クジラの尻尾と大鳥居　

ランティスのマツダスピードリアスポイラーは「大鳥居」という通称ですが、英語だとWhale Tail、つまり「クジラの尾」と呼ばれます。「大鳥居」の方がより形をイメージしやすくて自分は好きです。　（すみません、綺麗だったのでネットで検索して拾った画像を使わせていただきました↓）



1993年にデビューしたランティスに対して、1992年に海の向こうではフォードエスコートRSコスワースがほぼ同時期によく似た「大鳥居」を装着していました。



フォードとマツダの資本関係は1970年代からありましたし、バブル崩壊後はマツダの経営が傾いて1994~6年から実質フォードによるリストラが始まったのはあちこちに書かれています。　ランティスの大鳥居とエスコートコスワースのクジラ尻尾の開発になんらかの共同作業があったのかと思いましたが、エスコートコスワースのこの尻尾デザイナーの発言がメディアに出ていたので、共同開発では無いという事がわかりました。　

このデザイナーの名前はフランク・ステフェンソンといい、彼によるとエスコートコスワースのリアにはフォッカーDr.Iという第一次世界大戦時にドイツのフォッカー社が製作した3枚翼の戦闘機（三葉機）のデザインを取り入れる予定だったが、コスト管理の観点から3枚翼は実現しなかったそうです。写真はフランク本人がその当時のコンセプトを最近スケッチしているところです。



ランティスもそうですが、大鳥居の上側の大きなウィングの下、トランクリッド上に小さな複葉的スポイラーがあります。　これを合わせて2枚翼という事かと思います。

実際に三枚翼にするとダウンフォースがそれなりに増えるようですが、エスコートコスワースに関してはWikiに「エスコートRSコスワースはフロントとリアでのダウンフォースを発生した初めてのマスプロダクション車だった。フロントは180㎞巡航時4.6㎏、リアは19.4㎏のダウンフォースを発生していた。」とあり、2枚翼でもそれなりにリアのダウンフォースが得られていて、フロントとのバランス上2枚でも十分という判断があったのかも知れません。



上の写真は当時のフランクのコンセプトを反映して改造を施したエスコートRSです。　効果うんぬんよりもデザイナーのアナログな発想とタッチが斬新です。横にした冷蔵庫みたいな車のごてごてメッキフロントグリルと対照的かと。。