
今年のひな祭りの日にGRBに乗り換えて以来、ずーっと、はい、それこそずぅぅぅ~~っとワタシを悩ませていたろくむし号の
「発進時の失火現象」なんですが、7月の終わりにディーラーさんに預けてしっかりとチェックしてもらい、診断コンピュータからこの現象が発生したときのデータを取ってもらって、このデータをメーカーであるスバルに送った、というところまではBlogにも書いたのですが・・。
結局のところ、ディーラーさんでのチェックでは、メカニックさんがデータを目視する限り、
「スロットルバタフライが発進時の微妙なアクセルの踏み加減の時にバタバタと暴れるように開いたり閉じたりしている」ということでした。
これはおそらく、GRBから採用されている電子制御スロットルに起因するものだろう? っていうあたりまでは分かったわけです。ただし、アウトプットとして出てくるデータからスロットルの動きが原因となってエンジンの出力が不安定になるってことは分かりましたけども、ではなぜスロットルがそのような動きをするのか、その根本原因については分からなかったんです。
その後、メーカーからの回答を待っていたのですが、
待てど暮らせど返事はナシ(T_T) ディーラーさんからもプッシュをしてもらってたのですが、それでも返事がなかったんです。
それからもう4ヶ月が経過してしまい、最近寒くなってきてまたこの症状が気になりだしてまして、ここはひとつ、直接メーカーであるスバルに問い合わせをしてみることにしました。
スバルのウェブサイトから「お客様相談室」の電話番号を調べて連絡してみたところ、電話の窓口では問い合わせ内容がどういうものなのか、ディーラーから問い合わせが来ているかどうか、進捗状況がどのようなものであるかはすぐには分からないとのことだったので、メーカーからも社内の検証チームとディーラーさんへの問い合わせをしてもらえることになりました。
数日してディーラーさんからワタシに電話があり、「メーカーからGRBろくむし号の不具合に関する問い合わせがあった」との連絡がありました。
そして、長期化してしまってるコトに対しての謝罪と、その理由について説明いただきました。どうやらディーラーさんの中でメカニックさんと店長さん、それぞれからメーカーに対して不具合の報告と調査依頼をしてもらってたようなんですが、1件の不具合に対して複数の問い合わせがメーカーに流れたもんだから、メーカーのほうでも情報が輻輳してワケ分からんことになってしまってたらしいです(^_^;)
そして、メーカーの調査チームから詳細な調査データが送られてきた、とのことでした。
やや難しい内容でしたが、GRBろくむし号の不具合の原因は以下の要因による可能性が高い、とのことでした。
燃料タンクキャニスターからの揮発ガス吸い込みと、電動ファン起動などによるバッテリー電圧の変動などの複数の要因が重なった場合に起こるエンジンの出力の一時的な低下(不完全燃焼?)
こう言われてもよく分からないんですが、具体的に時間をかけて説明してくれたのはこういう内容でした。
現在のGRBインプでは、燃料タンク内で揮発して気化したガソリンをインマニに流し込み、インジェクターから噴射されるガソリンと一緒に混ぜてシリンダー内で燃焼させるための機構として
「ソレノイド式燃料キャニスター」というのが取り付けられているんだそうです。燃料タンクの中で揮発したガソリンというのは、セルフのGSなどで燃料キャップを開けたときに「しゅ~」と吹き出てくるガス、あれです。燃料タンクの中では常にガソリンは揮発して蒸発し、気化してるんですね。(揮発油、っていうぐらいですから) 以前のクルマというのは、これを「チャコールキャニスター」という触媒のようなもので引火するおそれのないガスにして、大気中に放出していたんですが、最近のクルマというのは、この気化ガスも、エンジンに導いてやって、インジェクターで作った混合気に混ぜてシリンダー内で燃やしているんですね。
もちろん、こうすることで揮発して失われてしまったガソリンも有効活用することができるので、燃費改善にもプラスとなるというわけです。
GRBでは、気温や湿度、スロットル開度その他もろもろのパラメータで刻々と変化しているエンジンの燃焼状況をECUが監視し、リアルタイムでインジェクターの噴射を制御するだけでなく、これに加えて燃料タンク内で発生した揮発ガスをどれぐらいの量でインマニに取り入れるのかも細かく制御されているんだそうです。
このタンク内の揮発ガスの注入量というのは、キャニスターが不具合を起こしてインマニに流れ込みっぱなしになってしまったら混合気が濃くなり過ぎて出力低下、異常燃焼、排気ガスの有害成分の増加など、ハッキリとエンジンのコンディションが悪くなるぐらいにエンジンに与える影響が大きいみたいです。
このキャニスターからの流入ガスはECUからの指令を受けたソレノイドバルブが細かく開閉をしてインマニにガスを流し込むような仕組みになっているんですね。
このように、イマドキのエンジンっていうのは実にこと細かく燃焼状態がECUによって制御されてる、というわけです。そしてまた、それだけ瞬間瞬間でエンジンの燃焼状態というのは変化しているということでもあり、今のエンジンはそれをリアルタイムに追いかけて常に最適な燃焼状態を作り出せるだけの能力がある、というわけ。
ただ、このキャニスターの制御はソレノイドバルブの駆動によるもので、微弱な電気信号によって行われているのですが、エンジンが回っているときにはいろいろな電装品が駆動しており、特に急激に電圧の変化を起こす要因となるのがエアコンや、エンジンの冷却用電動ファン。
エアコンにしても稼働時には電動ファンを回したり止めたりを繰り返すわけですが、最近のクルマはこれも、以前よりもより細かくオンオフして最適制御できるようになってるんですが、この電動ファン、回り始めるときには「ちょっとした電圧低下」を起こすんですね。つまり、タンクに付いているソレノイドキャニスターが稼働するタイミングと、電動ファンの回り出すタイミングがたまたま合致してしまったりしたときに、電圧のちょっとした乱れからキャニスターの制御が微妙に狂う、ということがあり得るんだそうです。
その結果として、最適なエンジンの空燃比からズレた状態の混合気がエンジンに送り込まれることとなり、それをさらに電子制御スロットルができるだけエンジンの燃焼を正常に戻そうとして、それこそ細かくスロットルバタフライの開度を調整しようとした結果、
「スロットルバタフライが細かく振動する」といった現象として現れている、というわけなのです。
NAエンジンの場合には、こういった踏み方をした場合にも特に不具合として現れてくるほどエンジンの燃焼がおかしくなることはないんですが、GRBのエンジンはターボエンジン。NAエンジンとターボエンジンの本質的な違いとして、過給器の有無以外にも大きなモノとして
「圧縮比」があります。
NAエンジンでは比較的圧縮比が高く、こうした低回転で負荷の高い状態にしてやっても異常燃焼に対しては強いのですが、ターボエンジンはタービンでの過給圧を使ってパワーを出すという構造であるため、シリンダー自体の圧縮比はNAよりも低めに設定されています。このために低回転で高負荷というキビシイ状況では、異常燃焼を起こしやすいという基本的な性質がどうしてもあるんだそうで、それをカバーするためにECUが頑張って制御を最適化している、というのが現代のターボエンジンなんですね。
ということで、この要因による可能性が一番高いと思われます、というのがスバル本社からの回答だったそうです。
送ったデータをそれこそこと細かく分析した結果、この結論がはじき出されたんだそうですが、だとしたらワタシのGRBに限らず、他のGRBでも同じような現象が出るはずですよね。
ワタシは以前、ディーラーさんの試乗車であるWRブルーのインプを借りて、ろくむし号と同じ不具合が発生するかどうか検証してみたことがあるんですが、その際には同じような現象は出なかったので、これはろくむし号固有の不具合だと思ったのですが、ディーラーさんではメカニックさんがろくむし号のデータ取りのあと、試乗車にもコンピュータを繋いで同じように乗ってみたところ、同じような不具合を示すデータが確認されたんだそうです。
つまり、これは
ろくむし号特有の現象ではなく、GRBのA型全般に出る現象だということができますね。つまりはこれは不具合ではなく、現時点ではGRBインプの
仕様
ということになるようです(^_^;) これを改善、あるいはこの現象を回避するためには、発進時や減速してから高いギアで再加速する際には、今よりも少しだけ余計にアクセルを踏むようにしてください、とのことでした。
なるほど、これが原因だとしたら確かに同じように踏んでも症状が出たり出なかったり、ということがあるのもナットクできますよね。
でも、この説明を聞いて次に疑問になるのは、では同じような踏み方をして乗っていたGDBではなぜその現象が出ていなかったのか? ということですよね。
ひょっとしてGDBにはソレノイドキャニスターが付いていなかったのか?? ということなのですが・・・要因として考えられることは
ソレノイドキャニスターの制御がGRBほど細かくなかった
これはやっぱりあるそうです。GDBにもソレノイドキャニスターは取り付けられているんですが、GRBと比べると制御はおおざっぱなんだそうです。GRBでは「いちおう」燃費の改善も謳われていますし、排気ガスのクリーン度も4つ星を獲得するなど、かなり排ガスや燃費については気を遣ったエンジンとなっていますから、当然のように有効活用すべきタンク内の揮発ガスを積極的に活用するようにと仕様が変更されているのでしょうね。
GDBは電子制御スロットルではない
これが要因としては一番大きいかもしれないですね。GRBではキャニスターからのガスの流入が不安定となったのをECUが検知して電子制御スロットルを動かすことで解消しようとした結果として、失火のようなガクガクとした挙動が出てきてたわけですが、そもそもGDBにはドライバーの足以外からスロットルに入力するデバイスは存在していませんから、ECUの制御はスロットルには及ばないわけです。
このため、同じドライバーがGDBの頃と同じように踏んでいるのに、GDBでは出ない現象がGRBで出る、ということになっているのでしょう。エンジン制御の進化が、逆にこうした現象を生み出してしまったというのは皮肉ですね(苦笑)
他のGRBでこうした現象が出ないというか、確認されていないっていうのは、多分低速域でのアクセルの踏み方がワタシの場合は平均的なドライバーよりも少ない、よりエンジンにムリを強いるような踏み方をしている、ってコトなんでしょうね(^_^;)
燃費を気にするあまり、そのようなケチくさい踏み方をしていたのかなぁ~(苦笑)
この現象は前から書いているとおり、思いっきり踏んだときにはまったく症状は出ません、あくまでごく軽く踏んだときに低速域でだけ発生する現象ですので、エンジンに負荷のかかる低速域での踏み直しの際には、もうちょっと踏んでやらないとダメ、ってことですね(汗)
そもそもたった2000cc足らずの排気量から308馬力というとんでもないパワーをメーカー出荷状態で発揮するとんでもないエンジンですからね、EJ20って(^_^;) かなりのチューニングエンジンということも言えるでしょうし、ごく低回転域でこういった不具合が出るのはムリがない、と考える方が精神衛生上いいのかも。
昔のチューニングエンジンと比較したら、考えられないぐらいにフレキシブルな特性で、ごく普通に町乗りまでできるのに、最高出力300馬力オーバー、さらに排気ガスもとってもクリーン、なんていうのは贅沢の極みみたいなエンジンですもんね。
原因が分かってしまえば、なるほどそういうことね、とナットクし、乗り方を少し変えてやるだけで対応もできるわけですし、とってもスッキリとした気持ちになりました(^^) エンジンは根本的に何も変わらないわけですが、なんだかエンジンもキッチリと調整してもらえたような気持ちですわ(笑)
それと長くなったついでに(ちゅど~んっ!)、GRBでよく言われる
「3000回転でのトルクの谷」についても聞いてみました。
コレについても明確な回答がありました。
この現象についてはワタシの読み通りの答えでした。
GRBでは低回転域では
「省燃費モード」でできるだけ燃料消費を抑える方向でエンジンは基本的にマネージメントされていて、回転が上がると「出力重視なエンジンマネージメント」に切り替わるんだそうです。
つまりGRBにはSIドライブ以外に、もっとECUプログラムのベースな部分に
「省燃費運転用マップ」と
「パワー重視用マップ」の二つのマップがECUにあり、この二つのECUマップが
3000回転というエンジンの回転数を境にして切り替わっているんだそうです。
3000回転っていうのタービンが仕事をして過給圧が正圧になるあたりの回転数ということで設定されているんでしょうね。
ろくむし号でも、気合いを入れてアクセルを踏み込むときには3000回転ではすでに過給圧は余裕で正圧になってますが、普通に町乗りをしていて、上り坂をゆったりと流れに乗って加速していくような状況では、過給圧は負圧領域のままで3000回転を超えることがあります。このような状況だと、明らかに「トルクの谷」が3000回転キッチリのところで現れるんですね。ホントにピンポイント、3000回転ぴったりの、そのポイントにだけトルクの谷があるんです。
キッチリ3000回転の時にだけ、っていうことからも、たぶんこれは電子制御に起因する現象だろうと、そしておそらくはマップの切り替わりによるものだろうと予想していたのですが、まさしくその通りのようです(^_^;)
しかしまぁ、キャニスターに関連するような部分では「そこまでやってるのか~」と感動するぐらいに細かい制御をしているのに、マップの切り替えを「だいたい3000回転に設定しとけばいいだろう」みたいな感じで、そのときどきの走行条件でのパラメータに合わせて制御をかけない、常に3000回転ピッタリでしっかりとマップを切り替えるという杓子定規な制御しかしてない、ってのも面白いというか片手落ちというか(^_^;)
この部分については、アプライドB型が出てきたようなタイミングでECUの仕様変更が入る可能性もある、とのことでした。ECUのプログラムが変更された場合、リプログラムでろくむし号のECUのデータの書き換えで対応が可能になるのでは? とのことでしたので、新たなECUのプログラムができればこの「仕様」については改善するかもしれないですね(^^)
上述のガクガク現象にしても、純粋にECU制御に起因する部分が大きいわけですし、ひょっとしたらリプロが入る可能性もありますね。
ってなわけで、長いこと引っ張ってきたGRBろくむし号の
不具合は仕様でした!
という、ながーいお話でした(^_^;)
ワタシの提供したデータが、アプライドB型のGRBの改善点としてフィードバックされていたら
「A型乗りは人柱」という役目を立派に果たしたことになるかな?(笑)