Menin aedie Thea
怒りを歌え、女神よ
ホメロス「イーリアス」
Arma virumque cano
我は戦いと英雄を歌う
ウェルギリウス「アエネーイス」
紀元前の小説の出だしでこれって、イカシすぎてんだろふざけんなチートかよ。
四冊読了。
大人しく読書月間継続中(平常運転
実際、自粛要請でなにも変わらないワダツミの生活ェ...
インターネッツ界のチラシの裏こと、拙泡沫日記を御覧の皆様にはご案内のことと存じますが、三月に我が家へとやってきたケータハム 。
走るという動詞のほかには何ひとつ備わっていない純粋さに、私は日を追うごとに深く深く捕らわれています。奇妙なことに私自身の気分に前のめりなところはなく、肩肘張らない日々の暮らしの傍らに愉快な相棒がいるような風情で過ごしている次第です。
言葉にしきれないほどの運転の楽しみは収斂していくように私の内に向かい、困ったことに「この気分を誰かに伝えたい」という欲求が湧いてきません。
あるいはこの特別な体験を独り占めしたいという稚気なのか、
満たされている故の韜晦なのか。
とはいえ折角の機会です。今を逃せばケータハムのフィーリングは私のデフォルトになってしまい、客観的に車をみることは出来なくなってしまうかもしれません。
そんなわけで、しばらく過ごしてみた相棒の感想です。
Caterham seven 250R
諸元
空力的に、特に有利な点はなさそうな風態。個人的な思い出も相まって、とても好きな形です。リアのホイルハウス前面にある板状パーツの名称はリアウィング。言われてみれば後輪を路面に押し付けていそうだが、羽根ではねーだろといつも思う。そういうところも最高。
サイドミラーは後側方視界の確保には申し分ないのだけれど、位置的に後輪の外側は全く見えない。着座位置も低いので振り返って目視もできない。つまりバックでまっすぐ停めるのが難しいという、まあ、どうでもいいっちゃいいんだけど変な車。
エクステリア・インテリアとか分けて語る気にもなれないどころか、室内と呼称するのも後ろめたいほど狭い室内。信じてもらえないかもしれませんが、ちゃんとシートはある。右の肘はボディに、左の肘はプロペラシャフトのための盛り上がりに干渉しますが、わかっていれば気にならない程度。ウィンカーがトグルスイッチな時点で生まれたところも皮膚や目の色も欠点も全てはプレアデス星の裏側まですっ飛んでいって忘れてしまう。
(コチラは160)
下手したらシートに座った腰の高さにプロペラシャフトあるんじゃないだろうか?
意外なことに、シートの位置はペダルから少し遠目です。もしかすると、小柄な方にはシートを目一杯前にしても少し遠いかもしれません。
購入を考える際は、きちんと座ってポジションを決めてみることをお勧めします。きっと手を伸ばせば地面に触れることすらできるステキ着座位置と紳士淑女全人類の浪漫、トグルスイッチを前にして細かいことはどうでも良くなることでしょう。
今時のモデルですから、アイドリングや低速は本当に静かです。たぶん。
ようやく気分の掴めてきた1.6L sigmaは軽快に吹け上がる、ピンポン球のようなエンジンです。
下では重厚で上では鋭い2L F4Rのような万能感がありません。低回転でのレスポンスはダルくまったり。美味しいところを外したセローとどこか似ています。
「まあいっか。ぷぺぷぺ言いながら景色眺めて走ろうや」といった具合。
ですがシフトを落として踏み込むと、気持ちのいい排気音とともにピークパワーの6000rpmまで一直線に吹け上がります。パワー・ウェイト・レシオは4.3。どれだけ踏んでも怖さを感じないのは、べらぼうに豊富なインフォメーションがステアリング越し、シート越しに路面とタイヤの状況を教えてくれるからです。
サスペンションストロークは短く、ピッチやロール自体は小さいにも関わらず、コーナリングでも荷重やグリップの全てが詳らかに運転者に開示されています。私ですらリアが滑り出す境目の瞬間まではっきりわかる。リカバリーもとてもシンプル。
サーボもABSもない、自在なブレーキも素晴らしい。
直進安定性の高い車ではありません。それでも疲れないのは、予想外に乱れることがないからです。左右に乱れる挙動には全て理由があり、インフォメーションがあり、予想がつきます。
どんな挙動も、この車においては単調で退屈なドライブを運転する遊びに変えてくれるイベントです。
乗ったが最後、ずっと走って遊んでいたい。
この合理的とは思えない外観。
前後荷重は270/280kg。そのうえ後ろに偏って運転者が座れば重量バランスも非合理的でしょう。
「無駄を削ぎ落としたピュア・スポーツ」と表現されることも多くありますが、私の感想は「余計なものを取っ払った、走る非合理」
そのバランスの悪い非合理な偏りが、この車の限界や破綻に明確な傾向を与えてとてもわかりやすくしているのです。実はとても間口の広い車なんじゃないかな。
速く走るために突き詰められた戦闘マシーナリィではなく、全身で車の挙動を感じられる、最も純度の高い無駄の塊。
どこまでも真剣に悪ふざけ。
自家撞着ってとてもとても好きです。
私はMEGANEやClioに乗っている時もエンジンの回転数が変わるのが嫌で、年中エアコンをつけませんでした。エンジン音を聴いていたいので、音楽をかけることもなく何百キロでも走るタイプの車乗りです。
真夏はまだ未体験ですが、氷点下のドライブは経験済み。ジョーク抜きで本音を言うとケータハムに乗っていて快適性が損なわれている実感がありません。むしろ邪魔な屋根や窓がない事で、快適になったと感じています。
私は偏っているとは思いますが、そんなに極端な質ではありません。そんな私が快適に感じているケータハム。実は皆さんも思っているより気楽に乗れるかも知れませんよ?