かつてのクイーンは、
ロックの文脈から見れば、
異端かつキワモノ的な存在だった。
それが2020年の今、ロックの王道として、
再び輝きを放っている。
これほどうれしいことはない。
しかも、世界最高レベルのステージを繰り広げるバンドとして、
再び日本にやってきたのだ。
クイーン再生を担ったのが、アメリカのオーディション番組
「アメリカンアイドル」から登場したアダム・ランバートだ。
当時、日本放送をリアルタイムで見ていた自分は、
彼が最初に「ボヘミアン・ラプソディ」を歌った瞬間から、
大きな期待を寄せた。クイーン復活を担う逸材として。
「胸いっぱいの愛を」のライブパフォーマンスでは
ロバート・プラントばりのVo.で、
デビッド・ボウイやグラムロックの雰囲気を醸し出す。
アメリカンアイドルは、日本のような素人が歌のうまさを競う番組ではない。
若いアーティストの音楽的バックボーンを見つつ、
それを超えるだけの表現力を持っているか。
それがアメリカのアイドルという概念なのだ。
ポップに限らず、カントリー、R&B、ラテン、
そしてロックなど、そのジャンルで卓越したVoがごまんといる。
例えば、今シーズンの優勝したレイン。
10代でザ・バンドをこれだけ歌いこなす逸材で、
日本人からは絶対に出てこないだろう。
ただ、自らの持つジャンルの枠を超えるパフォーマンスを見せないと、
勝ち抜くことができないシステムだ。
アダムは、70年代テイストを存分に感じさせただけでなく、
過去に例を見ないヴォーカルで、その枠を軽々と超えていった。
歌のうまさはもちろんだけれど、
パフォーマンスとして見せる能力は卓越していた。
それなりにアーティストやアスリートにも会う仕事ではあるけれど、
華というものはスキル的な才能とはまったく別次元。
アダムには、フレディにも通ずる華があった。
それもチャーミングさとクールさの両面で。
また、子供の頃からミュージカルで活躍していたこともあり、
大げさすぎる表現力もクイーン的だった。
ただ、アダムがゲイをカミングアウトしたことで、
保守層からの反発を買い、そのシーズンで優勝できなかったが、
負けたにも関わらず、グランドフィナーレでクイーンとの共演して
We are the championsを歌い、
優勝者をしのぐ力を見せて、アダム伝説が生まれた。
番組はアダムの実力を見た時点で、
クイーンとKISSにゲストのオファーをしたのだろう。
70年代のロックを理解しているものであれば、
次世代の逸材を引き合わせたちと思うのは当然だ。
KISSとの共演もうまく歌いこなしたが、
クイーンほど相性はよくはなかった。
それよりもクイーンの再生を果たせるのはアダムしかいない!と、
ZEPの時点で確信していた。
初期の曲を歌う力のあるアダムがクイーンを再びスタジアムに導いてくれると。
アダムがスター街道を歩み始めたと同時に、
ロジャーとブライアンのテレビ出演のインパクトも好影響を与えた。
ちょうど名前の由来になったというレディガガが売れ始めた時期で、
以降、ガガ、フー・ファイターズ、FUN.といった、
クイーンに影響を受けたアーティストたちとの、
グラミーなどのイベントでの共演が始まった。
そのあたりから、
かつてキワモノ的にクイーンを見ていた世代とはまったく違った、
クイーンの正当な再評価が始まった。
その流れがやがて世界的なヒットとなった
映画「ボヘミアン・ラプソディ」へとつながっていく。
アダムはフレディの代役というわけではなく、
ポール・ロジャースと演って以降、
活動の手がなかったクイーン2人を、
再び表舞台に出すきっかけにもなったのだ。
アダムとクイーンが出会ってから11年。
それまでに2回来日しているものの、
今回は映画のヒットを受けた、
大体的な世界ツアーでの来日となった。
いつかもう1度スタジアム規模で、
最高のライティングやセットで歌うクイーンが見たい!
という願いがついに叶うことになった。
なかにはいまだにフレディは違うと批判的な人もいる。
自分の思いはまったく違う。
1985年の日本公演でさえ喉はギリギリだった。
エイズのせいもあったのだろうが、決して喉が強いタイプではなく、
そのときから35年経った今でも満足なパフォーマンスができただろうか?
フレディは完璧なエンターテイナーだからこそ、
声が衰えていく中で、30年以上経った今、ライブ活動をしていたかどうか…。
しかもスタジアムクラスのライブを。
今となってはその答えはわからない。
ただ、形骸化したクイーンのコンサートだけは見たくなかった。
アホみたいにド派手なステージで、
みんなで楽しく盛り上がれるライブであって欲しい。
それが自分のエンターテイメントの原点であり、
クイーンのコンサートだったからだ。
そんなクイーンを見るには、
是が非でもアダム・ランバートが必要だったのだ。
Posted at 2020/01/31 16:21:26 | |
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