目覚めとは夢みていないと夢みる
別の夢であり、私たちの肉が
恐れる死は、夢と人が呼んでいる、
あの夜毎の死だと感じる。
「詩法」 J・L・ボルヘス 詩集「創造者」
前回の続きで乗ってみてのお話
文字ばかりですみません。
エンジン
Ford sigma 1.6L
腰上をケータハム が弄っていたと思います。
レブは6500rpmとのこと。
低い...もう少し回ってくれたらな...。
キーを回してポンプの音を聞いたら始動。
低音の勇ましい音がします。運転席のすぐ脇にマフラーあるし、それなりの大きな音ですが、爆音ではありません。
加速するとその気になる良い音です。
...私が乗り換えを考え始めたきっかけは幾つかありますが、clio 2rs のワイヤースロットルに私の求める車との対話を見たこともその一つです。
高性能じゃなくていい。シンプルで、素直なレスポンスが欲しかったのです。
だから、いくらシャシー剛性が上がった良質なボディを持っているとしても、電スロのイマドキなエンジンは懸念材料でした。
吹け上がりはとても早いです。ギアを繋がずにアクセルを踏むと、かなり鋭く回転数が上がります。眼鏡の比ではありません。Clio3くらい早いんじゃないかな。針落ちもまずまず。
「エンジンのツキはコンピュータで弄らないとハッキリ言ってトロいよ」
とディーラーオーナーにお聞きしていましたが、まだ車に慣れていない現状で、ワインディングでは十分な反応です。シフトダウンの決まりやすいこと!
ただ、気になるのは停車からのスタート。坂道発進などでイマイチ、クラッチ繋がる時のフィールがボヤけます。
お前、なんかしてるだろ?
発進でクラッチが繋がってからうまくパワーが乗っていかず、私がアクセルペダルでスロットル調整しようとする時に、エンジンも自分で流量調整しているせいですよね、きっと。
そういうのはいいんだよ、ケータリング...。
私よりもキミのほうが優秀なのは知ってるけどさ。
私は自分で失敗したいの。
天邪鬼だから冷めるのそういうのは。
この辺りは眼鏡に似ています。
信号で止まるのすらワクワクしたclio 2rs とは違うかな。
不満です。
サーキットでどう感じるかはまだわかりませんが、この車に慣れてきたらどんどんもどかしく思う機会が増えていきそうな気がします。
ECUを変えたら自由自在に設定できるらしいのですが「只々ひたすらリニアにアクセルペダル角度とスロットルを同期させるのみ」なんてことも可能なのでしょうか?
180hpくらいまでは無理なく出すことができるらしいので「数年経って技術がついてきたら」と思っていましたが、リニアな調整が可能なら前倒しで導入考えてみようかな...
さて、話が逸れました。
そんなイマドキエンジンに軽いペダルですから、動き出しからペダルワークはとても簡単。気難しさは全くありません。
なにしろ軽いので、最大10.9kgf/mのトルクでもクラッチ繋ぐだけでスムーズにスタートします。それともコレもなんかやってんのか、シグマこんにゃろう?
ステアリング
重い...でも走り出せば重ステもこんなに軽々なんですね。
構造的にカウンター当てる時とか重そうだな....
リニアなのは構造的にそりゃあもう、言わずもがな。
楽しい。もう運転席に住みたい。
シフト
シフトレバーはショートでゴキン、ゴキンと金属感があります。骨太なチェンジ感。NDは入れる時、樹脂みたいな感触だった記憶が。2速が少し硬いかな?
ショートなシフトも初めて。眼鏡やClioではシフトレバーの位置に、ああでもないこうでもないと随分悩まされましたが、ドライブシャフトの上に鎮座していらっしゃいます。
楽しい...コレを仕事にしたい。
9時5時でシフトチェンジするお仕事につきたい。
アットホームで働きやすい職場がいい...
制動
ぶぶぶブレーーキ!!
効かねえ!
サーボもない油圧ブレーキ。これまで乗っていた車との違いに出だしは冷や汗。踏み込むほどに効いていく。
眼鏡もClioも、踏み始めから鬼のように制動していました。
対して、ポッドがディスクを締め付けるように、踏み込むほどペダルは重くなり、制動も効いていく。
おおー、こんなん乗ったことない!
これがリニアさなの?
まず思い出したのは試乗で乗ったMazda3のブレーキ。
あの効かないブレーキは、実はリニアだったのかも...
しかし初体験目白押し。
驚きと愉しさでオーバーフローしそうな気分になります。
楽しい...辛い....
楽しすぎて辛い...
足回り
サスはよく動きますが、かったい。
眼鏡 < Clio << セヴェリーノ くらいかったい
荒れたアスファルトは跳ねます。
私は快適性にはちっとも興味がなく、下道でもサーキットユースの乗り心地が好きなのでいいけど、なるべくフラットな目で評価すれば許容範囲を遥かに超えた硬さだと思います。
ワインディングの急カーブ前にある警告のシマシマ塗装。ある程度速度を出すと、多分あれでタイヤ浮くんじゃないだろうか? というレベル。やはりボディはかなり剛性が上がっているのでしょう。
しかしカートだと思えば、サス付きのラグジュアリーサルーンとゆっても過言ではないのです。
もはやレクサスですよ、レクサス。乗ったことないけど。
そんなわけで乗り心地など気にもならないワテクシはいそいそと山道へ。
走ってみて
...蹴ってるなぁ
「ステアリングを切る」
「フロントが回転モーメントを生む」
「一瞬遅れてリアタイヤが車を押し出しながら横にたわむ」
「コーナリングフォース」
そのプロセスが鮮やかです。
そしてコーナリング限界の段違いな高さ。
これまで「よっしゃ」と思いながら入っていったカーブに同じ速度で入るのなんて鼻歌混じり。タイヤ古いしFRの乗り方なんてサッパリだから、安全マージンはたっぷりとっていますが、それでもかなり速く曲がる。
軽い。
数字が示しているのでわかり切っていますが、向心力に余分な置き土産がありません。ロールはほとんど感じられず、本当に鮮明に4つのタイヤの状態がシート越しに把握できます。
そしてステアリングインフォメーション。こんなに鮮やかにわかるものなのか...信じられないくらいです。ありがちな表現ですが、小石を踏んだのすら伝わってきます。
走ることに関して、何もかもがシンプルでダイレクト。
楽しさを数値化するとしたら、どの項目でも点数の桁が違います。
ため息が出たあとに、爆笑してしまう。
凄いな、お前。
本当に凄いな!
そして法定速度でも、コーナーでのアクセルの抜き差しでラインが変わる!
FFはサーキットではタックインをしますよね?
AWDは経験がありませんが。
僕はラップタイム云々は脇において、限界走行で車を操る愉しさというのは駆動方式にあまり関係がないんじゃないかと思うんです。
それぞれに特有の操るコツがあり、それをいかに身につけて実際に発揮出来るか。その達成感がスポーツドライビングの醍醐味だと思います。素人なりにね...。
だから駆動方式論議には関心がありません。それぞれが愛する車が最高!
でものんびりワインディングを走っている時にもFRは操る楽しさの幅が広いというのは確かに一理あるよな、とこうしてAペダルで車を操っていると思います。
前のめりになれば、きっとどんな駆動方式にも楽しみはあるけど、のんびり走る車の駆動方式こそ、実はFRって面白いのかも。
...そんなわけで、我が家のケータリングの第一印象は、軋むような気配もなく高い剛性で足回りを受け止め、ひらりひらりと走っているという具合です。
まだちーっとも踏めていないので、その先の感覚はまた少しわかってからにしたいと思います。
飛び石が恐ろしいので、十分すぎる車間距離を取りつつのんびり走る山道。
ふと頭を挙げると青空が見えます。
山の頂上に重なる雲。
ああ、オープンカーに乗っているんだな...
バイクでもそうじゃないか。
だけど少し違います。
二輪でバランスをとりながら剥き出しで走るセロリで感じる風景は、よりフィジカルなもの。四肢と胴体に迫ってくると思える類いの感覚です。バイクにおいては、風景は見るのではなく体験するんじゃないかな。
バイクでしか体感できない特別な感覚。
対してオープンカーの風景は、やはり4つの車輪のあいだに腰掛けているからでしょうか。広い広い空や山並みは、もっと穏やかに私の周りに用意されていて、私はどこまでも続いている景色をのんびりと眺める観客然と走ることができるのです。
似ているようでずいぶん違う私の2台の相棒を、私はとても好きになりそうな気がします。