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2019年11月23日

【続報】台風19号と鉄道被害を考える。(その1) 

【続報】台風19号と鉄道被害を考える。(その1) 




東日本の広い地域に、甚大な被害をもたらした

台風19号。 




その前に東関東を直撃した台風15号や、19号のあと再び豪雨を呼んだ秋雨前線と相まって、未だ各地に深刻な影響が出ています。

千曲川が決壊し、JR東日本長野市新幹線車両センターに留置、検修中の北陸新幹線E7系8編成とW7系2編成の計10編成が冠水するという映像は衝撃的でした。

(産経新聞から)

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(PRESIDENT On Line = 時事通信から)
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新幹線の車両基地には広大な敷地が必要です。

北陸新幹線は12両編成。1両25mありますから、1編成の長さは300mになります。16両編成の東海道山陽新幹線は400mもあります。車両基地にはこれらを停め置く留置線のほか、点検修理を行う建物のある検修線が必要になります。

これだけの敷地を確保できるとなると、どうしても大河川に近い広大な平地を求めざるをえません。


この辺り、長野市穂保地区は、長野市作成のハザードマップでは最大10mの洪水が起こりえる、とされていますが、建設時の1990年代はまだハザードマップがなく、2mの盛り土をしたうえで建設されています。


実はこうした洪水リスクのある車両基地は全国に多く存在しています。

東海道新幹線の「大井車両基地(東京)」「鳥飼車両基地(大阪)」「浜松工場(静岡)」、山陽新幹線の「博多総合車両所広島支所(広島)」、九州新幹線の「熊本総合車両所(熊本)などは、河川氾濫や津波のリスクが高いとされています。


【参考】LEN吉ブログ2016年6月29日

『北陸新幹線 『白山総合車両所 見学会』 に行ってきた! 』

白山総合車両所は、手取川近くの平野にありますが、5m以上の高台に建設されています。

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北陸新幹線は所属編成の3分の1を失いましたが、上越新幹線E2系やE4系の廃車を遅らせ、その置き換え用として上越新幹線用に製造したE7系を北陸新幹線に転用するなどして、10月25日から所定ダイヤの90%の本数を確保して全線の運転が再開されました。





11月19日 

長野車両センターで、冠水した車両を解体する準備作業が始まったと報じられました。
(ASAHI DIGITAL から)alt


(ASAHI DIGITAL から)

北陸新幹線の浸水脱線車両、解体向け線路に戻す作業開始

冠水し浮き上がって脱線した車両を切り離し、ジャッキアップして線路に戻しています。

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JR東日本もJR西日本も、冠水車両全編成 120両は廃車解体する、と発表しています。

開業当時の新製費用は総額330億円といわれますが、当別損失計上額は約150億円、償却分を差し引きこの損失額になるとのこと。

今、新造するにはこれとは別に1編成40億円近くの費用が掛かると言われます。


ここで、


(疑問その1)
「冠水した車両は修理して使えないのか」、

「損傷していないように見える車体だけでも使えないのか」

といった、素朴な疑問が残ります。


しかし写真でもわかるように、車両の床上あたりまで冠水。鉄道車両の床下には、変圧器や整流器、インバータなどの電気電子制御機器が搭載されています。

これらが水に浸かると、たとえ完全に乾かしたとしても絶縁不良や腐食など電気的に損傷し使用できません。
スマートホンやパソコンを水の中に落としたことを考えれば、到底使えないことは理解し易いと思います。


また、洪水は非常に細かい泥の粒子が含まれており、それらの泥には細菌が存在します。

それが冠水によって隙間という隙間に入り込み、完全に除去できるものではなく、衛生上問題が残ります。

報道では床上に達した水は座席も汚染していたと言いますから、車内の被害も相当なのでしょう。


では、車体だけ、いわゆるドンガラの状態にして、新たな部品や機器を組み込めば、という議論もありますが、気密性の高い新幹線車両の特殊性から、機器や配線の工法を考えたとき、結局新しく作るほうがトータルコストは安い、という試算となったようです。





また、洪水の危険が迫る前に、

(疑問その2)

「新幹線車両を長野駅や飯山駅などの高架線に退避させられなかったか」

という声もあがっています。

これに対して、JR東日本は、

「台風19号が通過した当時、既に避難指示が発令され、運転士や係員が車両基地に近づけられなかった」

とコメントしていました。


本当にそうするしかなかったのでしょうか…?


これについて、台風や洪水の対応で教訓となる話を2つ、ご紹介。



【① 国鉄 0系新幹線が避難した】
先ほども触れた、
大阪『JR東海鳥飼車両基地』。

淀川水系安威川に近い大阪府摂津市にあります。

京都を出て新大阪に向かう時、右手にたくさんの新幹線が見えるのが鳥飼車両基地。
(Wikipedia から)
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国鉄時代、東海道新幹線開業時に建設された、東海道山陽新幹線を支える重要な施設。

(Wikipedia から)

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1967年7月9日夜、大阪北摂地域の集中豪雨。

鳥飼車両基地北側の安威川が氾濫し、車両基地が浸水。


NHK NEWS Watch9 でも 取り上げられた話題なのですが。


2019年10月17日(木)「新幹線車両基地のリスク」

(NHK NEWS Watch9)

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この時、国鉄新幹線総局と鳥飼車両基地は、21時34分安威川が警戒水位を超えてから洪水が押し寄せるまでの間に、基地に留置されていた0系新幹線13編成と保線用車両を、営業運転が終了した本線上に順次退避させた、のでした。

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翌日の始発前に、今度は車両を駅に移動させ、始発から平常運転したそうです。

鳥飼車両基地ではそうした危険予知と避難訓練シミュレーションを日頃から行っていた、とのことでした。

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この「専門家」のコメントは、現在の東海道山陽新幹線は13編成どころではない、という点では正しいですが、北陸新幹線の被害はコレより少ない10編成なので、新幹線の貴重な教訓として生かせなかったかという疑問が残ります。

この、東海道新幹線の高架線退避については『PRESIDENT OnLine』でも紹介されています。

(PRESIDENT OnLineから)

北陸新幹線水没で分かった基地の"本当の役割"




また、もっと身近なところでは、



【② バスが避難した】
長野電鉄グループ長電バスの、今回の台風19号の対応。

台風19号が通過直後の10月13日(日)、長電バス長野営業所は、浸水の危険が迫る中、路線バスの運休を決めたあと、運転士や職員がバスを次々に高台に避難させたそうです。


(乗りものニュースから)
台風19号で交通寸断「陸の孤島」へ高速バスなぜ運行できたのか? 実現の裏側

浸水が始まる中、避難を始める長電バスの高速・貸し切りバス。

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洪水の中、避難する長電バスの路線バス。

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その結果、車両の冠水被害は免れ、14日(月)には、浸水地域以外の一部路線バスと高速バスの運行が可能になったそうです。



国鉄(日本国有鉄道)とJR、そしてバス事業者。

体制や事業規模の違いはありますが、過去の教訓や、すぐ隣の事業者の対応例を見ると、330億円もの新幹線車両が成す術もないまま冠水していった事実に対し、もう少し何かできなかったのか。という残念な思いはあります・・・。




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ブログ一覧 | 鉄学 | 日記
Posted at 2019/11/24 08:32:03

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この記事へのコメント

2019年11月24日 10:49
お疲れ様です。
今年も予測を超える大きな被害をもたらす、豪雨や暴風が起こり、これまで被害のなかった地域で大きな災害が起きました(T_T)。
何度も聞いた「命を守る行動を!」。
まずは人命ですが、危険が去った後の事も想定して、公共交通機関の事業継続危機管理も必要なのですね。
コメントへの返答
2019年11月24日 12:39
こんにちは(^^)/
毎年地域が微妙に変わりながら全国各地で豪雨や暴風の災害が起きてますね。今年は東日本が繰り返し襲われたのが何だか切なく。
まずは人命です。浸水迫る中でバスを守った長電バスもギリギリの判断だったと思います。JR東日本は、1998年東北新幹線小山車両基地で浸水から車両退避させた経験があるとのことで、何かしら生かされなかったのが残念です。
<(-_-;)
2019年11月24日 16:56
ナルほどですね
教訓とは言えあまりにも大きな
代償となったんですね
ニュースは車1台と電車1基が
同じ次元で見れてしまいますので
事の大きさに気づきにくいですね
コメントへの返答
2019年11月24日 17:39
豪雪でも止まらなかった北陸新幹線が分断されたのは開業以来初めてで各方面に影響が!?
それでも、JR東と西は黒字経営で事業規模も大きいですから、百何十億も特損計上して車両新造もできるのですが、ローカル鉄道が被災すると数億円も捻出できず経営危機という話になります。
次回(その2)では、ローカル鉄道についての私見を徒然と。
2019年11月24日 21:25
この水没車両の光景は何度見ても心が痛みますよね。ここまで見事に冠水したら、確かに再生は無理でしょうけど、もったいないお化けが出てきそうです。
避難させられなかったのか?…は確かに思いますよね。でも、一編成300メートルだと、10編成分で約3キロ?!
かなりの人を動員して一斉に動かさないと、移動だけで大変かもしれませんね。バスでさえ一人じゃ無理そうですもん(汗)
でもほんと、こうならないことを祈るしかないんでしょうね…あぁ、もったいない。

解体部品が放出されたら…何か欲しくなるかも。。。
コメントへの返答
2019年11月25日 12:51
今回の台風被害で衝撃的な光景の一つでした。せめて車体だけでも使えないのかと思うのですが、クルマのレストアとは違いますね。
退避の可能性、調べてみるとJR東日本も国鉄も洪水からの新幹線の避難の経験があり、何故そのノウハウが水平展開されなかったのか、という思いを強くします。長野駅は4線、飯山駅は2線分発着でき編成留置が可能。前述の東海道新幹線鳥飼基地の事例は本線高架上に停め置いたそうです。鉄道の運転士には本線を運転できる免許と基地など構内を運転できる免許がありますが、非常事態なので線路閉鎖して営業解除したら、構内運転士でも退避できたかも。
長電バスの場合は、出社してきた職員が次々にバスに乗り込み避難させたそうです。

うーん、汚染した水に浸かってますからね…。どうでしょう
2019年11月25日 12:50
水没した車両の再利用は不可能でしょうね😣

「解体した車両の部品をオークションにかけて
売上金を台風被害に遭った方々に寄付したらいいのに」と思います。

車両を転用したりして所定ダイヤの90%の本数を確保したことは評価できると思います。
コメントへの返答
2019年11月25日 13:03
長野車両センター付近の水位は最大4mを超えたそうですから、盛り土分を引いても2mの冠水。写真でもわかりますが、床上まで水が入っているようで、座席まで浸水したと報じられていました。
本文でも触れましたが、洪水の泥水は非常に細かく細菌の多い汚染泥を含みます。水害の泥上げを手伝ったこともありますが、それらを乾かしても転売できるものではないと思います。

運転本数90%は、長野東京間の「あさま」を運休し、金沢-東京間の「かがやき」「はくたか」と金沢-富山間「つるぎ」の運転を確保する臨時ダイヤとして実現しています。各駅停車タイプの「はくたか」に「あさま」の乗客を乗せる訳ですね。「つるぎ」は大阪・名古屋-富山間の乗客のために運休できません。
問題は、年末年始の混雑期に臨時列車を増発できるか、だそうです。
2019年11月25日 15:22
北陸新幹線の編成が浸水被害に遭っていた画像は衝撃的でした。
東海道新幹線は難を逃れたんですね。
白号が高潮に浸かった時も衝撃的でした。。。
コメントへの返答
2019年11月25日 19:08
新幹線冠水の画像は「何が起きたの?」という感じでしたね。
先人の知恵、気象予報も通信も現在より貧弱な中で、よく限られた時間に0系を退避させたと思います。教訓にして水平展開してほしいところだと思うのですが。
あー、白号と高潮…。
九州セリカdayの満ち潮(和食屋ではなく)も衝撃的でしたよ。
<(^^;)

プロフィール

「到着~♪」
何シテル?   05/05 11:16
柴犬のLEN吉、本名「レン」永遠の12才です。 クルマでお出かけするのが大好き。 イベントで見掛けたら、声を掛けてください。 (^^)/
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