
先日の日記で、祇園暴走の原因を書いたら脳外科医から砲弾を食らってしまった。「自動症」と断言してよいのかと。てんかんというのは実にいろいろな発作のパターンがある。その中で、もし発作を起こしているにも関わらず運転が可能だとすれば、複雑部分発作の主症状である自動症であったのではないかというのが、私の推論だった。
しかし脳外科医は、「自動症」でそのような運転が出来るかどうかもう少し検証が必要ではないかと。一昨年の12月に歯科医が運転中にやはりてんかん発作を起こし、踏切待ちをしていた自転車に追突し、研修医と中国人の2名が亡くなっている。この時、歯科医は自分の医院を通り過ぎた後から記憶にないと語っていた。そのクルマの目撃情報だと、蛇行したり急加速したりとおかしな運転をしていたようだ。これが自動症による運転である。
でも、よく考えると祇園暴走の猛スピードでの直線的な走りと、前述の歯科医の走りは同じものではない。自動症の人がどんな様子かは前の日記に映像もアップしてあるが、実際のところ、意識のないところでどのような運転をするのかは知られていない。気がついたら知らない場所に来ていたとか、ぶつかっていたとかの報告例はある。上の状況図を見ると、クルマは人や他のクルマにぶつかりながらほとんど直線的に走っている。こういう走り方に最も似たものは、アクセルとブレーキの踏み間違いによる暴走である。
今日の報道では、最初にタクシーに衝突した後、男はアクセルをそのまま踏み続け、30メートルにわたって前方のタクシーを押し出すように2~3回当てていたことが判明した。これの警察側の解釈は「パニックに陥った運転手はアクセルをさらに踏み込み、ペダルから足を離さないケースがある」と言い、パニック説の裏付けに用いている。しかし、ここでいうパニックとはどういう状況だろうか?皆さんはパニックになりそうになった時、アクセルを“本能的”に踏むだろうか?警察の言っているケースは、誤ってアクセルとブレーキを踏み間違えた直後にパニックになり、そのままアクセルをブレーキと思い込んでさらに深く踏み込むケースのことではないのか?
さらに、ここで新たなる疑問が浮上する。男はいったんクルマをバックさせ逃走したと最初の頃の報道にあった。意識があった証拠とされたが、タクシーに2~3回バンバンと当たるとどうなるか。当たった瞬間、前とのクルマとの間に隙間ができる。その空いた時に偶然にすり抜けて行った。これを目撃者の一部が「一度バックしてタクシーを追い抜いた」と見間違えた可能性はないだろうか?
アクセルは最初から最後までベタ踏みだった。こう仮定してみる。
そこで新たな仮説が出てくる。もしかしたら30歳の男性は、意識があっても足が勝手に硬直してアクセルから離せなくなったのではないかと。これは単純部分発作にみられるもので、意識はあっても手足が硬直したり、勝手に動く発作である。男は完全に気を失うまで残った能力で必死にクルマをコントロールし、最後は大発作に移行し電柱に激突した。最初は部分発作であっても、それが大発作に移行することもある。つまり発作型が運転中に変化した可能性もある。
もちろん、最初の仮説のずっと「自動症」だったというのも可能性としては否定できない。だが、「自動症」での運転は、無意識下でもほぼ常識的な運転で、このような暴走した例はないようだ。
いずれにせよ、今回の暴走は、てんかん発作の影響は否定しきれない。ただし、これらはあくまで仮説であることをご了承いただきたい。
(うう、また砲撃されるかな・・・・。)
参考
★一例報告ですが、海外のサイトでこういうものがありました。
幼少時代からてんかん発作があった22才の男性。ある晩、婚約者と家にクルマで向かっていた。彼は運転免許もなく運転もできなかった。すると突然車道で、彼が運転を代われと言い出した。婚約者は、彼が段々怒り始め、また腕力もある男性なので拒むことができなかった。彼は1キロほど運転し、その後徐々に意識を取り戻しクルマを停止させ「オレは今なにをやっているんだ?」と何ども繰り返して言った。席を交換している最中、パトカーが通りかかり、不審に思って免許証の提示を求めた。結果は男は無免許の罰金を、婚約者は彼に運転させたことによる罰金を払うはめになった。
★ 複雑部分発作の患者さんを自分で治療されている医師の経験例
①熱湯を注いでいる最中に発作が生じ、自己や他者にその熱湯がかかってしまい、それでもその行為をやめずに、さらに徘徊して回る行為
②家で 発作が起こり外に出かけて、数十分後に自分が見知らぬ街を徘徊していているときに正気に戻る例
③いつもおとなしい患者が、発作時間は短くてもその後に暴れまくり、大勢で取 り押さえないといけない例
④自動車運転中に事故を起こしても当て逃げしてしまい、あとで全く記憶がない例
発作中もしくは発作後には、症例によって は、結構、半合目的的な行為は持続し得えるとも言っている。
Posted at 2012/04/18 14:59:51 | |
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