノーマルサスペンションに荒巻バネが多いのは、こうしたメリット/デメリットを考慮した上での事です。







しかし、サーキット走行を視野に入れる場合、こうした汎用的に作られたサスペンションでは思い通りの性能を発揮出来ない場合が多いです。

ノーマルのバランスを崩す事にはなりますが、乗り心地やNVHなどの快適性を捨ててでも、コーナーでの安定性やサスペンションのリニアな反応を取るのも、1つのサスペンションチューニングという事になります。







アフターパーツの車高調に直巻バネが多いのは、レートやバネ径が標準化されているので、車種が違ってもバネを流用する事が出来、セッティング変更に対応し易い事、バネレートが比較的一定の為、荷重移動に対するクルマの動きがリニアである事が大きいと思います。







ちなみに、バネの性能はレートだけで語る事は出来ず、バネレートは同じ10kgであっても、自由長が違えば耐荷重が変わって来ます。

またバネとショックアブソーバーの組み合わせによっても耐荷重が変わって来るので、サスペンションの世界はとても奥の深い世界なのです。







②電子制御サスペンションのテクノロジー

987ケイマンSに付いているPASMはBILSTEINの電子制御可変ダンパー「ダンプトロニック」を使用していますが、現在は「ダンプトロニックSky」へと進化しています。

「ダンプトロニックSky」は縮み側だけでなく、伸び側の減衰力も独立して制御する様になっており、より細かな制御が可能になっています。







Type991以降にはPDCC(PORSCHE DYNAMIC CHASSIS CONTROL)と呼ばれる電子制御可変スタビライザーがオプションで装着可能になりました。

電子制御でスタビライザーの効きを制御し、車両を安定させるもので、フラットな姿勢を維持したままコーナーを曲がる事を可能にしています。







こうした電子制御サスペンションは、ある程度までの領域であれば、良好な乗り心地とフラットライドを両立させ、かなりのアベレージでコーナーを曲がる事を可能にしています。

但し、こう言った電子制御サスペンションは車種別に開発されており、PASMの様な電子制御可変ダンパーとPDCCの様な電子制御可変スタビライザーを連携させたトータルで設計されている為、ますますアフターパーツへの交換を難しくしています。







電子制御式サスペンションは2つの相反する要素を高いレベルで実現していますが、流石にサーキット走行まで行くと対応しきれていないと言うか、そこまでは想定していないのが実情では無いかと思います。

ダンパーのレートが可変でも、バネレートは変わらないので、ロールするスピードは抑えられてもロール自体が減る訳では有りません。

スタビライザーも同様で、接地性を高める方向とロールを抑えると言う2つの要素を高いレベルで実現していますが、荷重移動に対するクルマの動きを考えると、切り替わる前後の差が有るのはあまり良いとは言えません。




恐らく、サーキットレベルの走行に対応したいとなると、今の所電子制御可変ダンパーやスタビライザーより、シンプルなダンパーとスプリングを組み合わせた車高調と、固定式のスタビライザーの方に一日の長が有る様に思います。







③インボードマウントとアウトボードマウント

F1マシンや、一部のスーパースポーツはインボードマウントのサスペンションを採用しています。


F1の場合は空力的な観点からボディ内にサスペンションを内蔵する様になりましたが、スーパースポーツの場合はサスペンションの設置の自由度からインボードマウントを採用しているケースが多い様です。

車種別専用設計になってしまう為、コスト的にスーパースポーツでないと採用し辛いと言う事で、量産スポーツカーに採用される事は稀です。

それでも、インボードマウントサスペンションは個人的には憧れのサスペンションです。







と言う訳で、今回はサスペンションの話でした。


サスペンションは奥が深くて、幾らでも深堀り出来てしまうので、そこそこで止めておいた方が無難ですね(笑)。
Posted at 2021/08/28 20:55:12 | コメント(1) | トラックバック(0) | Cayman S | 日記
2021年08月21日 イイね!

987ケイマンSの事:その24

987ケイマンSの事:その24
















ウチの987ケイマンSは、サーキット走行を考えて運転席のみRECARO製のバケットシートに変えています。

RECARO RS-G ASM Limitedです。
ちなみに助手席は奥様が嫌がるのでノーマルのままです(笑)。






バケットシートにも、リクライニング可能なものからヘッドサポート付きのものまで様々です。

バケットシートは実際に座ってみないと、ヨーロッパの人の体格に合わせて作られたシートだと日本人にはユルユルですし、サイドサポートの高さやレッグサポートの高さ、シート形状…が分からないので、必ず座って確認する事をオススメします。

出来れば同一車種がベストですが、ほぼ同じ様なクルマ(987ケイマンなら911のType997もほぼ同じ)で試してみるのがオススメです。

実際に座り、ステアリングを操作してみたり、シフト操作をしてみたりして、不都合が無いか確認する事が重要です。







例えば、サーキットユースだけを考えればヘッドサポートの有るシートが良いですが、公道走行を考えると合流時の側方確認が困難になってしまいます。

またレッグサポートが高すぎるとシフト操作がし難かったりするので、実際に座ってみて判断する事をオススメします。

と言う訳で、今回はシートについて書いてみようと思います。






①コンフォートシート

バケットシート程のサポート性は有りませんが、長距離を走行しても疲れ難く、比較的拘束が緩いので、幅広いユーザーに受け入れられるシートです。

(RECARO LXF 2nd Generation)
リクライニングも可能なので、リアシートへの出入りが必要な場合でも問題無く使用出来ます。







コンフォートシートとバケットシートの合いの子の様なシートも有ります。

(RECARO RCS)

このタイプはサーキット走行まではしないが、ワインディングなどを走行をする様な方にはピッタリのシートです。

但し、リアシートが有る車の場合は背面パッドが必要になる場合が有ります。







②スポーツシート

コンフォートシートよりサポート性を向上させたシート。

(RECARO SR-7)

サイドサポートが大きくなり、レッグサポートは低めで乗降性を確保、リクライニングも可能です。

シートベルト用のホールも有るので、4点式シートベルトを装着する事も出来ます。

ストリートから、サーキットの入門辺りまでをカバー出来ます。







デザイン性を高めて、リクライニングを電動化したモデルも有ります。

(RECARO SP-X Avant)

リクライニングの電動化は単なる利便性向上のためだけでは無く、幅の狭いクルマでも装着出来る様にした結果だそうです。







③モータースポーツシート

モータースポーツに特化したシートです。

(RECARO RS-G)

フルバケットシート(通称フルバケ)で、リクライニング機構は有りません。
シェル(外殻)を一体成形して剛性を高めて有ります。

素材をFRPからCFRP(カーボンファイバー)にして、更に強度を高めたモデルも有ります。

乗降性を犠牲にしてホールド性を高めて有り、乗り降りし難い代わりに、強い横Gを受けても体が振られる事無く、正確な操作を可能にしています。

4点式以上のフルハーネスに対応しています。







日本人のために開発されたフルバケットシート。

(RECARO PRO RACER RMS)

日本人の為に開発され、シェルにパッドを貼り付けた様な独特の形状です。
ヘッドサポートも付いていて、これ位ならギリギリ公道で使う事も可能そうです。







④RECARO以外のシート

ここまではRECARO製シートばかりを紹介して来ましたが、他にも色々なシートが有ります。












(1).BRIDE

BRIDEは日本の会社なので、日本人に合わせた設計になっています。
更に軽自動車やトラック向けなど、様々なラインナップが有るのが特徴です。



フルバケットシート(BRIDE ZETA)

日本人の体型に合わせたシートフォルムのフルバケットシート。
一般公道からサーキット走行、各種モータースポーツなど、幅広いシーンでの使用、ドライバーの安全を考えて作られたシートです。







スポーツシート(BRIDE STRADIA)

サーキット走行で求められるホールド性能と日常使いで必要とされる利便性・快適性を併せ持つセミバケットシートです。







コンフォートシート(BRIDE EUROSTER)

座り心地や乗降性、操作性など快適性を重視しドライバーが疲れにくいシートとなるよう設計されています。







(2).SPARCO



スポーツシート(SPARCO R100J)

SPARCOのシートは現状(2021年8月現在)、日本の保安基準に適合しているのはこのSPARCO R100Jのみです。







以前はフルバケットシートでも、2シーター車ならOKで、4シーター車の場合は背面パッドを貼ればOK、2ドアの4シーター車はリアシートを外して2名乗車に変更すればOK…でしたが…

平成29年7月、道路運送車両法施行規則の一部改正がおこなわれ、いままで車検に通っていたパーツも「保安基準適合を証明する書類」で確認できなければ不合格になる様になった様です。

RECAROやBRIDEなどの有名ブランドならOK…と言う訳でも無さそうで、陸運事務所によってはそれらの有名ブランドであっても「保安基準適合を証明する書類」が無いとNGと言うケースも有る様です。

「競技専用品」と有る製品は「保安基準適合を証明する書類」が無いので、基本的に車検に通らないと考えた方が良さそうです。

車検対応品であっても「保安基準適合を証明する書類」は揃えておいた方が無難な様です。







サーキット派にとってはフルバケは無くてはならないモノですが、キチンと保安基準適合品を選び、書類も揃えておきましょう。

また、シートだけで無く、シートレールも保安基準適合品でないと車検は通りません。

シート+シートレールを保安基準適合品とする事、「保安基準適合を証明する書類」は揃えておく事が大事です。
Posted at 2021/08/21 21:01:18 | コメント(0) | トラックバック(0) | Cayman S | 日記
2021年08月08日 イイね!

987ケイマンSの事:その23

987ケイマンSの事:その23













ウチの987ケイマンSは、前後4podのBrenbo製対向ピストン式のブレーキが付いています。
PORSCHEのブレーキ性能要求はかなりのレベルで、エンジン出力の3〜4倍の制動性能を要求しています。
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987ケイマンSは295PSなので、885〜1180PSにもなります。
確かにPORSCHEのブレーキの凄さは自分でも実感しており、実際ノーマルのままでもFSW数周なら保ってしまいます。
(ノーマルパッドだと数周でパッドが炭化しますが…)

FSWのストレートでは987ケイマンSだと245km/h位ですが、そこからフルブレーキングすると150m看板だとかなり余ってしまう位効きます。

効きだけで無く、踏んだ時の剛性感やコントロール性の高さも特筆モノです。
ミッドシップレイアウトも有り、つんのめってしまわないので急制動時も安定して減速出来、某自動車評論家が「宇宙一」と評するのも分かる気がします。







先日ウチのBMW X1(F48)のブレーキパッドを交換して印象が激変した事を書きましたが、BMWは昔から一部のハイパフォーマンスモデルを除いてフローティングキャリパーを採用しています。
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しかし、だからと言って特に不満は無く、1.7tも有るF48 X1を止めるのに十分な容量を持っており、タッチも987ケイマンSには及ばないものの、それ程悪い訳では有りません。

今回はブレーキについて書いてみようと思います。







①フローティングキャリパー式
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いわゆる「片持ち式」ブレーキです。
ピストンはホイール内側だけで、ブレーキを踏むとピストンがディスクの内側からパッドを押して圧着し、その力でキャリパーが内側にスライドして外側のパッドをディスクに押し付けて制動するタイプです。







フローティングキャリパーの作動概要図。

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アドヴィックスセールス株式会社HPより引用)










フローティングキャリパー式ブレーキは対向ピストン式ブレーキに対して、制動力と言う面では、余程重量級のクルマで無い限り、それほど劣っている訳では有りません。
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ブレーキパッドが大きくなり過ぎると、平均して押し出す事が難しいので向いていませんが、そこそこの大きさなら全く制動力に問題は有りません。

実際、ブレーキ性能はキャリパーだけで決まるものでは無く、タイヤのグリップ力を超える制動力を持たせる事が出来れば、フローティングキャリパー式ブレーキでも対向ピストン式ブレーキでもあまり変わりません。










フローティングキャリパー式ブレーキのメリットは、

①部品点数が少なく、軽くてコストが低い
②キャリパーがコンパクトな為、ホイールの設計自由度が高い
③鋳鉄製キャリパーなので、熱で開いてしまう様な事が無い

と言う事です。







フローティングキャリパー式ブレーキのデメリットは、

①パッド面積が大きいと、パッドを平均して押し出す事が難しい
②構造上片側から押して反力で反対側を押し付けるので、パッドが偏摩耗しやすい
③上記と同じ理由で、ブレーキタッチは対向ピストン式ブレーキに劣る

辺りでしょうか。







昔はスーパー耐久でも市販車のブレーキ形式を変更出来なかったので、NSXやS2000はフローティングキャリパー式のままレースをしていました。
それでも優秀な成績を収めていたので、フローティングキャリパー式だからダメと言う事では有りません。

実際、自分も前の愛車のALTEZZAの時はパッドやフルード、ブレーキホースは交換したもののブレーキはフローティングキャリパー式のままでしたが、サーキット走行でも特に問題は出ませんでした。

無論、FSWやTwinringもてぎの様な高速サーキットを連続でアタックすると、当然タレて来ますが、少なくとも筑波2000位であれば走行枠20〜30分の走行会の間はちゃんと保ってくれました。







②対向ピストン式
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名前の通り、内側と外側の1組以上のピストンが両側からパッドをディスクに圧着させる方式です。







対向ピストン式ブレーキの作動概要図。

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アドヴィックスセールス株式会社HPより引用)









対向ピストン式ブレーキのメリットは、

①大きな面積のパッドでも平均して押し出す事が出来る
②表と裏から同時にパッドをディスクに押し付けるので、コントロール性に優れている
③上記と同じ理由でパッドの偏摩耗が少ない

と言う点です。







対向ピストン式ブレーキのデメリットは、

①構造が複雑で部品点数が多い為、コストが高く、重量が重くなる
②キャリパーが大きい為、ホイールの設計に制約が有る
③上記①の理由でアルミ製キャリパーを採用しているが、酷使するとキャリパーが開いてしまい制動力が低下する

と言う点です。







実際、ウチの987ケイマンSや911のType997までは、Brenbo製モノブロックキャリパーのパッド取り付け部はボルトだけで大きく開いていて、ボルトを抜けば簡単にパッド交換が出来る構造でした。

とても便利だったのですが、車重があってパワーの有るクルマ(Carrera SやGT3、GT2、ターボなど)の場合、サーキットで酷使すると熱でキャリパーが変形して開いて来てしまう現象が起こりました。







911のType991以降やケイマン/ボクスターの981以降は、キャリパーの開口部にブリッジが付く様になり、キャリパー剛性が大幅に向上しました。

しかし整備性と言う面では少し面倒になりました。
恐らく重量的にもかなり重くなっていると思います。










対向ピストン式ブレーキは見た目もカッコいいので、交換したくなってしまう事も有ると思いますが、元々対向ピストン式ブレーキのクルマは設計がそうなっているので問題が少ないですが、元がフローティングキャリパー式の場合は対向ピストン式ブレーキにする事によってホイールと干渉したり、それを避けるためにオフセットの大きいホイールに変えると、今度はスクラブ半径が大きくなってハンドリングに影響が出たりします。







③曙ブレーキの新構造キャリパー

2年前の東京モーターショーに曙ブレーキが新構造キャリパーを出展していました。

このキャリパー、フローティング式なのですが、フローティング式の弱点を克服するアイディアで作られています。







このキャリパーの特徴は、2つのピストンが背中合わせにつながった形状のピストンを採用している事です。

写真真ん中あたりの丸いのがピストンですが、このピストンが内側と外側両方に押し出されます。

するとホイール外側のピストンはホイール内側のディスク面にパッドを圧着しますが、ホイール内側のピストンが同時にキャリパーをスライドさせてホイール外側のディスク面にパッドを圧着します。

フローティングキャリパー式の弱点を克服してブレーキタッチを向上させ、パッドの偏摩耗も従来の1/5になったそうです。

そしてキャリパーをアルミ製にしたお陰で重量も30%低減しているそうです。

このキャリパーなら、フローティングキャリパー式のメリットである低コストで軽量と言う長所や、ホイール設計の自由度が高いと言う長所を維持(若干コストは上昇するものの対向キャリパー式に比べれば安くて軽い)しながら、タッチやコントロール性を向上させる事が出来ると言うスグレモノです。







ブレーキは自分が知っている限り、何十年もの間基本的な構造は変わらずに進化して来ましたが、曙ブレーキの新構造キャリパーの様な革新的な進歩もしている訳ですね。







④PORSCHEの「PSCB(Porsche Surface Coated Brake)」

2018年にモデルチェンジした現行のカイエンターボでワールドプレミアされた「PSCB(Porsche Surface Coated Brake)」。

ディスクローターがタングステンカーバイドでコーティングされており、通常のブレーキよりも30%の耐久性向上とダストの低減を実現すると同時に、連続使用での耐フェード性も向上しているそうです。

セラミックコンポジットブレーキ「PCCB」に匹敵する制動力と、低コスト・低ダストを実現しているそうです。

これならカーボンブレーキ特有の、サーキット走行すると異常に寿命が短くなると言う弱点や、ディスク交換で200万円と言う超高コストを恐れなくて済むので、サーキット派の人々には朗報かもしれません。

まだカイエンだけの様ですが、その内Type992にも採用されるのでは無いかと思われます。

ちなみにこのブレーキシステムも曙ブレーキ製だそうです。







と言う訳で、ブレーキ関係のテクノロジーでした。

安全装備などでクルマがどんどん重くなり、パワーが向上する中で、それを制御するブレーキシステムもどんどん進化していっているので、そのクルマに合ったブレーキシステムについて知っておくのも良いかもしれません。
Posted at 2021/08/08 20:19:07 | コメント(1) | トラックバック(0) | Cayman S | 日記
2021年08月04日 イイね!

987ケイマンSの事:その22

987ケイマンSの事:その22













最近、車両盗難の話を良く聞く様な気がします。

出典チューリッヒHPより:警察庁 令和元年の刑法犯に関する統計資料をもとに作成

車両盗難件数自体は、イモビライザーの標準化が進むにつれて年々減少しているのですが、90年代の日本のスポーツカーなどは某映画の影響で海外で人気になっており、盗難が増えています。

また海外で人気のプリウスやハイエース、ランドクルーザー、レクサスRX、レクサスLXなどの盗難も増えています。

意外な所では、三菱キャンターやいすゞエルフ、日野レンジャーなどのトラックも上位20位以内に入っています。







先日ニュースで話題になった、オーナーの目の前で盗難されたRX-7(FD3S)。

もう製造していない貴重なロータリーエンジン搭載車でも有り、大事にしていたクルマだと思いますが、それを盗んで行くとは許し難い行為です。

この年代のクルマは物理キーのみでイモビライザーが無かったり、有ってもイモビカッターなどで簡単に破られてしまうので、社外セキュリティの装着や物理的な盗難防止措置(ハンドルロック/タイヤロックなど)は必須でしょう。







しかし、他人事では有りません。

ウチの987ケイマンSはSECOMのセキュリティーシステム付きのシャッター付きのガレージ内に有るので、家に有る時は盗難の危険性は低いですが、外出して出先で宿泊する様なケースや、駐車場に停めている時には盗難の危険性が有ります。

ウチの987ケイマンSはキーレスエントリーでは無いので、今ハヤリのリレーアタックの可能性は有りませんし、イモビライザー付なのでドアをこじ開けたりガラスを破って侵入されてもエンジンが始動出来ませんし、PORSCHE純正セキュリティシステムでキー以外の方法でドアを開けた場合や車両の傾きなどを検知するとに警報装置が作動します。

しかし、昨今の盗難事情は想像以上に進んでいる様です。







①イモビカッター

本来はイモビライザー付きのクルマが何らかの理由でキーを交換する必要が有る場合に、車両側のIDを書き換えるためのツールです。

今の車両には、車両の統合制御を行うコンピューターの制御のために、国産/外車を問わずOBDⅡポートが装備されています。

このイモビカッターはOBDⅡポートに接続する事によって車両側のIDを書き換えられるので、車両側のIDをあらかじめ用意した別のキーのIDと同じIDに書き換える事によって、エンジンの始動が可能になってしまいます。

物理的にOBDⅡポートに接続しなければ使えないので、車内に侵入出来ない様な対策を施すのが有効な手段です。







似た様な方法として、クルマのECUを物理的に入れ替えてしまう「積み替え」と言う手口も有ります。

朝日新聞デジタルより引用)

これも車内に侵入されなければ積み替えられないので、車内に侵入出来ない様な対策を施すのが有効な手段です。







②リレーアタック

これもニュースなどで話題になったので、ご存知の方も多いと思います。

キーを持っているだけでエンジンを始動できるスマートキーの機能を悪用し、キーの電波を特殊な機器で中継してドアを開錠し、エンジンを始動して盗む方法です。

スマートキーの微弱な電波を遮断するスマートキーケースなどで防ぐ事が可能です。







③コードグラバー

Key110.netより引用)

コードグラバーは最近流行り出した新しい手法です。

イモビライザーはキーのIDと車両側のIDを比較して、同じで無いと開錠やエンジン始動出来ない様になっていますが、スマートキーや車両からは微弱な電波が出ていて、その中に車両のID情報が含まれています。

コードグラバーはそのID情報を読み取って解析し、ID情報を複製用のキーに書き込んで車両側IDと一致させてしまう機器です。

これもイモビカッターと同じで本来の目的は違いますが、犯罪に使用されている機器です。

コードグラバーが厄介なのは、リレーアタックと違って電波を中継する必要がないので、複数人である必要が無い事、そして電波を遮断するスマートキーケースなどを使っても役に立たない事です。

現在コードグラバーを防ぐ方法は無いので、純正キーで作動するセキュリティー以外のセキュリティーシステムを付ける事、ハンドルロックやホイールロックなどの物理的な盗難防止措置を施す事位しか防ぐ方法が有りません。







④CANインベーダー

これも最近流行り始めた手口です。

今の車両には、車両の統合制御を行うコンピューターの制御のために、国産/外車を問わずCAN(Controller Area Network)と言う車両情報通信システムを使用しています。

CANインベーダーはその名の通り、CANに侵入してセキュリティを解除し、イモビライザーIDを複製して開錠やエンジン始動を可能にする方法です。







先日、レクサスRX盗難の際に使用されたと思われるのが、このCANインベーダーと言う手法です。

CANインベーダーは、車両のバンパーを外してCANの配線にカプラーを割り込ませて車両情報を書き換える事が可能なスキャンツールもしくはPC・タブレットなどを直接接続し、セキュリティを解除し、イモビライザーIDを複製して開錠やエンジン始動を行います。

コードグラバー同様に、現在CANインベーダー防ぐ方法は無いので、純正キーで作動するセキュリティー以外のセキュリティーシステムを付ける事、ハンドルロックやホイールロックなどの物理的な盗難防止措置を施す事位しか防ぐ方法が有りません。







⑤ドリルアタック

これも最近流行り出した手法。
電動ドリルを使用して直径2〜3mmの穴をドアに開けて、ドア内部のドアロック用の制御機器を破壊する方法です。

この方法だと、純正セキュリティシステムが作動しなくなるので、キー以外の方法(バールでこじ開ける、窓ガラスを破ってロックを解除するなど)でドアを開けても盗難警報装置が作動しないので、あとはイモビカッターなり車両情報を書き換える事が可能なスキャンツールもしくはPC・タブレットなどを直接接続し、セキュリティを解除し、イモビライザーIDを複製して開錠やエンジン始動を行います。

このドリルアタックとイモビカッター/CANインベーダーを組み合わせられたらお手上げです。

純正キーで作動するセキュリティー以外のセキュリティーシステムを付ける事、ハンドルロックやホイールロックなどの物理的な盗難防止措置を施す事位しか防ぐ方法が有りません。







以上、最新の5つの盗難手法をご紹介しましたが、コードグラバー、CANインベーダー、ドリルアタックに関しては現在の純正セキュリティでは対応出来ないので、大切な愛車を守るために、複数のセキュリティシステムの装備や、物理的な盗難防止対策(ハンドルロック、ホイールロックなど)を検討した方が良さそうです。
Posted at 2021/08/04 20:38:28 | コメント(0) | トラックバック(0) | Cayman S | 日記
2021年08月01日 イイね!

987ケイマンSの事:その21

987ケイマンSの事:その21











ウチの987ケイマンSには、機械式LSD(OS技研Super Lock LSD)が付いています。
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コーナーで外側のタイヤに荷重が乗ると内側のタイヤの荷重が抜けるので、デファレンシャル(差動装置)の機能で内側のタイヤにトルクが配分されて空回りしてしまいます。

それを防ぐために、差動制限装置(LSD:Limited Slip Differential)が必要です。

LSDにはいくつか種類がありますが、大別するとメカニカルLSDと電子制御式LSDが有ります。







①メカニカルLSD
メカニカルLSDには、大きく分けて回転数感応式(機械式)とトルク感応型(トルセン)が有ります。

回転数感応式(機械式)
ウチの987ケイマンSに付いている、OS技研Super Lock LSDもこのタイプです。
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OS技研のHPより引用)

左右の回転差が大きくなるとクロスピンがプレッシャーリングを押し広げてフリクションプレートとの間に摩擦が発生して差動制限を行います。

4輪接地状態でLSD効果が出てしまうと曲がり難くなる(タイトコーナーブレーキ現象)なるので、用途に応じてイニシャルトルクを調整する必要が有る場合も有ります。







トルク感応型(トルセン)
ウォームギアの歯面摩擦とスラストワッシャーの板間摩擦で作動制限するタイプのメカニカルLSD。

Lesicsチャンネルより)

昔乗っていたトヨタのALTEZZAには純正でこのタイプが付いていました。
効きが弱かったので、TRDの機械式1.5Way LSDに変えてしまいましたが、効きがマイルドでFF車との相性が良いとされています。

しかしトルセンLSDの場合、完全にインリフトしてしまうと、LSD効果は失われてしまいます。







②電子制御式LSD
各種センサーからの情報をもとに、コンピュータが差動制限を制御する「アクティブLSD」。



アクティブLSD

(日産R33 GT-RのアクティブLSD)

LSDに電子制御多板クラッチが内蔵されており、各センサーからの情報を元にコンピューターが差動を制限します。







Ferrariのe-diff

これも電子制御式LSDの一種です。
F430以降のV8ミッドシップ系に搭載されています。







BMWのActive M Differential

これも電子制御式LSDの一種です。
BMW M3/M4などに搭載されています。

電子制御で左右のトルク配分を制御すると共に、前後のトルク配分も制御していますが、DSCオフで2WDモードを使用する事も可能です。







Audiのトルクスプリッター

AUDI RS3に搭載された「RS Torque Splitter」。
この新型のデバイスは通常の電子制御LSDと違い、ディファレンシャル機構が存在しません。

ディファレンシャル機構の代わりに出力軸に2つの電子制御多板クラッチを持ち、単なる差動制限だけで無く、左右の出力トルクを自在に制御出来ます。

フォード・フォーカスRSに搭載されているGKN社のツインスターも同様のシステムですが、ツインスターがリアのファイナルドライブレシオをフロントより僅かに高くしてドリフトを実現しているのに対し、「RS Torque Splitter」はフロントのトルクを下げる事によってドリフトを実現しています。

左右のトルク配分だけで無く、前後のトルク配分も統合制御しており、ランエボに搭載されていたAYC(Active Yaw Control)+ACD(Active Center Differential)が進化したS-AWCの様に、前後左右のトルク配分を制御して車両の運動性能を向上させています。







メカニカルLSDが電子制御化され、更に進化して差動そのものまで電子制御多板クラッチで緻密に制御し、前後左右のトルク配分を自在に制御する「RS Torque Splitter」の様に進化して来ました。

2WD用のLSDも左右のトルク配分や差動まで電子制御化されたとしたら、FF用なら外側のタイヤを多く回す事で曲がり易くしたりする事が可能になります。

こういった技術も日進月歩で進んでいる様です。
Posted at 2021/08/01 20:32:53 | コメント(0) | トラックバック(0) | Cayman S | 日記

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