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マツダ アテンザ セダン 20S 6速AT FF (250.0) 9.23(1430kg/155馬力)



2010年9月3日。
マツダは、新たなデザインテーマとして「魂動(こどう)」を掲げ、デザインコンセプトカー「靭(SHINARI)」を発表しました。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/news/20100906/1032844/
フル4シーター4ドアスポーツクーペというコンセプトで、ロータリーエンジンで観音開き4ドアという形で、スポーツカーの新たな形を生み出して登場したRX-8に通じるものでした。
当時、このコンセプトカーが発表されて思ったのは、RX-8の後継にしては大柄過ぎなことで、次第にアテンザの新型モデルに採用されるのでは?と囁かれるようになりました。
そして2012年11月20日。
ついに第3世代アテンザとしてFMCされ、「靭(SHINARI)」のデザインを生かしたスタイリングへと生まれ変わりました。
それが最も具象化されたのは、ワゴンよりもセダンに思うのですが、最初に見た印象としては、大柄なFFセダンにありがちな鈍重なイメージが見事に払拭され、まるでエンジン縦置きFRなのでは?と思わせる、伸びやかなスタイリングで、それはあたかもホンダがかつてチャレンジした、FFフロントミッドシップに通じるかのようで、当時のホンダが機能的な弱点を抱えた上で成り立ってたのに対し、マツダのそれは、正統派エンジン横置きFFで、FRにも負けないスタイリッシュさを実現したのです。
しばらく、日本製のセダンは低迷傾向で需要が伸び悩んでたのですが、その背景として20年以上前に流行ったスタイリッシュ4ドアHTブームで実用性本位なセダンが激減し、背が低くて後席は狭く、着座位置が落とされてシートバックが寝かされた、劣悪な居住環境に辟易したユーザー達は、より実用的で室内が広いミニバンやSUVへと移行していったのです。
そんな今だからこそ、改めてセダンの価値を見出したい・・・。
クルマを愛し、走りを愛する人ならば、誰しも思うこと。
そこで新型アテンザは、実用一点張りだと、より室内が広いミニバンやSUVに対して大きなアドバンテージとはならず、周りの人たちが振り向くほどインパクトのある、エモーショナルなデザインを与えることで、セダンに走りのイメージを脳裏に焼き付ける。
その上で、前席・後席共に適切な居住空間を設計する。
そんな形で、新型アテンザのセダンは設計されたのでは?と推測します。
よって、厳密にパッケージング評価すると、決してスペース効率を最優先したものであるとは言えず、あくまでもロングノーズでデザインされた、「靭(SHINARI)」と、Dセグメントサルーンの世界戦略車として左右どちらのハンドルに対しても、ペダルレイアウトを適正化、更にはブレーキマスターも適正化したことで、バルクヘッドは遥か後方となっているので、全長4.9m弱の割にはストレッチリムジンとは言い難い居住空間の広さに留まる結果となっております。
では、早速試乗です。
最初に、セダンのガソリン2Lモデルに乗ったのですが、運転環境はかなりスポーツカーに近いもので、低い着座位置でシート座面角度も適正で、ある意味マツダロードスターをすら超えたものです。
かなり大柄になったボディであるが故に、一見非力なのでは?と思われるでしょうが、エンジンをしっかりと回すことで、スポーティーな走りを楽しむ分には、むしろ丁度良いパワーである、とすら言えるものです。
旧型2Lと比較しても、発進時にトルコンが滑った後にグワっと加速する癖が影を潜め、MT車と遜色ないリニアな加速特性に改められて、相当にスピードコントロールがしやすい特性になってました。
そして、4-2-1排気の効果でCX-5同様にエンジン回転が軽くなって、高回転までストレスなく回り、それが結果としてクルマを操る楽しさに大きく貢献したのです。
そして何よりも、SUVじゃなくてセダンである最大の価値は、クルマ全体の重心が低くなって、タイヤ外径が小さくなったことでステアリングを切ったときの、ヨーイングの発生がかなり自然になって、より楽しめるハンドリングに仕上がっていたことです。
ただ、絶対的なサイズが大きいことのデメリットもあり、国内でよくある狭い道で曲がる際には、全長の長さ・ホイールベースの長さが足枷になることも多々あり、その部分を望むならば、次期アクセラに期待する方が賢明ですね。^^
とはいえ、久々に日本製セダンの復権を予感させる、そんな手応えを新型アテンザから感じ取ることが出来ました。
マツダ アテンザ ワゴン 2.2DT XD・Lパッケージ 6速AT FF (340.0) 8.74(1530kg/175馬力)



そして、いよいよ待望のクリーンディーゼル仕様、そしてワゴンです。
今度の新型アテンザでは、ワゴンの方を60mmショートホイールベース化しており、セダンの方で、よりショーファー向けに、マツダ社の役員さんの後席としても向くように設計されたのでは?と、ここでも推測可能です。
こうした違いは後席居住空間に現れ、ワゴンボディでは後席足元スペースが狭くなるのは想定内としても、着座位置はセダンとあまり変わらないため、後席からの前方の見晴らし性を期待する向きにはちょっと・・・というところでした。
いざ、ディーゼルで試乗となりましたが、タイヤが17インチから19インチになって、ステアリング操舵力が全体的に増したのですが、基本的なハンドリング特性に大きな違いが見当たらなかったことから、全ての仕様に対して、しっかりとテスト走行を重ねて開発された結果である、と言えるところです。
CX-5でも定評あるクリーンディーゼルは、2.2Lターボで低速域から太いトルクを発生し、エンジンの力強さでは、もはやディーゼルが最強である、という部分に新世代を感じさせるものです。
と、速さの面ではアドバンテージのあるディーゼルですが、ドライバーとクルマとが一体になって楽しむ乗り物としては、技術的にはかなりクリアしたとはいえターボラグが存在し、ターボが効き始める150rpm付近でトルクの発生が二段階になるところがあり、その瞬間でスピード管理がしにくくなる、という弱点がありました。
今回の試乗車は、本革シートと電動パワーシートが付いたLパッケージで、シート座面角度の適正化はよりしやすくなったのに加え、本革シートながら滑りにくい工夫が施され、シート本体のコシもしっかりとしたもので、むしろスポーツドライビングにうってつけ、とすら言える出来でした。
ステアリングは、いずれも革巻きで9時15分に親指を掛けるように合わせた形状で、CX-5にも採用されているのですが、非常に機能的で操作性に富んだものです。
これがもし、生産終了前のRX-8にも採用されていたら、よりハンドリング評価が増していたかも・・・と思ったのでした・・・。
では、新型アテンザの判定ですが、今や大半のユーザーさんがクリーンディーゼルの動力性能の高さと低燃費に惚れているようですが、それとは裏腹にスピード管理がよりしやすくて、エンジンを使い切る楽しさで増しているガソリン仕様を推奨し、あえて
セダン20S支持とします!
Posted at 2012/11/21 19:29:44 | |
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