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2011年09月05日

1.4TSiに気筒休止。意外と高負荷まで...

1.4TSiに気筒休止。意外と高負荷まで...  ガソリンエンジンにおける過給ダウンサイジングの急先鋒ヴォルクスワーゲンが、来年は1.4TSiに気筒休止システムを組み合わせるそうです。このニュースを知って「なんで今さら気筒休止?」と思ったのは私だけでは無い筈。。。
 ガソリンエンジンは低負荷時の熱効率がハチャメチャに低く、これを改善するのに気筒休止が有効である事は古くから知られており、実に30年以上も前から気筒休止システム採用車が存在します(にも関わらず普及していない)。また過給ダウンサイジング化も7速DSGによる巡航時のハイギヤード化も、エンジン効率の悪い低負荷域をなるべく使わない為の手段のはず。極力エンジン負荷を高め熱効率の高い領域を常用するTSiに、いま気筒休止を組合せる意義とは。。。?

 ここで何故ガソリンエンジンは低負荷時の熱効率が低いのか軽くおさらいしましょう。一部のリーンバーンエンジンを除けばガソリンエンジンは安定した燃焼が可能な空燃比はほぼ一定であり、大トルクが必要ない場面でもディーゼルの様に燃料だけを絞ってトルクを減らす事は出来ません。そこでスロットルバルブを絞って吸入空気量を減らす必要があるのですが、これはエンジンを窒息させながら仕事をさせているようなもので、大きな抵抗(ポンピングロス)を生じ効率を悪化させます。
 またエンジン自体の摩擦に打ち勝って回転を維持するための抵抗(フリクションロス)はエンジン回転数に依存し、エンジントルクの影響はあまり受けません。従って同一回転数であればエンジントルクが減るほどフリクションロスに消費されるトルクの割合は相対的に増加し、やはり効率の低下を招きます。

 以上のポンピングロス+フリクションロスが、低負荷時の熱効率を悪化させている2大要因です。私がいつも勉強させて頂いているサイトEine bequeme Reiseの中にあるエンジン特性と車両走行燃費を見てください。
 冒頭のエンジン性能曲線の下に「燃料消費率等高線」という線図が確認できると思います。オペル社の2L直4自然吸気ガソリンエンジンの等燃費マップで、縦軸はBMEP=Brake Mean Effective Pressure 正味平均有効圧力でエンジン負荷の高さをピストン受圧相当で示しており、上に凸のカーブがWOT=Wide Open Throttole 即ちスロットル全開時の全負荷BMEPです。それより下の領域の等高線はSFC=Specific Fuel Consumption 燃料消費率(熱効率の逆数)で、1kW(1.36ps)×1時間の仕事をするのに必要な燃料の質量[g]を現しています。この値が大きいほど同じ仕事をするのに多くの燃料を必要とし、熱効率は低いという事になります。
 これを見ると、最も効率の良い領域ではSFC=240g/kWh以下なのに対し、BMEP0.2Mpa以下の低負荷領域になると倍近い400g/kWh以上にもなっている事が解ります。

 この様な低負荷域において2/4気筒休止すると、仕事をしているシリンダが半分になるので同じトルクを発生するにはよりスロットルバルブを大きく開ける必要があり、ポンピングロスが減って熱効率を向上(燃料消費率を低減)する事が出来ます。これが気筒休止の効能です。
 さて画像はゴルフ1.4TSiシングルチャージャー(7速DSG)のトルクカーブに、4~7速の走行抵抗カーブを重ねたものです。ゴルフのCd値や前面投影面積は調べていないので推定ですが、最高速(6速5,300rpmで197km/h)のポイントにて合わせ込んでいます。なお右下がりの青いカーブはエンジン出力一定のラインを表しています。
 VWによれば気筒休止を行うのは1,400~4,000rpmかつエンジントルクが25~75Nmの領域に限られ、図に太い緑色の枠で示しました。7速100km/h時2,200rpmという低回転クルーズが可能な1.4TSiですが、これだけ小排気量かつハイギヤードであるにも関わらず、105km/hまで気筒休止を行えることが解ります。考えてみれば1.4Lのエンジンが2/4気筒休止しつつ75Nmのトルクを出すのは結構な高負荷状態です。スロットルは既に全開に近く、回転数にも依りますがブーストがかかり始める領域にまで踏み込んでいるでしょう。ここまで気筒休止が可能であれば、日常使用に於いてもかなりその恩恵に与る事が出来そうです。

 しかし2/4気筒休止時は燃焼間隔が2気筒と同じになるため、負荷を上げていくと燃焼圧によるクランクシャフトのトルク変動が大となり、パワートレインのこもり音(高ギヤで低回転からアクセルを踏んでいった時の「ボーッ」という音。)が出易くなります。これを避けるため、過去の気筒休止エンジンではごく低負荷の狭い領域(カタログ燃費に関係する60km/h以下だけ、とか。)でしか気筒休止できず、実用燃費のメリットもそれ程でもなく廃れていきました。前記の通りガソリンエンジンは低負荷時ほど熱効率が低く気筒休止による改善効果も大きいのですが、極低負荷時はそもそも絶対的な燃料消費量が少なく(エンジンがほとんど仕事してませんから。)、実用燃費の中に埋もれてしまう程度の効果しか無かったと思われます(別な理由としては、現在のような高度なエンジン制御が行われておらず、ショックを伴わないスムーズな気筒切替が困難だった事もあります。)。
 その点1.4TSiは、NAならば50%負荷以上にも相当する領域まで気筒休止を行っており、気筒切替時のショックはともかくトルク変動によるこもり音が心配になります。1.2TSiでは石橋を叩いて4気筒を選択した(NAならば同じ1.2Lの3気筒を持っているにも関わらず!)VWではありますが、もしかするとFIATが0.9Lツインエアで2気筒化にチャレンジし、それが市場に比較的好評をもって受け容れられつつある。これが気筒休止に向かうVWの背中を押したのでは。。。考えすぎですかね。(笑
 さてその仕上がりやいかに。NVH(音&振動)には世界一厳しい市場と言われる、日本での試乗レポートが今から楽しみです!
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Posted at 2011/09/05 23:43:52

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この記事へのコメント

2011年9月7日 1:42
先生!こんばんは(笑)。

前々から先生のブログで勉強させて頂き、かなり理解出来るようになってきました!今回の件をまとめると、例えば7速100km/h2,200rpmの一定巡航のような場合だと、

(1)働いている気筒数に関わらず速度と回転数の関係は変わらない(7速固定の場合)
(2)各種損失を差し引いた後の出力も一定(発生している馬力が同じである為)
(3)従って気筒休止すると(働いている気筒数を減らすと)、1気筒当たりの必要発生トルクは大きくなる(低負荷→高負荷の状態となる)
(4)空燃比が概ね固定の為、必要発生トルクの増大に伴い、燃料と空気が同じ割合で増大
(5)空気量が増えるので、ポンピングロスが減る
(6)ポンピングロスが減った分、例えば気筒数が半分になっても1気筒当たりの燃料は倍より少なくて済み、エンジン全体で見れば、少ない燃料で(損失差し引き後の)同じ出力が得られる
(7)ただし休んでいる気筒も運動はしていることから、フリクションロスは低減されない。

という感じであってますか?特に(7)は、あまり自信がありません・・・。

いつも聞いてばかりですみません。。。
コメントへの返答
2011年9月7日 23:52
 T-kazuさん、毎度です! 「先生」という言葉にはちょっと戸惑いますが(^^;自分の日記の内容を理解して頂き、共有できる方がいるのは嬉しい限りです!

 さて(1)~(4)についてはその通りです。(5)は稼動中の1気筒当たりの空気量という意味では○です。付け加えるなら、ポンピングロスを回避しつつ吸気量を減らすミラーサイクルの様な方法もありますので、ここでは空気量よりも「スロットルを絞っていない」ことがキーとなります。(6)が気筒休止の肝と言える部分で、まさにその通りです。
 (7)は効率という面では残念なのですがその通りです。1.4TSiは元々過給ダウンサイジング化されているのでややこしいですが、わかり易くするために仮に4気筒のNAエンジンと考えれば、気筒休止というのは形をかえたダウンサイジングとも言えます。普段は2気筒で運転し、大出力が必要な場面に備えて残りの2気筒を温存しておくのです。
 但しご指摘の様なフリクションロスの問題があるため、思い切って残りの2気筒を削除し、大出力が必要な場面に備えてターボを装着すれば、過給ダウンサイジング(+レスシリンダー化)エンジンの出来上がりとなります。ただこの場合は2気筒ぶんのフリクションロスから開放される代わりに、ターボラグとの戦いが待っていますが。。。

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何シテル?   04/19 19:35
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