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#今回は久しぶりに台湾の鉄道ネタが登場です。
#通貨について:この旅行記では、ニュー台湾ドル(新台幣)を“元”、日本円を“円”と表記しています。なおこの旅の段階での為替は1元≒2.6円を目安にしてください。
● 扇形機関車庫を見学
彰化市内散策を終え、彰化駅で一息つくものの、再び出発。
次の目的地は駅構内の「彰化扇形庫」。日本統治時代に造られた扇形機関車庫である。
ちなみにWikipediaの説明を引用すると…
1922年(大正11年)に建てられ[1]、転車台を中心に12本の車庫線が放射状に配置され、それに半円形弧状の車庫がある[1]。台湾の日本統治時代の産業遺産の一つである。
元々台湾には彰化と台北・新竹・高雄港・嘉義の5箇所に扇形庫があったが、彰化を除く他の4箇所は1994年までに解体された。本施設も1995年に台鉄が中部電聯車維修基地(中部電車車両基地)を建設する為に撤去する方針を示したが、地元民や鉄道ファン達が保存運動を行った結果、本施設を残す事となり電聯車維修基地は彰化駅南側に移る事になった。
彰化扇形庫は台湾で唯一の保存された扇形庫であり、彰化県の歴史建築である。
駅構内とは言え、駅舎の裏手になるので、随分と大回りして線路の反対側まで歩かなければならない。
駅に貼られていた案内図には、親切に目印になる建物(商店)の名前が記載されており、非常に有り難い。
但し固有名詞がどうしても漢字なので、漢字が読めない西欧人にとってはかなり不親切なようにも感じるのだが…これはここに限らず台湾全体に言えること。まあ漢字の読める日本人はラッキーである。
まず駅前の繁華街を抜け、線路沿いの道へ。
鉄道関係の施設跡なのだろうか、味のある煉瓦の廃墟もみられる。
線路沿いの道を歩いていると、JR九州885系の兄弟車であるTEMU1000型「太魯閣号」が通過。但し煉瓦の壁のお陰で頭しか見えないが…
そしてこの道路沿いに、線路を渡る地下歩道(人行地下道)があるはずなのだが、見あたらない。
ふとふり返ってみると、入口が見えている。駅から来ると入口が見えないので、ちょっとわかりにくい。
そして地下道を抜けると、台湾鉄路管理局の「彰化機務段」という施設があり、彰化扇形庫はこの中にある。
ここで他の観光客から英語で話しかけられ、「写真を撮ってください」と頼まれ、しばらく雑談。
「日本から来た」というと、日本語で「あら、日本の方ですか」との反応。
何でも「私は台湾人(ママ)で、日本に留学していたときに知り合った“中国人”(ママ:つまり中華人民共和国の人)を案内していました」とのこと。
ついつい昔のイメージで、「中華人民共和国と中華民国は…」というイメージを持ってしまうのだが、政治的なタテマエはともかく、現在では民間レベルでは普通に相互往来があり、こうして“台湾人”と“中国人”が一緒に旅行していたりするのである。
一緒に来ていた、“中国人”の方も日本留学で知り合っただけあって日本語ペラペラ。しかも「(扇形庫は)狭いスペースを有効に使えて素晴らしい。日本人は何とスマートなのでしょう。」とも。“中国人”に日本人のことを誉められたのは初めての経験で、内心ちょっと面食らってしまう。
そしていよいよ入場なのだが、本来はパスポートを提示し、住所など必要事項を記入して…という手続きが必要なところ、台湾の人と一緒だと、代表者(台湾の人)が名前だけ書けばOKなので、至ってスムーズ。
こうして敷地内にはいると、目の前に扇形庫が見えている。
開いていた窓から内部をちょっと除いてみる。
しかし正面へ回るには、建物の外側をぐるっと回らなくてはいけない。
建物自体は梅小路などで見られる扇形庫と似ているのだが、決定的に違うことがあり、ここは完全に現役の機関庫であり、業務用スペースにお邪魔しているような印象であることだろうか。
これが日本なら案内人が付くなり、あちこちにロープが張られていたりするところなのだろうが、特にこうした処置はなく、完全に業務用スペースに入り込んでいるような感じなのである。
これは台湾の大らかさという側面もあるだろうが、モラルの高さがあってこそ可能なことだろう。
内部を歩いていると、貨物駅(?)や給油施設など現役の鉄道施設が続々登場。
しかし所々に見学者向けのサービスもあり、こちらは機関車の部品で造られた鉄人(?)で、記念写真スポットとして人気。
そしてターンテーブルのある正面へと到着すると、ちょうどSLがターンテーブルに載って回っているところ。あわててシャッターを切る。
ちなみにこのSLはCK120型というネーミングなのだが、元を辿れば日本統治時代に日本から運ばれたC12型機関車である。但しデフレクターが装着されているので、やや印象が違って見える。
なおここに保存されているSLは動態保存で、実際に臨時列車を牽引することもあるのだとか。
この日は特に運行している様子ではなかったが、整備作業を行う関係なのだろうか、DLに牽引されて構内を動かされている様子。(もしかすると見学者向けのサービスだったのかも知れない)
ちなみにこちらのSLはCK100型というSLで、日本統治時代は400形と呼ばれていたもの。また「国産」とのこと。(当時の台湾は日本領なので、“日本製”と解して良いのだろうか。)
なお基本的に台湾向けの形式だが、常総鉄道(現在の関東鉄道)にもこれに近いSLが納品されていたとのこと。
ターンテーブルでの作業見学を追え、改めて構内を観察。
一応、立入禁止区域が定められてはいるものの、他の見学者を見ていると、日本のように「ラインを一歩も超えてはいけない」といった様子ではなく、常識と自己責任の範囲で自由に見学して構わない様子。
まあ実際のところ「写真を撮るために多少エリア外へ出る」「近道をするためにエリア外をショートカットする」「線路で平均台遊びをする」…といった程度であれば黙認されているようだ。
しかし「ターンテーブル内に進入する」「機関庫内に進入する」といった行為を行うものはなく、あくまで「良識の範囲」である。このあたりはモラルの高い台湾ならではのアバウトさなのだろう。
しかし一方で現役の機関庫ということもあり、例え見学エリア内であっても、頻繁に機関車が往き来するので「定められたエリア内なら何をしていても良い」という訳ではなく、常に車両の動きを見ておく必要もある。
特にターンテーブルに接続された線路の延長上に居る場合、いきなり機関車がターンテーブルを通過して突進してくる場合があるので要注意である。(もちろん機関士も見学者の動きに目を光らせているので、何らかの警告をしてくれるが)
まずは景観楼なる展望台へ。
これは完全に見学者向けの施設で、構内の全容を見渡すことが出来る。
ふと本線に目をやると、ラッピング気動車が。
そして今度は構内を一周。
本線側に留置されている機関車
整備(洗車?)施設
そして改めてSLを観察。まずはCK120(C12)型。
後刻、入庫した状態。
そしてCK100型。
庫内ピットの様子
ターンテーブル越しに見るEL(電気機関車:中央~右)とDL(ディーゼル機関車:左)
ちなみにELも庫内に入っているが、ターンテーブル~扇形庫のエリアは架線がないため、入出庫は全てDLに引っ張られる形で行われる。
ふと本線に目をやると、先ほども登場したJR九州885形の兄弟車TEMU1000型による「太魯閣号」が通過。(あわててシャッターを切ったので、画像が悪いのはご容赦を)
引き続き、E1000型による「自強号」(特急相当)も通過。(同じくあわててシャッターを切ったので、画像が悪いのはご容赦を)
ちなみにこの車両は、見た目は電車に見えるが、実際は前後の機関車で客車を挟むプッシュプル方式で、欧州の鉄道に近い方式。ちなみに機関車は南アフリカ製で、客車は韓国製なのだとか。
そうこうしているうちに、続々と入出庫が行われ、轉車台も大活躍。
写真を見てわかるように、カメラを構えた趣味の人から、散歩(?)のおじいちゃん、子供連れの親子、デートのカップル…と、鉄道ファンから、至って普段着の人まで、多くの人が気軽に訪れている。
日本でこの手の施設というと、どうしても“好きな人”が中心に訪れるというイメージだが、ここ台湾の場合、かなり敷居が低く、誰もが気軽に訪れているような印象である。
そして眺めていると、「おいおい、そこに機関車を入れるか??」といった場所に機関車を留置。
完全に見学通路を塞いでいるが、そもそもここは「見学施設」ではなく「現役の機関庫」。あくまで「見学」はオマケに過ぎないのである。
近くで見るとこんな感じ。
これでは通路としては機能しておらず、どうしてもバラスト内に入って通行せざるを得ない。一応「見学通路」が定められているとは言っても、こんな感じでまあアバウトなのである。
そして通路上に留められた機関車に、チョークで一応注意書きもされている。
ただ、あまりの“一応”さに笑ってしまいそうになったのも事実。
そろそろ疲れてきたので、木陰のベンチで休憩。
こうして子供を散歩に連れてきていたり、はたまた鉄道職員が一休みしていたりと、実にのんびりとした雰囲気。
ここに座っている間にも次々と機関車が入出庫していく。
何せ暑い中なので、木陰でのんびり水分補給。
手持ちのペットボトルが空になったので、構内の自販機(本来は職員向け?)で追加購入することに。
まあユニークなドリンクのオンパレードで…しかも安い(日本円換算で30~60円程度)なので、気軽にチャレンジできる。
ただ値段は気軽でも、「蘆筍汁」(アスパラジュース:原汁20%)など、個性あふれるドリンクに挑戦するのは勇気が必要。
結論から言うと、アスパラジュースに関しては意外にマイルドで、飲めないようなものでも無かったが…とは言え、台湾滞在中に2本目を購入することはなかったのだが。
あと台湾の飲料自販機は日本製なのか、日本の中古なのか、日本語で「つめた~い」と書かれていたり、あるいは札を入れる場所があるのに台湾元紙幣は使用不可能だったりと、不思議なことが多い。
こうして休憩を挟みながら、見学終了の5時までのんびりと滞在。
繁華街を通って、駅へと戻る。
今日はこれから台湾南部の中心都市・高雄まで行き、宿泊する予定である。
<つづく>