「ミニ・リマスタード」ついに試乗 デイビッド・ブラウン渾身の作品、1,400万円の価値あるか
■どんなクルマ?
£99,000(1,408万円)する新車のミニ
信じがたいことだが、これは£99,000(1,408万円)もするミニだ。
こんな金額を提示されたら、それがこのちっぽけなクルマの価格だとにわかには信じられないだろう。そして、車名もまた、クルマの大きさに似つかわしくないほど長い。
デイビッド・ブラウン・オートモーティブ・ミニ・リマスタード・インスパイアード・バイ・モンテカルロ。
どこから見ても親しみ深いオリジナルミニだが、各部がリファインされ、モダンなテイストで仕上げられている。
あまりに長いので、社名はDBAと略すことにしよう。
アストン マーティンDB5のオマージュである、£600,000(8.531万円)のスピードバックGTでも知られるが、DBの由来になったのとは別人のデイビッド・ブラウンが率いる会社だ。
彼らはシルバーストンに構えた新社屋で、この完璧にレストアされたミニを年間50~100台程度製作するつもりでいた。
が、ひとつ問題があった。
予想以上のオーダー
4月に発表するや、たちまち数千件もの真剣な問い合わせが寄せられたのだ。生産計画を上積みすることになりそうだ。
このモンテカルロ仕様は最上級モデルであり、非常に目を引くラスカスレッドとアイスホワイトでペイントされたボディに、パワーアップしたエンジンを搭載。25台限定での生産が予定されている。
なお、エントリーモデルはクラシックと銘打たれ、価格は£75,000(1,066万円)からの設定だ。
ベースとなるミニのリマスタリングには1400時間を要する。ベースとは言うものの、キャリーオーバーされるのはリビルトされたエンジンとトランスミッション、そして車体番号のみ。
それ以外はボディシェルを含め、すべて新規コンポーネンツを用いる。このボディは各部にブレースを追加してオリジナルより剛性を高めているだけでなく、特徴的なガターやパネルの継ぎ目も形状変更や削除が施され、スタイリングがクリーンナップされている。
■どんな感じ?
速さよりも使い心地
各部のフィッティングや仕上げ、ペイントのクオリティは素晴らしい。それが価格に説得力を持たせることができるかは、また別の話だが。
キャビンは高品質のレザーを多用し、専用設計のダッシュボードは、滑り止めの切削加工が施されたエアコンスイッチなど、ディテールまで凝った造り込みがなされている。
そう、エアコンは標準装備で、パイオニアのインフォテインメントシステム/ナビゲーションシステムはApple CarPlayやAndroid Autoも備える。
シートは快適性とサポート性を高めた形状で、トランク内側は革張りされている。DBAの手により、オリジナルミニは小さな高級車に生まれ変わっている。
ブラウン曰く、これはパフォーマンスカーではなく、シティカーとしてデザインしたという。つまり、卓越したハンドリングより使い勝手を重視して設計されているわけだ。
シャシーは快適性を、エンジンはピーキーなパワーより低回転域でのトルクを重視してチューニングされている。とはいえ「当然ながら、それでも楽しんでもらえると思いますよ」とブラウンは自信を見せる。
いざエンジンに火を
ドライビングポジションは相変わらず、ちょっとばかりしっくりこない。シートを下げ、脚を伸ばして快適に座ろうとすればステアリングホイールはいささか遠く、それならばと脚を曲げて前寄りに座れば、今度は近すぎてしまう。どちらも理想のポジションには程遠いが、乗っていればじきに馴れるだろう。
リビルトされた4気筒の排気量は1330ccで、最高出力は95ps/6100rpm、最大トルクは12.0kg-m/4000rpm。
4速MTを介して前輪を駆動するが、シフトゲートはタイトで、変速は気持ちよく決まる。エンジンはパワフルで心地よく、個性に満ちているが、5000rpmを超えると苦しそうな感触になってくる。
直線加速は熱狂するには程遠いが、たった750kgの車重が利いて、0-97km/hは10.6秒をマーク。市街地で先を急ぐ程度であれば十分すぎるパンチと速さで、カントリーロードを突っ走るのにも不満はない。
ステアリングはノンアシスト。機敏でダルさはなく、直線を走っていても驚くほどのダイレクトさを感じ取れる。ステアリングホイールを軽く動かすだけで、鼻先は素早く向きを変えるのだ。
動的性能も検証
コーナーではダイナミックにロールし、あまりクルマを過信してコーナーを攻めると横転するのではないかと思えるほどだ。もちろん、実際にひっくり返るわけではないのだが。
それどころか、一旦その加減を掴めば、このクルマでカントリーロードを走り回るのはこの上なく楽しいドライブになる。
サスペンションストロークの小ささやホイールベースの短さゆえ、路面には忙しなく反応し、あちこちに跳ね回るが、たいていのオリジナルミニよりは落ち着いたものだ。
ターンインすると、自分を軸にリアエンドが弧を描くような感覚で曲がっていく。派手なオーバーステアは出ないが、コーナーで速度を落とさず、勢いを維持する助けとなってくれる。
それこそ、速く走る上で重要な要素だ。このミニ・リマスタード、美点は数多い。
たとえば、法定速度の範囲内でもかなり熱い走りが堪能できることが挙げられる。そしてもちろん、あらゆる部分が、オリジナルミニを走らせたことがあるならおなじみのテイストのままだというのも忘れてはいけないだろう。
街乗りを想定して造られたクルマではあるが、間違いなく振り回しても楽しいミニ・リマスタード。ABSやトラクションコントロール、エアバッグといった現代的な安全装備は用意されないが、バスや商用車で溢れる市街地の道をチンタラ走るだけではもったいない。
■「買い」か?
頭で考えてはならない
£99,000(1,408万円)のミニである、とても万人向けにおすすめできるものではない、というのはあくまで常識的な話。
これは、そういう当たり前の判断で購入するクルマではない。
裕福であり、ファッションに敏感な都市生活者、それも若い頃にオリジナルミニに乗っていましたといった顧客を想定したプレミアム物件だ。
現にDBAには世界中から問い合わせがあり、手付け金を払ってのオーダーも数多く入っている。
シンガー・ヴィークル・デザインがナロー911で実証しているが、最新技術を用いてモダンかつ実用的に仕上げられたアイコン的な旧車というのは、激しく購買意欲を刺激するものだ。
オリジナルミニがどれほどの敬意と愛情を集めているかを考えれば、不便さの払拭されたミニが人気を博してもなんら不思議はない。
ミニ・リマスタードがとんでもなく高価だ、という事実は否定できない。
一方で、これが実に好ましくキャラクターの際立ったクルマで、仕上げの水準も高い。ただし、購入するには価格以上のハードルがある。
それは、DBAの生産能力が、殺到するオーダーに追いつかないことにほかならない。
値段だけを見てしまうと1400万という金額だから現行のジョンクーパーワークスだったとしても3台くらい買えてしまいそう気がするお値段
ただ、大金を払ってでもオールドミニを新車として買いたいっていうお客さんがいるからこそ商売が成立する
つまりそういう事でしょ
Posted at 2017/06/21 00:28:04 | |
トラックバック(0) |
自動車業界あれこれ | 日記