
先日、カレラ4のホイールを久しぶりに洗おうとしたら、前輪がスタッドアリタイヤになっていた。スカイライン2000GTに乗っていた頃までは、冬タイヤはこのような鋲がたくさんタイヤ表面に打ち込まれてあって、高速道路でもガリガリと音を立てて走っていたものだった。よく見ると+ネジだ。幸い空気が抜けていない。タイヤも減っていて交換時期が近かったので、いつものタイヤ屋さんに4本発注した。そこで事情を話すと、こういうことはうちの店でも月4~5件はあるとのこと。
タイヤに何かが刺さってしまうのは、道路がクリーンでない以上不可抗力のことがあるが、最近、人間関係で理不尽にナイフで刺される事件が報道され、その容疑者が精神障害の可能性があると報道が立ち消えになることが多く、その後の情報は封印されてしまう。私達は自分も含めて健常者のままいられる保証はなく、いろいろな障害者と社会で共存しているのだから、精神障害に関してもその病状の概要は知っておく必要がある。次の例は、長年の経験から統合失調症がどのようなものかを私が講義用に創作したもので、典型的な発病のパターンを示している。
Aは、今春大学を卒業し東京のコンピューター関連の会社に就職した。慣れない都会暮らしと仕事の疲れも重なって、6月頃より眠れない日々が続くようになった。
そんなある日、アパートの隣の部屋の住人の話し声が気になるようになった。入居した時からそんなに防音のよいアパートではなかったが、次第に隣でたてる物音や話し声が自分のことを言っているような気がしてきた。
しばらくすると、Aがトイレに行こうとすると「トイレに行くな!」あるいはご飯を食べようとすると「ご飯を食べてはだめだよ」と隣から聴こえてくるようになった。Aはどうして自分の行動が知られているか不思議に思った。もしかして盗聴器や監視カメラがこの部屋にしかけられているのではないかとそれらを探してみたりもした。しかしそれらしきものは見当たらなかった。声は男性の声の場合もあるし、女性の声の場合もある。そのうちもっと不可解なことが起きた。なんとTVを見ていたらアナウンサーが自分のことを言っている。これはいったいどういうことだろう?Aは困惑してしまった。
外出すると、道ですれ違う人が自分の方を見て笑っているような気がする。全然知らない人が自分の悪口をささやいているように感じ始めた。近くを通り過ぎる車が自分をつけて監視しているのではとも思い始めた。
こうなると外出もできない。Aは会社を休んで部屋に閉じこもるようになった。時おり隣から聴こえてくる声があると、怒鳴り返したり壁をどんどんと叩いたりした。事情を知らない隣人は大家に苦情を申し出た。
さらに聴こえてくる声は、Aが話すことや、思っていることに対しても言ってくるのである。Aが「うるさいな、いちいち口出しするな!」と言うと「なに、うるさいだと。お前のためを思って言っているんだ」と返事が返ってくる。Aは一日中部屋に閉じこもり正体のわからない声と会話するようになった。
会社からAの実家に無断欠勤が続いていると連絡が入り、Aの兄がアパートにかけつけてみた。そこには掃除もしないごみだらけの部屋に、髭も剃らず不潔な格好をしたAが緊張した表情で「兄さん、気をつけて、ここは見張られているんだ。おそらく秘密警察かなんかだよ」と言って閉め切ったカーテンを少し開けて外を覗いた。
兄はAを連れ帰って、実家の近くの精神科を受診させることを決意した。
このケースの特徴は幻聴と被害妄想である。特に被害妄想は、自分の周りの人間や偶発的な出来事も自分に関連づけて考えてしまうので、
被害関係妄想と呼ばれる。これが覚えて頂きたいこの病気の最大の特徴である。病者の脳は自分の感じ取り方や考えが間違っているのではなく、周りがそうしていると解釈して整合性を保とうとする。したがって、周りの人間が理路整然とその誤りを正そうとして話し合いをしても無効である。
もし、隣人にこういう人がいたら必ず医療機関につなげない限りはこの状態は改善しない。家族がいる場合は良いが、放置されたままだと危険だし、また通院を中断した者も同じ状態になる。たいていは部屋に閉じこもりになるが、元々の性格が攻撃的だったり活動性があると事件や事故に発展する。この病気はクスリさえ飲めば症状が消失したりかなりの軽減が望める。そうやって回復した人はすごく穏やかでいい人がほとんどなことが多い。
わざわざこのケースを提示したのは、病気になっている時の本人の内面を知って欲しかったからである。これを知っていれば身近に起きる対人トラブルや、メディアの報道での似たような事件に対して、より理解が得られることと思う。
国は日本が諸外国に比べてあまりに精神科病院の入院者数が多いと言うことで約10年位前から退院を促し精神科病院のベッド数を削減する方向に動いてきた。
そうであるならば、国民もよりこの病気に関し理解してトラブルを避け、安全にいっしょに暮らしていけるような社会にしないといけないのではないかな。
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2015/06/02 14:24:08