アルファがあれば・・・

ご近所に住む友達のＡさん。

アルファロメオで、長距離ドライブをするのが大好きな男。

年齢は自分と同じか一つ上。

妻一人、子一人。

時々、一緒に遊んだりする仲だ。

そのＡさんが、勤め人人生として大きな壁にぶちあたってる、らしい。

会社を休んでいるというのだ。

周囲に聞いてみると、オーバーワークやら上司との関係などで大変だったようだ。

ほぼ２週間、休んでいるという。

彼の携帯に電話してみた。

留守電になっていた。

それから一時間後、Ａさんから電話がきた。

―Ａです。今少し話せます？

―もちろん。会社休んでるって聞いたから、どーしてるかなと思って、ね。

―いろいろあって・・・。今一人で旅してるんです。

―骨休みだね。で、今どこ？

―福井です。アルファで青森から南下してるんです。月曜から走ってるから今日で５日目ですね。もう少ししたら戻りますが・・・。

―いい機会だからもっと走ってくればいいじゃないか。戻ってきたらまたドライブにでも行こう。

―ええ、お願いします・・・

福井と聞いて、ちょっとドキっとしたが、そーいえば彼の故郷はそっち方面だったはず。中部、北陸方面は土地勘あるだろうし、帰巣本能みたいなものだろう。

休んでる理由は聞かなかった。

お互い、もうすぐ４０歳。

仕事上の悩み、責任、プレッシャー、人間関係、家族・・・

人並みに経験してきたし、頑張ってもきたはず。

その男が、「もうダメだ・・・仕事できない・・・会社へ行けない・・・」となったのだ。

みんな、そーだとはいわない。

でも多かれ少なかれ、そんなプレッシャーと闘っている。

くたびれて一休みしたくなる人間がいて当然だ。

幸いにもＡさんには、理解ある奥さんがいる。

そして大好きなアルファロメオがある。

イタリア生まれの官能的なＶ６エンジンのうねりを聞きながら、少し晴れやかになって戻ってきてほしいと、願わずにはいられない。