高校時代、報知新聞等のスポーツ紙で、「左殺し」という見出しが流行っていました。左投手に高打率を残している右打者の代打の切り札を意味していました。
奇しくも、私の高校には、「現役殺しのホワイト」の異名をとる数学教師がいました。ホワイトは、当時の巨人にいた助っ人外国人を指しています。ニューヨーク・ヤンキースで4番も務めたことがあるレジェンド・プレーヤーでした。先生の風貌が、このロイ・ホワイト氏そっくりだったのです。
多くの生徒達がホワイトの難解な指導法に悩まされ、不平不満が絶えませんでした。こうしたなか、親友の今泉君(仮名)だけは、「ホワイトに生涯感謝する」と公言していました。
理由は、単純明快でした。最高にいい思いをしたのです。ホワイトの授業では現役合格できないと判断した彼は、書店で「鉄則」というシリーズの参考書を購入していました。その際、書棚の前で近隣の女子高の生徒から、「その参考書、いいですか?」と話しかけられたそうなのです。明らかに高嶺の花クラスの女子だったのに、彼は、この参考書の縁で、誰よりも早く大人への出世街道を駆け上っていきました。
男子校でしたので、これは「鉄則シリーズの奇跡」と呼ばれるほどのビッグニュースになりました。一瀉千里にクラス中へ知れ渡り、本来の目的そっちのけで追随する者が現われました。
すると、今度は、野川君(仮名)にキューピットが舞い降りてきました。図書館で、この参考書での自習をしていたら、近隣の女子高の生徒に話しかけられたのです。「この宿題が解けなくて困ってるんですけど、解けますか?」という会話をきっかけに、今泉君よりも早い日数で真打に昇進しました。
こうしたなか、ついに、私にも!
夏期講習からの帰りの電車で、「受験生なんですね。私も鉄則シリーズ好きです」と話しかけられました。菊池桃子似というのは大言壮語気味ですが、なかなかの美少女でした。下車する駅まで15分しかなく、この間にどうやって話を発展させるのか、解法を見出すのに腐心していました。数学の試験のときと同じ感覚でした。
――結果は、Time Overでした。
数学の大問では、完答できないと判断したら部分点を取りにいくテクニックがありました。実際の受験では、5問中3問完答プラス部分点で上出来といわれていました。身近に2人も、A及びB、さらには超難問のCという3つの大問をあっという間に完答したつわものがいましたので、つい力んでしまいました。勉学以外でも、取れる部分から確実に取っていくのが「鉄則」であることを痛感させられました。
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2023/08/03 07:06:29