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2022年09月12日 イイね!

物語A220:「ナイナイメー辺地の変貌」

地煙と共に後に取り残されたナイナイメー辺地。
猛者はもう居ないと王者コナンに見限られたこの地ではあったが、そこでの乱戦は徐々に広範囲に激し差を増し、その規模も性質も共に乱戦の頂点に向かっていくのである。
そして、そこで戦う戦士達にとって、自身の周りには一騎たりとも味方が居らず、全てが敵となってしまっていた。
これら敵に幾ら勝ち抜いても、勝ち抜いても、そのうえさらに幾たびとも勝ち抜こうが、敵の数は一向に減らなかった。
落ちてくる砂を掻き退けても掻き退けても、砂が無限に流れ落ちてくる蟻地獄そのものである。

「マルケットベルト作戦」。

北方地方のワンワンセブン高地とアラモフヶ丘の2箇所を空挺部隊で奇襲し占拠する。
侵攻する主力部隊がその拠点で兵員補充と物資補給を行いながら部隊の戦力を維持もしくは増強し飛び石のように渡って行き、D村に悟られずに北方地帯を素早く移動。
アラモフヶ丘でその侵攻する向きを90度転換して一気にD村を急襲し、独裁者アフェト・ラ将軍様を捕獲し第3次全村大戦を終結へと導く重要な作戦である。

この「マルケットベルト作戦」遂行の為に第一拠点のワンワンセブン高地に陣地を構築しようと空から侵攻してきたバーナモン・ゴメリー中尉の直属の配下である第30軍団とA・B・F村選抜の新米村民兵達とで編成された第1飛行隊がナイナイメー辺地の乱戦の中に居た。
D村から事実上追放されたコナン元帥を慕ってこの北方地方にまで付き従って来た忠実な第QSS戦車私団(ゲッポル・ゲッポル中佐)、SS(スペシャルソード)親衛隊(ヒル・ハインネケル大佐)がそこに居た。
生粋の北方蛮族であり、王者コナンの強者としての貫禄とそれを裏付けする腕力に惚れて崇拝しまくっている、あるそん・ろう火付盗賊方(あるそん・ろう長官)、ズナッペス団(ジェロ・ゴヤスレイ団長)、攻殻デルタレンジャー(ハンニバル・バルカ)が居た。
「マルケットベルト作戦」の主力部隊「丸太渡河部隊」から分離した「ヒホンコー」部隊(黒田大和猫ノ信大尉)が居た。
その「ヒホンコー部隊」に森で北方蛮族と力比べをしているところを強襲されて、ナイナイメー辺地まで遁走して来た元D村出身の第32装甲私団(バルター・モデル中佐)と力比べ簿相手方である生粋の北方蛮族の45独立特化組(ジンケス・カン親分)が居た。
これら9つの部隊が混ぜこぜになってナイナイメー辺地に散らばっていた。
そして、第10番目の特異な存在。
未だに無傷に近い「金」の玉の芝狸達が、それぞれ単独であらゆる手段を使いながら、ひたすら生き残りを賭けて乱戦の中に霧散し隠れ潜んでいた。

戦闘当初、化けたくとも化けられない1部隊を除いたこれら9つの部隊、中でも指揮官が元D村出身の部隊は戦闘服が整然と統一されており規律も正しかったので遠目でも部隊の見分けが簡単についた。
北方蛮族達もそれなりに仲間の識別として胸に王冠バッチを付けたり、鉢巻きや腕章をしたり、ギンギラゲバゲバの悪趣味な戦闘服を部隊の皆が羽織るという異様なセンスで部隊の統一と区別を図っていた。

このように各部隊は同士討ちをしないように、いろいろな方法で敵と味方の区別をしていたのである。
だが、乱戦の最盛期にはそれら部隊を区別していた戦闘服はそれとは見分けがつか無い程にボロボロになっていた。
戦闘で泥や馬糞や牛糞を投げつけられたり、それを避ける為に泥と化した地面に倒れこんだり、接近戦で異物を擦り付けられたりしてボロボロになってしまっていた。
戦闘服やワッペン等身に着けている物を無理矢理に毟り取られたり、時には制服その物を丸ごと剥ぎ取られたあげく奪われたりもしていた。

こうして各部隊の特徴あるそれらは部隊の区別に全く用を成さない状態となってしまった。
また、兵士達の中には、意図的に勝ち組の敵兵からその制服を身ぐるみ剥ぎ取って身に着け、身の安全を図る為に味方の振りをする兵士が居た。
特に「金」の玉の芝狸達にはその行為が多かった。
「金」の玉の芝狸達は敵兵を騙して取ったり、倒れて身動きできない兵士から無理やり剥ぎ取ったろしていた。
その為に戦闘服一式の全てを奪い取られてしまい素っ裸で走り回る兵士がそこら中に居たりするのである。
だが、裸を心配する事は無かった。
牛馬の糞尿や泥に胡椒やアザミの葉やその他諸々の物による完璧までのペイント仕様だったので、直ぐには素っ裸であると認識され難かったのだ。

つまり、乱戦の最盛期はナイナイメー辺地で戦闘服やワッペン・鉢巻・腕章などでは敵なのか味方なのかを区別する事はまず出来なかった。
それらに欺かれて味方と思って背を向けた途端に大量の胡椒を頭から浴びせられ、声に成らない悲鳴を上げているところを寄ってたかって勘袋の猫にされてしまう事が普通に起きていた。
曰く、絶対的に「周りの全ては敵」なのである。
そして蟻地獄なのである。

しかし、このような乱戦がいつまでも続く筈は無かった。
疲労という避けがたい二文字でいくら歴戦の強者でもその足が自然と止まる時が必ず来るのである。
ピークに至った乱戦はここに至って変化の兆しが起きるのであった。

闘いに疲れ切った新米村民兵が、後生大事に背負い守ってきた竈一式を木陰の地面の上に置いて座り込んだ。
この新米村民兵が座り込んだ理由が戦闘で疲れ果てた為か、あるいは作戦開始時よりこの重い竈を背負って今の今まで走り回ってきた為に疲れてしまったのかはここでは問題としない事にする。
ここで重要な事は竈がそこに置かれた事である。
気持ち良い木陰に置かれ事である。
天国のような地で後光を放つこの窯が変化の発端であった。

土鍋を頭に被って逃げ回っていた北方蛮族が偶然にもこの木陰の近くにやって来た。
土鍋の重さで顔が思うように上げられずに地面だけをひたすら見続けて走っていた。
その蛮族が何気なしに足を止めて、ヒョイとその土鍋を持ち上げて顔を上げた時、その竈が目の中に入った。
それは正に偶然の出来事であった。
蛮族がそこで足を止める理由は何もなかったし、ましてや土鍋を持ち上げる理由などは何一つなかった。
涼し気な木陰に置かれた後光を放つ竈が土鍋を誘っているのが見えた。

敵から、多分敵と思われる、確率的に高い敵の新米村民兵から奪い取った土鍋の防御力に心強い味方を得たとその蛮族は始めのうちは思っていたが、今はその重量つまり質量に重力加速度を加味した重さに辟易としていた。

後光を放つ竈を偶然に見つけたうえに土鍋の重さに耐えかねていた北方蛮族はついにその重圧から解放される時が来たと悟った。
竈にヨロヨロと歩み寄り、被っていた土鍋を竈の上に乗せてしまうと、その傍らの地面に倒れ込み、大の字になって寝ころんだ。
土鍋の置かれた竈を覆う木陰に吹く心地よいそよ風が大の字の蛮族の頬を擽りとってもすがすがしい気持ちになった。
瞼が重い。

次に、その正体もわからない程のボロ着を纏った北方蛮族風の兵士が長ネギを振り回して攻め寄ってくる敵を薙ぎ払いながら走ってきた。
身に纏う、纏わりつくと言っても過言ではないそのボロ着の様から見てかなり熾烈な戦いを潜り抜けて来たと思われる。

片腕にはその争奪戦の中を守り抜いた食材を大量に抱え込んでいた。
後を追ってくる敵が居なくなった頃、ふと竈の上に置かれた大きな土鍋に目を止まり、その近くまで寄って行き、その場に佇む。

刀代わりに振り回していた長ネギを適当な長さに引き千切るなりその土鍋に放り込んだ。
誰かに命じられた行為ではない。
北方蛮族風の兵士はここが神様がお示しになった自らの終着点であるかと捉えていた。
片腕に抱えた食材も長ネギと運命を共にして土鍋に収まる。ほとんど無意識の行動であった。
竈を置いた兵士も土鍋を置いた兵士も立ち上がり、互いに敵か味方かわからないのに、食欲から疲れを忘れて甲斐甲斐しくそれを手伝った。

そこへ将校が走って来た。
もちろんどこの部隊の将校かわからない程に見るも無残な軍服姿であった。
本当に将校であるかすらも怪しいが、体から醸し出す雰囲気は将校そのものであった。
食材の入った土鍋の中を覗き込んで顔を顰めるなり土鍋に積まれた食材の位置を整え始めた。
鍋奉行の登場であった。

給水塔を抱えた蛮族が通り過ぎようとした。
すかさず鍋奉行が柔道の締め技を使ってその場に押さえ込み奪い取る。
そして、奪われた蛮族は痛みの残る首を揉みしだきながら鍋奉行の高圧的なお指図に従い土鍋に水を差し始めるのだが、あまりにも不器用な差し方に見えたのか怒髪天となった鍋奉行はその水差しを取り上げて自らの手で水を差していった。
この時分には竈の空いた場所にも食材の詰まった幾つかの土鍋が置かれて、鍋奉行の仕事は増えていた。
鍋奉行は副官として弟子を任命した。

巨大な酒樽を奪取した蛮族がやって来た。
それを目にした鍋奉行以下、皆の目が輝く。
嬉しさのあまりの涙目もあった。
酒樽を抱えた蛮族の前面では卑屈な物言いで、その背後では背中に鋭利なナイフを突き立て、快く仲間に引き入れた。
不用心に煽られて舞い上がった蛮族が酒樽から手を放してたその瞬間、その蛮族は烏合の衆となってしまった。

その後にやって来る兵士達も手土産として食材や焼酎に酒・ウイスキー・ワイン等の飲食物に加え菜箸・焼き網・グラス・皿・ボール・フォークやナイフ、お猪口など食器類や料理道具類を差し出してくる。
宴会を盛り上げる提灯やろうそくを持参する兵士や蛮族もあった。

しかし、肝心な物が無かった。
である。
パイプを燻らし乍ら、鍋奉行は周囲の者共らをこの件で詰る。
運悪くそばにいた新米村民兵を殴り倒し、白熱電球のスタンドの強い明りを顔に押し付ける様にして火の元の在処を尋問する。
咥えたパイプの火元であるジッポは棚の上に、自らも見えない遥か上の方に持ち上げたままである。

大量の食材と酒を前に悲観に晒された兵士達の救世主となる新米村民兵がどこからか迷いこんで来た。
新米村民兵はナイナイメー辺地を彷徨っていた放火兎を縄で縛りあげて捕虜として引き連れて来ていた。
放火兎は「金」の玉の芝狸から奪った芝を背中に背負っている。
この放火兎も何かに化けてこの戦場の荒波を乗り越えようとしていたのだ。
だが、「金」の玉の芝狸の様に要領が良くない為に新米村民兵に捕縛されたである。

鍋奉行と腹心の弟子に脅され突かれながら、放火兎は竈の中にしぶしぶと芝を突っ込む。
竈の芝が積み上がると屈強な北方蛮族が一休みしているその放火兎の首根っこを捕まえて竈の火口に放火兎の目を向けるようにして頭を押しつけた。
鍋奉行の指示でピコピコハンマーを持って見物していた新米村民兵が竈の前に進み出る。
ピコピコハンマーをフルスイングで構え放火兎の頭に激しく叩きつけた。
放火兎らしく目から火花が飛び散り竈の芝に激しく火が付いた。
久し振りの火付けで燃え上がった紅蓮の炎を見ながら放火兎は感極まって失神してしまった。
窯の炎がゴウゴウと音をたて、鍋を煮立ち始める。

何の変哲もない北方蛮族がやって来た。
しかし、持っている物は何の変哲どころではない肉の塊という食材であった。
生肉に食らいつこうとする飢えた兵士から鍋奉行と弟子たちが北方蛮族を死守する。
弟子達は獲物を持つ者はその獲物で、素手の者はその腕力で餓鬼と化した兵士を殴りつけ、蹴りまくりながら押し戻していった。
そうしているうちに肉塊が無事に鍋の中に納まり、土鍋から良い香りが立ち始める。
竈の上で、絶品の香りと共に徳利に入ったお酒が水を差したフライパンの中で程よく温まり、さらに甘い芳醇な芳香を周囲に漂わせた。

芳香に疲弊した村民兵や蛮族がさらにふらふらと寄り集まって来る。
そして、新米村民兵達からお猪口や升、取り皿にレンゲ、箸が手渡されていった。
鍋奉行は取り皿の手の添え方や使い方まで事細かく指示し、その教えに一切の妥協はなかった。
従って、そのお眼鏡にかからない兵士はどのような美味な食材を提供していたとしても、情け容赦なく円陣の外へ弟子たちの手によって放り出される。
周りの兵士達も自分の分け前が増えると喜びながら進んでその追放に手を貸す。

取り皿もお猪口も準備万端となる頃、鍋奉行は素人目には出来上がっているように見える土鍋に次々と繰り出されてくる、飢えた欲望の塊の箸やフォークを情け容赦なく叩き落としていった。

得物を弾き飛ばされて落とし呆然としている食客は格落ちである。後列の道具を持つ食客達からさらに後ろへ放り投げられて輪の外へはじき出されてしまった。当然、空いた隙間には後列の食客達が割り込もうとしてひと悶着があった。だが大きな騒ぎにはならない。何故なら、鍋奉行の弟子達によって、その騒ぐ食客もまとめて場外へ放り出されるからであった。それに巻き添えを食って放り出される食客も居た。なので争いは静かな中で指突き、指摘まみ、髪引きに肘押しなどで行われた。

そして、永遠化と思われる程に待ちに待たされた鍋奉行の「ヨシッ」という合図がある。遂にナイナイメー辺地で大宴会が始まった。ナイナイメー辺地に大きな変革の狼煙が上がった瞬間であった。この時の戦士達の名は歴史のどこにも残されていない。歴史を動かすのは名も無い兵士達なのである。

この宴会という病原菌はナイナイメー辺地で戦う戦士の間で急速に広がった。感染域を広げながらキャンプファイヤーやバーベキューへと病原菌は突然変異し、コロナの感染よりも、コレラの毒々しさよりも、エボラ熱の破壊力よりもさらに早く広がっていった。パンデミックの集団発生であった。

小気味良い拍子を付けながら肩を組んで謡う兵士達、地を背中でクルクル回ってブレイクダンスにフィーバーする兵士、一発芸への笑いと野次、手拍子に太鼓の音がナイナイメー辺地の空間を支配してゆく。
この雰囲気をさらに景気づける様に大小様々な赤提灯があちらこちらに立ち上がって、華やかさを演出する。
そんな中、あるそん・ろう長官の山馬流「ザ・乱れ打」がナイナイメー辺地に轟いた。
それに合わせるかのようにキャンプファイヤーの周りで芝狸達の太鼓が可笑しくも軽快に響き渡る。

暫しの間、「灰色猫の大劇場」に出征していた黒田大和猫ノ信大尉が傷心のうえにさらに傷心の反動で遂に心の心線がキレてしまい、長柄刺股を振り回して自慢のお家芸「黒田節」を狂い舞っていた。
その長柄刺股の旋風に巻き込まれた酔な兵士が辺りに点々と散っている。
ジンケス・カン親分が黒田大尉の舞に共鳴して、扇子を広げるなり舞を舞い始めた。
「蛮族に生まれて四十九年。一睡夢 一期栄華 一盃酒 嗚呼柳緑花紅。我が人生に悔いな~し。」
拍子の合わない戯れ歌を歌うカン親分の顔を真っ赤だった。

バーナモン・ゴメリー中尉が酒樽をつかんで離さず、ぐい飲みの中の酒を舌先でチビチビとやっている。
ゲッポル・ゲッポル中佐がその横で升を傾け、口端で酒を零しながらも「よっしゃ、よっしゃ」と扇子でゴメリー中尉を仰いでいる。
その酒樽には「金」の玉の芝狸が横に穴をあけてヒルの様に吸い付いている。

ハンニバル・バルカが得意のドツキ漫才という宴会芸を大量出血覚悟で披露し騒いでいる。
バルター・モデル中佐が居た。
ヒル・ハインネケル大佐、ジェロ・ゴヤスレイ団長も居る。
牛歩連隊:吾羽血に小町族長が居る。
(若干、出演していない名もあるが、大宴会後に騒ぎに惹かれて合流したので気にする事はない。宴会は何でもありぜよ~。署名:歴史家一同。

瞬く間に類も見ない乱痴気騒ぎの大宴会場へとナイナイメー辺地は変わってしまった。
そして、その大宴会の中では北方蛮族も村民兵も、先程までの敵も味方も関係なく、ABCD村も無く、全てが一律平等に宴に酔っていくのであった。
ナイナイメー辺地のこの騒ぎは戦闘時よりも騒々しく華やかで、D村にもその灯りと共に狂宴の騒音が届くのである。

そして、一人静かに夕食を摂っていたD村独裁者のアフェト・ラ将軍様はそこに禍々しさを予感してワイングラスを床に落とした。

-- 灰色猫の大劇場 その27 ----------------
灰色猫が玉座に座っている。
黒田大尉が柱の影から玉座を狙っている。
玉座を前に新米村民兵達が居た。

灰色猫も負けてはいない。
「灰色猫の大劇場」の面子をかけて、出演者の総出でこれを迎え撃つ。

蜻蛉とその仲間達(オニヤンマ)・バニー服の兎・バニーガールの元祖、稲葉のバニーガール。
通りすがりの神様・放火兎(代行)・狸(金銀含む居残り組)・陸亀・蜻蛉の最強の天敵洟垂れガキの集団。
蛙・蟻さん達・電気ウナギ・ツバメ・シオマネキ・カモメ・手のある蛇、実は竜・唯の迷子。
犬のおまわりさん・犬の署長・鼠・ハムスター・野良猫K・青蛇(自称オロチ)・もぐら。
螻蛄・ネズミさん・野良猫オッドアームズ・ナマケモノ・イタリアーノのイタチがカメムシとスカンク

一癖も二癖もある錚々たるメンバーに黒田大尉はキャラ負けして、既に居なかった。居場所については本編参照。

--続く
この物語はフィクションです。実在の人物、団体とは一切関係ありません。
この物語の著作権はFreedog(ブロガーネーム)にあります。
Copywright 2022 Freedog(blugger-Name)
Posted at 2022/09/12 20:02:26 | 物語A | 日記
2022年07月16日 イイね!

政教分離

憲法20条に示された「政教分離」って、知ってますか。
ぐぐろうゼヨ、やっほーと叫ぼうゼヨ。その他いろいろ。

政治家が売名行為で宗教活動に関与するって、違反でないか?
知らなかったでは済まないと思うが。
どこぞの学園?も同じことをしていた気がするが。
選挙前は一般人だから、どんな売名行為もOKってか?

武士は食わねど高楊枝、ではないが、武士は命がけで武士道を守っていた。
武士に足らんとして、武士道を守っていた。
もちろん武士道が何たるかを考え、自らを律していた。

「政治道」なんてのは無いのがこの世か。
Posted at 2022/07/16 14:07:26 | ぼーや木 | 日記
2022年07月02日 イイね!

物語A219:「王者コナン転進」

王者コナンは黒田大尉を難無く葬り去った後、あまりにも力が有り余り過ぎてしまい、不完全燃焼の闘魂を持て余してしまった。
この気分を晴らす為の獲物が居ないかとナイナイメー辺地を砂粒一つ見落とさずに眼光鋭く獲物である強者を探すの王者コナンであるが、周囲に見えるのは、大粒の涙をボロボロと流しながらも両腕を精一杯振り回して走り回る雑魚キャラや、前に縦に構えたピコピコハンマーを前後に揺すりながら他の雑魚キャラを追い回す同じ雑魚キャラなどぐらいであった。
どの姿にも王者コナンが思い描く戦士同士の力の限りに闘っている風というより、唯の子供の喧嘩・虐め、もしくはじゃれ合いとしか見えない光景しか見えなかった。
ついに、渋々とだがこの周囲に我が敵無しと受け入れた王者コナンは手近に寄って来るそのような手頃で運の悪い雑魚キャラを二張の張扇で弄び乍らワンワンセブン高地へと引き返し始めた。
暴走した戦車に引き摺りまわされボロボロになったベンとハーがその戦車を引っ張りながら、活躍の場も王者コナンへのしっぺ返しも出来なかったと悔やみつつ、とぼとぼと王者コナンの後に続いている。
その二つの口は雑魚キャラから奪った戦利品のスルメを齧っている。

ワンワンセブン高地頂上に辿り着くと、せっかく相まみえる事が出来ると期待の強者と思ってい黒田大尉の実力に落胆し落ち込んでしまっている王者コナンは高地頂上にある自分専用の床几にペタリと座り込む。
下草を揺する風が王者コナンの体を労わる様に一寸の間だけ包み込んだ。
その心地良さが闘魂のメルトダウンを防いだ。
期待値ゼロと確信しているが、次の強者が出現する事に儚い期待を込めて念押しに大乱戦の内と外を半開きの片目で眺めてみるのだが、その目の中にはやはり永続的な失望の光以外には何もなかった。

すっかり手持無沙汰となった王者コナンは暇潰しにベンとハーに賭け勝負を持ち掛けてみるのだが、あっさりとあしらわれた挙句に中指立てられて断られてしまう。
前回の卑怯な賭けからまだ立ち直っていないベンとハーなのであるからして、彼らの拒否権の発動は当然であった。
それよりも、戦車に引き摺られてボロボロになった体を王者コナンにこれ見よがしに見せつけながらも、眼は明後日の方向に向けて、その傷を癒すためにペロペロと長い舌で舐めているベンとハーであった。

ベンとハーのこの皮肉な対応でガン無視され、手持無沙汰になったうえに、強者出現も半分諦めて、力を持て余してしまった王者コナンは床几の上で両の足をブラブラさせ始めるのである。
それはまるで待合室の子供状態であった。

そんな王者コナンの元へゲルフォン・ルント中佐が率いるBB歩兵私団の伝令が転げる様に慌てて駆け込んできた。
このBB歩兵私団は、現在ここより東の地域で北方蛮族を相手にお山の大将を狙っての力比べをしているはずだったがと王者コナンは疑問に思い伝令を見つめて首を傾げた。
仲間同士の争いに今更に救援を請うでもあるまいし、何故にその伝令が慌てた走り込んで来るのだと疑問に思う王者コナンであった。

その慌てる伝令は間違ってベンに向かって深々とお辞儀をした。
それを見ていた王者コナンの方眉がピクリと上がり、ベンは胸を張って伝令の前に立ちはだかり、ハーはその隣で目を丸くして伝令の行動に驚きつつも内心でベンを妬んだ。
プライドの連鎖反応である。
伝令はベンに恭しく頭を下げて礼をした後に、その頭を上げて報告の弁を述べようとした時に毛むくじゃらの傷だらけの獣を目前にして、伝達すべき相手を間違っている事に気が付き、自分の大失態を伝令は自覚したが、既に後の祭りである。
暇潰しに恰好の獲物を得たという風にニコニコ顔の王者コナンがベンの影からニョロリと顔を出す。

遠方から駆けて来た汗とはかなり違う意味の幾筋かの汗を額に滴らせながら、改めて王者コナンに恭しくお辞儀をしてから報告を始める伝令であった。
だが、王者コナンは伝令に「くるしゅうない」、「もちっと近う寄れ、近う。」と声を掛けるのであった。
伝令が近くによると素早く背後に回って、無理矢理地面に倒し「疲れている様での、我が自ら揉み解して進ぜよう。」と宣った。

伝令の労をねぎらうかの様に疲れた伝令の筋肉を揉み解し、そのお肉もついでにヅコヅコと突き解し、額に拳を当ててグリグリとマッサージをし、骨の髄まで届くようにニギニギする王者コナンであった。
そして、その間、伝令は息も絶え絶えに王者コナン直々のマッサージに感謝しながらも、報告を続けるのである。
言葉では言い尽くせない必死のその報告を要約すると次のようになる。

北方蛮族の第1高歌猟犬兵軍を率いるワシタ・ブラックケトル酋長が此処ワンワンセブン高地より西方に位置するアラモフヶ丘にて奇妙な一団を発見した。
この時、その奇妙な一団は一夜にしてアラモフヶ丘に立派な一夜陣を築きあげ、明け方にいつもの縄張り巡回をしていたブラックケトル酋長はその一夜にして現れた堅牢な陣に度肝を抜かされてしまう。
昨日の巡回時にはその寒々としたアラモフヶ丘には、枯草以外には何も無かったとケトル酋長は認識していたのである。

ブラックケトル酋長は縄張りに建つその無粋な一夜陣に驚きと共に怒りを覚えた。
一夜陣を落とすべく、すぐさまに果敢な攻撃を加えるのだが、奇妙な一団は少数ながらも数に勝る第1高歌猟犬兵軍を相手に一歩も譲る事なく果敢に戦い、攻撃の事如くを退かせて陣を死守したのである。
ブラックケトル酋長はその一団の戦いぶりを観察しているうちに、守りを重視するあまりに本当の実力を出して闘っていない風に感じた。
それはつまり、逆を言えば余りにも手強い相手であるという事だった。
だからと言って、縄張り内の陣地に酋長は許せなかった。
酋長のプライドだけでなく、しのぎを削っている他の蛮族にこの事が知られると、侮られてしまい、盤石の我が身が危うくなるのである。
包囲されている奇妙な集団は地理的に後には引けないが、ブラックケトル酋長もまた後には引けないのである。

そして、第1高歌猟犬兵軍が一夜陣を包囲し、散発的な小競り合いを除いては、ほぼ硬直状態になってしまっているとBB歩兵私団の伝令は語った。
ここで終わりならばBB歩兵私団のゲルフォン・ルント中佐はブラックケトル酋長にそのまま任せておき、勝敗後に戦力の衰えた勝ち組に襲い掛かるだけであった。
だが、アラモフヶ丘の奇妙な一団の味方と思われるかなりの数の大部隊をルント中佐は平地で発見した。
アラモフヶ丘の一団と合流しようとして、包囲する第1高歌猟犬兵軍の背後を遠巻きに巡回しながらその隙を伺っていたのである。

その部隊はゲルフォン・ルント中佐率いるBB歩兵私団と、アラモフヶ丘を包囲する第1高歌猟犬兵軍を併せても互角どころかプラス・マックスαの規模で、武器装備も万全な大部隊であった。
ルント中佐は単独でその刺々しい部隊への攻撃に躊躇ってしまい、遠巻きにその大部隊の後を追従していた。
もし、これが北方蛮族であったならば、全滅も顧みずにすかさず手を出すであろうが、元D村の兵士であるルント中佐はその程度なのだなぁとこの話を聞いて王者コナンは思う。
この北方に勝ち負けは無く、常に闘いを求め、その闘いで自らの力を育くんで行く事がこの北方独特のルールなのである。
まだまだ、ルント中佐は勝敗に拘っている。

王者コナンは伝令のこの報告を聞きながら、アラモフヶ丘の一夜陣で戦う奇妙な一団に興味を覚えた。
一夜陣とやらも見てみたかった。
だが、あのワシタ・ブラックケトル酋長を驚かせたうえ、手こずらせている一団である。
それも数に劣る少数で包囲戦を闘っているのだという。興味が増すと共に「強者が此処に居る。」という確信が王者コナンの心内に強まってきた。
「行くべきだ。」、「否、行かねばならない。
それが運命なのだ。宿命なのだ。性だ。」心の声が大きく響く。

ここまでの報告が一段落すると、伝令は次に自分がいかにこの危険な戦地を強敵からの激しい攻撃をうまく躱しながら伝令としての責任を果たそうと危険な荒野を駆け抜けてここまでやって来たという自慢話を始めた。
その自慢気な伝令を前にして王者コナンは床几から急に腰を上げてすっくと立ち上がったのである。
言葉の詰まった伝令が下からそっと見上げると、王者コナンの眼は燃え盛る炎でギラギラと輝いていた。
誇張した自慢話をしていた伝令は王者コナンの他を押し潰す程の気迫に言葉を呑み込み込んだ。
調子に乗り過ぎてしまったと伝令は後悔して顔を蒼ざめるが、王者コナンの眼中には既に伝令の姿は無い。
伝令の姿は風に吹かれて眼に飛び込んだ煩わしい塵以下であった。

アラモフヶ丘の奇妙な一団の勇猛精進な戦いぶりを聞き、その姿を想像して身震いしている王者コナンであった。
だが、その反面ではそこから見えるナイナイメー辺地を含めたこの北方で起きている不審な動きの全体像を吟味していた。
そして、B村とその同盟村がこの北方の未開の地を利用して、D村を襲撃する作戦が行われていると見た。
とすると、この部隊に加勢して共にD村を急襲するのも有りかと王者コナンは考えた。
だが、アフェト・ラ将軍様の妬みで部下が辱められ虐められた事を思い出しはするが、自分は一切の危害を受けていない。
この点で王者コナンの心を動かすには足りなかった。
つまり、D村侵攻など眼中に無いどうでも良い事であった。

それよりも、全村制覇後にどちらの勢力が勝とうが、確実に北方へも進出するに違いないと考えた。
それも全村の大部隊を以てしての攻撃を仕掛けてくるはずである。
さすれば、その全村連合を相手に全北方蛮族を率いて戦うのも、これはこれで面白い事だと王者コナンは思っているのだ。
しかし、それはまだまだ先の事である。先の事は当たるも八卦外れるも八卦である。
期待しても無駄に終わる事がある。
なので無用に策を練らずに、今は目の前に吊るされた餌、アラモフヶ丘の強敵に当たるだけしか考えられなかった。
その他は些事である。

目の前のアラモフヶ丘に集中する王者コナンは「武者修行者である我が身」がアラモフヶ丘へ「行かねばならぬ。行かねばならぬのだ。止めてくれるな八兵衛!」と決意するに至った。
宝物の大半を不覚にも失って気落ちしているベンとハーに王者コナンは気合の一括を入れてて引き立たせると、此処を出立するべく戦車に括りつける。
王者コナンのオーラに共鳴するかのようにベンとハーも奮い立つ。
ベンとハーもある意味では北方の強者、戦う武者であった。
括り終えて戦車に乗り込む頃には、王者コナンは、果敢に一夜陣を守っている一団は押しも押されぬ猛者であり勇者であると決めつけ、理が非でも我と闘わずにしておくものかと勢い込んだ。
王者コナンを乗せた戦車は鞭の一鳴りに反応したベンとハーによって力強く曳かれてアラモフヶ丘へと駆け出した。
ベンとハーもすでに乗り手の熱情を肌で感じ取っており、行く先にはベンとハーの求める何かがあると強く感応し、土煙を揚げて地を蹴る足も力強くなっていた。

-- 灰色猫の大劇場 その26 ----------------
灰色猫が玉座に座っている。
黒田大尉が柱の影から玉座を狙っている。
玉座を前に新米村民兵達が居た。
新米村民兵は興奮気味して改造ピコピコハンマーを楽しそうに振り回している。施した改造を自慢しあっているのだ。
本編で滅せられた黒田大尉の大劇場乱入の図であった。
マクレン大佐に見切りをつけた右河飛足軍医の奸計に誘われ、黒田大尉は軍を再編成したのである。
「其の疾はやきこと風の如ごとく、其の徐しずかなること林の如く、侵掠しんりゃくすること火の如く、動かざること山の如し」
新米村民兵達は動かずに灰色猫を睨み付けている。黒田大尉の突撃の合図を待っているのだ。
危うし!灰色猫の図である。

--続く
この物語はフィクションです。実在の人物、団体とは一切関係ありません。
この物語の著作権はFreedog(ブロガーネーム)にあります。
Copywright 2022 Freedog(blugger-Name)
Posted at 2022/07/02 01:32:02 | 物語A | 日記
2022年03月21日 イイね!

プーチンは責任をとれ

ウクライナへのロシア軍侵攻は断固、非難する。
ロシア製商品はボイコット中!

Posted at 2022/03/21 20:08:19 | ぼーや木 | 日記
2022年03月21日 イイね!

物語A218:「それぞれの復活」

アイゼン・ブル・マクレン大佐の息子であるアイゼン・ブル・マクレン・ジュニアは、父親であるマクレン大佐から初陣には今のジュニアの実力ではまだまだ程遠いいと見なされていた。
ジュニアが主張する勇気ある行為は、若さからくる勇気であって、その勇気によるジュニアの思い描く英雄的行為は思い上がりの無謀な行為、ただそれだけであるとマクレン大佐に断じられた。

仮にジュニアの期待するそのような英雄的行為を行ったとしても唯の英雄となって終わるだけである。
さらに、それはその行為を英雄として広める者が居ればであって、ほとんどの場合は無い。

マクレン大佐は世間で祭り上げられている英雄とは死と隣合わせの存在であるとしか考えていなかった。
また、ジュニアが思っている英雄像とは現実の戦場では仲間までをも巻き添えにして死へ先急ぎする大馬鹿者で大局を見る事の出来ない無能な小者なのだよとジュニアを諭した。

そして、ジュニアの負けず嫌いな性格を見透かして、負ける事を恥と思ってはいけないとも諭した。
かの、家康公は「三方ヶ原の合戦」で大敗した後、自画像「顰(しかみ)像」を残し、負け戦を自らの教訓としたのである。
土方歳三は負け戦の経験を元に「二股口の戦い」で新政府軍から勝利を奪った。それも数千の政府軍に対し味方は数百の闘いであったと聞く。
かの猛将である織田信長も「金ヶ崎の戦い」「斎藤家との戦い」「浅井・朝倉との戦い」「石山本願寺との戦い」「長島一向一揆との戦い」「毛利家との戦い」「武田家との戦い」「上杉家との戦い」「伊賀地方の戦い」と数限りなく負けているのだ。
だが、そこから戦の何たるかを学び、これら負け戦を上回る勝利を得て天下をほぼ奪い盗ったのである。
かの軍神である上杉謙信も61勝2敗8分とされており、必ずしも全勝ではない。
つまり、先人の英雄達に見習って負けを恐れる事はないし、それで恥じ入る事もないのである。

今のマクレン・ジュニアの気性ではこの負け戦になった時に無理にでも負けを挽回しようと勇み足を踏んで、野に果てるに違いなかった。
うまく、後世にその戦いを残す事ができれば英雄となって書物の中の一文となるかもしれないが、結局のところ唯それだけなのである。
一歩間違うと、いやほぼ間違いなくその書物の一文にすらなれないとマクレン大佐は確信している。
むしろ、第3次全村大戦の戦後の復興にジュニアが活躍すればと思っていた。
それで、当初はこの「マルケットベルト作戦」への空元気なマクレン・ジュニアの参加をマクレン大佐は許さなかった。

しかし、駄々っ子ジュニアであり、マクレン大佐も子煩悩の面を持っている。
ジュニアが簡単にマクレン大佐の言いつけに従う筈は無かった。
早速、子供部屋で床を転げ回り、壁を叩いて泣き喚いてのおねだり攻撃をする。
戸外であればこの攻撃の効果はあったかもしれないが、そこは子供部屋の中である。
それもジュニア自身の部屋である。部屋の鍵をしっかりと掛けられて閉じ込められた。
籠城という手段も考えられたが、子供部屋らしく食料の備蓄はしていなかった。
なかでも、チョコビーが無かった事は決定的であった。
あえなく自沈した。

居間の床を転げ回り泣き喚いてのおねだり攻撃をするが、今度は家の鍵を掛けられて閉じ込められてしまった。
冷蔵庫に食料があったもののジュニアは料理が出来なかった。
空腹のあまりに生の玉ねぎに齧りついてまたもやあえなく渋沈した。

駄々っ子ジュニアは名ばかりではない。
この程度では諦めないのだ。
次は夕食中の鼻水攻撃。
これはかなりの打撃を与えたのだが、効果はその瞬間でしかなく、その報復は激しかった。
部屋の隅まで張り飛ばされるもジュニアの目は父を激しく睨みつけいた。
轟沈した。

深夜での屋根の上の遠吠えは次第にご近所から白い目で見られるという小さなジャブであった。
このジャブが続くとある日突然に片膝付くダメージを与えるという陰湿な攻撃であった。
ある程度は成功するのであるが、効果を得るには時間が掛りすぎた。
さらに、この行為には窓からの景色にジュニアの落下、いわゆるニュートン沈が時折加えられて景色に花を添えた。

ジュニアはアイマスクを付けた。
「子供の子供による子供の為の法」の制定目的とする「ませガキ連合」の中でも最も過激である急進派「Jウィンダム」のシンボルアイテムである目の部分に電球を入れた光る目のアイマスクである。
これをを付けて夜な夜な不気味なほどに無表情な「光る眼」の顔で近所や屋内を練り歩く反戦運動に参加した。
「マルケットベルト作戦」責任者の息子が戦争反対運動の陣営に回ったと知れると、ご近所だけではなく軍隊仲間からも冷たい視線攻撃をマクレン大佐は浴びた。
マクレン大佐は議会で説明責任を追及されるがかろうじて、責任者に立場を守り抜いたが、かなりのダメージを受けた。

こうした、数々のおねだり攻撃にマクレン大佐はジュニアの逸る気持ちに強く押し切られてしまうのである。
だが、戦場への初陣は認めないが、その代わりにレフトブラサー航空基地でのグライダー射出係という折衷案を出してジュニアに了承させた。

グライダーの射出合図をジュニアに任せる事にしたのであるが、マクレン大佐はそれでも心配でならなかった。
このグライダー射出係は傍目から見ればただ旗を振るだけの簡単な役目のように思えるが、グライダー射出係は全飛行隊を定時間内にスムーズに誘導し発進させねばならないという重要な役目がある。
そこに、射出時間の遅れや射出タイミングの乱れがあっては絶対にならないのだ。
従って、各機の発進のタイムテーブルは準備されてある。
グライダー射出係はこのタイムテーブルに従って旗を振れば良いという訳では実はないのである。
本番では様々な事が起きると想定できるので、最後には射出係の臨機応変な手腕に寄るところが大なのである。

この射出時間のタイムテーブルはアイゼン・ブル・マクレン大佐を筆頭にして、A村村民のブレーン達(IQ500以上と自己主張しているところに多少の疑問がある。)とであらゆる不確定要素をも含めた要素を突き詰めて想定外を失くすべく血を吐く徹夜の連続で作成された重要な作戦要綱である。
この時のブレーンの一人は後日回想している。
「赤ワインとトマトジュースのカクテルは飲んだ瞬間に吹き出す程に不味かった」と静かに話しており、「血を吐く」とどのように関係があるか、そのような些末な事は適当に作ったという疑問を残すものの、この歴史書では取り上げない事とする。

この作戦に駆り出された航空機の種類は古風な凧や風船・気球に始まり、ジェットパックやカイト・グライダーまでと種々様々である。
こうした完全ではないが自力で飛行出来る航空機もあれば、ロケット弾の代わりに新米村民兵を撃ち出す自走式多連装ロケット砲「カチューシャ」があった。
新米村民兵は戦闘服の上から頑丈な防護服を着こみ、まるで砲弾のような姿でカチューシャの横に並んで装填されるのを待っていた。
それぞれの目は不安と涙で一杯であった。付近にはパラシュート兵を空中高く放り出すカタパルトや大型パチンコまでも設置されている。
その傍らにもパラシュートをしっかりと抱きかかえている不安と涙目の新米村民兵が並んでいた。

それ程に準備された航空機の種類が多彩である故にそれぞれの飛行速度・航続距離・積載能力などの性能にも大きな違いがあった。
飛行速度の異常に速い機体もあれば亀の様な時には逆走する遅い機体も存在する。
これはタイムテーブルを決する第一の要素である。

(尚、遅い事を亀で比喩する事に対し、現在全国亀連盟より多大なクレームが付けられている。
白黒黄色の差別や障害を揶揄する事と同じであり、個の特性をなじる事に等しいといった具合である。
そして、この比喩をナメクジ・コアラ・ナマケモノ・タツノオトシゴらに変えるべきだという代案が出されている。
これに対し、哺乳類協会・爬虫類同盟・虫科目学会から反論が湧いている。
しかし、全鳥類連盟からの出席が無くハシビロコワをどう扱うかで議会は紛糾し、結論が出ないでいた。
尚、魚類組合タツノオトシゴが紛糾の元となっている全鳥類連盟ハシビロコワを尻目に議会への道を歩んでいるもののその出席はまだまだ先である。)

各航空機の航続距離もしくは射程距離もかなり違っていた。
これがタイムテーブルを決する第二の要素である。

しかし、空中高く上げた凧からのダイビングは河の反対岸までが到達距離であった。
ただ、このダイビングの際に円形パラシュートを背負った村民兵の着陸地点は風まかせの運であり、翼型方形傘体パラシュートを背負った村民兵は岸辺を越え、第一拠点までではないもののかなり内陸部まで到達できた。
また、大型機は途中で過半数の村民兵を投下する為に、その後の速度及び航続距離が延びる場合もあった。
このように組み合わや運航方法で速度・距離という要素が変化する為にタイムテーブル決定の至難であった。

第三の要素として各航空機の一度に運べる村民兵の員数や物資の量、いわゆる積載能力という大きな要素があった。
だが、村民兵が楽に安全に、そして機内食も配られる航空機に集中して集まったりと勝手気ままに搭乗機を決める所も有った為に混乱してしまい、結果的に飛行速度や航続距離に多大な影響を及ぼした。
タイムテーブル決定に最も苦労する要因であり、マクレン大佐の威光が試される時でもあった。

そして、機体の性能に関係しない第四の要因として村民兵を送り込む目的地があった。
この目的地とする中で大きな拠点は3カ所、上陸地点と侵攻ルートを確保する第一・第二拠点に分かれている。
上陸地点は当然の事河の向かい岸であるが、第一と第二拠点は北方地域の内陸に入り込んだ地点で第二拠点が一番遠方、つまり内陸部の最深部にあった。

そのうえでさらに難しくしているのは、この3カ所以外に情報収集・伝令を任務としながらも同時に後方攪乱や戦闘支援を行う猿飛佳也子を隊長とした「毬高雅(いがこうが)忍び隊」の存在でであった。
この部隊は三つの拠点とは関係なしに各地に分散させなければならないのである。
それも、本隊が各拠点に到着する前にである。

もちろん、「毬高雅(いがこうが)忍び隊」は独自にこの射出以前に忍術を使って渡河している。
ここで渡河する為に航空機を必要とするのは特殊な忍術を持たない使い捨ての下忍達であった。
それと、攪乱と支援を行うに必要な物資である。
大半の年季の入った忍びはそれぞれ得意な忍法「アメンボ」「水すまし」「河童」で水面を歩いたり、潜水したり泳いだりして渡河し、忍法「バルーニング」で風に乗って北方地域全域に散会して配置に着いており、運ばれて来る使い捨て下忍達と物資を待っていた。
尚、プロ中のプロの忍びは既に「草」として北方地域に根付き、中には地元蛮族を組織して一部隊を作っている忍びもいた。

タイムテーブルにはこれら要素を踏まえて、三つの拠点で同時にその地の拠点確保と陣地構築というミッションを起こすに必要な村民数と物資の同時現着が求められていた。
仮にそれぞれの各航空機の現着時間に大きく差が出来てしまうと、最前線で武器輸送機の到着をぼんやりと待つ無防備の部隊が出たり、受け取り手のない空き地に、最悪は敵もしくは反勢力の上に物資をばら撒いたりしてしまうのだ。
当然のごとくこれらは各部隊の拠点での作戦行動に著しい支障が起こしてしまい、スピードと同時性と連携を要とする奇襲作戦「マルケットベルト作戦」が根底から失敗する可能性が多いのある。

タイムテーブルの作成は遅々として進まなかったが、アイゼン・ブル・マクレン大佐とブレーン達の不撓不屈の精神の元で、速度・航続可能距離・積載能力・目的地を考慮したうえ、作戦遂行にが滞りなく遂行される様に各機の射出時間のタイムテーブルが厳密に作成されたのであった。

しかし、事細かにタイムテーブルが決まっていても、発進間際の機体や搭乗村民兵のコンディションは複雑である。
これ故に計画に無い想定外の事や思いがけないトラブルが次々と発生する。
そして、射出する側もされる側もその対応に手惑ってしまう。

事実、射出する寸前にキャンプファイヤーの丸太を詰め過ぎが発覚したり、鍋物一式を積むために武器を放り出してしまう輩が出現して大騒ぎになったり、その対応にMPや自警団・消防団が出動してタイムテーブルが乱れてしまった。
勇気と意気込みは買うのだが、飛行に失敗した村民兵が舞い戻って来て再出発しようとした。
この割込み阻止に手間取り、順番待ちしている列に無理やり割り込まれてしまうと、そのような割り込みの余地など無い密なタイムテーブルは乱れた。
マクレン大佐とそのブレーン達にとって全くの想定外が現場では次々と発生するのである。

こういった想定外の事に適切に対処できないうえ、何も考えずにタイムテーブルの通りに空へ航空機を次々と放つと、空中では渋滞が発生し、航空機同士のニアミスや空中衝突を起こした。
航空事故が起こると、戦力を無駄に消耗するばかりではなく、その事故処理にも時間を浪費するのだ。
旗振り担当は刻々と変化する状況を確認しながら、タイムテーブルに遅れが無いように微調整し、時には順番を大胆に入れ替えたりしなければならない。
マクレン・ジュニアにとっては唯の旗振りであまりにも単純な仕事のように見えているが、実は作戦の成否を左右する程の重要な任務を秘めているのである。

それであるからこそマクレン大佐は指名したものの心配のあまりに、横で浮かれて旗を振って踊るジュニアを押さえつけ、その喉笛に冷たい冷たく光る刺身包丁を突き付けてこの任務の重要性をとくとくと説いた。
説きながらも内心ではジュニアの高ぶる気持ちが抑えられ、その重要性に臆して出征を諦めてくれれば尚良しとマクレン大佐は思っていた。
ふと、悪魔の声に従って刺身包丁をほんの少し前に繰り出そうかとも思った。

屋根のない火の見櫓。
「マルケットベルト作戦」の開始当日である。
この火の見櫓は自称「メイン管制塔」と称している。
もちろんマクレン・ジュニアに依っての命名である。
そこからはレフトブラサー航空基地の河面の崖縁にびっしりと居並ぶグライダー射出機が一望できる。
射出機と共に様々な航空機が並び、発進の待機をしていた。
射出機周辺では作業用投光器の青白い光の他に無数の村民兵が持つカンテラがせわしなく動き回り、グライダーの威容を闇の中に浮かびあげていた。溶接機の飛び散る火花がそれに花を添えており、その美しい光景を眺めている自分が何か特別な存在のように思えてしまうマクレン・ジュニアであった。
その気持ちをさらに沸騰するまで沸かせる多数の視線がマクレン・ジュニアと、その手に持つ旗に集中している。
自らの体を緊張が走り抜けてマクレン・ジュニアは身震いする。
そのまま英雄へと昇華してしまいそうであった。

マクレン大佐の「GO」サインが水性極太マジックでごっつく大きく書きこまれた軟球が、伝令の剛腕によって火の見櫓上のジュニアを狙って投げつけられ、輝く栄光を夢見るマクレン・ジュニアの頬を深く抉る。
同時にボギュッと鈍い音が火の見櫓上で響き、周辺に居た村民兵が思わず上を見上げた。
世紀の大作戦「マルケットベルト作戦」の開始だった。
頬にくっきりと「GO」の文字を転写したまま、マクレン・ジュニアは鼻血を一筋垂らしながらも、出発の合図であるA村の伝統ある村旗を大きく振り下ろした。
同時に多くの光り輝くグライダーが射出機から放たれて視野一杯に広がり、ジュニアの頭上を覆い尽くす。
まるでサテンのような光の絨毯だ。
その中をロケットランチャーが火を噴き、カイトが崖から飛び出してゆく。
正に壮観な光景であった。
そして、それが自分の合図で空に花開いてゆくのだとと思うと心が躍ってしまうマクレン・ジュニアである。

第二波が宙を舞い、続けて第三、第四波と続々とグライダーや気球が宙に躍り出て夜空に光点となって舞い上がって行った。
勇敢で英雄候補となる主にA村村民がその機体の胴体部分のあちらこちらに遠足気分で取り付いている。
主翼に取り付いているのはB・F村村民が主である。
翼流で吹き飛ばされないように必死に掴まっていた。
A村に冷遇されていても勝利に向かっているどの目も輝いていた。

カタパルトのアームが大きく振られて、落下傘部隊を上空へ放り出される。
凧がスルスルと宙へ舞い上がって行き、それにつかまっていた村民兵が、上空で宙に飛び出し四脚に結んだ風呂敷をムササビの様に広げて滑空していった。
そんな勇敢な姿を見ていると次第に旗振りをしている自分がなんだか嫌になってくるマクレン・ジュニアであった。

マクレン・ジュニアの力強い合図で笑顔がいっぱいの村民兵を乗せた、風船を束ねただけの風船気球が飛ぶ。
A村で活動する「ませガキ連合」の火種となった風船である。
ハンググライダーが走る勢いで崖から飛び出し、一瞬沈むも直ぐに黒い三角翼で風を捕らえて優雅に静かに舞い上がってゆく。

火男(ひょっとこ)面を描いた凧上がり、その凧には渡河を決行する村民兵が張り付いていた。
四人がかりで一人を揚げるのは非効率的だとマクレン・ジュニアは思いつつも、楽しそうに村民兵達が凧を揚げて操っている姿を見て羨んだ。

ジェットパックを背負った村民兵が空中でバランスを失い八の字を描いて河へ墜落した。
だが、その村民兵は重いジェットパックを一生懸命に引っ張って岸まで泳いで帰ってくる。
そして、再び挑戦し、再び墜落した。
それでも諦める風もなく、ジェットパックを引っ張って泳いでいる。

マクレン・ジュニアは失敗しても真剣に何度も何度も渡河を試みるその村民兵が羨ましかった。
旗振りに興じている自分は紙飛行機にすら乗れないのだと思うと恥じいってくる。
戦地へ行きたい。
戦場で武勇を示したい。
そして、武勲を得たい。
欲望は次第に増してゆく一方であった。

それでも、マクレン・ジュニアは父であるマクレン大佐がその重要性を説いた説法を思い出し、渋々と自分に課された仕事である出発の旗を振りを続けていた。

D村に一撃を加える大作戦、「マルケットベルト作戦」の主戦場に参加出来ない自分を自覚する。
後方で人形のような旗振りをしている自らの境地をさらに自分自身で追い詰め惨めにしていった。
苦痛であった。
旗を上げ下げする腕も痛いし、旗も次第に重く感じられてきた。
交代要員が居なかった。
交代要員に任せて逃げ出すに違いないと予想しているマクレン大佐の指示であった。

ジュニアの胸中では初陣の夢がまた騒ぎだしている。
自分も彼ら村民兵達と共にグライダーに搭乗したくなった。
グライダーの機首部に跨り、角の生えた猛々しい兜を被り、格好よく張扇で前方を真直ぐに指し示して、「進め、進め!我に従って進め!」と号令している姿を思い浮かべる。
何百もの味方を引き連れてD村へ、襲い掛かってくる敵を薙ぎ倒しながら進む姿が思い浮かぶ。

妄想とは裏腹に尾翼にでも良いからこっそりと搭乗してやろうかと考えた。
そして、妄想を現実に変えて、戦地で華々しい活躍する自分を想像した。
勲章をたくさんゲットするのだ。
大勲位菊花章・大鉄十時星章・シルバースター(銀星賞)・殊勲十字章・海軍十字章・空軍十字章・ガーター勲章・レジオンドヌール勲章・サヴォイア軍事勲章・・・・・・・・お肩叩き券・・。
そうして、勲章を胸に一杯付けて、父であるアイゼン・ブル・マクレン大佐を見返してやるのである。
初陣にはまだ早いと断じた父を超えるのだ。
妄想が妄想を呼び、その妄想が興奮の頂点に達した時、丸めたチリ紙の鼻栓が鼻から飛び出し、鼻血が噴出する。

ついに、ジュニアの我慢の緒が切れた。
旗振り任務を難波(なにわ)節名物「くいだおし人形」に任せたマクレン・ジュニアは戦地で武勲を立てようと密かに逃亡したのである。
親子揃って戦場を生きがいとする生粋の武士(もののふ)なのであった。

マクレン・ジュニアは火の見櫓と旗振りに従事している「くいだおし人形」に別れを告げ、レフトブラサー航空基地から河辺に沿って南下しながら渡河するのに都合の良い船が流れ着いていないかと探して歩いた。
船という形をとっていなくとも水に浮くのならばグライダーの残骸でも良かった。
そして、暫く歩むと河面に丸太に跨ってユラユラと揺れ動く一つの影を見つけた。
その影は河の流れに逆らいながらこちらの河岸に向かってゆっくりと櫂で丸太を操っている。
渡河に失敗した村民兵が再び挑戦する為に河岸へ戻ろうとしているのだろうかとマクレン・ジュニアは目を凝らして、月明りの中で、頭上で航空機同士が衝突して閃光を放つ合間に見えるその影を目を凝らして見つめた。

そのちょっと昔、第三次全村大戦がはじまる前に、冒険と新たな世界の探索という夢と希望を乗せ、A村民達の羨望の眼差しの中を近河の辺境へと颯爽と旅立った「USSOエンタメフライス」号があった。
勃発した第三次全村大戦のノルサンデー上陸作戦を遂行すべく「コレ船第2艦隊」の旗艦となるべく近河の辺境から急遽帰還した「USSOエンタメフライス」号であった。
だが、D村、元はF村沿岸のナハロネ・スハルタ舎監の指揮で「ノルサンデーの要塞」からの苛酷な攻撃を受け、旗艦「USSOエンタメフライス」号は「コレ船第2艦隊」と共に河底に沈んでしまったのである。
その艦長がシャット・カークであり、副長は兼務で航水士・化学主任・櫂担当を担っていたスコップ航水士であった。

そのスコップ航水士は旗艦「USSOエンタメフライス号」を失う時に艦橋で奮戦する自分の方へ飛来して来る敵側の異常な弾数とその射角をある疑念をもとに計測していた。
スコップ航水士の論理的思考で統計論学的にこの事象(戦闘中に敵方の弾が飛来する確率)を捕えた結果、カーク艦長の卑怯で卑劣な影の部分を見てしまって落胆するスコップ航水士であった。
さらに、その後の旗艦「USSOエンタメフライス二世号」が完成間近に沈没した時にもシャット・カーク艦長の我先に部下を見捨てての素早いマスト登りを見てしまった。
本部に戻ってから指揮官らしからぬこれらの行為を訴追しようと思ったが、証拠がない事と十分に証拠隠滅の時間がある事から、すぐに脱走することに決意した。

スコップ航水士は沈みゆく「USSOエンタメフライス二世号」から脱出した後、艦長から遠く離れた河辺に這い上がり、付近の岩壁に隠れた。
空から降ってきたグライダーの残骸で手ごろな大きさの丸太を回収し、故郷のB村に帰るべくその丸太に跨って河へ櫂を使って漕ぎ出したのである。
USSOエンタメフライスでは櫂の漕ぎ手も兼任していたので、その経験と腕力がこの時役に立つのであった。
そのスコップ航水士を川辺で偶然に見つけたのがマクレン・ジュニアなのである。

渡りに船とばかりにマクレン・ジュニアはスコップ航水士を大声で呼んだ。
伝説の航水士にここで何かの縁かの様に巡り合えたのである。
船と同時に操船の専門家であるうえ、讃辞の尽きぬ程に経験豊富な百戦錬磨のスコップ航水士を同行させる事が出来れば子ライオンが立派な雄ライオンの鬣を付けたようなものである。
それ故にマクレン・ジュニアは何としても仲間に引き入れるべくに最大の敬意を籠めて、必死に呼び続けた。
虎穴に入らずんば虎子を得ず。
と察したのか濡れるのも構わずに河の中へと踏み込み、水中で膝をついて両手を組んで拝んだ。

ジュニアに乞われるスコップ航水士はその時尊敬していたシャット・カーク艦長の本性をあからさまに見て意気消沈していた。
静かな田舎へ帰省し、気持ちが落ち着くまで静かに暮らすつもりでいた。
気持ちが落ち着いた段階で、徹底的に時間をかけてカーク艦長を糾弾するつもりであった。
しかし、今は一時の休息が先であり、誰にも悟られずに故郷へ引き返すことが第一であった。
特にシャット・カーク艦長だけは絶対に悟られたくない。
だが、河面一杯に広がる程の大声で自分の名を呼ばわるマクレン・ジュニアに閉口した。
シャット・カーク艦長に悟られる可能性が高いのだ。
その大声を消すために抹殺せねばならないと、呼ぶ声に手を振って返事をする。
戦場という混乱の中で消えてもらおう。
そう思いつつも、声の主が大佐の息子であるマクレン・ジュニアであり、ほぼ命令に近い呼び声がスコップ航水士の軍人としての性を騒がせ、生か死かと悩みつつも丸太の舳先を向けて櫂を漕ぐ腕に力が入っていた。

所詮は一介の兵隊であったし、それを再認識させられたスコップ航水士は丸太の舳先にジュニアを乗せ、羅針盤を見ながら二つの櫂を操って丸太そのものの丸太船で大河原へと漕ぎ出してゆくのである。

マクレン・ジュニアはスコップ航水士の操船する丸太船に跨り、自らの勇猛さをA村内外に、そして父に認めさせる機会の豊富にある戦地へと対岸の北方地帯に向かって河に力強く漕いでいった。
船を漕ぐ都度に心意気が沸々と湧いてくるのである。
宴会鍋用戦闘大型スプーンで。
スプーンの先端には特殊な鋏が付いている。
鋏の中腹は万力の様で獲物を挟み付ける。
鋏先端は鋭利な磨かれ、万力部で挟んだ得物を根元から切り取ってしまうのだ。
だがまだ試作品で、宴会場での本格的テストをしていない為に完成はまだだった。
これも父であるマクレン大佐のジュニアへの扱いにあると断じていた。

二度も艦を失ったシャット・カーク艦長はただ静かにじっと潜んでいたスコップ航水士とは違った。
カーク艦長は実に活発であり、大胆で素早い活動をしていた。
諦めるという事を良しとしない性格なのだ。
その騒音が川面を伝ってジュニア元にも微かに届いていた。
USSOエンタメフライス二世号建造の失敗を顧みずに三世号をカーク艦長は建造していたのである。
だが、そこには共にUSSOエンタメフライスで苦労を分かち合ったスコップ航水士はもちろんの事、船医マコも、また「コレ船第3艦隊」編成に向け努力し合った「2ロー」艦長やスッパロ艇長も既に居なかった。
余談だが、編成時の分かち合う労力の配分率はカーク艦長の極秘事項であり未だに公表されていない。

2ロー艦長やスッパロ艇長らの取巻き連中の居なくなったカーク艦長はこの時は自ら進んで指揮し渡河作戦中に不運にも墜落したグライダーの残骸を回収して回った。
シャット・カーク艦長は、今度こそ「コレ船第3艦隊」を再編し、堂々と仕上げた旗艦「USSOエンタメフライス三世号」で指揮する考えでいた。
だが、肩を貼った頑固で伝統を重んじる軍人が好きになりそうな「USSOエンタメフライス三世号」という堅苦しい旗艦名が心に引っ掛かっていた。
口うるさい杓子定規のスコップ航水士は居ないのだ。
そう思うと、自らの名を崩して切れ味の良い事を連想する「スパカット号」に変更しようかとも考え始めていた。
何にでも難癖をつける口汚い皮肉屋の船医マコもいないのだ。
そう思うと、艦隊名を「カーク川猿艦隊」と改めるのもあながち良いのではないかとも思った。
最新鋭戦闘艦「スカパット」号に「カーク川猿大艦隊」である。
カーク艦長はにまりと笑う。

そして、灰色猫墜落による「USSOエンタメフライス二世号」のハルマゲドン的終焉の中を、スコップ航水士と同様にかろうじてその場を逃げる事が出きた「2ロー」艦長とスッパロ艇長は村上武景水軍の主艇:山賊丸で河面を放浪していた。
安宅船の山賊丸に続いて同じく逃逃げおおせた子分どもの小早船とカッターが続いている。
ハルマゲドン的終焉を奇跡的に逃げおおせたのである。
この時の村上武景水軍は主艇ともどもほぼ無傷であったが、山賊丸の艦長はまだ「2ロー」艦長であった。
村上武景水軍のお頭カリフ・ラワ・スッパロ艇長は指揮権を剥奪されたままであった。

スッパロ艇長は建造した「USSOエンタメフライス二世号」を強奪し、同時に「これ船第3艦隊」も乗っ取るつもりでいた。
しかし、強奪するはずだったその「USSOエンタメフライス二世号」は巨大グライダー「富嶽」から落下して来た灰色猫の巨体によっては撃沈され、「コレ船第3艦隊」はまだ骨組みすらも出来ていなかった。
手に入れるはずの全てを目前で失ったスッパロ艇長の制河権制覇の野望は再燃の火種すらなく消化てしまった。
消沈するスッパロ艇長に残ったのは過去の悪行でいつの日か捕縛されてしまう事だけとなった。
その後は拷問やいたぶりが待っているのだ。
スッパロ艇長には新たな策が必要であり、この第3次全村大戦は功を成して運命を書き換える事の出来る絶好の機会である。
勝てば官軍なのだ。
だが今は失望の泥沼に嵌っている。

そして、マクレン・ジュニアと水上で遭遇した時、スッパロ艇長のトレードマークである黒に黄色の×マークの眼帯の裏側でデンジャラスな野望が芽生えるのは当然であった。
スッパロ艇長の動きは速かった。
ジュニアに敬礼する「2ロー」艦長の姿を、その正体をジュニア気取られない様に素早く背後からスープレックスを決めて河の中に始末してしまうと、「2ロー」艦長の居たその場に入れ替わるように立ち上がった。

そして、山賊丸上でジュニアに向かってもろ手を挙げて満面に笑みを浮かばせ、「そこを行く強者は由緒ある気高き者とお見受けするが、さすればアイゼン・ブル・マクレン大佐が御子息のマクレン・ジュニア殿ではござらぬか。」と既に分かっている事だったがわざと問いかけた。
ジュニアはその呼びかけに、このような雑魚キャラまでにも我が名が知れているという幅広い名声に高揚し、先ほどまで居た船上の影の正体には関心が無くなっていった。

ジュニアの反応に気をよくしたスッパロ艇長は丸太船の背後に座しジュニアの影に隠れるようにしているスコップ航水士の細い目に気が付き、スッパロ艇長の目が曇った。
スコップ航水士はジュニアの背後で海賊スッパロ艇長の真の目的を探ろうと一挙手一投足を観察しながら、論理的脳がフル回転を始めている。
「ご油断めさるな。」とスコップ航水士がジュニアの背中に囁きかけるも、飾りつけ豊富なスッパロ艇長の甘い言葉にジュニアは舞い上がっていて、スコップ航水士のその忠告など聞いていなかった。

スッパロ艇長はスコップ航水士の鋭い疑惑の眼差しを気にしながらも、マクレン・ジュニアを指揮官に祭り上げて、最大限に媚を売って同行する了承をジュニアから得た。
カーク艦長の元では野望をかなえられなかったが、A村の有力者に太いパイプ、親子という繋がりがあるジュニアの元でこの第3次全村大戦の最中に武勲を立てる事がスッパロ艇長の野望に繋がると考えていた。
マクレンの親子関係を知らないスッパロ艇長はこうして先々もジュニアを持ち上げておく事は野望達成後の先々のいろいろな事に優位に働くとスッパロ艇長は読んでいるのである。
河の制河権を得た後に河で行われる通商の尽くに武力と制河権を駆使して介入し、そこから利を得るのでつもりある。
邪魔になりそうなスコップ航水士は早めに始末しようと決めた。

マクレン・ジュニアが颯爽と山賊丸に乗り移り、スコップ航水士が油断なく辺りをねめつけ乍ら後に続いた。
舳先で慣れた手つきでジュニアは「山賊丸ア・ゴー」と出発の合図をした。
「レフトブラサー航空基地」での航空機発進で鍛え上げただけに難なくその役をこなし、スッパロ艇長はその手際よさにさすがは将来の大物と感服して良く聞こえる様に賜った。
こうして、思惑を秘めたアイゼン・ブル・マクレン・ジュニアとスッパロ艇長とスコップ航水士の波乱の戦場行きが始まるのである。

ジュニアのこの行動が「井戸端皿番長隊」の忍びに知られ、偵察鳥九官鳥の大きな嘴によってマクレン大佐は文字通りの耳打ち(モールス信号ともいう)をされたのである。
その知らせに息子が来たという親の喜びよりもあったが、鋭い刺身包丁の切っ先を突き付けてあれだけ説得をし、約束を交わしたにも拘わらずにその約束を反故にしたうえ、さらには与えられた重要な使命を途中で投げ出して戦地に赴いた事にマクレン大佐は怒った。

与えられた重要使命を難波(なにわ)節名物「くいだおし人形」に任せて逃げ出した事は敵前逃亡に等しい行為で、戦場においては文字通りの戦犯である。
これが他の村民であれば、マクレン大佐は即刻MPに通告し逮捕、結果は銃殺とわかりつつも手続き上の軍法会議で判決を下すところである。

だが、身内である事と単独で後を追ってきたのではなく、能力未知数の未確認部隊を引き連れてきた現状を考えると、これは思いがけない伏兵として利用できるかもしれないとマクレン大佐は考えた。
お仕置きとして囮作戦の餌に使っても構わないであろうとも考えた。
そして、ジュニアの戦地での活躍によっては軍法会議での減刑も充分考えられると親らしく考えた。
優しさを見せつつも、偵察九官鳥の首を握り締める腕には力が入る。

-- 灰色猫の大劇場 その25 ----------------
灰色猫が玉座に座っている。
イタリアーノのイタチが柱の影から玉座を狙っている。
玉座を前にカメムシが居た。
カメムシは悪臭を放つ準備をして灰色猫ににじり寄る。

スカンクずが砲塔をむけてカメムシの前に立ちはだかる。
カメムシ危うしとイタチが助太刀に入る。
3者がほぼ同時であった。

想定外の有害物質の混合密度に防毒ガスマスクの機能がマヒしてしまう。
そして、装着していた灰色猫が薄桃色の霞の中でゆっくりと倒れた。

玉座が空いた。
チャンスだ。

だが、このチャンスを生かせる者は・・、そして誰も居なかった。
劇場にバイオハザードの規制線が張られるが、その規制の有無関係なく進入する者は居ない。

--続く
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この物語の著作権はFreedog(ブロガーネーム)にあります。
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Posted at 2022/03/21 19:59:49 | 物語A | 日記

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