絵を描くのに必要なもの
パレット
フレークホワイト ローズマダー
クローム・イエロー コバルト・ブルー
.......(中略
筆?
先の尖ったテンの毛のもの
豚毛の平筆
キャンヴァス以外の全ての物事に対する無関心
機関車みたいに働く能力
鉄の意志
ルノワールの手紙より
壮絶に忙しい日々にかまけてみんカラ断ちをしておりました。もっと早くまとめるはずが、ずいぶん経ってしまい、方々で不義理をしております。
申し訳ございません(土下座
遅まきながらようやくアップしたと思えば、画像もない長文です。
申し訳ございません(土下座からの寝下座
過日、北九州は門司港で開催されたネオクラシックカーのイベントに、元愛車を見に
XGさんがいらっしゃる。これは好機とて、厚かましくいそいそと出掛けてきました。
遅まきながらご報告です。
いつも愉快なカーレビューや知識の深い考察をエントリされているXGさん。お会いするのが楽しみです。
イベントには80-90年代の車がずらり。
.....薄々自覚してましたが、あまりこういうイベントに馴染めない質のようです。こうして素敵な車を見るのは、美術館とかのような落ち着ける場所がいいな。
車たちの中、XGさんを探してウロウロ。
前愛車の黒いアスティナのところにいらっしゃるハズ。
アスティナってどんな車よ?(無礼
おお、発見。
リトラが可愛い。お尻も可愛いな!
車の側でナイスミドルな色気を漂わせたXGさんとお会いできました。
シャイなあんちくしょうな若輩に歩み寄って握手をしてくださいます。みんカラでやり取りをさせて頂いているみなさんは本当に素敵な方ばかり。私は果報者です。
ご挨拶もそこそこに、お時間のないなか愛車であるAudi B7 RS4 に乗せて頂きました。
4.2L NA V8 420ps/7800
.....改めて数字見るとバケモノです。
300km/hでかっ飛ぶ車ですもんね。
フロントの左右グリルは横に流れて、多分ホイールハウスの中に空気を誘導していそう。
ブリフェンカッコいい。間近で見るとえらい色気がある。
そんな本気な仕様ですが、乗り心地はとても良いです。ハーシュネスも私の感覚では皆無と言っていいレベル。
ドアの開閉で思ったのですが、なんというか、ミリ単位で完全に建て付けが合っている感じ。遊びなく噛み合ってビシリと剛性の一翼を担っている印象です。
おお、高級車とはこういうものか。
スペイン人たちがシエスタの合間に鼻歌混じりで組み付ける仕様がデフォのため、多少ヒンジがズレても開閉できるように遊びがあるんじゃないかと思われるどこぞの車とは違います。
それにしてもこの足はどういうセッティングなんだろう。ソフトですが揺り戻しがない。柔らかくストロークして、戻りでばっちり吸収しきっているのか?
300km/hの世界で跳ねたらそらぁ恐ろしいでしょうが、これでコーナー踏ん張れるのかな? 踏ん張れるんでしょうね。でもどうやってだろう?
DCCDで前後49:59配分のWRXは問答無用に硬かった。
前車のTTはハルデックスで、ほぼFWDの車でしたが、やはり硬かった。
どちらもロールを体感出来ず、胸倉を掴んでコーナー出口に引っ張られるような曲がり方をします。
たぶんこの車もそうな筈。このエレガントな足で? サスは奥が深い。
B7 RS4 はquattro ですから、縦置きのトルセンデフ。
空転時の配分は主にこのセンターデフで行うんですね。聞くところによると、前後輪の左右で効かせるLSDに比べてその過渡特性が穏やかなのだとか。
キャラクターにも合っている気がします。
しかし真骨頂はやはり4.2L NAのV8。
いい音するな〜。
MEG3RSも下からトルクがあると言いますが、そこは2L ターボ。ターボラグもあるし、3000rpmを境に明確に世界が違います。
対してこのB7 RS4はNA。レスポンスが良いです。重さなど全く感じません。そして両車の本当の違いは、200km/hを超える速度域での伸びなんだろうな。
通常の速度域ではパワーもトルクも余りまくりです。
XGさんは「このエンジンを満喫するために全てが誂えられている車」とおっしゃっておられましたが、うむむ、その真意はわずかな時間では感じることができませんでした。
あっという間に吹け上がる怪物エンジンとの付き合い方.....
アホみたいに忙しく、ついつい見入ってしまうみんカラは暫くお預けでいた間にしつこくあのフィーリングを思い出して考えていたのですが、4.2L V8エンジンとはイコンのようなものなのかなあと思います。
ある種の人たちにとって、車というのは内燃機関と分かち難く結びついているもの。
無論、私にとってもMEG3RSとはF4Rtの、ロロロロ〜という味気なくも逞しいフィーリングが生み出すインテンシティに象徴されています。愛すべきロールやリアの接地感。頑健なボディが醸し出す大型のネコ科動物のような躍動の予感。
すべて混合気の爆発というカタルシスの連続が生み出す動力のうえにあります。
実家のCHRが積むのはZRエンジン。いかにも軽い雑な音で回ります。パワーなんて感じません。それでも踏み込めば爆発は回数を増し、音は哮り、内燃機関のカタルシスは密度を増し続けていくのがわかります。
どんなエンジンであれ、そこにはある予感があります。
どうしようもなく惹きつけられる危険ななにか。
創造の熱と狂気。
耳を裂いたゴッホ。ジム・モリソンは孤児と称することで観念的に自らと両親を手にかける。
村上春樹だったか、light my fireを「ハートに火をつけて」ではなく、「ベイビー、俺に火をつけてくれよ」と訳したのはけだし名訳だと思う。
樽の中で生きても狂うことのないディオゲネス。
フェルナンド・ペソアは何人もの別の人生を送る人格として違う筆名で作品を書き続け、誰でもない人へと溶けていく。
エマニュエル・レヴィナスはナチスの収容所での不眠の夜のうちに、あるいは家族や知己のすべてを失った喪失のうちに存在の形なき実在をみて冷徹にその直感を腑分けする。
「強いのはなんと良いことか、強くて苦しむのはなんと良いことか」と書くときのロマン・ロラン。
第二宇宙速度を手にするためにロンドンを燃やすフォン・ブラウン
あるいは燠火のように、あるいは迸る火焔のように、形は違えどそこには評価を傲然と拒絶する熱量と、狂おしい創造の渇望があります。
ルノワールの手紙に私が見るのは、凡庸なメモの言葉を言い聞かせるように自らを律している凡庸な男が、あれほど素晴らしい絵画を生み出す火焔で自身を焼き尽くす瞬間を持ち得たという事実。凡庸な私の傍らにもまた、創造の火焔はあるのだという救いです。
車に親しむようになった私は、いつからか混合気の燃焼と鋼鉄の振動に、暗喩としての自身の熱量を夢みているのでしょう。
恐らく誰にとっても、それは自分が血を滾らせるなにかの偶像なのではないでしょうか。
だからこそ、ある種の人たちは内燃機関にどうしようもなく恋をするのです。
くだくだと述べましたが、主役はもちろんRS4のV8エンジン。しつこく反芻して考えているうちに、日常域で使い切ることなど不可能なこのエンジンは、私にとっては実在のいちエンジンではなくなってしまいました。
それはより狂おしい情熱を象徴するイコンのようなものです。
それはアレシアに翻るカエサルの真紅のマントです。
テミストクレースが焼き払う船たちです。
エルサレムを目指して歩く民衆の憑かれた狂奔です。
そして私がF4Rtを回しながら夢想する「咆哮するエンジンの夢」そのものなのかもしれません。
回して使い切るような付き合い方ではなく、きっとフロントグリルの奥にその脈動を感じる一瞬一瞬が、綺羅星の如き創造者たちの情熱を予感させる夢のような時間に変わる、夢の車なのだと思います。
....あれこれこねくり回した挙句、なんとも私らしく、観念的な着地となってしまいました。でもXGさんが投げかけてくれた問いを考えるうちに、B7 RS4は観念的な、あるいは叙情的な付き合い方がよく似合うというのが、今の私の思いとなりました。
とても素敵な夢をみさせてくださったXGさん、本当にどうもありがとうございました!
次は私のMEG3RSに乗って頂かねばです。
そして遅くなって申し訳ございませんでしたぁぁ(スライディング土下座