前回盛り上がったダイハツ車に引き続き、今回はスズキ車の№1決定戦です!
実のところ、スズキで最も盛り上がるのは、2サイクルエンジンが現役だった昭和世代なのだけれども、時代の変化と共に4サイクル化されながらも、バイク屋精神で歩み続けてきた、平成のスズキ車にスポットを当ててみよう、という企画です。
と前置きはともかくとして、それでは、当方の選考を発表したいと思います。
【第1位】 アルト ウォークスルーバン
(画像)’87 スズキ アルト ウォークスルーバン 4速MT FF (36)
厳密には2代目アルトで、通常モデルは昭和時代末期に3代目にFMCされたのですが、ウォークスルーバンだけは1998年の新規格への改正まで生産されたとあって、平成時代にあって昭和の香り漂う、仕事車だけど遊び心満載な、奇跡の1台でした。
それに敬意を表し、堂々の1位とします。以下、当時のインプレを。(加筆訂正あり。)
軽自動車でのウォークスルーバンの元祖はダイハツのミラで、これが思いのほかの好評で、三菱ミニカとスズキアルトも対抗する形でデビューするも、2車は耐久性や床がフラットでないなどで詰めの甘さで敬遠されて、ミニカに到っては90年規格改正前には生産終了してしまったそうです。(ウィキペディアより。)
思えばミラに比べて不便なのが、右側にドアがないため、運転席からの乗り降りでシフトノブを跨ぐ必要があること、ですね。
それに、現車でも床の凹凸は確かにありました…。
それらを差し引いたとしても、クルマそのものの仕上がりは素晴らしく、エンジン・トランスミッションの機関は調子よく、ボディもサビが目立たずに綺麗にオールペンされてて、さすがショップで購入された物件だけのことはあるな、と実感。
通常のアルトよりも確実に重くなった車重にも関わらず、カタログ上では悲劇的に非力なF5AОHCキャブで30馬力前後しかないユニットでも、十分に軽快に走らせるだけのポテンシャル(笑)はありました。
さすがに、上り坂で失速するのはご愛嬌ですが…。
FFでノンパワステでも十分に軽いステアリングで、パワステなし故にインフォメーションが多く、背高ボディに相応しい運転姿勢が取りやすいことも加味して、タントやパレットよりも約30cm背が高いとは思えない、安定した走りを見せていました。
ただ、シフトストロークが非常に長く、一部の改造であるようなターボエンジンを積んで走らせる気にはならないですが…。(その位のんびりと走らせた方が似合うキャラである、と言えますが…。)
プロ仕様のクルマとしての完成度でも、ステップバンを上回っていて、80年代の中途半端に見えがちなネオクラシックカーの魅力を再発見できたのは、大きな収穫でしたね。
ちなみに乗車定員は2名で、助手席は補助席でスライドドアのすぐ後ろに設置されています。床はフォローリング調!で貼られており、見た目のお洒落さに加え滑りにくい素材で実用性にも富んだ、魅力的な居住空間に仕上がっていました。^^
【第2位】 スプラッシュ
(画像)スズキ スプラッシュ 直4横1.2 CVT FF (128.7) 11.54(1050kg/91馬力)
このクルマ、乗るごとに褒めまくってます!
何故ならば、スプラッシュ以外の日本の自動車メーカーで販売される小型車が、ことごとく詰まらないから!以下、試乗記。
基本コンポーネンツをスイフトと共用している、とは言うものの、浜松産のエンジンをハンガリーで組み立てた、いわばスズキブランドの輸入車!なのです。
これ、デビュー当時から当方は知ってて、その欧州車そのものな骨太な乗り味に、実用車の王道を行く、高いシート着座位置に背もたれを起こした姿勢でドライビングポジションを決める設計に、そして長距離移動での疲れにくさを重視して、一見硬いけれどもシート本体に力を入れた作りで、それは実用車の鏡そのものなのです。
後のMCでカラーバリエーションが激減して、CVTが2軸式に変更されるものの、同じパワートレインを使っているスイフトやソリオとは別格のキャラクターで、そこにあるのはカタログ数値燃費を稼ぐ為に、実際に乗った際のパワー感を犠牲にしている日本車勢とは正反対の、ラテン系小型車によくある小気味良い乗り味なのです。
もちろん、デビュー当時に感じた骨太さは健在で、最新型車と比べると相当にステアリング操舵力が高く、下手なドイツ車よりも重く感じるほど・・・。
重くてがっちりしているのは良いけれど、もう少し軽くても情報量豊富で上質なものを・・・となったら、より高級な実用車を・・・と言いたくなるほどのベンチマーク最有力候補なのです。
でも、最近の日本人ユーザーにとっては、全高1.6m弱で前後シート着座位置が高いスプラッシュだと狭く感じるようで、例えばの話同じスズキのスペーシアのように、シート着座位置はそこそこの高さで、頭上の天井スペースが大きい方が広々感があって良いのだとか・・・。
だからこそ、知る人ぞ知る影の名車「スプラッシュ」なのですね。^^
【第3位】 12代目 キャリィトラック DA16T
(CM動画)
今回の新型キャリィトラックの選考は、イレギュラーでCM効果によるところ大です。
特に今回、ニューハーフタレントとして活躍されている、はるな愛さんが、夜の裏のお仕事ではなくて、表の仕事で使われることが多い軽トラのCMに出演した、というのが大きな時代背景を感じさせた。
しかも、男道まっしぐらの菅原文太氏との共演が絶妙で、「軽トラ野郎」と突っ込まれながらも、「野郎じゃない!」とつき返すはるな愛さん・・・。
更に、カタログの表紙がお二人のツーショットで、昭和時代を彷彿とさせる実写のような絵柄で、本当の昭和時代ならば偏見の嵐で実現し得なかったことが、こうして2013年で現実になった時代に、改めて感謝したい・・・。
と何故、当方がここまで強調するか?
それは、
当方も当事者だから・・・。
新型キャリィトラックそのものは、軽トラでは最も安全装備が充実したクルマ、という以外特筆するところが薄いのが難で、パワステなしだとステアリングの重さが堪えるところが、パワステ付き前提設計の悲しい性か?
【第4位】 2代目エブリィ/9代目キャリィトラック
トラックとバンの二本立てになりましたが、最も昭和の雰囲気を残す軽ワンボックスとして選択!
今にして思えば、昭和の香りプンプンで、660に規格改正されるも、低グレードの丸目も相当雰囲気あると同時に、無理やり角目にしてターボでエアロ付きまであり、またパワステとATが別々に付く時代でもあり、ようやく快適装備への夜明けか?といったところで、後半のジョイポップサウンドは評価こそ下がったものの、運転環境を何とかしてでも・・・と思わせる魅力がありました。
(画像1)’89 スズキ キャリィ トラック 4WD 3方開KA 高低2段×4速MT(10)
プリミティブなFRの面白さを最もシンプルな形で表しているのが、正に日本の商売を支えているとも言える軽トラなのです。
その中で、今回乗ったのは平成元年式のキャリィトラックでしたが、550cc時代末期の世代で水冷直列3気筒の4サイクルエンジンで、一見すると今時の軽トラとあまり変わり映えしないレイアウトではあるのですが、持ち前の軽量コンパクトボディでカタログ数値で30馬力前後しかないエンジンで、十分に軽快に走らせるだけのポテンシャルを持ち合わせております。
旧車マニア的に見れば、出来れば迫力のサウンドで低速域でのパンチ力に富んだ2サイクルや、1気筒辺りの排気量が大きくなってトルクフルになる2気筒に惚れるところはあります。
ですが、ATの設定を考慮する必要がなかった時代で、MTだけを考慮して開発できた時代であったため、エンジンスタート機能だのクラッチペダルの操作力軽減だので、むしろ乗りにくくなっている最新型のMTよりも、余程乗りやすくてクルマの挙動がわかりやすくて、クルマを操る楽しさに溢れているので、それはそれで見どころありな軽トラなのです。
4段しかないため、高速域は大の苦手ですが、副変速機を備えたりマニュアルフリーハブを装備する辺りは、ジムニーで培ったスズキのオフロードへの配慮が見えるところです。
今回のキャリィは廉価仕様であるため、シート調節機能が全くないため、前かがみな姿勢でのポジションにはなってしまうのですが、その点さえ考慮すれば、田舎道ではこれ以上ないスーパーカー(笑)でもあるのです。
クルマ本体とは関係ないのですが、今回物件があったのはとある田舎で、自然と緑に溢れ、エアコンが装備されない現車でも快適に乗ることが出来て、改めてエアコンへの依存性を低くすることの大切さを噛み締めたところです…。
(画像2)’91 スズキ エブリィ ジョイポップサウンド 2WD 5速MT(9.8)
よりネオクラシックの香りがする1台。
グレード名にサウンドがつくだけのことがあって、特に純正オーディオが充実したもので、テールゲート付近には、立派なコンポ並に大きなスピーカーが設置されており、単なる商用箱バンではない、乗用仕様への用途に応えた仕様になっています。
ただこの頃のエブリィは、パワーステアリングやオートマチックといった快適装備がようやく付き始めた頃のもので、電動パワステはガラスルーフ付きのRXのみで、オートマチックはハイルーフのPXとジョイポップのみで、今では考えられないですが、両方選べるグレードが存在しなかったのです。
なので、実際に試乗してみて、(車庫入れなどで)素直にパワステの必要性を感じてしまったのが、正直なところです。
既に、この車格・車重・装備・装着タイヤでノンパワステは、限界にきていたのかもしれないと…。
エンジンはF6Aで単カム4バルブのキャブレター仕様で、NAに関しては商用の素バンも共通でした。
ターボはないので、さすがに速さはないですが、必要にして十分な動力性能は確保している、といったところです。
ただ運転環境面で違和感があり、純粋な商用車として使うには、シート座面が柔らかめで経たりが目立ち、前後オールフラットシート機能のためか、フロントシートバックが寝かせ気味で、商用ワンボックスに合ったポジションには合っていないシート形状であるところに、ネオクラシカルな雰囲気を楽しむには、テンションが下がり気味になってしまったが、何とも惜しいところでした。
おそらく、クラシックな雰囲気は消えてはしまったけど、次のDA52系のように、ステアリングコラムの角度を乗用車的に寝かせた方が、ポジション的には合っているのかもしれないですね。^^;
【第5位】 4代目エブリィ/エブリィプラス
(画像)’00 スズキ エブリィプラス 直4縦1.3 リミテッド 4速AT FR (23.0) 11.53(980kg/85馬力)
この型のバンは、現在出稼ぎ先でお世話になっているから、というのもあるけれど、3列シートのプラスの意外な魅力を発見、以下その試乗記。
実のところ、当方の出稼ぎ先で頻繁に乗っているのが先代エブリィのDB52で、NAの660に3速ATの組み合わせの後期モデル。
それをベースに、3列7人乗りの小型ワゴンに派生させたのが、今回紹介するエブリィプラスなのです。
とかく、コンパクトな3列シート車が・・・とよく言われてシエンタとかフリードだとかが主婦層の間で人気なのですが、とにかく3列目シートは補助席のようなもので、本当に乗員の安全を考えると大切な家族や友人を乗せる居住空間として、少しは躊躇はしないのだろうか?と当方は甚だ疑問に思うのだけれども、当の主婦さんは自分が運転しやすいか否かにしか意識が行ってないため、後席の乗員がどうとかは自分が乗る機会を得ない限り想像できないようで、哲学的に愛を語ると何だかなぁ~と悲しくなるわけで・・・。
そんなに小型3列が欲しいんだったら、いっそのこと軽四サイズで3列あるぞ、エンジンが1.3Lで寸法が若干超えるから普通車登録なんだけど・・・という感じで、エブリィプラス如何ですか?と、皮肉をこめてお勧めしたい。
何て言うけれど、皮肉の対象にするだけじゃエブリィプラスさんに失礼なもので、これが非常に走りを楽しむビークルとしても良いもので・・・。
これがもし、シートが2列でも豪華装備の軽自動車登録車だったら、ATだったらターボ付けてようやく車重に見合った動力性能を得るところで、改めて排気量で余裕のある仕様と乗り比べると、エンジンの余裕を感じるもので、軽自動車の制度がなかったら、むしろ1.3Lを載せた方が自然ではないか、とすら。
ただ、動力性能面では余裕を感じたプラスですが、トレッドが若干広がってタイヤが太くハイトが高くなったせいか、又は中古車故にステアリング系統の経たりの可能性(電動PSのモーターか?)も否定できないですが、荒れた路面でのステアリングの乱れや、ステアリングを切って戻す時の操舵感の違和感があり、またウレタンステアリングの感触が安っぽかった時代のスズキ車故のもので、走りの質感はそんなに高くはない印象でした。
ステアリング系統さえ何とかなれば、ナローボディで狭い道でもスイスイ走れる箱車として、一押ししたい1台ではないか。
今や、元祖軽ハコバンベースの3列車なスバル・ドミンゴも、中古車としてのタマ数が激減しただけに・・・。
しかも、このエブリィプラス。リアエアコンも付いてて、涼しい風が後席にもやってくる、そんなおもてなし?の精神をも持っているのです。^^;
いかがでしたでしょうか?
またしても?スポーツカー不在の選考となりました。^^;
5位のエブリィプラスは、後期でエブリィランディへと進化し、後に日産からセレナがランディとしてOEM供給されるのですが、軽四サイズで3列シート車に乗った後から乗り換えると、如何に余裕で室内が広いクルマか?を、より明確に実感させてくれた、という意味では、エブリィプラスは偉大だった?