
NSXの足回りを作りこんだ経験をまとめておきます。
最初、
ノーマル車両のノーマルスプリングでミニサーキットを走りました。
それでも、70キロから100キロぐらいまでの低速度領域ならFRのスポーツカーとはまったくちがう、ミッドシップのハンドリングを味わうことができます。
それは、一言で言うと「Gと遊ぶ」感覚です。
それに慣れてくると、150キロぐらいまでで全開走行させたくなってきます。それには中山サーキットがベストでした。
やはり、スポーツカーでミッドシップを走らせるのは楽しいです。
FRとは別の次元だと思います。
サーキットで、MR2やMR-Sなどに横乗りしたことがありますが、NSXのミッドシップレイアウトと本格的なサスペンション(ノーマル)とは同じではありません。
剛性感と軽さとパワーの3つ。 エンジンがミッドシップである必然性を実感できるのはNSXだけです。
NSXの開発にドライバーとして関わった元レーシングドライバーの黒沢元治氏が
「なぜ、1200キロ以下でミッドシップのスポーツカー」にこだわるのか。
それは、NSXをサーキットで走らせてはじめて実感できることです。(少し、想像力は必要ですが)
特に、2010年に一度だけ鈴鹿サーキットを5周ほど走ったことがありますが、「やはり、NSXは鈴鹿で走ることを楽しむためのスポーツカーだ」と実感しました。NSXの高速領域での安定性はスゴイです。
もちろん、スピードが尋常ではなくアクセルは全開では踏めません。
(S時を登り切って、デグナーカーブまではアクセルをゆるめてドライブしてしまいます。)
まあ、私の低レベルな走りでも、NSXだとそれなりに楽しめるということです。
話は2008年に戻します。 すぐに、LSDとサーキット用のショックに変更しスプリングも固めのものにしました。
NSXはエンジンの重心が低く、運転席やフロアの重心も、普通のFRやFFとはまったく違います。
フルブレーキングでノーズダイブしコーナー進入から縦Gが横Gに変わり最大になっていくようなシーンを想像してみてください。
タイヤグリップ限界の90%ぐらいに近づけて走る場合は、ミッドシップの面白さはご想像のとおり「危険な匂いのする緊張感」に変わります。
パワステではないNSXは、ステアリング・インフォメーションがダイレクトで、路面ととても親密な対話ができます。しかし、ノーマル状態のサスペンションセッティングではいくつかの不安と問題点があります。
<ノーマル状態の問題>
1.ノーマルスプリングではブレーキングでノーズダイブが大きく、フロント荷重を活かせません。コーナーリング中もロールするために、路面をとらえるタイヤのグリップを十分には活かせないので、ニュートラルステアを維持しづらいです。
2.それでも、限界領域を試そうと横Gをかけてアクセルを踏んでいくと、
リアがブレイクしてオーバーステアでスピンになる。
3.カウンターステアで立て直せるコントロール領域が狭く、限界を超えるとクルッとイン側に回りこんでしまう。
多分これはミッドシップで後ろが重いこととロールによるタイヤ接地面の変化が原因。
タイトなS字コーナーで「ロールの揺り返し」を使うと、スピンする可能性が高い。(ちょっと、遊びすぎ)
4.フロントメンバーを下と前の2箇所でつなぐ、メーカー純正のアルミ製のバーで補強します。タイプR仕様です。
5.いわゆるボディ補強、たとえば板を溶接したり、スポット増しなどはNSXには必要ないようです。
第一段階の走行会仕様、スプリングとショック、LSD、ブレーキパッドを変えた状態です。
懐かしい
「銀色NSX」様が先の方に見えますね...。
<対策するポイント>
車両の重心や絶対重量のバランス、そしてボディを路面とつなぐ
サスペンションアライメント調整の両方を改善していきます。
1.
スプリングをもう少し固める。 ※固めても、街乗りの乗り心地は変わっていない。
2.車高調整で目一杯下げる。
3.
ショックをサーキットように交換する。
4.街乗りにも影響ない余計な部品は外す。(ABS、スペアタイヤ、バンパーの補強材など50キロ程)
5.チタンマフラー,、タコ足、メタル触媒などオーバーハングまわりを軽量化。重い純正アルミホイールを変更。
ここまでが、誰もが想像できるサーキット走行仕様の第一段階です。
実は、ノーマル車両からこの仕様で1年間に7回ほど
サーキット練習走行会で走りました。
しかし、どうもFRのような余裕ある挙動ではなく、
ミッドシップ特有の常に緊張感とハンドリングの俊敏さに対応できないジレンマがありました。
正直にいうと、これ以上攻めるのが「怖い」という感じでした。(でも楽しい)
その2に続く