2018年02月08日
宇宙いっちゃったか~
スペースX新型ロケットどこが画期的? テスラ車載せ「ファルコン・ヘビー」打ち上げ
スペースXの新型ロケット、打ち上げ成功
「ファルコン・ヘビー」はスペースX社(アメリカ)が所有する大型ロケットです。当初、2013年に打ち上げられる予定でしたが、諸々の事情で何度か延期となり、やっと本日2018年2月7日(水)(日本時間、以下同)の早朝5時45分、ケネディ宇宙センター(米・フロリダ州)から無事、打ち上げに成功しました。
そして離陸から約8分後、3基のうちの2基のブースターが、ロケットを逆噴射させることによって無事、予定していたフロリダ州のケープカナベラル空軍基地へ着陸することに成功しました。
スペースXの動画を見ると、まるで発射時の様子を巻き戻して見ているかのような状態で2基とも予定していた場所に、真っ直ぐ垂直に降り、着陸をしています。破損や故障することもなく、整備して再び宇宙に飛ばす「再利用」も可能とのことです。
ちなみに残りの1基については、当初どこに落ちたか不明とされていましたが、その後、回収に失敗したことが公式発表されています。
「ファルコン・ヘビー」は、スペースX社内ではもちろん、現在運用されている世界中のロケットのなかでも最大級の大きさとパワーを誇ります。まさに「ヘビー」の名にふさわしいスペックを持っています。
まずはそのエンジンですが、「ファルコン・ヘビー」は同社のロケット「ファルコン9」をベースに作られており、「ファルコン9」のブースターが3基使用されています。1基のブースターのなかには9個のエンジンが搭載されているので、合計27個のエンジンとなります。
これにより、パワーも凄まじいのですが、ペイロード(車でいえば最大積載量のようなもの)はライバルを大きくしのぐ数値となっています。たとえば2000kmまでの低空軌道であれば、「ファルコン・ヘビー」のペイロードが63.8tに対し、「スペースシャトル」が24t、ロシアの大型ロケット「プロトンM」は23t、日本の「H2B」ロケットは16.5t、といった具合です。2位のスペースシャトルに2.5倍以上の差をつけていますから、「ファルコン・ヘビー」がいかにパワフルかがわかります。
なぜエンジンをクラスター化?
ところで、「ファルコン・ヘビー」には小さなロケットエンジンが合計27個もセットされていますが、なぜ、エンジンを大きくしてひとつにまとめないのでしょうか。
これには当然理由があります。「ファルコン・ヘビー」のようなエンジン搭載方法を「エンジンのクラスター化」といい、「クラスター」とは細かくするという意味です。そうする理由は、スペースXがかねてから提唱している「再利用」を見据えた事情というのがしっくりくるでしょう。
もちろん、エンジンのパワーを上げることも主要目的のひとつですが。大きなひとつのエンジンが損傷を受ければ、そのエンジンひとつを整備したり修理したりということになります。大きなエンジンなら脱着なども大変手間がかかりスペースも必要です。しかし、小さなエンジンの集合体であれば損傷を受けた部分だけを整備、交換すれば大丈夫です。大変効率的で、手間も少なくて済み、何より低コストで再利用が可能となります。
また、今回の打ち上げ成功が大きな話題となった理由のひとつが、米・テスラ社のクルマ「テスラ・ロードスター」の搭載です。筆者(加藤博人:フリーライター/ミニカー研究家)も早朝から中継動画を観ていましたが、宇宙空間に浮かんだ流麗なスタイルのオープンカーの運転席に宇宙服を着た人形、そしてその後ろに青い地球という映像は、初見なら誰もが「CG?」「コラ画像?」と思うでしょう。しかしこれは現実です。この記事の執筆時点で打ち上げからすでに10時間経っていますが、いまも地球から数千キロ離れた宇宙では、「テスラ・ロードスター」が軌道を回っています。これから何万年、何億年も永遠に……。
なにゆえクルマが宇宙へ?
なぜ「テスラ・ロードスター」がそんなことになっているのかというと、それは、スペースXとテスラ社の関係にあります。両社とも経営するのはイーロン・マスク氏。宇宙へ放たれた「テスラ・ロードスター」も、マスク氏の愛車だそうです。
「テスラ・ロードスター」が搭載された「ファルコン・ヘビー」の荷室(車でいえばキャビン+トランク)部分は本来、「おもり」としてコンクリートの塊などまるで味気ないものが載せられるはずでした。しかし、「せっかくならテスラ車を載せてみよう!」というアイデアが出て、今回に至ったそうです。宇宙空間に浮かぶクルマのビジュアルは、非常にインパクトがあります。
また「テスラ・ロードスター」はテスラ社初の市販車ということで、イーロン・マスク氏には相当強い思い入れもあったのでしょう。とはいえクルマで何か実験をするのかというとそういうわけではなく、単にイーロン・マスク氏の遊び心だそうです。
ですが実際は、クルマを搭載したおかげで世間から大きな注目を集めました。マーケティング的にも大成功と言えるでしょう。ちなみにクルマのダッシュボードには、ホットウィール(トミカサイズの米国ブランドのミニカー)の「テスラ・ロードスター」がセットされており、その運転席には、宇宙服を着た小さな人形も実車同様に乗っているそうです。このホットウィールも「テスラ・ロードスター」とともに、宇宙で悠久の旅を続けていくことになります。
なお、今回の「ファルコン・ヘビー」の打ち上げ目的について、一部で「火星に『テスラ・ロードスター』を届けるため」と報じられているようですが、基本は「デモンストレーション」です。
「再利用」の観点から眺めると
かつては考えられなかったことですが、スペースXでは宇宙に向けて飛ばしたロケットを再び地球の、しかも狙った場所に着地させ、エンジンやブースター(ロケット本体)を再利用することにも成功しています。最初に成功したのは2015年12月で、2016年4月には海に浮かぶベースの上への着地にも成功し回収されています。
ロケットを飛ばすだけではなく、さらに指定の場所に戻して回収するには極めて高度な制御が必要とされています。さらにそれを再利用して再び宇宙に飛ばすことにも、2017年3月に成功しています。今回打ち上げた「ファルコン・ヘビー」3基のロケットのうち2基も再利用されたエンジンを使っています。
再利用することで、大幅に製造コストも減らすことが可能です。加えて荷室容量もほかのロケットの倍以上です。「ファルコン・ヘビー」がどれほど低コストに抑えられているかは明らかでしょう。
また、ロケットを狙った場所に正確に戻せるということは、地球上での移動手段として革命的な進化が生まれます。
スペースXが公式サイトで発表していますが、「ファルコン・ヘビー」よりさらに大きなロケットの開発が行われており、このロケットを使って最高2万7000km/hというとてつもないスピードで地球上の移動が可能になれば、あらゆる都市間がわずか30分程度で移動できることになります。
たとえば、現在東京 ロサンゼルス間は一般的な旅客機で約10時間ですが、これが32分に。同じく東京 シンガポール間は7時間少々のところ25分にそれぞれ短縮できるそうです。イーロン・マスク氏はそう遠くない未来に、飛行機におけるエコノミークラスの正規料金並みの値段で実現させたいと考えているそうです。
テスラの大型ロケット、打ち上げ成功…EVスポーツカーが宇宙空間へ
米国のEVメーカー、テスラのイーロン・マスクCEOが率いる宇宙開発企業、「スペースX」は2月6日、新開発の大型ロケット『ファルコン・ヘビー』の打ち上げに成功した。
ファルコン・ヘビーは、スペースXが開発してきた宇宙旅行を前提とした新型ロケット。全長は、およそ70mと大きく、最大積載量もおよそ64tと大容量。
また、ファルコン・ヘビーでは、打ち上げに使われたブースターが、地上に垂直に着陸する設計。これにより、ブースターの再利用が可能となり、製造コストが抑えられる。
米国フロリダ州のケネディ宇宙センターから2月6日、ファルコン・ヘビーの打ち上げが成功。ファルコン・ヘビーには、マスクCEO自身が所有するEVスポーツカー、初代テスラ『ロードスター』を搭載。このロードスターは、通常荷重として積まれるコンクリートや鉄の塊の代わりになるもの。
もうひとつの目的が、このロードスターを太陽周回軌道に載せること。宇宙服を着た人形を乗せたロードスターは、すでに宇宙空間に解き放たれ、太陽周回軌道を目指しているという。
ちゃんと帰ってこられるかね
スペースXの打ち上げ成功を祝って(?)テスラ青山がインスタ映えなロードスター展示
2月7日水曜日(日本時間)の早朝、スペースXが現時点で世界最強の打ち上げ能力を持つ新型の巨大ロケット「ファルコンヘビー(Falcon Heavy)」のテスト打ち上げに成功しました。地球低軌道への打ち上げ能力は63.8トンで、これを超えたのは60~70年代にアポロ計画で使われた「サターンV」型ロケットのみです。
1969年、そのサターンVによって人類史上初めて月面着陸に成功した「アポロ11号」も使った、ケネディ宇宙センターの第39発射施設から打ち上げられたファルコンヘビーは順調に高度を上げ、サイドブースターの切り離しにも成功し、打ち上げは無事に成功!
高度約130kmに達すると、今回の積荷=イーロン・マスクCEOの愛車である真っ赤な「初代 テスラ ロードスター」が、デヴィッド・ボウイの曲をBGMに登場します。これから火星に向かって宇宙旅行を始めるテスラロードスターと、乗り込んだ宇宙飛行士人形「スターマン」が、青い地球を背景に映し出されると、中継会場は興奮の渦に。
さらに動画の後半(27分頃~32分頃)では、切り離された2基のサブブースターがほぼ同時に地上に帰還する、まるでSF映画のようなドラマチックな風景も映し出され、観衆の興奮は最高潮に。
この打ち上げ成功を祝福してテスラジャパンは初代 テスラ ロードスターを2月12日(月・祝)まで東京港区・南青山にあるテスラのショールームに展示するという緊急イベントを企画。
この機会に、テスラ青山まで火星に飛んでいったEVスポーツカー「テスラロードスター」を見に行くなんて旬かも。ボディカラーがシルバーで、スターマンがいなくて、背景に地球がないのはご愛嬌。ロードスターと一緒にセルフィーすればインスタ映えは確実と思われます! さらに、「モデルS」と「モデルX」全車のセンタースクリーンには、ソフトウェアアップデートで火星モードのナビ画面が登場するようになっているとの情報も。そうそう、2020年以降には「新型 テスラ ロードスター」も登場予定で、すでに販売予約も受付中とのことです。
市販車で世界初の宇宙に出たクルマ、テスラ「ロードスター」は、半永久的に太陽を周回する
宇宙開発を手掛ける「スペースX」社が2月7日未明、同社を率いるイーロン・マスク氏の愛車、真っ赤な初代「テスラ・ロードスター」を荷室に搭載した自社製ロケット「ファルコン・ヘビー」をフロリダ州ケネディ宇宙センターから発射しました。
初代ロードスターは2008年に発売(日本は2010年)され、2500台を生産。石油依存の社会から再生可能エネルギー主導の社会への移行を目指すテスラ社は、このロードスターでEVに対する認識を変えようとしました。
その後、スポーツカー並みのパフォーマンスを実現したセダン「モデルS」、SUVの「モデルX」、「モデル3」を市場に送り出し、役目を終えた初代ロードスターは火星へ向かうことに。
今回、ロケットの打ち上げは成功し、その後ドライバー席に宇宙服を着たマネキン「スターマン」を乗せたロードスターが宇宙空間に放出され、地球と火星の公転軌道を遷移する楕円軌道で半永久的に太陽を周回し続けることになります。
ちなみに、今回ロードスターの打ち上げに使われたロケット「ファルコン・ヘビー」は、再利用可能な大型ロケットで、画像からも機体内部の広さが窺えます。
市販車で世界初、アポロ計画の月面バギーに続いて宇宙に出たクルマとなった「テスラ・ロードスター」。新型では200kWhのバッテリーパックを搭載。0-100km/h加速2.1秒、航続距離1,000kmを達成しているそうで、その高性能ぶりが注目されます。
新型ロードスターは2020年以降の発売を予定しており、現在予約を受付中。テスラ青山では今回のイベントを記念して初代ロードスターを展示(~2月12日)しているそうです。
(Avanti Yasunori・画像:TESLA)
テスラが宇宙を飛ぶ意味と功罪
2018年2月6日(日本時間7日早朝)、アメリカの起業家イーロン・マスク氏が率いる「スペースX」社が、大型ロケット「ファルコン・ヘビー」の打ち上げを成功させました。
ファルコン・ヘビーはペイロード(積載物ないし最大積載量)64tを宇宙空間の地球低軌道上へ打ち上げるよう設計されており、今回は実験として少量のバラスト(重し)を搭載。そのバラストに選ばれたのが、(マスク氏が所有する)赤いテスラ・ロードスターでした。
実験の打ち上げや2機のブースターが(再利用のために)ケネディ宇宙センターに同時着陸する風景とともに、宇宙服を着た人形を運転席に載せたテスラ・ロードスターが、青い地球をバックに悠然と宇宙を漂うシーンはスペースX社公式サイトとYoutubeでライブ中継され、全世界へと公開され大きな反響を呼びました。
このテスラと運転人形は太陽の周りを回って火星まで回る軌道周回に入ります(約10億年、周り続けるそう)。
多くの「メカ好き」を興奮させたこの世紀の一大イベント、特に「スポーツカーを宇宙に打ち上げたこと」に関して、クルマ好きはどう受け止めたのでしょうか(本記事担当は大興奮して見入ってしまいましたが……)。
イーロン・マスク氏の狙いや功罪も含め、自動車ジャーナリストの鈴木直也氏(宇宙&ロケット大好き)に解説していただきました。
文:鈴木直也 写真:Space X
■「起業家」として、やはり天才としか言いようがない
イーロン・マスク率いるスペースX社が、超大型ロケット「ファルコン・ヘビー」の打ち上げに成功した。
このニュース映像を見て、世界中のロケット好きが熱狂している。総重量1400tの巨大なロケットが宇宙目指して上昇してゆくシーンや、切り離された補助ブースターが2機そろって地上基地に戻ってくるシーンなど、とにかく理屈抜きに人を感動させるインパクトがある。もちろん、ロケット好きを自認するぼくも超感動。「スゴイなぁ!」とつぶやきながら見惚れてしまいました。
青い地球をバックに走る(ように見える)真っ赤なテスラ・ロードスター。とても実画像とは思えないが、全世界にライブ中継された
民間企業がこれだけ高性能なロケットを開発し、しかもそれがコスト面でも高い競争力を持つ。アメリカのベンチャービジネスのもっとも輝かしい成功例として、歴史に残る快挙といえるでしょう。
もうひとつ、クルマ好きにとっての注目点は、このロケットによって打ち上げられたのが真っ赤なテスラ・ロードスターだったことだ。ダミーの宇宙飛行士がステアリングを握るこのテスラ・ロードスターは、火星を目指す軌道に投入されてその後は太陽を周回する人工惑星となる。
もちろん、これはイーロン・マスクのもうひとつのコアビジネスであるテスラの広報宣伝活動なのだが、フロントウィンドウの向こうに青い地球を臨む映像や、漆黒の宇宙空間を背景にロードスター浮かんでいる映像など、こちらもまた理屈抜きにカッコイイ!
ファルコン・ヘビー初号機はテスト用だから、通常はダミーのペイロードを搭載するところなのだが、そこに自社のスポーツカーを積んでプロモーションに活用するなんて、イーロン・マスクにしかできない芸当。起業家としてほんとうに天才的な人だと思う。
イーロン・マスク氏は「2060年代までに、100万人を火星に移住させる」という計画を発表。今回の実験もそのためだという。なんというか、広げる風呂敷のスケールがケタ違いだ……
■イーロン・マスク氏は未来にしか興味がない
ふつう、自動車メーカーが自社製品のブランド価値を高めるには、積み上げてきたレース活動や歴史的な名車など、いわゆるブランドヘリテージを活用する。「うちは老舗でございます」という戦略だ。
ところが、イーロン・マスクの考えはその真逆。新しいテクノロジーでまったく新しい概念のクルマを造り、既存のプレミアムブランドすべてを一気に時代遅れの遺物にしようという作戦。
たぶん、イーロン・マスクという人は未来にしか興味がないのだ。
そう考えると、いろいろなことが納得できる。
ファルコン・ヘビーの成功とは対照的に、いまテスラは「モデル3」の量産に手こずるなど、その快進撃に陰りが見えてきている。
2016年3月に発表された「テスラ モデル3」。補助金を含まずに35,000ドルという安価で、航続距離350km以上。発表後一週間で30万台以上の予約受注を集めたが、生産計画に遅れが出ており納車が滞っている
画期的なEVとはいえ自動車は自動車、きちんとした品質を造り込み、競争力のある価格でユーザーのものとに届けるのは容易ではない。サプライヤーを含めたコストと品質のバランス。従業員のトレーニングからはじまる安定した生産技術の積み重ね。販売スタッフの確保や供給後のメインテナンス態勢、保証、サービスや不具合、事故対応。地味で長い道のりだ。
最先端技術のカタマリであるロケットに比べると、こういう地道な作業にイーロン・マスクのベンチャー精神はあんまり燃えないのでは? そういうふうに見えてしまう。
しかし、この難しい課題を克服すれば、自動車ビジネスには大きな成果が約束されている。打ち上げコスト100億円といわれるファルコン・ヘビー1機でどのくらいの利益が出るのかは不明だが、仮に1機100億円の利益があるとして、1兆円の利益を出すには年間100機の打ち上げが必要になる。自動車ビジネスならこの数字は可能だが、ロケット事業ではたしてそれほどの需要があるか、かなり微妙と思われる。
スペースXの華やかな成功はすばらしいけれども、イーロン・マスクの事業としての本命はテスラのはず。モデル3の量産を成功させ、そこで利益を上げること。たぶん、それはファルコン・ヘビーの打ち上げ以上に難しいミッションなのかもしれません。
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自動車業界あれこれ | 日記
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2018/02/08 00:39:43
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