• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2015年02月22日

【2/24追記】本田はもう狭角Vツインをやらないのだろうか。

【2/24追記】本田はもう狭角Vツインをやらないのだろうか。  往年の競技用モータサイクルを題材にしたムック本、三栄書房”RACERS”。最新刊のVol.31ではVol.17 オートマチックモトクロッサーRC250MAVol.26 川重KX以来3度目となるオフロードマシン、本田NXR750が表紙を飾りました。
 '79年から始まったパリダカの創成期、単気筒XR500RをベースにHGAがチューンしたマシンがフランスホンダに供与され、シリル・ヌブーらの手によって活躍しました。しかし砂漠地帯の高速ステージで160km/h以上で巡航できる水平対向2気筒800ccのBMW R80GSに歯が立たなくなると、フランスホンダの悲鳴にも近い要望を受けて'86シーズンよりHRC製のワークスマシンNXR750Rが投入されました。本誌では触れられていませんでしたが、'86のデビューウィンから連戦連勝を果たしながらも僅か4シーズンでパリダカを去った本田の当時の事情が気になるところです。。。

 NXRのエンジン設計にあたっては、競合R80GS以上の高速巡航能力を得るため2気筒レイアウトとする事はすぐに決まったようです。シリンダー配置はアメリカンバイクNV750や限定車XLV750Rで実績のあった45°V型となりました。とは言えワークスマシンですから前出の市販車がベースという事はなく、全く新規に開発されたものでしょう。
 NXR開発に携われたエンジニアへのインタビュー記事によると、とにかくロバスト性(極力壊れないこと、壊れても容易に整備可能なこと)の確保と、ライダーに疲労を与えない穏やかな出力特性と振動の少なさが重視されたようです。ピークパワーも約70ps/7,000rpmと極端に高回転・高出力を狙ったものではありません。またパリダカ特有の事情としては、品質の粗悪なガソリンに対応する為に圧縮比は8程度に抑えられていました。余談ですがターボで武装した四輪モンスターマシン達のノック対策はもっと大変だったでしょうね。。。

 振動についてはとにかく1次振動(クランク1回転毎に1周期の振動)を徹底的に抑え込む事に拘り、本田が言うところの「位相クランク」が採用されました。
 レシプロエンジンではシリンダー内を上下するピストンその他の往復慣性質量(この質量を仮に100%とします)によって上下の加振力を発生します(この大きさを仮に100%とします)が、クランクシャフトのカウンターウェイトに50%のバランスウェイトを付加する事で、クランクシャフト周りにベクトルが逆回転する50%の加振力に変換することができます。
alt
 したがってオーバーバランス率50%の場合、等間隔点火に拘らなければ互いのベクトルが打ち消しあうクランクピン位相で2気筒を組み合わせると、バランサーシャフトに頼ることなく1次振動をキャンセルする事が出来ます。
 例えばクランクピンを共有する(位相角0°)V型2気筒の場合、バンク角を90°とする事で1次振動をキャンセルできる事はご存知の方も多いと思います。パリダカではカジバがドカティ製90°Vツインを搭載したエレファントで参戦しましたが、エンジン前後長の長さからパッケージングには苦労したようでトラクション不足に悩まされたようです。
alt
 NXRではパッケージングも考慮されVバンク角は前述の通り45°。このレイアウトで1次振動をキャンセルするにはクランクピンに90°の位相角が必要になり、クランクピン間にウェブが挟み込まれますが並列2気筒に比べればクランクピン間距離は格段に小さいです。またコンロッド長も十分に取られており(見取りで連桿比4以上)、ストロークとクランク角速度のアンバランスに起因する2次振動(クランク1回転毎に2周期の振動)も小さかったはずです。
 側面視で言えば180°クランクの並列2気筒(2つのピストンが交互に上下する)でも1次振動をキャンセル出来る事になりますが、実際には2つあるクランクピンが左右ボアピッチ分だけ離れているので、互いにキャンセルし合うべきベクトルの着力点がずれて1次の回転偶力(「みそすり運動」とも呼ばれます)を発生してしまいます。例えば180°クランク並列2気筒レイアウトを採用したCBR400R・CB400S/Xでは1次偶力バランサを備えて対処しています。

 トルク変動によるパワーライン共振が問題となりやすく、等間隔点火を基本とする四輪(フィアット・ツインエアも360°クランク - 2つのピストンが一緒に上下する - で等間隔点火、故にでっかい1次バランサを備える)とは事情がやや異なるとは言え、バランサーシャフトに頼ること無く1次振動を解消でき且つスリムで前後長も短い位相クランク・狭角Vツインエンジン。最近まで欧州でトランザルプ700Vに搭載され生き残っていた様ですが、どうやら今後のモデルはNC700/750系と同様に並列2気筒化されてしまうようです。
【ミラノショー14】ホンダ、新コンセプト トゥルーアドベンチャー 公開…「アフリカツイン」復活か
 NC700シリーズ登場時、スポーツバイクでやっと実用性能重視のエンジンが登場した事に兼坂教信者の私は歓喜しました。しかしそのレイアウトはステップスルータイプのインテグラとパッケージングの共通性を担保するため並列2気筒。90°Vツインと同じ270°-450°の点火間隔とサウンドを得る為に270°クランクが採用され、単気筒を二つ並べたのと変わらぬ(※)大きな1軸1次バランサに興醒めしました。1軸バランサは着力点をクランク中心と一致させる事は不可能で、エンジンが前後にお辞儀する方向の加振力が残ってしまう事は避けられず、後の750ccでは更にクランクを挟んだ前後2軸バランサに変更されました。
 ちなみに180°クランク並列2気筒の偶力バランサは並進力を発生しないので、1軸でもこのような問題はありません。

 中免しか持っていない小僧の戯言と言われてしまうでしょうが(汗、いま本田がNC700/750のテクノロジーで狭角Vツイン搭載のツアラーを作ったら。。。と思いを馳せずにはいられません。

※すみません「単気筒を二つ並べたのと変わらぬ」というのはちょっと言葉が過ぎました。270°クランクだと並列する2気筒の2次振動の位相が90°ズレて打ち消し合うので、1次振動はバランサで消す前提であれば、特にパッケージング要件でコンロッド長を稼げないような場合にはアリかとは思います。

***** '15/2/24追記 *****
 すみません、本田はもう狭角Vツインを作ってないかのような妄想日記でしたが、現在もVT-S、シャドウシリーズとして生産中のようです(汗。ひでゆきくん さん、ご指摘ありがとうございます。。。m(_ _)m
VT400S
alt
VT750S
SHADOWシリーズ

 シャドゥの前身にあたるスティードに対しエンジンもインジェクション化を果たしております。これは良さそう!本田のWebサイトを覗くとVT-Sシリーズはロードスポーツを名乗っております。出来ればもうちょっとスタイリングをシャドゥと差別化して、少し大きな燃料タンクを付けてくれたら嬉しいですね。
 このエンジンを使って現代のトランザルプ400Vを作ってくれたらもう最高!。。。と思ったら、スティードに端を発するこのエンジンはブロスやトランザルプと異なり、意図的に振動を残すため位相クランクは不採用だそうな(ホンダ・スティード - Wikipedia より)。。。残念!
ブログ一覧 | 自動二輪車。 | 日記
Posted at 2015/02/22 23:03:08

イイね!0件



今、あなたにおすすめ

ブログ人気記事

福岡出張完了ですーーー😀
narukipapaさん

ちょっとそこまで 晴れの国岡山
dora1958さん

ぷちツーinいわむら城下町クラフト ...
もじゃ.さん

扇風機を買ってみた^_^
b_bshuichiさん

何だかいっぱい
SELFSERVICEさん

096【絶品チャーハン】グルメレポ ...
とも ucf31さん

この記事へのコメント

2015年2月23日 8:14
こんにちは♪

はじめましてですかね。

自動車でもホンダはいろんなVバンクやっていて
面白いですね。

新しいNSXも75度Vバンクらしくて楽しみです。
私も兼坂信者です(笑)
コメントへの返答
2015年2月23日 21:42
こんばんは~。
いつぞや「イイね!」を付けて頂いてから、いつも勉強させて頂いております。。。m(_ _)m

V型だとヘッドが2つ必要だったりカムドライブが2系統になったりと素人が妄想するほど単純ではないのでしょうが、本田には位相クランクVツインを捨てて欲しくないですね。。。トランザルプ400V買っとけば良かった。(汗

みんカラを始めてから「私も毒舌評論読んでました!」という声を頂く事が増えて嬉しいです~。^^
2015年2月23日 23:25
バイクは詳しくないデスガ・・・

NCシリーズやインテグラは一番乗りたいバイクデスネ。

エンジンの性能よりも低重心・低価格・軽量・自動変速MTなど

私にとっては魅力満載デス。
コメントへの返答
2015年2月24日 0:05
こんばんは。コメントありがとうございます。

 NCシリーズは大型バイクに新しい価値観を吹き込んだ素晴らしい製品と思います。
 エンジン&フレームのレイアウトを3車共通化し、700S/Xで浮いたスペースはメットインスペースとして活用。。。素晴らしいアイデアです!これがなければあの低価格で製品化は出来なかったでしょう。売れるのも納得です。実際自分も700X欲しさに教習所通いを始めようかと思ったほどですから。。。

 オフ車にか興味がなく、エンジンフェチでもある中免小僧の戯言とお許しください。。。m(_ _)m
2015年2月24日 6:57
こんにちは。 NCそうなんですよね。振動が少ない2軸バランサが羨ましいっす。
初代も振動は特に多くないのですがトラクション性能が同等でメリットはなくこちらのほうが
気に入る可能性大です。
とはいえ、フィットのEG流用&F650のまねっこで売れるかもってのがあったので
初代は採用できなかったんでしょうね。
コメントへの返答
2015年2月24日 23:27
こんばんは、コメントありがとうございます。
 四輪と違ってエンジンはフレームに剛結の場合がほとんどですから、トラクションに寄与するトルク変動はともかく慣性マスに起因する振動は少なに越した事はないのでしょうね。

 360°または最近流行りの270°クランク並列二気筒は、マスバランス上は単気筒を二つ並べたのと何ら変わりなく物足りなさを覚えます。V型ではインテグラは絶対に成立しないので仕方ありませんが。。。
2015年2月24日 19:35
 イイね!から来ました。

 たまには(オフ車じゃないけど)「VT400S」や「VT750S」を思い出してあげてください。

 でもホンダのVツインって、排気量が大きくなるほど低回転が弱く
ソコソコ回してあげないと、エンストする印象が…。(汗)
コメントへの返答
2015年2月24日 23:28
初めまして。コメントありがとうございます。

 スティードって今どうなったんだろう。。。と思ったらシャドウやVT-Sとして生き残っていたのですね。しかもインジェクション化を果たして。情報ありがとうございます!
 無い物ねだりかもしれませんが、シャドゥが残っているならVT-Sはもうちょっとロードスポーツらしいスタイリングと大きい燃料タンクが欲しかったです。。。
2015年2月25日 22:40
OHVのV2を、って思ったり。(笑)
コメントへの返答
2015年2月25日 23:00
OHVの位相クランクVツイン、大・大・大賛成ですっ!!(笑
2015年3月8日 19:14
KTMのアドベンチャーに搭載されている75度VツインエンジンであるLC8の場合は、エンジンの前後長が短く、フロント荷重とホイールストロークを最大限に確保しつつ、ロングスイングアームによる絶大なトラクションを誇ります。日本車にも対抗馬が現れて欲しいです。
コメントへの返答
2015年3月9日 22:59
コンフェイトさんいらっしゃいませ!イイね!&コメントを頂きありがとうございました。
 プロフィール拝見致しました。中免小僧の私には涎が出そうな愛車遍歴。。。加えてメンテもご自身でしっかり行っておられるし素晴らしいです!

 75°Vだとクランクピン位相は30°、本田の様にウェブを挟まなくてもオフセットクランクピンでもいけそうですね。
 今は二輪も数が出なくなってしまったので汎用性に劣るVツインに開発費はかけられないのでしょうが、わざわざ270°クランクにしてでっかい一次バランサをぶら下げたパラツインを見るとなんだかな~と思ってしまいます。。。

プロフィール

色々と面倒な時代になったので、現在は個人的な備忘録としての利用に留めフォローバックはしません。ご了承ください。
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/6 >>

1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     

リンク・クリップ

Engine Adaptation Reset② 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2025/04/24 21:11:17
Engine Adaptation Reset 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2025/04/24 21:10:37
[スズキ ST250 Etype] ミクニBST34キャブレターについて 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2024/12/18 22:00:21

愛車一覧

カワサキ スーパーシェルパ カワサキ スーパーシェルパ
不注意で失った一号機の代替。購入時の走行距離は46,812km。吊るしでは色々不満もあっ ...
BMW 1シリーズ ハッチバック BMW 1シリーズ ハッチバック
RWDでディーゼルでMTってだけの理由で偶々乗ってる下駄車。レンタカーの如き地味な外板色 ...
ホンダ XR250 MD30 ホンダ XR250 MD30
下駄車スーパーシェルパが原因不明の電装系トラブルで不動に陥った時に代替車として購入。空冷 ...
トヨタ カローラフィールダー トヨタ カローラフィールダー
 パートナーの新しい下駄車。スタイリングではマツダ・ベリーサの方が好みでしたが、残念なが ...
ヘルプ利用規約サイトマップ

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車、今いくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)
© LY Corporation