
F40ブレンボを導入して以来、もうブレーキのことで頭がイッパイです^^;考えることは、「今後のリアブレーキをどうするか」これに尽きます。
ブレーキは、フロント側/リア側のそれぞれがバランスよく仕事してこそ、その効果を最大限発揮するものですので、今私の32Rは、きっと「バランス」が崩れているのではないか、と思います。
ですが、「どれ位」「本当に」「バランスが崩れている」のか、峠で軽く流した程度ではわかりませんでした。
サーキットで走れば、その違いは恐らく体感できるとは思いますが、できれば
「数字で」把握したいところです。
まぁサーキットで走れば、ラップタイムや、ロガーデータの減速Gとしても判るとは思いますが、机上計算である程度見ることができないか、例のごとくやってみました。
「理想制動力配分曲線」って知ってますか?知らない人は、是非一度、googleで検索してみてください。
ドクター吉澤のブレーキライブラリーというサイトで、詳細に説明されております。
要は、ある減速Gでは、制動力が前と後ろでどれくらいずつであれば、最適なのか、という事を計算で求めることができる、という内容です。
そこで、紹介されている式に実際の値を入れて計算してみました。
※制動力係数は、サーキットでの最大制動時のログから逆算し、前後とも「0.5」としています。
まずは自分のクルマ、BNR32の純正状態がどれくらいなのかを知ることが必要です。そして、計算から得たグラフは、こうなりました。
まず見方の説明が要りますね^-^
横軸がフロント制動力、縦軸がリア制動力です。そこに、青線で0.1Gずつ点がプロットされ、赤線はペダル踏力(1kg刻み)されています。
青線が「理想制動力配分曲線」と言われるもので、このライン上にあるときに、前後ブレーキ(タイヤ)は同時にロックすることになります。
そして、赤線がブレーキペダルを踏み込んでいった時に発生する制動力を示しています。
という事を理解して、改めて見てみますと、約1.05Gで赤線と青線が交わっている=1.05Gで前後ブレーキ(タイヤ)が同時にロックすることがわかります。
ちなみに、この青のラインの下側に赤のラインがある状態であれば、フロントからロックする、すなわちフロント寄り、という事が言えると思います。
これが、BNR32の純正ブレーキシステムですが、どう感じられますでしょうか。
まぁ比較対象が無いのでなんとも言えないと思いますが、やっぱりメーカーが当然(?)計算しているからでしょう、大変優れたバランスを示すラインだと思います。
低G領域は有効にリアのブレーキを使い、前後同時にロックする領域(
赤青線:理想制動力配分曲線)に近づくと、SP(スプリットポイント)=20kg/cm2の設定により、その後はリアを少しリリース(リデュースレシオ=0.4)でリアを弱めながら、当時の限界以上の領域と思われる、1.05Gまで僅かにフロント寄りのバランスを維持したまま、綺麗に推移しています。
市販される車のブレーキは、
ブレーキの規格と規制により常にフロントからロックすることを要求しており、BNR32もきちんとこれに対応しています(当たり前ですね)。
何かと「効きが悪い」「なかなか止まらない」と言われる純正住友キャリパーですが(私もそうですけれど^^;)、考えてみればフロントキャリパーはBNR32専用な訳で、必要踏力は大きいものの、しっかりと計算され尽くされていることがわかりました。
さて・・・。今回も長くなりそうですね^^;
で、今の私の32Rのブレーキシステムは、
【フロント】
F40純正ブレンボキャリパー
F40純正Φ332mm2ピースローター
F40純正ブレンボパッド(PAGID RS 4-2-1)
【リア】
BNR32純正住友キャリパー
BNR32純正住友Φ297mmローター
Projectμ LevelMax900パッド
となっているのですが、今の状態がコレです。
グラフの形をみると、全体的に赤のライン(実際の制動力)が、青のライン(理想制動力配分曲線)を「余裕をもって」下まわり、かつ赤のラインが右まで延びているのが判ると思います。
もう少し噛み砕くと、
・赤のライン(発生制動力)が青のライン(理想制動力配分曲線)を「余裕をもって」下まわっている
→リアブレーキが余っている、フロント寄りのブレーキバランスになっている
・赤のラインが右まで延びている
→同じペダル踏力でも大きな制動力を得ることができる、または同じ制動力を得るためのペダル踏力が小さい
ということです。これで、答えが出ました。
今の私の32Rは、元の純正状態よりも「フロント寄り」になっており、リアのグリップが余っています。ただし、タイヤのグリップさえあれば、1.2G近くまでABS介入なしにブレーキング出来る可能性があります。
この状態の特性を推察すると、「ブレーキングでリアが出づらく」、「フロントが多くブレーキングし」、「ABS介入限界が高く」なっている、と言えそうです。
ABS介入限界が高いのはいいことですが、しかし低G領域でリアブレーキが遊んでいることは、やはり好ましくないですね。
では、どうするか。こんなのはどうでしょう?
ノーマルの時のような、最後まで無駄のない曲線になっていると思います。前後同時ロック(=制動限界)が、先の1.21Gよりは少し減っていますが、多分1.1Gを超える減速は、ラジアルタイヤでは無理のような気もします。今のところSタイヤは考慮外ですので、これで行ってみます。
で、このバランスを得るためのリアブレーキスステムは・・・。
「キャリパー、マスターそのままで、リアローターをΦ330mmの物に変更」するだけでいいんです。
確かに、フロントをF40にしたと言ったって、キャリパーの総シリンダー面積が僅か(5%位?)に大きくなった程度なので、フロントローター径が拡大Φ296mm→Φ332mmに合わせ、リアをΦ297mm→330mmにすれば、バランス的にはほぼ純正と同じになることは、感覚的にも合いますね^-^
ちなみに、リアにBNR34後期ブレンボ、Φ322mmローターを導入、前後ブレンボなのでマスターシリンダーも17/16インチのBNR34用を導入すると、こうなります。
赤のラインが上に延びるので、全体的にリアが効くようになります。しかし約0.63G@ペダル踏力8kg/cm2以降、赤のラインが青のラインと上下入れ替わっています。
入れ替わるポイント(0.55G)以降は、リアが先にロックしますので、ABSをカットしない限り、リアのABSが作動して、トータル制動力が下がってしまいそうです(フロントブレーキ余り)。
ABSカットしていれば、リアがロックしようが、そのままブレーキ踏み込んでいけばフロント制動力は上がっていきますので、そういう意味では問題ありませんが、路面μやタイヤグリップの違いから最大減速Gが変わり、ある減速Gでブレーキバランスがフロント寄りからリア寄りに転じる特性を、しっかり理解しておく必要がありそうです。
以下、今回のBNR32の比較で計算したいくつかの車種を、紹介程度に載せておきます。
【BNR32 Vspec】
【BCNR33】
【BNR34後期】
【Z32】
Z32って、車重が1570kg(2by2 TT)もあるのに、フロントローターサイズはΦ280mm・・・。これより車重の軽いBNR32前期(1430kg)ですらフロントローターサイズがΦ295mmあるのにどうして?と思いましたが、計算するとZ32の前後重量バランスは相当いい数字(53:47)であり、かなりリアブレーキが使える車であることがわかりました。
リアブレーキがしっかり仕事できるので、リアにはできるだけ大きなローターを奢ってやりたいところですが、そこは当時の16インチの壁があり、当時の最大径のリアブレーキローターΦ297mmを採用。
ここから理想制動配分に近づくように設定していった結果、フロントはΦ280mmとするしかなかった(Φ296mmだと、フロントばかりブレーキして、リアが余る=理想制動配分から遠ざかる)のだと思いました。
バランス(理想制動配分)を追求すれば、リアを効かせるための踏力も必要で、かつペダルタッチも固くしたかったからか、前期Z32は17/16インチのマスターシリンダーを採用、更にリアを効かせるためにもSPは35kg/cm2という、かなりリア効きを狙ったもの・・・。
以上のスペックであればZ32前期のブレーキは、踏み心地が相当固くて、しかも路面状況が良ければ、目一杯ペダル踏んでも、なかなかロックしない=効きが悪いと感じたことだろうと思いました。
踏力も相当大きいので、フロントのアルミキャリパーが開きやすかった、という話も、このペダル踏力からすればまんざらでは無かったのかもしれません。
日産の当時の設計者も、17インチホイールさえ認可されれば・・・。そんな葛藤があったんじゃないかな、と思いました。
ちなみに、私がいじるとすれば、マスターシリンダーはBNR34ブレンボ(17/16インチ、SP=25kg/cm2)とし、フロントよりリアのローターを大径化させると思います。
リアに18インチホイールでΦ350mmローター位入れて、バランスはよりいい感じになりますが、それでもまだもう少し、トータルの制動力が欲しいところです。
リアにR35位のΦ380mmローターを入れ、BNR34マスターシリンダーを使えば、ようやくフロントにΦ324mmローターを採用でき、それでようやく本当の意味で強化できるのかもしれませんね。
【PS13】
PS13は、ご覧のとおり、どうやらバランスはあまりよろしく無いようで、ネットで探すとRPS13にはPバルブの無いマスターシリンダーを採用していた、との記述もありました。
確かにこの特性では、別にPバルブが無くとも、リアブレーキが余りまくってしまうので、Pバルブ無しもうなずけます。
もし私がこれをチューニングするなら、BNR32住友キャリパー、フロントにΦ296mmローター、リアにΦ330mmローター、BNR32純正マスターシリンダーを導入すれば、相当強力な、且つバランスのとれたブレーキシステムにすることが出来そうです。
【S15】
S15は、リアが1potキャリパーでコストダウンの影響が見られることもあり、強化するなら前後のキャリパーとローターをBCNR33一式、マスターシリンダーは17/16インチ、SP=20kg/cm2のもの(BNR32 N1用?)にすれば、バランスのいい強化になりそうです。
【ER34】
ER34を強化するなら、前後のキャリパーをBNR34前期一式、フロントΦ355mm、リアΦ350mmローター、マスターシリンダーは17/16インチ、SP=20kg/cm2のもの(BNR32 N1用?)にすれば、バランスのいい強化になりそうです。でも、これはちょっと効かせ過ぎかも^^;
以上です。
いろいろ計算した結果、フロントを強化すれば相応にリアも強化した方がいいかどうかは、車種によって結構違うという事です。
ただ、日産スカイライン系は、ノーマルが優秀なので、フロント強化すれば、リアも同じように強化しないと、バランスは崩れるようです。
それにしても、日産車同士なら、かなり流用がきくので、セッティングの幅が広いのは助かりますねw
そして最後に、お決まりの一言。
やっぱりブレーキは奥が深いです・・・。