この度は、第17回わたしの五選にご参加頂いた方々に、感謝御礼申し上げます。
今回、前編として本邦初のワーストカーオブザイヤーを開催する運びとなりました。
過去、ポジティブな企画ばかりを取り上げてきましたが、今回はワーストという初のネガティブ企画で、どんな結末になるか?主催者としては期待と不安でいっぱいです。
そこで、当方としては、どんな選考基準で挑んだか?を、ここで表明いたします。
実際に乗ってみて、これはちょっと・・・と思ったことが最初の選考基準なのですが、その中であえて厳しい指摘をすることで、将来的に成長に少しでも繋がるように、批判のための批判ではなく、パートナーシップとしての助言・提言をしていくことを考慮してきました。
では、いよいよ発表していきます。
【第1位】 ホンダ Nボックス・Nボックス+
ホンダ Nボックス カスタムG・Lパッケージ FF CVT (155)



自販連(日本自動車販売協会連合会)の統計による登録車、及び全軽自協(全国軽自動車協会連合会)による軽自動車の販売台数ランキングにおいて、昨年12月にデビューしたNボックス、及び今年7月にデビューしたNボックス+の販売台数は18203台で、スズキ・ワゴンRの15946台を抜いて、軽自動車ベストセラーとなり、登録車と合わせてもトヨタ・アクアの24192台に次いで総合2位の記録を達成いたしました。
昨年まで、軽自動車への開発が遅れがちだったホンダにとって、Nボックスから始まったNシリーズに掛ける、次世代軽自動車への期待は大きく、開発費だって相当に投資されたはず・・・だと思ってます。
それだけ、日本の一般ユーザーに支持されたわけですが、Nボックス系には今後ベストセラーカーとしての責任を、ワゴンRに代わって負っていく義務がある、と当方では思うわけです。
デビュー前には、センタータンクレイアウトの採用などでパッケージング面での優位性に大きく期待していたのですが、発売後の試乗記を振り返ってみても、酷評されるケースが多かったことがお分かりいただけるかと思います。
主に問題にしたのは、Nボックスの後方に固定されて背もたれが寝かされた後席環境で、追突時の安全性に疑問を呈し、更には、前方に後席は移ったけど今度はシート本体の座り心地が落ちたNボックス+にもがっかりでした。
こうした居住空間の問題のみならず、走りの面でも新規で開発された割には音振レベルが大したことがなく、重い車重も災いしてCVTはズルズルで制御過多、ハンドリングもゆるゆるで、走りの質感や剛性感の面で、どう考えてもスズキ勢に対して劣勢な、そんな印象でした。
当方としては、言いたい。ホンダよ、本当にこれで良いと思ってるのか?と。
今年のベストセラーになったことに奢ることなく、来年以降の精進に務めていただきたい、という願いでワースト1としました!
【第2位】 BMW 6シリーズグランクーペ
BMW 640iグランクーペ 3.0T LEDヘッドライト 8速AT FR (1008.0) 5.81(1860kg/320馬力)



かつて、福野礼一郎氏の評論で、こんな話があったことを、よく思いだすのです。
「こんなセダン、本当は作っちゃいかん、売っちゃいかん、買っちゃいかんのですよ。」
「でも1台くらい、こんなセダンがあったっていいじゃないですか!」
これが、当時初代カリーナEDの開発を手がけた、元トヨタ自動車副社長の和田明弘氏からのメッセージだったそうです。
1985年にデビューするのですが、日本人がいかに実用性よりも見た目のスタイリングを重視するクルマ選びをするか?を象徴する出来事でしたが、21世紀になった今となっては、あの当時では考えらなかったことが起こって、メルセデスベンツが4ドアクーペとしてCLSを発売し、現在2代目になっているのです。
そんなCLSを横目で見たBMWも、北米市場では保険料面で不利な2ドアクーペのみで指をくわえてるわけにはいかず、今年になって6シリーズグランクーペを導入しました。
と、売り手の事情は理解できるのですが、こんな作っちゃいかんセダン作るために無駄な開発費を、BMWには掛けて欲しくなかった・・・というのが当方の本音です。;;
インテグレイテッドになって多少は自然になったとはいえ、アクティブステアはやはり不自然で、それも5や7と差別化するためなのか、よりステアリング初期応答性を過敏にしてる傾向だし、全高を落とされたパッケージングで、一見豪華で立派な後席もシート座面クッションは薄く、長距離ドライブのことを考えると、普通のセダンの方が・・・と思うところであり、走り重視でいくならショートホイールベースな2ドアで・・・というのが筋でしょう。
せめて、マツダRX-8の英知を生かして欲しいと思うのですが、北米市場を重視した車両開発においては、そんなことお構いなしな模様です・・・。;;
【第3位】 日産 ラティオ
日産 ラティオ 1.2 X CVT FF (147.0) 13.04(1030kg/79馬力)



日本国内において、日本の国土に見合った5ナンバーセダンの復権を望む声は、決して少なくありません。
今や、トヨタ以外の日本の自動車メーカーは国内販売のみを前提とした車両開発が非常に困難になり、21世紀に入ってからのグローバル化の流れもあって、軒並み欧州・北米の市場でも対応できるように、国際的サイズで設計されることが殆どになりました。
そんな流れで日産製コンパクトセダンにも影響は波及し、中国市場向けに開発して3ナンバーボディとなった2代目ティーダの国内販売を見送り、初代ティーダをベースにしてたティーダラティオの路線変更を余儀なくされ、またシルフィも中国市場に配慮して後席3人掛けでも広さを保つためにも3ナンバーボディとなり、こちらはまもなく12月5日には国内でも発表される見通しです。
その路線変更を余儀なくされた結果として、K13マーチをベースとした4ドアセダンとして、ラティオをタイ生産で国内に輸入する形で導入されることとなったのです。
いくらタイ産でも品質が良くても、日本国内の製造業を空洞化させてしまう危惧は、依然残ったままです。
と、産業アナリスト的な視点を抜きにして、純粋に4ドアセダンとしての機能性で評価しても、とてもじゃないけどお勧めはし難いものであった・・・というのが、最も残念なところでした。
セダンの復権とは言うけれど、その居住空間設計は昭和時代から変わらないところで、実寸での広さでは外寸の割りに広くなった進化しているのですが、実際に座る乗員の着座姿勢をどう設計するか?という部分で、後席着座位置を落としてシート背もたれを寝かせることで、カタログ数値上の室内長を確保するという、姑息な手段で未だに作られているのにはガッカリです。
実際、運転席に座ってもシート座面角度が不適切でポジションが合わなかったのです・・・。
更に言えば、マーチ・ノートと同様の直3・1.2L・NAとCVTの組み合わせによる鈍足さ、駆動伝達のルーズさも問題ですが、それ以上に空間設計は駄目でしたね。;;
せめて、運転席だけでも良好なノートなら・・・です。
【第4位】 メルセデスベンツ Bクラス
メルセデスベンツ B180 ブルーエフィシェンシー 1.6T 7速DCT (?)



あの失敗作と言われる、2階建てサンドイッチ構造からお別れできる・・・そう期待?された2代目Bクラスでしたが・・・。
今年初めに現行Aクラスに乗って、一概にサンドイッチ構造が失敗作とは言えない・・・と思ったのでした。
確かに、底上げされた居住空間に低く寝そべった姿勢を前提とした着座姿勢で設計したので、運転環境としての違和感はあるのですが、乗員を安全に安心して運ぶ乗り物としては、変速がスムーズでショックが少ないCVTと組み合わせて、おっとりしたエンジンと組み合わせた乗り味は、かつての190Eを彷彿をさせるものでした。
しかも、サンドイッチ構造ならば、前面衝突時にエンジンが路上に落下することで、居住空間に食い込む危険性を激減させた、という部分でもっと評価しても良かった・・・と後悔したのでした・・・。
後悔先に立たずと言いますが、床下に燃料電池を積むスペースが消えて平凡なFFとなった今度のBクラス。先代以下の衝突安全性能にするわけにもいかず、その関係か、まるで日本製の緩慢なFF車のようなパッケージングでバルクヘッドは後退し、来年1月に発売予定の次期Aクラスとの共用化の関係か、ステアリングコラムはトヨタ車みたいに(笑)低いという、何ともカッコ悪い出で立ちに・・・。
そこに、こともあろうかツインクラッチを採用して、しかもメルセデスブランドに配慮してシフトショック軽減を優先した結果、変速速度が遅くなって体感シフトショックが増えたという皮肉な結末に・・・。
当方が乗ったのはデビュー直後のモデルで、最新型では幾分改良はされたとスタッフから聞いてはいるのですけどね。^^;
という訳で、メルセデスらしさが感じられない1台でした・・・。;;
【第5位】 レンジローバー イヴォーグ
ランドローバー レンジローバー・イヴォーグ 5ドア ピュア 2.0T 4WD 6速AT (450)



そもそも、CCVとして定評あるブランドであるレンジローバーにおいて、乗用車と同一のフルモノコックボディで4輪独立式サスを持った、SUVなるジャンルのモデルを導入した地点で、ランドローバー及びレンジローバーブランドに泥を塗っている、という件が一つ。
というか、多くのエンスーがそうであるように、当方もクラシックレンジを支持する者なのです。
こんな乗用車みたいなので、どの程度オフロード走れるの?と思うのです。
仮に、今度のイヴォーグはオンロードカーだとしても、廉価仕様のピュアと豪華仕様のプレステージとの見た目の内装質感の格差は尋常ではなく、高級ブランドのレンジローバー乗りとしては、どう考えても貧相なピュアはなしでしょう・・・。
低燃費・低炭素を目標に英国政府が作らせたと言われるイヴォーグですが、引き換え?に直4ターボでは味わい深さに欠け、それはまだいいとして、電動PSのステアフィールも不自然と来たのですから、お好きな方はご自由に・・・としか言いようがないですね。^^;
というか、世界的に見てCCVでジムニーの次に大きいのが、いきなり3.6Lのラングラーとかでは、いくらなんでもラインナップが貧弱すぎと思うのです。
それだけに、ファッションSUVは要らないから、実用本位な2Lクラスで本格CCVが欲しい・・・と渇望するのです・・・。